「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

母校の空を見上げて

2016-06-28 | 雑記
「全然変わらないね」

母校を訪ねたのは久しぶりのことでした。附属病院の空中庭園から見上げる東京湾の空はまるで変わらずあの頃のままの青さでした。私が医科学研究に打ち込むきっかけの一つを与えてくれた偉大な医学者にそう言われて、気分はすっかり学生の頃へと戻ってしまいそうになりました。
しかし、私が横浜に戻ったのは、前へ進むためでした。指導を仰ぐためではなく、共同研究を展開するためにこそ来たのです。

英国留学中に命を賭して挑む中心テーマに何を据えるべきか。
もちろん、福島原発事故被災地で臨床に従事した体験から、低線量放射線被ばく影響を研究したいという想いは常にあります。指導予定教官のPrise教授から与えられたテーマはありましたが、その中でも「どの問題に注目するか」というのは研究戦略上、きわめて重要でした。「何をやっても時間は経つものだ」と、かつて日本の医化学をリードした分子神経学者は言ったそうです。同じ時間を使うならば、重要な問題から取り組むべきでしょう。しかも、着手可能な問題からです。
悩んだ末に辿り着いた答えは、自分の医学者としての原点にありました―――つまり、母校です。

私の拙い説明にもかかわらず、かつての恩師は「その問題の重要性はよく判った。いっしょに研究しよう」と仰ってくれました。その言葉がどれほど嬉しかったことか。
必ずや期待に応えたいものです。英国でも負ける気はしません。