「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

タンザニアで子宮頸がんワクチン

2018-04-10 | 雑記
Tanzania launches early-age cervical cancer vaccine
www.bbc.co.uk/news/world-africa-43716260

BBCを見ていたら、アフリカ・タンザニアへ若年女性への子宮頸がんワクチン接種の動きが広がるとのニュースがありました。子宮頸がんワクチンについてはこのブログでも以前に採り上げていますが、改めて色々と思うところがありました。

日本でこのワクチンをめぐって騒動が生じたことを私はおそらく生涯忘れないでしょう。定期接種の勧奨が中断された経緯について、私はあの時のマスコミの報道の仕方には今でも疑問を覚えています。

かつて福島県で臨床に従事していた頃、私は20代の子宮頸がん末期の患者さんを診たことがありました。
彼女は、私が当直していた夜、病院にふらっと現れたのでした。当時の私よりも若かった彼女は、首都圏の大学附属病院で治療を行ったものの、時すでに遅く。悲観した彼女は「せめて故郷で死にたい」と願って、福島県某所に帰郷したばかりでした。しかし、末期ですから当然疼痛も強く、ついにはその辛さに耐えかねて、夜中、公立病院の救急外来を頼って来たそうです。
数日後、彼女はもとの大学病院へ戻りましたが、そのまますぐ亡くなられました。
もしも予めワクチン接種を行っていたならば、彼女は若くして死なずに済んだのではないか?
そんなとりとめのないことを思ったことがありました。

HPVには多くの型がありますが、その中で発がん性を有する幾つかの型に対して、ワクチンによって適切な免疫を獲得することが出来れば、子宮頸がんの発症を防ぐことが出来るのはすでに検証されています。
たしかに当時日本で流行していたHPVの型を鑑みると、ワクチン接種で予防できる型は限られており、当然、その効果は(おそらく)限定的でした。しかし、限定的とはいえ、ワクチン接種によって感染拡大を防ぎ、子宮頸がんの発症を防ぐことが出来た例だってもちろん少なからずあったでしょう。
日本ではマスコミによる不安論の煽動が、現状でがんを予防しうる唯一のワクチンの定期接種勧奨を中断させてしまったように感じます。果たしてそれで本当に良かったのか。若くして亡くなられる子宮頸がん患者を1人でも多く減らせるのであれば、定期接種勧奨されるべきだったのではないかと思うことがあります。

また、子宮頸がんの予防には検診がとても重要です。ワクチン接種はともかく、日本ではもっと検診が普及した方が良いと思います。恥ずかしい部位かもしれませんが、しかし、実際にすぐ検査できる部位でもあります。ワクチンに抵抗感がある方も、せめて、検診は定期的に受けてもらえればと思います。

アフリカ・タンザニアでも、日本でも、若くして子宮頸がんで命を落とす女性が1人でも多く減ることを心から祈ります。


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