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政党交付金を候補者個人への支援金とすべし!(一部改訂、再掲)

2022-06-23 | Weblog
シリーズ本音トークー政党交付金を候補者個人への支援金とすべし!(一部改訂、再掲)
 2019年7月の参院選挙で、広島選挙区(改選2議席)から当選した自民党公認の河井案里候補(現参院議員)に、選挙を前にして党本部が約1億5000万円提供したことが明るみに出た。同候補は、選挙カーの「うぐいす嬢」に規定(15,00円)の2倍を支払う選挙違反をしたのではないかとの疑いを掛けられている。
選挙違反問題は当局に委ねるとして、新人候補に自民党が1億5000万円相当提供した事実については驚きだ。
自民党には、1候補に1億5000万円も提供出来るほど潤沢な金があるのか!
新人候補が当選することは難しいとしても、当選するためにはこれほど金が掛かるのか!一般人にはとても立候補など雲の上の話だ。
選挙と金、選挙に金が掛かるという話は以前よりあり、1990年代に、選挙区を中選挙区から1人区とする他、選挙を公費(税金)で支援するために政党助成金を設け、党より候補者に資金的な援助をする制度などが導入された。
今回の事件は、このような措置が所期の目的通り適正に機能しておらず、弊害が多いことを如実に物語っている。
次の理由により、「政党助成金」を廃止して、選挙区ごとに投票総数と得票数に基づき一定の基準を設け、各候補者に選挙資金を一部補助する制度とするべきではないだろうか。現在の供託金制度は維持する。
1、政党助成金は党の恣意的な介入により、有権者の判断が反映されなくなる
同じ広島の選挙区で、参議院議員を5期努め、6選を目指していた同じく自民党公認の溝手顕正候補(元防災担当相)が落選した。同候補は自民党からの1,500万円しか提供されていなかった。選挙に際し公認候補は自民党より1,500万円前後の助成を受けるのが相場とされているようだ。党の裁量が強く働く。
これでは公費による選挙資金助成の意義は失われる。税金を負担している有権者の意思は何ら反映されないばかりか、党の裁量で歪められる可能性が強い。
更に政党助成金につては、党が各議員の選挙資金や活動費を握っているため、党議拘束が余りにも強くなり、議員の個性や個人の主張を失わせており、文字通り、党に‘金縛り’になっているに等しく、党独裁の色彩が強くなり、多様性を基本とする民主主義にも反する。
一定の基準を設け各候補者個人に選挙資金を補助する制度とするべきだ。
 2、最大の問題は政党助成金依存が強くなり、各政党の党員、党友が一向に増えないこと
 2020年8月28日、安倍首相が健康上の理由で辞任の意向を表明したのを受けて、自民党の新しい総裁が選出され、国会で新たな首班が指名される。安倍首相には健康回復をお祈りしたいが、9月中旬に自民党総裁選が行われる。しかし本来であれば、党の両院議員だけではなく、同数の党員の投票を含めた総裁選挙が行われるが、今回は、緊急を要する等として議員票を中心とした両院議員総会で決定される見通しだ。主要派閥が特定候補の支持を早々に表明し、党員に人気のある都合の悪い候補を排除するため、議員総会で決めようとしているなどと伝えられている。安倍首相は新総裁が決まるまで執務を行う見通しなので、「首相が欠けた場合」でも「緊急」でもない。となると派閥で決めるため、党員投票を外すということになる。国の政党助成金(税金)と企業献金があるので、党員会費などそれほど重要ではないということだろうか。自民党の党員でも110万人前後に止まっているが、政党助成金依存で党員を増やそうという熱意も薄れる。これでは党レベルでの民主主義は後退し、旧態依然の派閥中心、派閥人事となり、国民からますます遠くなってしまう。

3、政党には企業・団体より多額の政治献金が入っている
 政党助成金が導入された際、議員や党と企業・団体との癒着が問題視され、企業・団体献金に頼らない選挙とすることが考慮された。しかし政党助成金が導入された後も、企業・団体献金が復活し、横行している。
2018年の政党への献金総額は、約29億円、その内企業・業界団体献金が約25億円となっており、個人による献金は何と 1.2億円でしかない。企業・業界団体献金が、政治献金の86%強を占めており、企業・業界団体が突出しており、政治への金による影響力を強めている形だ。企業別では、2017年ではトヨタ、東レ、キヤノン、日産などが上位を占めている。
この企業献金については、経団連が一時控えていたが、現在では政党別の星取り表、序列を作成して企業・団体に政治献金を誘導している。
だからと言って政治と企業の癒着などとは言えないところではあるが、経団連の役員や献金の多い企業・団体のトップが政府の各種の委員会の座長や委員になっているなど、金の影響力は明らかだ。その委員を‘民間議員’などと誤解を生む怪しげな呼称をしているメデイアもある。
企業・団体の議員個人への献金は禁止されているので政党への献金となるが、個人からの献金が伸びていない。共産党は共産党組織、公明党は創価学会という下部組織が強固であるので個人献金等も多いが、自民党はじめほとんどの党は、党員や党友なども低迷しており、本来あるべき個人献金は伸びていない。最大与党の自民党でさえ、2012年12月の総選挙で勝利し、自・公連立政権の下で7年余、103万党員から120万党員を目標に党員増を図って来たが、それでもせいぜい108万にしか届いておらず、その後は低迷している。日本の有権者総数は1億658万人(2019年7月現在)で、自民党員はその1.0%にしか達していない。最大与党でも有権者の1%程度でしかなく、有権者を代表するとも言えない政党を何故税金で助成するのか。そもそも民意で作るべき民主主義の基本に反する上、共産党を除き、政党側の努力が足りない。税金で政党を助成している限り、政党は税金助成に依存し、自ら努力はせず、成長もしないであろう。
政党助成金や企業・団体献金があるので、個人献金を募るインセンテイブもないのだろうが、本来、議員や政党は有権者への政策説明や活動報告など日常的な活動を通じ支持を増やし、少額でも個人献金を増やしていくべきであろう。政党助成金は、そのような議員や政党の努力を阻んでいる。
いずれにしても政党は企業・団体や政治団体双方から献金を受けているので、国(税金)による助成は、政党ではなく、一定の基準に基づき候補者個人に配賦されるべきであろう。

 4、有権者のほぼ4割の無党派層にとっては「政党助成金」はありえない
 2019年7月の参院選挙で、選挙区の投票率が48.8%と低迷した。そもそも参議院の存在については、衆議院のコピー、クローンのようなもので、その存在意義が問われている。その上有権者の約40%が無党派層であるので、比例区では投票すべき政党もないので投票に行かない有権者も多く、また投票に行った人が、支持政党がないので白票で出し、無効票となった人も多く、無駄だった言う人もいる。いずれにしても、投票率が5割を割った中で当選しても国民の代表などと言えるのか疑問でもある。
 無党派層にとっては、支持する「政党」を書けと言われても無理な話だ。
「政党助成金」についても、無党派層にとっては支持もしていない政党に払った税金が使われるというのは合点がいかないであろう。
 更に選挙後に、特定政党が分裂し、新たな政党となった場合、政党助成金を分割して引き継いでいるが、そんな政党を選挙で支持したわけではないので疑問が残る。
 政党助成金や政党を選ばせるということは、有権者の意思を無視した、政党のご都合主義であり、候補者個人への資金支援、議員個人への投票という民主主義の基本に戻すべきであろう。
(2020.2.1.8.31.一部改訂)
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 比例代表制、投票に政党名記載強要は憲法違反か!?

2022-06-23 | Weblog
  比例代表制、投票に政党名記載強要は憲法違反か!?
 2021年衆議院選挙が10月31日に実施された。小選挙区制は立候補者名記載で、比例代表制は「政党名」の記載が要請されている。政党名を記載しなければ無効となる。
 1、「政党名」記載は憲法で保障される思想の自由に反する!?
 有権者数は現在約1億6百万人であるが、その内40%~45%は無党派層で推移しており、支持政党が決まっているのは有権者全体の半分程度でしかない。直接選挙では、公認政党や推薦政党・団体などは参考にはするが、各候補者の政策や地域貢献の実績、人柄などを見て判断する。
 他方、比例代表制で政党名を記載しなければ投票は無効となり、有権者が直接選ぶのではなく、各政党が作成する候補者の順位により当選者が決まる。
 無党派層はおおよそ有権者の40%~45%存在し、この比率は時代によりほとんど変わらない。無党派層は無関心層では必ずしもない。意見や自身の考えは持っている。2021年10月の衆議院議員選挙でも投票に行く予定はないとする者が20%程度存在するが、政党支持者の間にも投票に行かない者は少なくない。
 今回の全国の投票率は、小選挙区ベースで53.7%と、戦後3番目の低投票率なった。有権者の46%強が投票していない。多少分析が必要だが、その多くが無党派層とみられる。選ぶ政党がないからだ。
 そもそも与党自民党でさえ党員は110万人程度で、有権者の1%強でしかない。党員数でしっかり固めているのはイデオロギーを信奉している共産党と宗教団体の創価学会を代表する公明党であるが、いずれもイデオロギーや特定宗教を信奉するところで共通しており、国民政党にはなり難い。
 野党では、どの政党も党員は更に少ない。労働組合を支持基盤としている立憲民主党や国民民主党などもあるが、労働組合も多様化しており、野党支持とは限らない。野党全体でも党員・党友数は有権者の数%程度にも満たないだろう。
 このように与野党を問わず党員が広がらない状況で、投票者全員に政党名を記載させるのは実体を反映していない上、無党派層に政党名を記載させるのは無理がある。思想、良心の自由を保障する憲法の精神に反しているようにも見える。
多くの無党派層とっては、投票に行っても支持する政党はないので投票に行かないか、白票、即ち無効票を出すしかなく、比例代表制を含む現行の選挙制度では投票権を行使し難い。

 2、比例代表の実体は、直接選挙で落選した候補の「滑り止め」!
 小選挙区で立候補している多くの候補者は、所属の党比例代表名簿にも記載されており、小選挙区の直接選挙で有権者によって選ばれず落選しても、比例代表で当選するケースも多く、小選挙区選挙の滑り止めになっていることが少なくない。小選挙区で有権者からノーと言われた候補者が別の土俵から議員として再起している。何のための直接投票か、まるでゾンビのようだ。これでは有権者の選択がフェアーな形で反映されない。
 また比例代表制は、小選挙区では当選者を出せない小政党・零細政党が当選者を出せる小政党救済の場となっている。救済の場と言えば聞こえは良いが、多数決で決まる国会では発言力はほとんど無い。小政党が増加して利するのは与党であろう。小政党・零細政党間の喰い合いとなることが多い。共産党については、共産主義イデオロギー信奉者で固められ宗教団体と似ている面があるが、ほとんどの小選挙区で候補者を立てていたので、野党の票を喰い、或いは中道右派層が保守党に向け、野党が伸びない要因となっている。与党保守党にとっては、共産党の存在はいわば保守の守護神となっている。
 無論マイノリテイの声を聞き、多様性を受け入れることは大切なことであるが、衆・参両院で同じような選挙制度を持つ必要は無い。特に予算など優先権がある衆議院では有権者の選択が直接反映される小選挙区のみとし、参議院では多様性を反映させて小選挙区と比例代表の組み合わせとするなど、改善が不可欠なようだ。現在は、参議院は衆議院のクローン、そっくりさんの域を出ない。むしろ全く重複するので、現在のままであれば参議院は廃止しても良い。

 3、政党交付金は党員拡大努力を失わせ、健全な民主主義にとって有害!
 嘗て中選挙区制で選挙に金が掛り過ぎるとの批判があった一方、日本では選挙基盤が固い公明と共産党は別として、党員・党友が広がらなず、また政党への個人の寄付が広がらない風土となっている。他方、企業による政治パーテイ券の割り当てその他の企業献金の横行などへの批判から、国民の税金による政党交付金が実施された。年間総額は320億円に達し、各党に配布され、党から所属議員に配られている。本来であれば、立候補者への選挙資金支援とすべきであったが、いつの間にか政党助成金となり、国民から立候補者への支援では無く、国民は税金を支払うだけで置き去りにされ、政党が所属議員に配るということになり、趣旨が大きくすり替えられている。日本の政党は準公営とも言え、民主主義政党とは言い難い。共産党のみは政党助成金を受け取っておらず、党員の会費・寄付で運営しており、その点では模範的と言えるが、これら資金は党が管理するため中央統制が強くなっている。
 政党助成金についても、所属議員に助成金や支援金を配る党の力が強くなり、党議拘束などによる締め付けが強くなっており、議員は萎縮し、党議に反する言動は少なくなった。それならそんなに多くの議員は必要ない。
 政党助成金の弊害はそれだけでなく、共産党を除き、党が政党助成金にあぐらをかき、党員・党友獲得努力がなくなって来ている。
 他方、経団連は組織的な政治献金を一時控えていたが、それが復活しており、政党助成金の役割は既に終えていると言えよう。
 このように健全な民主主義の発展にとって、政党助成金の弊害は大きく、廃止すべきであろう。選挙費用が掛りすぎるという批判を背景として、中選挙区制から小選挙区制にしているので、立候補の資金面での負担を軽減し、立候補し易くするため、立候補者個人への支援方法を再検討すべき時期に来ている。
 選挙資金などとも関係するが、保守政党の多くの議員が世襲、或いは近親者・縁故者への世襲となっているが、政治への国民の関心や参加を促すため、引退する議員の事務所や残余資金等については、近親者・縁故者が世襲する場合には、国庫に納める、また後援団体を解散するなどの対応が必要なのかもしれない。(2021.11.2.)
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マイナンバー、官庁のためのユアーナンバーにしてはならない! (追補版)

2022-06-23 | Weblog
マイナンバー、官庁のためのユアーナンバーにしてはならない! (追補版)
 <はじめに>2021年11月10日、新内閣発足に伴い、与党自民党と公明党がマイナンバー普及のため、総額2万円のポイントをそれぞれの段階で付与することで基本合意した。マイナンバーカード実施から6年近くになるが、登録率は未だに40%程度でしかない。
 その普及のため、2万円のポイント付与をこの時点で行うことは、この制度自体への国民の理解が進んでおらず、広範囲の個人情報の国家把握、相続税を含む徴税強化、情報流出と悪用、及び煩雑な操作・行政事務などが危惧されていることを如実に示している。行政当局は、その普及のため更に税金を使うのでは無く、税申告に関係する所得や個人財産を含む広範囲な個人情報を包含するマイナンバーは、制度設計上の誤りであり、国民に理解されていないことをただちに認め、適用範囲を社会福祉関係に限定し、国民の理解を得やすいよう、簡素化することが望ましい。このまま税金を使って奨励・普及することは2重の不効率であると共に、何時起こるかも分からない大災害の時の安否確認や救済・支援には中途半端にしか役だたないこととなるので、早急な対応が必要となっている。大災害は待ってはくれない。
 
 コロナ禍対策のため実施された一律10万円給付が、4月30日の第1次補正予算成立を受けて実施に移されたが、一律給付が最も早く配賦できるとの触れ込みにも拘わらず、日時を費やし、7月になってようやく見通しがついた。この配賦の遅れの原因の1つとしてマイナンバーの普及率の低さ(約16%)に加え、申請システム設計の複雑性などが指摘された。そのため総務省を中心として、銀行口座登録の義務化や個々人の医療関係情報の記載などによる適用分野の拡大などが検討されている。
  1、一律10万円給付の遅れはマイナンバー制自体の問題ではない
マイナンバーの普及率は、実施から4年半以上経過しているのに16%程度の低率に止まっている。従って、仮にマイナンバーの利用により迅速に給付できたとしても、全体の16%程度しかカバーできなかったはずである。残りの84%が問題だったということになるが、実際はマイナンバーも機能しなかったことが、マイナンバーに労力が集中され、それが煩雑で機能しなかったため、郵便等への対応が遅れた事による。マイナンバーが複雑で国民に受け入れられていないことが明るみに出たと言えよう。
 米国は、大統領選挙の年でも有り、日本に先立ち一律給付を実施したが、ソシアルセキュリテイ・ナンバーに基づき、「小切手」が直接各個人に送られている。ソシアルセキュリテイ・ナンバーは、米国民や米国で働く者が誰でも加入できるもので、これがないと将来的な年金と公的機関からの社会保障が得られないのでほとんどの人が所持している。
 恐らく、日本も郵送等により実施していたら、もう少し円滑であった可能性がある。行政が普及率の低いマイナンバーに固執したことが一律給付を阻害した形となった。行政が、マイナンバーの普及率が16%でしかないことへの認識不足とこれに固執するミスジャッジを認識することが必要だろう。

2、国民のためではないマイナンバー!
 政府(総務省)は、一律給付金の配賦のもたつきへの反省から、銀行口座記載の義務化や、医療診療関係情報の記載などの分野の拡大などを検討している。同時に普及促進のため、新加入者がキャッシュレス決済のカード等を登録するとポイント付与(マイナポイント)とテレビなどでの普及を行っている。
 政府の認識が大分ずれているのではないだろうか。実施後4年半以上経って普及率が停滞しているのは、国民側が、メリットを余り感じない一方、機微な個人情報の流出や国家管理の強化を恐れているからであろう。政府側がまずこの点を理解しない限り、改善、改革などと行ってみても、国民の財産把握を含めて国家管理し易くする所詮政府寄りのもので、システムが複雑化し、関係官庁には好都合であろうが、国民にとってはほとんどメリットとはならないものになってしまう恐れがある。関係官庁はまず、国民が不安、不要と感じている諸点をそぎ落とし、国民に不安がないようにすることが求められる。
 マイナンバーには既に、住所や本籍、家族構成、年金、健康保険や一部銀行口座・カード情報、所得、税金関連情報等が入っている。これだけでも外部に流失し、犯罪グループの手に入ったら、大きな被害を受ける可能性がある。マイナンバーは法律上加入「任意」としているが、税の申告に当たっては記入事項とされ、また銀行口座や証券投資の際には執拗にマイナンバーを執拗に照会してくるので、登録した人は納税申告関係や銀行口座、不動産を含む資産情報など、個人にとっては大変重要な情報が記録されることになる。
 現状でも、マイナンバーを日常的な支払いやポイント記録などに使用すると、流失や紛失の恐れが高くなるので、持ち歩くことは大変危険であろう。
 更に総務省は、決済サービスのためキャッシュレス使用を登録するとポイントが付くマイナポイントが9月1日より実施されている。そのためにテレビ広告やポイント付与のため、税金を使うということであり、筋が違う。国民がマイナンバーに利点を感じれば加入するだろう。総務省がポイント付与をしてまで普及を図っている事実こそが、国民がマイナンバーに利点を感じていない証拠である。いずれにしても納税関系では、マイナンバー保持者が亡くなると、銀行口座、証券、不動産等があっというまに凍結され、残された者は一円も自由にならず、銀行口座については少額の引き出しは可能になったが、諸費用捻出に苦労することにもなる。
 また医療・診療情報も入れることが検討されているが、医療・診療情報は非常にプライベートなもので、他人に見られるのは気が進まない。ましてや政治家や入社試験、管理職候補などについては、医療・診療情報が万一にでも外部に流出すると昇格・昇進等にとって致命傷になる恐れがある。

 3、現在のカードは官庁のためのユアーナンバーでしかない!
しかし現在のマイナンバーは、税金関係の役割が強く、投網のごとく税申告者を把握し、確実に徴税するために好都合になっている。5年に1度、国勢調査が実施されているが、国勢調査で記載された個人情報は国税庁、警察・公安には明らかにされず、徴税や犯罪調査には利用されないことになっている。国民の協力を得やすくするためだ。
現在のマイナンバーは、国税庁(税金)を含め全ての行政分野が対象で、対象で所得、年金・医療保険、銀行口座、証券、不動産などが全ての個人情報が記載される。国民には年金掛け金納付、健康保険料納付や納税義務があることは分かっているが、このように網羅的に資産状況が国家に把握され、義務の履行が管理、監視されることになると、国民の国家管理の色彩が強くなる。その上情報流失の危険性がある。少なくても国勢調査同様のものとし、国民の生命、安全を守ること中心とする個人の存在基盤と福祉分野に目的を絞り、抜本的に簡素化することが望ましい。
また情報管理のため各種の防護措置が講じられてはいるが、それは逆に操作を複雑にしている。1つ入力を間違えると前に進められなくなり、複数回誤入力すると凍結されてしまい、解除に時間と労力が掛り、悩まされることになる。結局は、利用者の手間や負担を増やし、行政側を楽にするシステムでしかない。その意味でも現在のマイナンバーは、行政のためのユアーナンバーでしかない。
関係官庁の担当官や専門家が集まり、官庁側に必要な個人情報を網羅し、その上に本人確認やその他のなりすまし排除のための防護措置を掛けるのだから、普通人には理解困難な緻密で複雑な制度設計、システムとなる。それでなくても各種申請書は複雑で、馴れている人でもなければ記載に手間取る。それがインターネットとなると、各種のチェック措置が加わるので、一般人には操作が複雑で難しくなる。書類によるアナログ世代にとってはなおさらのことだ。

4、国民を守るためのマイナンバー制度に限定すべし
 国民の年金・医療保険などの厚生福祉、緊急時の安全確認など、国民の基本的な権利と行政手続きの簡素化など、国民の福利に絞ったナンバーであれば、国民もこぞって加入し易くなろう。それを支えるのが国や地方自治体の業務であり、義務ともなる。またカバーする分野を絞ることにより、利用者側は普段持ち歩く必要も、情報流失の際も影響が限定され、犯罪グループへの露出度を少なく出来る。それでも米国のソシアルセキュリテイ・ナンバーよりも複雑だが、国民の福利にとって心強いものとなる。そのような改革が望まれる。

5、行政のIT化促進は行政の更なる肥大化、複雑化の恐れ
 IT化は、情報を多量に処理できるので、仕事をどんどん増やし、行政の肥大化を呼ぶ恐れが強く、万能ではない。
(1) IT化とともに、旧来事務の廃止、整理を行うことが不可欠であろう。
同時に、制度設計の簡素化、単純化に常に留意しなくてはならない。
 デジタル化は、一見効率的に見えるが、そのためには膨大な情報入力作業に加え、情報の迅速な更新が必要であり、必ずしも省力化には繋がらない。情報が常に更新されないと適正な情報把握も対応も難しい。国民年金については、ペーパーからデジタルに移行が図られた際に膨大な記録ミスやご記載があり、多くの年金が消えた事例や、年金情報の漏出や犯罪への利用なども見られている。
 行政当局は、情報の入力、更新を直接できないので、外部委託し、その業者は国内外の会社に再委託するなどが通例となっている。そのためには追加的な予算が必要となり、国民の負担となる。
(2)ITにより一律のサービスを確保出来るが、プログラムから少しでも外れるとエラーとなり、凍結してしまうなど、融通が利かず、非常に硬直的、事務的となる。
(3)保秘やデジタル攻撃に留意する必要がある。そのためにパスワード等を加えると、更にシステムが複雑になる。セキュリテイを強化すればするほど、煩雑となり、エラー、凍結なども多くなり、利用者の負担が大きくなる。
(4)公文書、公的文書類の保存・管理の問題が深刻だ。森友学園問題での公文書改ざんや自衛隊の日報問題、或いは「桜を見る会」などでは、コンピューターに蓄積された記録でさえ廃棄されたと報告された。そのようなことはほぼあり得ないが、問題が生じた時にすべての関連コンピューターを押さえ、調査できるようにするなど、文書管理が非常に難しくなるので注意が必要だろう。重要な文書は、アナログの紙で保存する必要もあろう。 

6 、ITの脆弱性
 更にIT化により電気と電波への依存が大きくなり、電気や電波という生活インフラがダウンするとITは動かなくなる。大規模災害が起こり、基礎的生活インフラが破壊されると、麻痺状態になることはこれまでも経験している。またシステム管理・維持と共に、サイバーテロ等への備えも必要となり、それに問題が生じるとITは作用しなくなる。どんなにセキュリテイを強化しても、それはいずれ誰かに破られる。これらのITの脆弱性を認識する必要がありそうだ。
 従ってITへの過度の依存は国民生活全般を麻痺させる可能性を高めることを十分認識する必要がある。
 マイナンバーカードの安全と普及のためには、機能を国民の本籍と住所に基づく福利厚生に限定し、機能を分散することが不可欠だ。
 (2020.9.1.&9.19.及び2022.2.15.加筆)
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参議院に有権者、裁判所がダメ出し!!<再掲>

2022-06-23 | Weblog
シリーズ本音トークー参議院に有権者、裁判所がダメ出し!!<再掲>
 2018年7月21日、参議院議員選挙が行われたが、盛り上がりも無く、投票率は48.8%と5割を切った。最終的な数値は選挙管理委員会から発表されようが、1995年の参院選の投票率44.5%に次ぐ戦後最低の投票率となった。
1、参議院の意義に有権者ダメ出し!
投票率が5割を切った、しかも戦後2回も5割を切ったということは、5割
以上の有権者が参議院の存立意義を認めていないということに他ならず、国会改革が今後の最大の課題となったと言えよう。
 参議院は、少子高齢化、人口減の中で、6議席を増加すると言う極楽トンボのような決定をし、ひんしゅくを買い、投票率も低迷した。衆参両院とも、政府予算による政党助成金から各議員に助成金が配られることにより、党の議員への束縛が強くなり、衆議院であれ、参議院であれ、党議に拘束されることから、参議院の独自性は殆どなく、衆議院と同様の投票パターンを取り、いわば‘衆議院のクローン’、或いは2軍のような存在となっており、その存在意義はほとんどない。あるのは参議院議員という職業でしかなくなっている。それが国民の負担となっている。
 今回投票率が1995年に続いて5割を切ったことにより、参議院を廃止するか、議員数100名程度に削減し、それぞれの議員の独自性と発信力を高めるなど、抜本改革が迫られる形となったと言えそうだ。
 
2、裁判所も3.00倍を超える1票の格差にダメ出し!
2019年7月の参院選の選挙区で最大3.00倍の「一票の格差」があったことに対し、弁護士を中心とする市民グループが全国14の裁判所に違憲として訴えていた。高松高裁は、10月16日、国民の平等を定めた憲法に違反するとして「違憲状態」と判決した。
「違憲状態」との表現は、事実上「違憲」の意味であることには変わりがない。一方高松高裁は、香川、愛媛、徳島・高知(合区)の3選挙区の選挙無効の訴えは棄却したが、無効とすると社会的な混乱を起こすことが懸念され、3権の一つである国会の権限を尊重、忖度しての判断であろう。しかし「違憲」「違憲」である。
国会は、3権の一つであり、同等の重みを有する司法(裁判所)の判断を厳正に受け止め、抜本的解決策を次の選挙までに出すべきであろう。これは国民の平等な権利である投票権に関する基本的な政治制度に関するものであるので、衆・参両院ともに最優先事項として取り組むべきであろう。
 因みに、「平等」とは基本的には1対1の関係に近づけることが期待されているが、選挙区割り等の技術的な制約から若干の幅は仕方ないものの、原則として1.5倍以下で極力1.0に近い数値に収まるよう努力すべきだ。1.9倍なら良い、1.6倍ならよいなど、政治的に判断されるべきことではない。算術の問題だ。特定の選挙区が4捨5入すると2倍以上の投票権を持つことは避けるべきであろう。
「一票の格差」の「違憲状態」については、衆・参両院とも戦後のこの種裁判において、ほとんどの地裁、高裁が「違憲状態」又は「違憲」とし、最高裁も「違憲状態」としてきたが、最近まで国会は適正な改革を行ってこなかった。コメンテーターや評論家・専門家を含め、これを許して来たマスコミ界、言論界の消極的な対応も大いに問われる。憲法学者については、多くは国公立大学に属し公務員であり、また私立の多くは国から補助金等を受けているので政治への発言はし難いのであろう。

3、単独過半数を取れなかった自民党の退潮
 自民党は、改選議席(66議席)から9議席失い、非改選(56議席)を加え113議席となり、参議院での単独過半数を獲得できなかった。
 選挙前に保守系紙が今回の参院選は6年間の「安倍政権への評価が問われる」旨報じていたが、この点からすると評価されなかったことを意味する。政権の終わりの始まりと言えよう。

 4、自・公両党と維新の会合計でも2/3を維持できず、憲法改正は絶望的!
 今回の参院選で、自・公両党と維新の会の保守3党合計で157議席しか獲得できず、改憲発議に必要な3分の2(164議席)を割った。
 安倍政権は憲法改正を訴え続けてきたが、掛け声とは裏腹に6年間で議論は進まず、同政権の下では憲法改正は事実上困難になったと言えよう。
 もっとも改憲については、自民党内にも懐疑論がある上、公明党は消極的であるので、3分の2は更に遠のいた。安倍政権の6年間において、靖国参拝、戦争責任を有する東条内閣尊崇、森友学園問題で明らかとなった旧帝国憲法、教育勅語への傾斜、天皇の権威を高め保守基盤の強化、本格的な再軍備などの意図が明らかとなり、国会内外で警戒感が増したと見る向きもある。

 5、無党派層を遠のける党派別比例代表制と政党助成金の弊害
 7月の参院選挙で有権者の51%超が投票しなかったが、その多くが有権者のほぼ4割を占める無党派層と見られる。
 無党派層は、投票所に行っても比例代表制で政党を選べと言われても正直戸惑うようだ。そもそも「無党派」であるので「政党」を選べない。現在の「党派別比例代表制」の下では、行っても無駄なのである。「党派別比例代表制」は、有権者に政党選択を強要するもので、思想、信条の自由にも反する。
 これに関連して、国家予算(税金)による政党助成金についても、無党派層の国民、納税者にとっては不可解なものだ。政党助成金は、選挙に金が掛かるので、立候補者への金銭的負担を軽減する等のために、中選挙区から1人制の小選挙区制への移行と共に導入されたものだが、今や実質的に企業献金が復活し、経団連が政党を評価し、多額の献金を政党ごとに行っている。
 経済団体による多額の献金が復活した現在、国家予算(税金)による政党助成金は廃止しても良いのではないか。共産党は政党助成金を受け取っていない。共産党が政党助成金なしで党運営が出来るなら、他の政党も出来るであろう。それが民主主義の本来の姿とも言える。
 また政党助成金は、政党による個人献金の拡大努力を阻んでいる。共産党や公明党などの支持グループが限定的な政党は別として、与野党とも党員、党友の拡大はほとんど見られず、個人献金に至っては低迷している。政党も国家予算(税金)と企業献金頼みで努力も形だけのように見える。
 政党助成金は、各政党ごとに各議員に配賦されるが、これにより党の議員に対する縛りが実質的に強くなり、党議に拘束され、議員の個性や見解は抑制される傾向にある。また特定政党が長期に政権を取ると、多額の政党助成金や企業献金などが入り続けると共に、権力が総裁に集中し独裁的傾向に陥ることになる。政党助成金による政党支援は、いわば‘政党の公営’とも言え、政党が未発達、未成熟な場合は別とし、本来の民主主義の在り方に沿わない。
また政党助成金は、財源は税金でありながら、各政党から議員に配賦されるため、使途管理が不明朗になっている。政党助成金は廃止しても良い時期だ。各党、各議員は、日常から国民との関係をより緊密にすると共に、そのような活動の中で国民の政治への関心を高め、政党支持者を拡大することにもっと努力すべきであろう。(2018.7.24. 10.17.改定)
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自・公連立政権の7つの失政!? (再掲)

2022-06-23 | Weblog
シリーズ平成の本音―自・公連立政権の7つの失政!? (再掲)
 安倍首相の下での自・公連立政権は、2012年12月の総選挙で大勝し、5年弱になる。自・公両党で、衆議院で3分の2を上回る多数を占め、また参議院でも多数を占めているので、どのような施策でも実現出来る状況にありながら、この5年弱で3回目の衆院総選挙が実施されるという異常な事態になっている。
 自民、公明の両党は、この間の経済回復を中心とする‘実績’を強調しているが、輸出、観光産業など円安メリットで局部的な経済回復が見られるものの、国民の将来不安は増大し、消費は低迷するなど、国民が期待する改善、改革はほとんど行われておらず、7つの失政が行われている。
 1、モラル失政―政府・行政の内部統制崩壊
 森友学園問題、加計学園問題と防衛省日報問題では、首相や閣僚が事実を語らず、その上官邸の人事権を背景として、官僚幹部は嘘をつき、記憶を失い、公文書の隠ぺい、廃棄を行わざるを得ない状況になっている。この3つの問題で起きていることは、行政組織、公務員管理職等の基本的な倫理、内部統制の低下にかかわることであり、短期的な問題ではない。このままでは、行政各部が時の政権を擁護するために嘘をつき、関係資料やデータを隠し、廃棄することが容認されてしまう。口先でもっともらしことを語っても、嘘っぽく聞こえる。行政への信頼を著しく失わせ、モラル失政とも言うべきであり、その意味で戦後最低、最悪の政権と言えよう。
 首相は、国民の背後で、なぜ森友学園の復古的教育方針に当初好意的であったのか、なぜ加計学園の獣医学部を新設すべきなのかなどを説明し、国会を通じ国民の理解を求めるべきであった。そうすれば賛否はあろうが、国民の背後で何をしているのか分からないという不信感は生まれなかっただろうし、今日のような政府中枢部におけるモラルの失墜はなかったであろう。
 これは、安倍政権による憲法軽視の姿勢にも繋がる。安保法制についても、一部規定については多くの憲法学者も疑問を呈しており、‘強行採決’は避けるべきで、もっと良く国民の納得を得る努力をすべきであったのではなかろうか。
また臨時国会についても、憲法は‘いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は召集を決定しなくてはならない’(憲法第53条)と規定しており、これは内閣の義務であり、開催自体に内閣の裁量権はない。2016年11月にも要求があったが開催されなかった。今回も、審議もせず、冒頭解散となった。権限の乱用とも言える。
 衆院解散権についても、首相の‘専権事項’とされているようだが、議員は4年の任期で国民に選ばれているので、基本は4年間の任期をまっとうするのことが国民の信託に応えると言えるところであり、首相が恣意的に頻繁に解散し、議員の任期を縮めて良いものではない。こんなことをしているから、国政は停滞し、議員が育たないのであろう。マスコミやコメンテーターなど有識者が、首相の解散権に注文を付けないことは奇異であり、昨今指摘さているマスコミ力の低下、マスコミの商業化の結果とも言えるのではないだろうか。国民が、首相の解散権行使にノーを突きつけるのも国民の意思表示の一つとなろう。
 今回の総選挙で自・公連立政権側に票を与えることは、内閣が嘘をつき、それを擁護するため、官僚が嘘をつき、公的文書を隠し、廃棄することを容認することにも繋がることに、有権者は危機意識を持って臨む必要がありそうだ。

 2、安全保障・外交失政―前のめりの‘積極的’軍事優先姿勢
 安倍首相は、総選挙の理由として、北朝鮮の脅威を挙げ、‘圧力を強化して、北朝鮮に政策を変更させる’とし、その姿勢につき国民に信を問い、団結して当たるとしている。多くの国民にとっては、それなら何故国会を解散するのか意味が分からないところだが、国民に具体的に対応策を説明することなく何をしようとしているかが大いに疑問だ。
 そもそも‘圧力を強化して、北朝鮮に政策を変更させる’としており、9月に国連安保理は経済制裁の強化が採択されているが、首相が圧力強化を強く言えば言うほど北朝鮮は反発するだろう。朝鮮戦争は、現在休戦状態であるが、米・韓両国と北朝鮮は現在でも敵対関係にある。日本は、朝鮮戦争の当事者ではないので、日本国民の安全のためにも、それに首を突っ込む必要はない。しかし安倍政権の度重なる強硬発言と米国との軍事同盟強化から、北朝鮮は、日本列島全体をターゲットとし、‘核兵器で沈める’と言い始めている。日本全体が北朝鮮の核のターゲットとされたのは今回が初めてであり、日本の安全にとっては、最悪のシナリオだ。
 北朝鮮は、日本が何を言おうと、核、ミサイル開発、実戦配備の政策を変えることはないだろう。経済制裁の強化をしても、少なくても数年は開発は継続できるであろう。
 では、安倍首相及びそれを擁護する自民、公明両党は、圧力で北が政策を変えなかったらどうするというのか。自衛行為の一環として、自衛隊による北朝鮮の軍事施設等の攻撃をも可能にするのか。日本自体が核武装するというのか。
 安倍首相は、トランプ大統領と頻繁に連絡しているが、国民に事前に説明することなく、国民の背後で、米国の軍事力行使と自衛隊による米軍支援を容認している恐れもある。だから選挙で具体的には説明せず、いわば白紙委任を取ろうとしているとも考えられなくもない。脅威を煽り、頻繁に選挙を行って権力を強化するという、独裁政権構築の典型的な手法とも見られ、注意を要する。
 自・公両党を選挙で勝たせ、再び政権につかせることは非常に危険であろう。安倍政権は、選挙で勝ったことを前面に出し、ますます独裁化し、これまで以上に憲法を軽視し、権力を強化し、強硬手段を打ち出す可能性がある。国民は、目先の甘い水に再び騙されてはならないようだ。
 また安倍首相は、第2次世界大戦の時の内閣の責任や戦争遂行者が祀られている靖国神社参拝など、歴史認識の問題で中国、韓国とは関係を悪化させている。‘積極的平和外交’と謳って、日米同盟を基盤として軍事協力の広域化を図っているが、その流れの中で、安倍首相は、2015年1月、エジプト等の中東諸国を訪問中、最初の訪問国エジプトにおいて演説し、人材開発、インフラ整備などの名目で、「ISと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束した。その2日後に、「イスラム国」側から首相に宛てた2人の日本人人質に対する身代金要求と殺害予告が行われ、その後2人の日本人は殺害された。その後も、ISグループによる日本人襲撃などが生じている。
 現在、自民、公明連立政権が進めている安全保障政策は、日本の安全と平和のためと声高に言われているが、一定の効果はあるものの一面的であり、逆に危険を呼び込み、国民の危険を増大させる結果となっている。日米関係の強化、拡大は今後とも日本外交の軸となろうが、軍事同盟化の強化、拡大を図るのであれば、核兵器大国米国の世界戦略と連携することより、危険も増大することを国民に十分説明の上進めることが望まれる。核兵器禁止条約に関する国連決議において、日本が棄権するなら兎も角、米国の核抑止に依存しているため‘反対’票を投じたことも疑問とする向きもある。
 日米関係の強化は望ましいが、リスクを最小限にしつつ、国民の生命と財産を守るためにどのような軍事、安全保障体制を築き、どのような国家関係を築いていくかは、国民の選択次第と言えよう。日米関係の強化、相互信頼の深化の上では、日本の野球選手などの米国での活躍が最大の功労者とも言える。

 3、社会保障失政―国民の負担増のみを求める国民酷使政策
 自民・公明連立政権は、民主党政権時代に「社会保障と税制の一体改革」に同意し、また議員定数の実質的削減にも同意し、2012年12月の総選挙で勝利し政権の座に返り咲いた。しかしいずれについても進んでいないばかりか、消費増税を実施し国民に負担を求めた一方、社会保障については反福祉の福祉切り、国民酷使政策に向かっている。
 そもそも多くの国民は、社会保障の改善、向上のためなどに消費税が増税するのであれば、国民の負担が増加するのも仕方ないと考えていた。しかしその期待は見事に裏切られている。自・公連立政権の下では、年金などの受益者へのサービスや給付額の改善は行わず、逆に個別に利用者、受給者の「負担増・給付減」を強いており、国民を騙しているに等しいのではないだろうか。
それが年代を問わず、国民の将来不安を高めており、全般的な消費抑制につながっている。

 4、行・財政改革先送り失政
 年金が破たん状態になっており、また医療などの社会福祉支出が財政を圧迫し、今後更に財政が厳しくなることが予想されるのであれば、政府がまずやらなくてはならないことは、抜本的な経費節減、無駄の削減ではないだろうか。どの事業、どの企業でも、業績が振るわず、赤字が増加し破たん状態になれば、まず人件費、管理費などのコスト削減を行うのが常識だ。
 国民に更なる負担を強い、年金やその他社会保障サービスの抑制をする前に、両院の議員定数の大幅削減や議員歳費・諸手当の引き下げ、政党補助金や政務調査費の廃止などを実施して、国民に誠意を示すべきであろう。また少子化を前提として、独立行政法人や特殊法人、地方自治体を含む公務員・準公務員の段階的な削減など、定員の削減や給与の実質的引き下げを実施すべきであろう。定員削減が出来ないのであれば、3~5年間で人件費を含む行政管理費の3割削減を実施することを真剣に検討して欲しいものだ。定員と給与のいずれを削減するかは各省庁に選択させればよい。人件費を除く管理費全般についても、公務員宿舎他国有財産の売却などにより、2020年度までに総額で4割程度を段階的に削減することをまず実施すべきではないのか。
 そもそも自民、公明連立政権は、言葉では国民に期待を持たせ、3分の2の多数を維持し、なんでも実現できる状況でありながら、国民に対する約束をほとんど守っていない。弁解の余地のない行・財政改革先送り失政だ。
 その上首相は、今回2018年10月に10%への消費税の再々増税を実施することを明らかにした。再々増税も、その使途如何では容認されよう。安倍政権は、2020年までの財政健全化を目標として示していたが、この方針をまたまた先送った上、再々増税分の使途を変更したいとした。膨大な国の借金の返済努力を止め、幼児教育の無償化など子育て支援に充てたい旨提案した。選挙を前にして約2兆円規模の大盤振る舞いだ。
 しかし騙されてはいけない。日本の公的借金は既に1,060兆円超、国民総生産の2年分以上になっており、そのため毎年多額の利子支払いを強いられている状態だ。安倍政権は、2020年までの財政健全化を目標として示していたが、この方針をまたまた先送った上、子育て支援などとして大盤振る舞いをして、国の借金や利子支払いを更に増やそうとしている。子育て支援を受けた世代は、将来更に高額の負担を国から強いられることを認識すべきであろう。

 5、規制温存失政と経済・金融部門での失政
 アベノミクスは、輸出、観光産業など、局部的には若干改善しており、一定の評価は出来るが、実態は、通貨の大量供給による円安誘導と米国経済の回復が主要因であり、規制改革や法人税の減税などは、口先ばかりで、意味のある大胆な施策ほとんど実施されていない。戦略特区制度も、規制がベースであり、それを更に地域的に屋上屋を加えているに過ぎない。その弊害は、加計学園問題に如実に表れており、‘えこひいき’の温床となる。規制は、一律に緩和、撤廃しなければ効果はなく、公平でもない。
更に金融政策では、2009年頃より金利が実質ゼロとなっている上、物価上昇と手数料を加えると既に9年間も実質マイナス金利になっており、一般国民、特に退職をした者や年金生活者にとっては、預金から利子が得られない状況が長期に続いている。更に、日銀はマイナス金利という経済の基本原理に反する政策をとっており、個人や金融機関、企業等から利子機会を奪っている。消費者にとっては、生活防衛の観点から消費を抑える以外にない。金融政策失政と言えるだろう。

 6、選挙制度改革先送りの失政
 一票の格差是正については、最高裁の度重なる‘憲法違反状態’との判決を受けて、最低限ではあるが微調整をしており、一定の評価はできる。しかし抜本的な改革は先延ばしにされている。有権者の権利の公平は何時図られるのか。
また参議院の廃止や議員定数の抜本的な削減による質の確保が不可欠のようだ。地方議会を含め、議員定数の3割削減などの対応により、議員制度のスリム化を実現する一方、それを財政健全化や新たな政策への財源とすべきであろう。
更に政党助成金は弊害が多い。そもそも有権者の4割前後は無党派層であり、政党助成金は存在理由に欠け、税金を使用することは不適切である上、党の変更、消滅のたびに、政党助成金の行き先が問題になっている。政務調査費・政務活動費や連絡費などについても、廃止を含め検討されるべきであろう。

 7、党利党略優先の失政―国家、国民の利益、安全セカンド
 今回の解散総選挙も、モリ・カケ問題で窮地にある中で、野党が乱立し弱体化している内に解散総選挙をし、野党つぶしをする思惑が背後にあると見られている。国家、国民の利益、安全は二の次になっている。
 これでは行政も、国民を向いて仕事はしない。
(2017.10.10.)
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