シリーズ平成の本音―参院選挙制度自民改革案、憲法、有権者軽視を露呈
2016年7月に予定されている参議院議員選挙に向けて、自民党総務会は7月22日、「違憲」の状態になっている1票の格差を是正すべく、「鳥取と島根」、「高知と徳島」をそれぞれ1つの選挙区にする「合区」とするなど、定数を「10増10減」する公職選挙法改正案を了承した。
自民党は、この改正案を維新の会や次世代の党など野党4党と参議院に共同提案し、24日にも同院で採択され、衆議院に送られ、採択された。
これにより、前回の参議院選挙で最大4.77倍だった一票の格差は、2.97倍となる見通しであるが、一定の評価が出来よう。
しかしこの改正案は格差を3倍以内に手直する申し訳程度の改正であり、次のような根本的な問題がある。
1、この程度の手直しでは「違憲」とされる可能性大
この改正案により1票の格差は、2.97倍になるが、‘改善’には程遠く、このまま実施することになれば、裁判で「違憲」と判断される可能性が強い。「違憲状態」との判決だから「違憲」ではないという解釈は不適正であろう。「違憲」は「違憲」なのである。「違憲」の状態が長期に維持されて来たことが大問題である。裁判所が基本的には1対1であるべき「平等性」に恣意的な判断を示してきたことにも責任がある。
更に衆議院では従来格差2倍以内、参議院では5倍以内で違憲ではないとされて来たが、両院とも小選挙区と比例代表という選挙制度は類似であるにも拘わらず、衆参両院では1票の重みにおいて格差を付けている。参議院では1票の格差に衆議院以上の下駄を履かせて良いという合理的な理由は全くない。その上、今後の地方の少子化、人口減と首都圏への人口集中が継続すれば、数年で3倍を超えることは目に見えている。
このような中で、自民党の脇雅史参院幹事長(当時)は、7月10日、‘10増10減案は1票の格差訴訟で違憲と判断される可能性がある、’‘違憲立法に関わることはできない’としてこれに反対し、自民党会派に離脱届を提出した。自民党員の中にも若干の良心、良識が残っているようであり、若干の救いである。
野党民主党は、もとより自民案に反対であり、合区を10にすることを提案している。
憲法は国民の「平等性」を規定しており、正に民主主義の原点となるが、憲法を軽視する自民党の姿勢を露呈した形だ。
2、定数削減や議員歳費・諸手当、政党助成金問題を無視
「選挙制度見直し」ということであれば、2012年11月の党首討論で安倍自民党総裁(野党、当時)は解散総選挙の前提として野田首相(民主党代表、当時)に対し「定数削減」を確約していた。従って、区割りを検討する以前に、抜本的な「定数削減」を提案すべきであろう。財源の逼迫と今後の人口減を考慮すると3割程度の削減をして置く必要があろう。自民・公明連立政権は、これら国会での確約、国民への約束を果たしていない。国会で表明された以上、民主党に対してのみならず、国民への約束違反であろう。
また定数問題とは別に、国民に消費増税や復興特別税を強い、他方で年金給付額の削減、健康保険料や介護保険料の実質引き上げなど、国民に多くの負担を強いていながら、議員については議員歳費・諸手当は削減等されていない。一律3割程度の削減が適当であろう。また地方公務員や各種独立行政法人等を含む公務員の定員についても、一律3割削減が実施されるべきであろう。
政党助成金については弊害が多い。各議員は、所属政党からの助成金に縛られ、各議員の意見は無視され、党議に拘束される。各議員は、選挙区を代表していながら異論は言えない状況であり、民主主義と表面では言いながら、議員の表現の自由は大幅に抑制されている。閣僚や党役員にならないと、議員としての存在感もない。それならば議員定数を大幅に削減してもよいのであろう。
また有権者の4割前後は“無党派層”であり、更に党員となると遥かに少ないので、政党で分けるというのは有権者の民意を反映することにはならない。政党助成金ではなく、一定の条件で、議員候補者に選挙費助成する方法を検討することが望ましい。
(2015.7.24.)(All Rights Reserved.)
2016年7月に予定されている参議院議員選挙に向けて、自民党総務会は7月22日、「違憲」の状態になっている1票の格差を是正すべく、「鳥取と島根」、「高知と徳島」をそれぞれ1つの選挙区にする「合区」とするなど、定数を「10増10減」する公職選挙法改正案を了承した。
自民党は、この改正案を維新の会や次世代の党など野党4党と参議院に共同提案し、24日にも同院で採択され、衆議院に送られ、採択された。
これにより、前回の参議院選挙で最大4.77倍だった一票の格差は、2.97倍となる見通しであるが、一定の評価が出来よう。
しかしこの改正案は格差を3倍以内に手直する申し訳程度の改正であり、次のような根本的な問題がある。
1、この程度の手直しでは「違憲」とされる可能性大
この改正案により1票の格差は、2.97倍になるが、‘改善’には程遠く、このまま実施することになれば、裁判で「違憲」と判断される可能性が強い。「違憲状態」との判決だから「違憲」ではないという解釈は不適正であろう。「違憲」は「違憲」なのである。「違憲」の状態が長期に維持されて来たことが大問題である。裁判所が基本的には1対1であるべき「平等性」に恣意的な判断を示してきたことにも責任がある。
更に衆議院では従来格差2倍以内、参議院では5倍以内で違憲ではないとされて来たが、両院とも小選挙区と比例代表という選挙制度は類似であるにも拘わらず、衆参両院では1票の重みにおいて格差を付けている。参議院では1票の格差に衆議院以上の下駄を履かせて良いという合理的な理由は全くない。その上、今後の地方の少子化、人口減と首都圏への人口集中が継続すれば、数年で3倍を超えることは目に見えている。
このような中で、自民党の脇雅史参院幹事長(当時)は、7月10日、‘10増10減案は1票の格差訴訟で違憲と判断される可能性がある、’‘違憲立法に関わることはできない’としてこれに反対し、自民党会派に離脱届を提出した。自民党員の中にも若干の良心、良識が残っているようであり、若干の救いである。
野党民主党は、もとより自民案に反対であり、合区を10にすることを提案している。
憲法は国民の「平等性」を規定しており、正に民主主義の原点となるが、憲法を軽視する自民党の姿勢を露呈した形だ。
2、定数削減や議員歳費・諸手当、政党助成金問題を無視
「選挙制度見直し」ということであれば、2012年11月の党首討論で安倍自民党総裁(野党、当時)は解散総選挙の前提として野田首相(民主党代表、当時)に対し「定数削減」を確約していた。従って、区割りを検討する以前に、抜本的な「定数削減」を提案すべきであろう。財源の逼迫と今後の人口減を考慮すると3割程度の削減をして置く必要があろう。自民・公明連立政権は、これら国会での確約、国民への約束を果たしていない。国会で表明された以上、民主党に対してのみならず、国民への約束違反であろう。
また定数問題とは別に、国民に消費増税や復興特別税を強い、他方で年金給付額の削減、健康保険料や介護保険料の実質引き上げなど、国民に多くの負担を強いていながら、議員については議員歳費・諸手当は削減等されていない。一律3割程度の削減が適当であろう。また地方公務員や各種独立行政法人等を含む公務員の定員についても、一律3割削減が実施されるべきであろう。
政党助成金については弊害が多い。各議員は、所属政党からの助成金に縛られ、各議員の意見は無視され、党議に拘束される。各議員は、選挙区を代表していながら異論は言えない状況であり、民主主義と表面では言いながら、議員の表現の自由は大幅に抑制されている。閣僚や党役員にならないと、議員としての存在感もない。それならば議員定数を大幅に削減してもよいのであろう。
また有権者の4割前後は“無党派層”であり、更に党員となると遥かに少ないので、政党で分けるというのは有権者の民意を反映することにはならない。政党助成金ではなく、一定の条件で、議員候補者に選挙費助成する方法を検討することが望ましい。
(2015.7.24.)(All Rights Reserved.)
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