ブームになり始めたころは「蟹工船」と言われても、ピンとこないところがあった。戦前のプロレタリア作家、小林多喜二の作品…で、と一からおさらい。読んだ後も、実感はいまひとつだった。
それが今年の流行語の一つにも選ばれた。内容はともかく、「蟹工船」という単語が、確かな広がりを持っているようだ。トヨタ、キャノン、ソニーといった大企業が、相次いで大規模な人員削減に乗り出している。厳しい現実が、昔の作品に説得力を与えているのかもしれない。
最も影響を受けているのは、派遣など非正規雇用の労働者たちだ。寮を追い出されて、住まいを失う人も出ている。「派遣社員はモノじゃない」「ホームレスにさせないで」。今月の初めには、約二千人の抗議集会が都内で開かれた。
近年の政府の規制緩和によって非正規雇用は増え、いまや三人に一人。働き方の多様化を評価する見方もある一方、景気が悪くなれば真っ先に雇用調整の対象とされやすい。非正規雇用の増加は、暮らしや社会の土台を不安定にする。
日本経団連の御手洗冨士夫会長は就任当時、「終身雇用を守る」「会社は社会の一部」と発言していた。最近の企業の雇用調整は「苦渋の判断」だと述べ、理解を求めている。こんなときだからこそ、日本型雇用の伝統っを取り戻すために労使も智恵を絞りたい。「蟹工船」が実感される世の中にはしたくない。
―S新聞記事より―
「終身雇用を守る」
「会社は社会の一部」
それが今年の流行語の一つにも選ばれた。内容はともかく、「蟹工船」という単語が、確かな広がりを持っているようだ。トヨタ、キャノン、ソニーといった大企業が、相次いで大規模な人員削減に乗り出している。厳しい現実が、昔の作品に説得力を与えているのかもしれない。
最も影響を受けているのは、派遣など非正規雇用の労働者たちだ。寮を追い出されて、住まいを失う人も出ている。「派遣社員はモノじゃない」「ホームレスにさせないで」。今月の初めには、約二千人の抗議集会が都内で開かれた。
近年の政府の規制緩和によって非正規雇用は増え、いまや三人に一人。働き方の多様化を評価する見方もある一方、景気が悪くなれば真っ先に雇用調整の対象とされやすい。非正規雇用の増加は、暮らしや社会の土台を不安定にする。
日本経団連の御手洗冨士夫会長は就任当時、「終身雇用を守る」「会社は社会の一部」と発言していた。最近の企業の雇用調整は「苦渋の判断」だと述べ、理解を求めている。こんなときだからこそ、日本型雇用の伝統っを取り戻すために労使も智恵を絞りたい。「蟹工船」が実感される世の中にはしたくない。
―S新聞記事より―
「終身雇用を守る」
「会社は社会の一部」