シリーズ本音トークー参議院に有権者、裁判所がダメ出し!!(改定版)
7月21日、参議院議員選挙が行われたが、盛り上がりも無く、投票率は48.8%と5割を切った。最終的な数値は選挙管理委員会から発表されようが、1995年の参院選の投票率44.5%に次ぐ戦後最低の投票率となった。
1、参議院の意義に有権者ダメ出し!
投票率が5割を切った、しかも戦後2回も5割を切ったということは、5割
以上の有権者が参議院の存立意義を認めていないということに他ならず、国会改革が今後の最大の課題となったと言えよう。
参議院は、少子高齢化、人口減の中で、6議席を増加すると言う極楽トンボのような決定をし、ひんしゅくを買い、投票率も低迷した。衆参両院とも、政府予算による政党助成金から各議員に助成金が配られることにより、党の議員への束縛が強くなり、衆議院であれ、参議院であれ、党議に拘束されることから、参議院の独自性は殆どなく、衆議院と同様の投票パターンを取り、いわば‘衆議院のクローン’、或いは2軍のような存在となっており、その存在意義はほとんどない。あるのは参議院議員という職業でしかなくなっている。それが国民の負担となっている。
今回投票率が1995年に続いて5割を切ったことにより、参議院を廃止するか、議員数100名程度に削減し、それぞれの議員の独自性と発信力を高めるなど、抜本改革が迫られる形となったと言えそうだ。
2、裁判所も3.00倍を超える1票の格差にダメ出し!
2019年7月の参院選の選挙区で最大3.00倍の「一票の格差」があったことに対し、弁護士を中心とする市民グループが全国14の裁判所に違憲として訴えていた。高松高裁は、10月16日、国民の平等を定めた憲法に違反するとして「違憲状態」と判決した。
「違憲状態」との表現は、事実上「違憲」の意味であることには変わりがない。一方高松高裁は、香川、愛媛、徳島・高知(合区)の3選挙区の選挙無効の訴えは棄却したが、無効とすると社会的な混乱を起こすことが懸念され、3権の一つである国会の権限を尊重、忖度しての判断であろう。しかし「違憲」「違憲」である。
国会は、3権の一つであり、同等の重みを有する司法(裁判所)の判断を厳正に受け止め、抜本的解決策を次の選挙までに出すべきであろう。これは国民の平等な権利である投票権に関する基本的な政治制度に関するものであるので、衆・参両院ともに最優先事項として取り組むべきであろう。
因みに、「平等」とは基本的には1対1の関係に近づけることが期待されているが、選挙区割り等の技術的な制約から若干の幅は仕方ないものの、原則として1.5倍以下で極力1.0に近い数値に収まるよう努力すべきだ。1.9倍なら良い、1.6倍ならよいなど、政治的に判断されるべきことではない。算術の問題だ。特定の選挙区が4捨5入すると2倍以上の投票権を持つことは避けるべきであろう。
「一票の格差」の「違憲状態」については、衆・参両院とも戦後のこの種裁判において、ほとんどの地裁、高裁が「違憲状態」又は「違憲」とし、最高裁も「違憲状態」としてきたが、最近まで国会は適正な改革を行ってこなかった。コメンテーターや評論家・専門家を含め、これを許して来たマスコミ界、言論界の消極的な対応も大いに問われる。憲法学者については、多くは国公立大学に属し公務員であり、また私立の多くは国から補助金等を受けているので政治への発言はし難いのであろう。
3、単独過半数を取れなかった自民党の退潮
自民党は、改選議席(66議席)から9議席失い、非改選(56議席)を加え113議席となり、参議院での単独過半数を獲得できなかった。
選挙前に保守系紙が今回の参院選は6年間の「安倍政権への評価が問われる」旨報じていたが、この点からすると評価されなかったことを意味する。政権の終わりの始まりと言えよう。
4、自・公両党と維新の会合計でも2/3を維持できず、憲法改正は絶望的!
今回の参院選で、自・公両党と維新の会の保守3党合計で157議席しか獲得できず、改憲発議に必要な3分の2(164議席)を割った。
安倍政権は憲法改正を訴え続けてきたが、掛け声とは裏腹に6年間で議論は進まず、同政権の下では憲法改正は事実上困難になったと言えよう。
もっとも改憲については、自民党内にも懐疑論がある上、公明党は消極的であるので、3分の2は更に遠のいた。安倍政権の6年間において、靖国参拝、戦争責任を有する東条内閣尊崇、森友学園問題で明らかとなった旧帝国憲法、教育勅語への傾斜、天皇の権威を高め保守基盤の強化、本格的な再軍備などの意図が明らかとなり、国会内外で警戒感が増したと見る向きもある。
5、無党派層を遠のける党派別比例代表制と政党助成金の弊害
7月の参院選挙で有権者の51%超が投票しなかったが、その多くが有権者のほぼ4割を占める無党派層と見られる。
無党派層は、投票所に行っても比例代表制で政党を選べと言われても正直戸惑うようだ。そもそも「無党派」であるので「政党」を選べない。現在の「党派別比例代表制」の下では、行っても無駄なのである。「党派別比例代表制」は、有権者に政党選択を強要するもので、思想、信条の自由にも反する。
これに関連して、国家予算(税金)による政党助成金についても、無党派層の国民、納税者にとっては不可解なものだ。政党助成金は、選挙に金が掛かるので、立候補者への金銭的負担を軽減する等のために、中選挙区から1人制の小選挙区制への移行と共に導入されたものだが、今や実質的に企業献金が復活し、経団連が政党を評価し、多額の献金を政党ごとに行っている。
経済団体による多額の献金が復活した現在、国家予算(税金)による政党助成金は廃止しても良いのではないか。共産党は政党助成金を受け取っていない。共産党が政党助成金なしで党運営が出来るなら、他の政党も出来るであろう。それが民主主義の本来の姿とも言える。
また政党助成金は、政党による個人献金の拡大努力を阻んでいる。共産党や公明党などの支持グループが限定的な政党は別として、与野党とも党員、党友の拡大はほとんど見られず、個人献金に至っては低迷している。政党も国家予算(税金)と企業献金頼みで努力も形だけのように見える。
政党助成金は、各政党ごとに各議員に配賦されるが、これにより党の議員に対する縛りが実質的に強くなり、党議に拘束され、議員の個性や見解は抑制される傾向にある。また特定政党が長期に政権を取ると、多額の政党助成金や企業献金などが入り続けると共に、権力が総裁に集中し独裁的傾向に陥ることになる。政党助成金による政党支援は、いわば‘政党の公営’とも言え、政党が未発達、未成熟な場合は別とし、本来の民主主義の在り方に沿わない。
また政党助成金は、財源は税金でありながら、各政党から議員に配賦されるため、使途管理が不明朗になっている。政党助成金は廃止しても良い時期だ。各党、各議員は、日常から国民との関係をより緊密にすると共に、そのような活動の中で国民の政治への関心を高め、政党支持者を拡大することにもっと努力すべきであろう。(2018.7.24. 10.17.改定)
7月21日、参議院議員選挙が行われたが、盛り上がりも無く、投票率は48.8%と5割を切った。最終的な数値は選挙管理委員会から発表されようが、1995年の参院選の投票率44.5%に次ぐ戦後最低の投票率となった。
1、参議院の意義に有権者ダメ出し!
投票率が5割を切った、しかも戦後2回も5割を切ったということは、5割
以上の有権者が参議院の存立意義を認めていないということに他ならず、国会改革が今後の最大の課題となったと言えよう。
参議院は、少子高齢化、人口減の中で、6議席を増加すると言う極楽トンボのような決定をし、ひんしゅくを買い、投票率も低迷した。衆参両院とも、政府予算による政党助成金から各議員に助成金が配られることにより、党の議員への束縛が強くなり、衆議院であれ、参議院であれ、党議に拘束されることから、参議院の独自性は殆どなく、衆議院と同様の投票パターンを取り、いわば‘衆議院のクローン’、或いは2軍のような存在となっており、その存在意義はほとんどない。あるのは参議院議員という職業でしかなくなっている。それが国民の負担となっている。
今回投票率が1995年に続いて5割を切ったことにより、参議院を廃止するか、議員数100名程度に削減し、それぞれの議員の独自性と発信力を高めるなど、抜本改革が迫られる形となったと言えそうだ。
2、裁判所も3.00倍を超える1票の格差にダメ出し!
2019年7月の参院選の選挙区で最大3.00倍の「一票の格差」があったことに対し、弁護士を中心とする市民グループが全国14の裁判所に違憲として訴えていた。高松高裁は、10月16日、国民の平等を定めた憲法に違反するとして「違憲状態」と判決した。
「違憲状態」との表現は、事実上「違憲」の意味であることには変わりがない。一方高松高裁は、香川、愛媛、徳島・高知(合区)の3選挙区の選挙無効の訴えは棄却したが、無効とすると社会的な混乱を起こすことが懸念され、3権の一つである国会の権限を尊重、忖度しての判断であろう。しかし「違憲」「違憲」である。
国会は、3権の一つであり、同等の重みを有する司法(裁判所)の判断を厳正に受け止め、抜本的解決策を次の選挙までに出すべきであろう。これは国民の平等な権利である投票権に関する基本的な政治制度に関するものであるので、衆・参両院ともに最優先事項として取り組むべきであろう。
因みに、「平等」とは基本的には1対1の関係に近づけることが期待されているが、選挙区割り等の技術的な制約から若干の幅は仕方ないものの、原則として1.5倍以下で極力1.0に近い数値に収まるよう努力すべきだ。1.9倍なら良い、1.6倍ならよいなど、政治的に判断されるべきことではない。算術の問題だ。特定の選挙区が4捨5入すると2倍以上の投票権を持つことは避けるべきであろう。
「一票の格差」の「違憲状態」については、衆・参両院とも戦後のこの種裁判において、ほとんどの地裁、高裁が「違憲状態」又は「違憲」とし、最高裁も「違憲状態」としてきたが、最近まで国会は適正な改革を行ってこなかった。コメンテーターや評論家・専門家を含め、これを許して来たマスコミ界、言論界の消極的な対応も大いに問われる。憲法学者については、多くは国公立大学に属し公務員であり、また私立の多くは国から補助金等を受けているので政治への発言はし難いのであろう。
3、単独過半数を取れなかった自民党の退潮
自民党は、改選議席(66議席)から9議席失い、非改選(56議席)を加え113議席となり、参議院での単独過半数を獲得できなかった。
選挙前に保守系紙が今回の参院選は6年間の「安倍政権への評価が問われる」旨報じていたが、この点からすると評価されなかったことを意味する。政権の終わりの始まりと言えよう。
4、自・公両党と維新の会合計でも2/3を維持できず、憲法改正は絶望的!
今回の参院選で、自・公両党と維新の会の保守3党合計で157議席しか獲得できず、改憲発議に必要な3分の2(164議席)を割った。
安倍政権は憲法改正を訴え続けてきたが、掛け声とは裏腹に6年間で議論は進まず、同政権の下では憲法改正は事実上困難になったと言えよう。
もっとも改憲については、自民党内にも懐疑論がある上、公明党は消極的であるので、3分の2は更に遠のいた。安倍政権の6年間において、靖国参拝、戦争責任を有する東条内閣尊崇、森友学園問題で明らかとなった旧帝国憲法、教育勅語への傾斜、天皇の権威を高め保守基盤の強化、本格的な再軍備などの意図が明らかとなり、国会内外で警戒感が増したと見る向きもある。
5、無党派層を遠のける党派別比例代表制と政党助成金の弊害
7月の参院選挙で有権者の51%超が投票しなかったが、その多くが有権者のほぼ4割を占める無党派層と見られる。
無党派層は、投票所に行っても比例代表制で政党を選べと言われても正直戸惑うようだ。そもそも「無党派」であるので「政党」を選べない。現在の「党派別比例代表制」の下では、行っても無駄なのである。「党派別比例代表制」は、有権者に政党選択を強要するもので、思想、信条の自由にも反する。
これに関連して、国家予算(税金)による政党助成金についても、無党派層の国民、納税者にとっては不可解なものだ。政党助成金は、選挙に金が掛かるので、立候補者への金銭的負担を軽減する等のために、中選挙区から1人制の小選挙区制への移行と共に導入されたものだが、今や実質的に企業献金が復活し、経団連が政党を評価し、多額の献金を政党ごとに行っている。
経済団体による多額の献金が復活した現在、国家予算(税金)による政党助成金は廃止しても良いのではないか。共産党は政党助成金を受け取っていない。共産党が政党助成金なしで党運営が出来るなら、他の政党も出来るであろう。それが民主主義の本来の姿とも言える。
また政党助成金は、政党による個人献金の拡大努力を阻んでいる。共産党や公明党などの支持グループが限定的な政党は別として、与野党とも党員、党友の拡大はほとんど見られず、個人献金に至っては低迷している。政党も国家予算(税金)と企業献金頼みで努力も形だけのように見える。
政党助成金は、各政党ごとに各議員に配賦されるが、これにより党の議員に対する縛りが実質的に強くなり、党議に拘束され、議員の個性や見解は抑制される傾向にある。また特定政党が長期に政権を取ると、多額の政党助成金や企業献金などが入り続けると共に、権力が総裁に集中し独裁的傾向に陥ることになる。政党助成金による政党支援は、いわば‘政党の公営’とも言え、政党が未発達、未成熟な場合は別とし、本来の民主主義の在り方に沿わない。
また政党助成金は、財源は税金でありながら、各政党から議員に配賦されるため、使途管理が不明朗になっている。政党助成金は廃止しても良い時期だ。各党、各議員は、日常から国民との関係をより緊密にすると共に、そのような活動の中で国民の政治への関心を高め、政党支持者を拡大することにもっと努力すべきであろう。(2018.7.24. 10.17.改定)