シリーズ平成の本音ーちょっと待った!日馬富士暴行問題
横綱日馬富士が、巡業先でモンゴル人グループとの酒の席で貴ノ岩に暴力を振るった事件の余波が拡大している。
貴ノ岩の親方であり、巡業部長である元横綱貴乃花は、協会に報告することなく警察に被害届を出し、その後も協会の調査協力要請を拒否している。
この事件については、被害届が出ている以上、警察の捜査に委ねるしかないであろう。それと並行して相撲協会としても調査の上、関係者に対する対応を行うことになろう。
協会側は、被害届を出している貴ノ岩に説明を求めているが、親方の貴乃花がこれを拒否している。貴乃花の姿勢は明らかである。和解や示談には応じない、被害届も取り下げず、警察の捜査に委ねる、ということであろう。それは一貫性があり、一つの見識であろう。
1、被害者貴ノ岩の意思は抑制されていないのか
被害者である貴ノ岩はどう考えているのであろうか。親方であろうが、貴ノ岩自身の自由な発言を拒否し、発言の機会を奪うことがあってはならない。
和解や示談等を拒否することは自由だ。しかし、それはもめごとを解決する手法として広く認められ、実施されているものである。それを否定すれば、必要以上に当事者間の対立を決定的なものにする可能性があり、解決にも時間が掛かる。貴ノ岩自身の意思はどうなのだろうか。親方が和解や示談等を拒否することは自由だが、貴ノ岩の意思に反してそれを言い通すのは親方の横暴であり、個人の意思の抑圧になる。
そのような親方の思い込みの強さが、弟子の意思の無視や過度な練習等の温床になっているのも事実である。
貴乃花の親方としての考え方は分かった。しかし貴ノ岩にも発言し、自由に意見を言う機会を与えるのも親方の義務であろう。
日馬富士は、暴力を振るったことは認め、謝罪している。しかし被害の状況については非常に疑問が多い。事件は10月25日から26日未明に起こり、貴ノ岩側は4日後の10月29日に警察に診断書と共に被害届を提出した。
そして秋場所が開始された11月13日に協会に休場届と共に診断書が出されている。それには「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏れの疑いで全治2週間」と記されていると報道されている。事件が起こってから18、9日後の診断書で、「・・・右中頭蓋底骨折、髄液漏れの疑い」という曖昧な内容となっている。同力士は事件直後に巡業先で土俵を務め、市長訪問などの活動を行っている。確かに頭部への障害は数日後に危険な症状が出ることがある。しかし事件が起こってから18、9日である上、事件直後に同力士は巡業先で激しい稽古や土俵などを務めている。そのため事件と11月13日に出された診断書との関連性や診断書の正確性などに疑問が残る。
テレビの報道などで貴ノ岩の顔の映像が出されるが、顔の右側の額から頬にかけて大きな青あざがあるものも頻繁に使用されている。視聴者はすごい負傷と思う。しかしよく見ると隅に‘2012年の十両昇格に際する記者会見’と小さく書かれている。これはある意味、視聴者に一定の印象を誘導する情報操作であり、報道姿勢として正しくない。
他方、この写真から同力士は十両の頃からもいろいろ負傷しており、土俵上やけいこ場での相撲が非常に激しいもので、頭部にもいろいろ負傷している可能性を示している。
元力士の旭鷲山がモンゴルから訪日し、貴ノ岩から電話で聞いたとして‘今でも片耳が聞こえ難い、目が見えにくい’などと言っていると話している。これも伝聞でしかない上、そのような症状は激しいけいこを積んで来た中でのいわば既往症である可能性もあり、今回の事件との関連性も明らかでない。旭鷲山はモンゴル相撲協会の会長と伝えられているが、この事件は日本で起きた事件であり、モンゴルからやって来た旭鷲山が被害者などに接触し、いろいろ調査するとは一体何なのか。日本の警察が調べ、協会が調べていることであるのに、聞いたことなどをテレビ等で話し、報道していることに違和感を持つ。
2、過度の携帯依存とマナー違反や礼儀の欠如―余り報道されない側面
この問題で、暴力行為の程度や傷害の状況などに報道が集中しているが、貴ノ岩の携帯操作や同国人同士の礼儀など、事件の誘因についてはほとんど問題にされていない。無論暴力は良くない。しかし、何も原因がないのにこのような喧嘩沙汰が起こる訳がない。相応の理由があったのであろう。
そのきっかけとなったのが3人の横綱が揃っている会合中に貴ノ岩が携帯を見ていたとされる。実はこのようなマナー違反は、今回の事件に限らず日常茶飯事となっているが、携帯依存公害とも言える社会問題になっているように見える。
良く目にするのが、食事中や会合中などで携帯を頻繁に見ていたり、場合によりこちらが話しているのに携帯を見ている光景だ。その場にいると不快で注意したくなる。それどころか、ラッシュアワーの混雑の中で電車の乗り降りの間や、車中で携帯を見ており、他の乗客の邪魔になり、迷惑をかけている。ぶつかっても何も言わない。逆に携帯を見ながら無言で無理に出ようとしたり、のろのろと歩く。ラッシュアワーの車中はマナー違反のオンパレードで、すみませんとも何とも言わないで他人を押し分けて出入りする無言の世界が不気味でさえある。道を歩いていても携帯を見ながらの‘ながら族’が多く、知ってか知らずかぶつかってくる者もいる。ぶつかっても無言だ。逆切れする者もいる。この無言の中でのマナー違反や礼儀のなさは一体何なのであろうか。多くの人は腹に据えかねているのだろう。このようなマナー違反や礼儀のなさに不感症となり、問題視しようともしない。しかし大きな社会問題であり、社会公害とも言える。
このままだと今回の事件に限らず、重大事故や事故がもっと起こる恐れがある。社会的には携帯依存公害とマナー・礼儀問題の方がより重要ではないか。
幼児教育時代から学校教育の中で、社会人としての基本的なマナーや礼儀をカリキュラムにきちんと据え、教える必要がある。この点については、保守系グループが戦前の‘修身教育’や‘教育勅語’などと結び付け、保守的な道徳教育を主張し、革新系がそれに反対する構図となっていたため、戦後教育の中でマナーや礼儀教育がおろそかになった面がある。森友学園問題の隠れた真相もここにある。そのような政治的対立を教育の場に持ち込むべきではない。与野党双方に責任がある。
現在、人と人の間のコミュニケーションが直接ではなく、電子機器を通じweb上で行われており、このデジタル・コミュニケーションが今後更に一般化する可能性がある。それは利便性を高めるが、人と人の接触は少なくなるので人間関係や対人関係が希薄となり、様々な問題を起こす可能性がある。社会の中での基本的なマナーや礼儀、そしてグループや社会でのコミュニケーションの図り方やしゃべり方や人間関係などを教えるマナーと礼儀教育が教育の場で必要になっている。(2017.11.25.)
横綱日馬富士が、巡業先でモンゴル人グループとの酒の席で貴ノ岩に暴力を振るった事件の余波が拡大している。
貴ノ岩の親方であり、巡業部長である元横綱貴乃花は、協会に報告することなく警察に被害届を出し、その後も協会の調査協力要請を拒否している。
この事件については、被害届が出ている以上、警察の捜査に委ねるしかないであろう。それと並行して相撲協会としても調査の上、関係者に対する対応を行うことになろう。
協会側は、被害届を出している貴ノ岩に説明を求めているが、親方の貴乃花がこれを拒否している。貴乃花の姿勢は明らかである。和解や示談には応じない、被害届も取り下げず、警察の捜査に委ねる、ということであろう。それは一貫性があり、一つの見識であろう。
1、被害者貴ノ岩の意思は抑制されていないのか
被害者である貴ノ岩はどう考えているのであろうか。親方であろうが、貴ノ岩自身の自由な発言を拒否し、発言の機会を奪うことがあってはならない。
和解や示談等を拒否することは自由だ。しかし、それはもめごとを解決する手法として広く認められ、実施されているものである。それを否定すれば、必要以上に当事者間の対立を決定的なものにする可能性があり、解決にも時間が掛かる。貴ノ岩自身の意思はどうなのだろうか。親方が和解や示談等を拒否することは自由だが、貴ノ岩の意思に反してそれを言い通すのは親方の横暴であり、個人の意思の抑圧になる。
そのような親方の思い込みの強さが、弟子の意思の無視や過度な練習等の温床になっているのも事実である。
貴乃花の親方としての考え方は分かった。しかし貴ノ岩にも発言し、自由に意見を言う機会を与えるのも親方の義務であろう。
日馬富士は、暴力を振るったことは認め、謝罪している。しかし被害の状況については非常に疑問が多い。事件は10月25日から26日未明に起こり、貴ノ岩側は4日後の10月29日に警察に診断書と共に被害届を提出した。
そして秋場所が開始された11月13日に協会に休場届と共に診断書が出されている。それには「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏れの疑いで全治2週間」と記されていると報道されている。事件が起こってから18、9日後の診断書で、「・・・右中頭蓋底骨折、髄液漏れの疑い」という曖昧な内容となっている。同力士は事件直後に巡業先で土俵を務め、市長訪問などの活動を行っている。確かに頭部への障害は数日後に危険な症状が出ることがある。しかし事件が起こってから18、9日である上、事件直後に同力士は巡業先で激しい稽古や土俵などを務めている。そのため事件と11月13日に出された診断書との関連性や診断書の正確性などに疑問が残る。
テレビの報道などで貴ノ岩の顔の映像が出されるが、顔の右側の額から頬にかけて大きな青あざがあるものも頻繁に使用されている。視聴者はすごい負傷と思う。しかしよく見ると隅に‘2012年の十両昇格に際する記者会見’と小さく書かれている。これはある意味、視聴者に一定の印象を誘導する情報操作であり、報道姿勢として正しくない。
他方、この写真から同力士は十両の頃からもいろいろ負傷しており、土俵上やけいこ場での相撲が非常に激しいもので、頭部にもいろいろ負傷している可能性を示している。
元力士の旭鷲山がモンゴルから訪日し、貴ノ岩から電話で聞いたとして‘今でも片耳が聞こえ難い、目が見えにくい’などと言っていると話している。これも伝聞でしかない上、そのような症状は激しいけいこを積んで来た中でのいわば既往症である可能性もあり、今回の事件との関連性も明らかでない。旭鷲山はモンゴル相撲協会の会長と伝えられているが、この事件は日本で起きた事件であり、モンゴルからやって来た旭鷲山が被害者などに接触し、いろいろ調査するとは一体何なのか。日本の警察が調べ、協会が調べていることであるのに、聞いたことなどをテレビ等で話し、報道していることに違和感を持つ。
2、過度の携帯依存とマナー違反や礼儀の欠如―余り報道されない側面
この問題で、暴力行為の程度や傷害の状況などに報道が集中しているが、貴ノ岩の携帯操作や同国人同士の礼儀など、事件の誘因についてはほとんど問題にされていない。無論暴力は良くない。しかし、何も原因がないのにこのような喧嘩沙汰が起こる訳がない。相応の理由があったのであろう。
そのきっかけとなったのが3人の横綱が揃っている会合中に貴ノ岩が携帯を見ていたとされる。実はこのようなマナー違反は、今回の事件に限らず日常茶飯事となっているが、携帯依存公害とも言える社会問題になっているように見える。
良く目にするのが、食事中や会合中などで携帯を頻繁に見ていたり、場合によりこちらが話しているのに携帯を見ている光景だ。その場にいると不快で注意したくなる。それどころか、ラッシュアワーの混雑の中で電車の乗り降りの間や、車中で携帯を見ており、他の乗客の邪魔になり、迷惑をかけている。ぶつかっても何も言わない。逆に携帯を見ながら無言で無理に出ようとしたり、のろのろと歩く。ラッシュアワーの車中はマナー違反のオンパレードで、すみませんとも何とも言わないで他人を押し分けて出入りする無言の世界が不気味でさえある。道を歩いていても携帯を見ながらの‘ながら族’が多く、知ってか知らずかぶつかってくる者もいる。ぶつかっても無言だ。逆切れする者もいる。この無言の中でのマナー違反や礼儀のなさは一体何なのであろうか。多くの人は腹に据えかねているのだろう。このようなマナー違反や礼儀のなさに不感症となり、問題視しようともしない。しかし大きな社会問題であり、社会公害とも言える。
このままだと今回の事件に限らず、重大事故や事故がもっと起こる恐れがある。社会的には携帯依存公害とマナー・礼儀問題の方がより重要ではないか。
幼児教育時代から学校教育の中で、社会人としての基本的なマナーや礼儀をカリキュラムにきちんと据え、教える必要がある。この点については、保守系グループが戦前の‘修身教育’や‘教育勅語’などと結び付け、保守的な道徳教育を主張し、革新系がそれに反対する構図となっていたため、戦後教育の中でマナーや礼儀教育がおろそかになった面がある。森友学園問題の隠れた真相もここにある。そのような政治的対立を教育の場に持ち込むべきではない。与野党双方に責任がある。
現在、人と人の間のコミュニケーションが直接ではなく、電子機器を通じweb上で行われており、このデジタル・コミュニケーションが今後更に一般化する可能性がある。それは利便性を高めるが、人と人の接触は少なくなるので人間関係や対人関係が希薄となり、様々な問題を起こす可能性がある。社会の中での基本的なマナーや礼儀、そしてグループや社会でのコミュニケーションの図り方やしゃべり方や人間関係などを教えるマナーと礼儀教育が教育の場で必要になっている。(2017.11.25.)