シリーズ平成の本音―内閣改造、ありのままの姿を見せた!?
9月3日、安倍政権成立後180日にして内閣改造が行われた。女性議員が5人ほど入ったことなどから支持率をやや回復したようだが、何が変わったのだろうか。もっともその評価は、成果を見てから行われるべきだろう。
1、派閥順送り大臣処遇の踏襲
何故政権成立後180日程度で大幅に大臣を変えるのだろうか。議員任期は4
年有り、大きな失点がない限り、3年程度継続しなければ具体的な成果を出せるものではない。
要するに派閥間の処遇を巡る不満のガス抜きと2015年9月に予定されている自民党総裁選挙に向けて人事権を行使することによりグリップを強めるためであり、戦後一貫して取られてきた自民党の派閥順送りの処遇だ。
こんなに短期に大臣が変われば自民党内はガス抜きされるだろうが、大臣に対して官僚の相対的な力が強くなり、官僚の説明や意向に従わざるを得なくなるので、官僚支配の大きな底流となっていると言える。
例えば小渕優子経産相についても、異例と言える女性抜擢とされており、その面は確かにあり頑張って欲しいが、多分官僚のお膳立てに従うことになろう。原発再稼働が最大の仕事になろうが、既に首相は安全を確認し順次再稼働するという方針は決めており、官僚はそのラインで進んでいるので、方向性は変わらないだろう。後は一児の母である新経産相のアッピール、説明ぶりが子を持つ母親に効果があることを期待してのことだろう。そのセリフは官僚が書く。
2、世襲議員擁護人事
首相自体も父も政治家で、岸元首相を祖父に持つ世襲議員であるが、吉田元首相の孫に当たる麻生財務相を留任させ、小渕元首相の娘である小渕議員を経産相に据え、また竹下元首相の弟である竹下議員を復興大臣にするなど、世襲議員を主要ポストに据えている。明らかな議員世襲の擁護である。国民の多くも、何も知らない議員よりも議員世襲の方が安心感あると思うだろうし、有能で誠実であれば良いのであろう。一般社会でも子供が親の職業や仕事を継ぎ、或いは同業を選ぶことは普通に行われている。
しかし、世襲議員も公的な職務に就くわけであるので、その固定化、突出については、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とされる憲法14条の趣旨からして望ましくない。またこれら世襲議員は、選挙に必要な三種の神器である“地盤、看板、カバン”を労せずして受け継ぐことになり、新しい議員の進出を実体的に阻むことになる。世襲議員が同じ選挙区から出馬することを5年以上禁止し、先代政治家の政治団体や組織の解散、全ての政治資金の国庫返還などが行われる事が望ましい。
3、戦後レジームからの脱却、保守修正主義グループの重用
終戦記念日にも靖国参拝を行った新藤総務相が高市自民党前政調会長に変
わったが、高市新総務相も政調会長として終戦記念日にも靖国参拝を行っており、首相に近い新保守グループの1人と見られている。そして政調会長には稲田行革担当相を当てたが、終戦記念日に靖国参拝を行っており、新保守グループを内閣、党双方の要職に据えている。
2015年は戦後70年を迎えるが、従軍慰安婦問題についての政府見解の変更や戦犯とされた東条英機首相(当時)等の戦争遂行責任者の復権など、連合軍占領下の“戦後レジームからの脱却”が図られる可能性が強い。
4、女性のための大臣ポストを新設して女性重視数合わせ
女性議員が5人大臣になり、認証式後の写真取りでは首相を取り囲む形で演出され、今回の最大の話題となった。写真取りとしても分かり易い演出となっている。しかしその内の1人は、女性活躍担当兼行政改革担当大臣であり、いわば女性議員のためにポストを新設したものであり、数合わせでしかない。兼務とされる行政改革担当についても現政権は実績も熱意もなく、名前だけのポストでしかない。現政権が行ったことは、2年間平均7.8%カットされていた公務員給与を消費増税が実施された途端元に戻し、またカットされていた議員報酬を元に戻しただけであり、その上公務員給与の更なる引き上げについて人事院勧告を受けているなど、改革など進みそうにない。
女性が社会進出することは大いに結構なことであるが、女性、男性という性別を問わずその能力と信頼性のある適材として適所に就くのでなければ、何時まで経っても女性ポストから離れられなくなろう。
また女性を労働力として活用することはよいが、女性が子供を産み、育てるということは、個々の家庭だけではなく、社会にとって重要であると共に努力や苦労の多い仕事であり、その重要性を改めて再評価することが望ましい。家事を過小評価し、社会進出した女性が勝ち組で家庭にいる女性は負け組であるかの風潮を作り出すことは、女性にとっても望ましいことではない。
今回の女性大臣の登用は、女性ウケを狙った次の選挙向けの選挙用ポスターのようなもので、実績で判断することが必要だろう。
5、最大の目的は石破議員の幹事長外し
首相としては石破議員を集団安保法制担当にしたかったのであろう。これは一石二鳥で、防衛オタクとも見られている同議員が集団安保法制担当になれば首相の考え方の下で専門的な作業や答弁をする形となり、安心である上、幹事長から外せ、明年に予定されている自民党総裁選挙での再選をほぼ確実に出来るというところだったのだろう。同議員がこれを固辞する意向であったので、地方創生担当として幹事長ポストから外した。石破地方創生担当相は、党内きっての政策通であるので、今後の地方の再生、再編に向けての施策に期待したいものだ。まさか地方への交付金や補助金、或いは竹下政権下で市区町村に各1億円を交付した「ふるさと創生事業」や公明党が積極的に推進した「地方振興券」などのばらまきは行わないだろうと期待をしたい。
幹事長ポストを巡っては、次の選挙を念頭に置いて話題性のある女性議員が検討されたようであるが、年功序列を尊重する諸派閥の反応もあり、結局は総裁経験者である谷垣前法相に落ち着いた。谷垣氏は総裁を経験しており、人柄も良いので、安定勢力として幹事長職は任せられるのであろう。政局の動向によっては再登板もないことではない。(2014.9.6.)(All Rights Reserved.)
9月3日、安倍政権成立後180日にして内閣改造が行われた。女性議員が5人ほど入ったことなどから支持率をやや回復したようだが、何が変わったのだろうか。もっともその評価は、成果を見てから行われるべきだろう。
1、派閥順送り大臣処遇の踏襲
何故政権成立後180日程度で大幅に大臣を変えるのだろうか。議員任期は4
年有り、大きな失点がない限り、3年程度継続しなければ具体的な成果を出せるものではない。
要するに派閥間の処遇を巡る不満のガス抜きと2015年9月に予定されている自民党総裁選挙に向けて人事権を行使することによりグリップを強めるためであり、戦後一貫して取られてきた自民党の派閥順送りの処遇だ。
こんなに短期に大臣が変われば自民党内はガス抜きされるだろうが、大臣に対して官僚の相対的な力が強くなり、官僚の説明や意向に従わざるを得なくなるので、官僚支配の大きな底流となっていると言える。
例えば小渕優子経産相についても、異例と言える女性抜擢とされており、その面は確かにあり頑張って欲しいが、多分官僚のお膳立てに従うことになろう。原発再稼働が最大の仕事になろうが、既に首相は安全を確認し順次再稼働するという方針は決めており、官僚はそのラインで進んでいるので、方向性は変わらないだろう。後は一児の母である新経産相のアッピール、説明ぶりが子を持つ母親に効果があることを期待してのことだろう。そのセリフは官僚が書く。
2、世襲議員擁護人事
首相自体も父も政治家で、岸元首相を祖父に持つ世襲議員であるが、吉田元首相の孫に当たる麻生財務相を留任させ、小渕元首相の娘である小渕議員を経産相に据え、また竹下元首相の弟である竹下議員を復興大臣にするなど、世襲議員を主要ポストに据えている。明らかな議員世襲の擁護である。国民の多くも、何も知らない議員よりも議員世襲の方が安心感あると思うだろうし、有能で誠実であれば良いのであろう。一般社会でも子供が親の職業や仕事を継ぎ、或いは同業を選ぶことは普通に行われている。
しかし、世襲議員も公的な職務に就くわけであるので、その固定化、突出については、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とされる憲法14条の趣旨からして望ましくない。またこれら世襲議員は、選挙に必要な三種の神器である“地盤、看板、カバン”を労せずして受け継ぐことになり、新しい議員の進出を実体的に阻むことになる。世襲議員が同じ選挙区から出馬することを5年以上禁止し、先代政治家の政治団体や組織の解散、全ての政治資金の国庫返還などが行われる事が望ましい。
3、戦後レジームからの脱却、保守修正主義グループの重用
終戦記念日にも靖国参拝を行った新藤総務相が高市自民党前政調会長に変
わったが、高市新総務相も政調会長として終戦記念日にも靖国参拝を行っており、首相に近い新保守グループの1人と見られている。そして政調会長には稲田行革担当相を当てたが、終戦記念日に靖国参拝を行っており、新保守グループを内閣、党双方の要職に据えている。
2015年は戦後70年を迎えるが、従軍慰安婦問題についての政府見解の変更や戦犯とされた東条英機首相(当時)等の戦争遂行責任者の復権など、連合軍占領下の“戦後レジームからの脱却”が図られる可能性が強い。
4、女性のための大臣ポストを新設して女性重視数合わせ
女性議員が5人大臣になり、認証式後の写真取りでは首相を取り囲む形で演出され、今回の最大の話題となった。写真取りとしても分かり易い演出となっている。しかしその内の1人は、女性活躍担当兼行政改革担当大臣であり、いわば女性議員のためにポストを新設したものであり、数合わせでしかない。兼務とされる行政改革担当についても現政権は実績も熱意もなく、名前だけのポストでしかない。現政権が行ったことは、2年間平均7.8%カットされていた公務員給与を消費増税が実施された途端元に戻し、またカットされていた議員報酬を元に戻しただけであり、その上公務員給与の更なる引き上げについて人事院勧告を受けているなど、改革など進みそうにない。
女性が社会進出することは大いに結構なことであるが、女性、男性という性別を問わずその能力と信頼性のある適材として適所に就くのでなければ、何時まで経っても女性ポストから離れられなくなろう。
また女性を労働力として活用することはよいが、女性が子供を産み、育てるということは、個々の家庭だけではなく、社会にとって重要であると共に努力や苦労の多い仕事であり、その重要性を改めて再評価することが望ましい。家事を過小評価し、社会進出した女性が勝ち組で家庭にいる女性は負け組であるかの風潮を作り出すことは、女性にとっても望ましいことではない。
今回の女性大臣の登用は、女性ウケを狙った次の選挙向けの選挙用ポスターのようなもので、実績で判断することが必要だろう。
5、最大の目的は石破議員の幹事長外し
首相としては石破議員を集団安保法制担当にしたかったのであろう。これは一石二鳥で、防衛オタクとも見られている同議員が集団安保法制担当になれば首相の考え方の下で専門的な作業や答弁をする形となり、安心である上、幹事長から外せ、明年に予定されている自民党総裁選挙での再選をほぼ確実に出来るというところだったのだろう。同議員がこれを固辞する意向であったので、地方創生担当として幹事長ポストから外した。石破地方創生担当相は、党内きっての政策通であるので、今後の地方の再生、再編に向けての施策に期待したいものだ。まさか地方への交付金や補助金、或いは竹下政権下で市区町村に各1億円を交付した「ふるさと創生事業」や公明党が積極的に推進した「地方振興券」などのばらまきは行わないだろうと期待をしたい。
幹事長ポストを巡っては、次の選挙を念頭に置いて話題性のある女性議員が検討されたようであるが、年功序列を尊重する諸派閥の反応もあり、結局は総裁経験者である谷垣前法相に落ち着いた。谷垣氏は総裁を経験しており、人柄も良いので、安定勢力として幹事長職は任せられるのであろう。政局の動向によっては再登板もないことではない。(2014.9.6.)(All Rights Reserved.)