若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

尾身会長の「気持ち」発言に見るコロナヒステリー

2021年03月09日 | 政治
「安心安全なまちづくり」等のフレーズは頻繁に用いられることの多い、「安心」と「安全」。
しかし、安心と安全、この二つは別物です。

安心・不安は、主観的な気分・気持ちの問題。
安全・危険は、危害・損害が生じる可能性の程度を表した客観的な状態。

この安心と安全が別物である点を踏まえて、次の文章を読んでみましょう。

尾身会長“『通常のインフル同様の認識』となるのは来年以降” | 新型コロナウイルス | NHKニュース 2021年3月5日
======【引用ここから】======
5日の参議院予算委員会で尾身会長は「まもなく高齢者へのワクチン接種が始まると、重症化や発症を予防する効果が期待できる。そうなれば、一般の方たちのこのウイルスに対するイメージはかなり変わってくると思う」と述べ、ワクチンの接種が進むことへの期待感を示しました。

その一方で「仮にことしの12月ごろまでに全人口の6割から7割がワクチンを接種したとしても、時々はクラスター感染が起こりえるし、時には重症者も出るという状況だと思う」と述べ、引き続き新型コロナウイルスへの警戒が必要だという認識を示しました。

そして、今後の見通しについて尾身会長は「ことしの冬からさらに1年ほどがたてば、このウイルスに対する不安感や恐怖心が、だんだんと季節性インフルエンザのような形になっていくと考えている。多くの人がインフルエンザと同じような気持ちを持ったときがいわば終息のような感じになるのではないか」と述べました。

======【引用ここまで】======

仮にことしの12月ごろまでに全人口の6割から7割がワクチンを接種したとしても、時々はクラスター感染が起こりえるし、時には重症者も出るという状況だと思う

この部分は、尾身氏の専門家としての知見。
安全・危険の観点からは、多くの人がワクチンを打ってもゼロコロナにはならない事を尾身氏は述べています。

じゃあ、ワクチン接種で死亡者や重症者の数がどうなるのか、どの程度ワクチンの効き目が出れば季節性インフルエンザと同等の病気と言えるのか、気になるところです。

しかし尾身氏は、全人口の6割~7割がワクチン接種をしたとして、それで感染者数、重症者数、死亡者数がどのくらいになるか、新型コロナの危険性がどのくらい軽減されるかの科学的な知見は述べていません。漠然と「重症化や発症を予防する効果が期待できる」とは述べているものの、具体的に重症化を抑える程度や発症予防できる人数への言及は避けています。

他方、

一般の方たちのこのウイルスに対するイメージはかなり変わってくると思う

ことしの冬からさらに1年ほどがたてば、このウイルスに対する不安感や恐怖心が、だんだんと季節性インフルエンザのような形になっていくと考えている。多くの人がインフルエンザと同じような気持ちを持ったときがいわば終息のような感じになるのではないか

この部分については、尾身氏の科学者・専門家としての客観性を伴った知見ではありません。一般人の安心・不安、いわば「お気持ち」がどうなるかの感想を述べているにすぎません。

尾身氏は、検証可能な客観的数値に基づいて、ワクチン接種によって新型コロナウイルスの危険性が季節性インフルエンザと同等になる、だから安心してもらっても大丈夫・・・と述べているわけではありません。
イメージ
不安感
恐怖心
気持ち
という言葉を連呼していることからも分かるように、ワクチン接種を経て、一般人の新型コロナウイルスに対する印象が季節性インフルエンザのイメージと同等になれば、それで「終息のような感じ」と述べているのです。

ワクチン接種の前後で、ウイルスの危険性自体が劇的に変化するわけではありません。
その中で、イメージが改善すれば終息と述べているのです。

【朝日新聞のミスリード】

尾身氏の同じ発言を、意図的に切り取った悪い例をご紹介。

尾身会長「コロナ、もう2年でインフルのように」見通し(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
======【引用ここから】======
 新型コロナウイルスの感染は今冬まで広がり、季節性インフルエンザと同じような病気になるにはさらに1~2年かかる――。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は5日の参院予算委員会で、そのような見方を示した。日本維新の会の浅田均政調会長の質問に答えた。
======【引用ここまで】======

この朝日新聞の記事は、尾身発言の改竄・・・とまではいかないにしろ、ミスリードであることは否めません。

尾身氏は、新型コロナウイルスへの「不安感」や「恐怖心」の程度が季節性インフルエンザと同等になれば「終息のような感じ」と述べているのであって、安全・危険の観点で「季節性インフルエンザと同じような病気になる」という客観性のある知見を述べてはいないのです。

尾身氏は、自分が煽った新型コロナウイルスへの恐怖心が、国民感情と呼べるレベルまで広がった事に怖気づいてしまったようです。今になって、「危険性というよりも気持ちの問題です」と火消しの方向に舵を切りつつあります。

他方、朝日新聞は「まだまだ新型コロナは続くぞ」と煽る。系列のテレ朝も煽る。冒頭のニュースでは発言そのままを紹介しているNHKも、例えば『ニュースウォッチ9』『Nスぺ』なんかでは恐怖心をこれでもかと煽っています。マスコミにとって、不安感を煽れば煽るほど発行部数や視聴率が伸びるのだから仕方ありませんね。

さすがは、戦前に軍国主義を煽ってきた朝日新聞といったところでしょうか。朝日新聞は、戦前にこの手法で売りに売ったんでしょうきっと。あるいは、怖いぞ怖いぞと煽ってきた手前、引っ込みが付かなくなってしまったのでしょうか。

【ワクチンは効果や安全性よりも安心感】

尾身発言からは、ワクチンの安全性と効果うんぬんよりも、「接種したことによる安心感」が終息にとって重要であるという事が分かります。

であるならば、
「輸送の際にマイナス75度の冷凍庫で~」
「いやマイナス20度でも~」
という扱いの難しいワクチンを厳重に管理し全国各地へ配らずとも、極端な話、ビタミン剤や生理食塩水を注射して「はい、あなたはこれで接種済!」としてしまっても良いような気がします。これでヒステリーは緩和されることでしょう。

それ以前に、マスコミが不安感を煽る報道をやめてしまえば、その日に間違いなく終息です。
無症状を含めた陽性者を
「今日は150人の感染が確認されました~」
と毎日報じていれば、不安にならない方がおかしいというもの。

安倍→菅への首相交代を契機として、すぐに新型コロナを5類感染症へと切り替え、
「病院、クリニックで感染確認したら、7日以内の届出をしてください」
程度の扱いにしていたら、もしかしたら今頃は終息宣言となっていたかもしれません。
菅首相ももっと楽な政権運営が出来たことでしょう。

が、それも今となっては後の祭り。