経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

追い詰められた メガバンク (下)

2017-11-24 07:06:12 | 銀行
◇ マイナス金利の副作用 = いまから20年前、1997年に北海道拓殖銀行が不良債権を処理し切れずに倒産した。あくる98年には、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行も。この金融危機をきっかけに、当時の大銀行は経営基盤の強化を目指して次々と合併した。その結果、現在の3グループからなるメガバンク体制が確立している。合併の効果もなくはなかったが、当然ながら人員は増加した。それが超低金利の恒常化で、急に重荷として顕在化したと言える。

低金利のために本業で稼げなくなったメガバンクは、一時は国債の売買で利益をあげた。しかし日銀の買い入れで、国債の流通量が激減。利ザヤも薄くなって、商売にならない。地方の企業に目を付けたが、これも経営難にあえぐ地方銀行が必死で防戦。コストの安い地銀の捨て身の営業に、勝つことは難しい。

それではと、個人向けのカード・ローンにも力を入れた。最高10%以上の金利を稼げるカード・ローンの残高は、この3月末で5兆6000億円にも達した。しかしカード・ローンは不良債権にもなりやすく、金融庁が規制に乗り出す。銀行側も最近は、やむなく自粛せざるをえなかった。さらに余った資金を日銀に預ければ、その一部にマイナス金利が適用されてしまう。

日銀のマイナス金利政策は、16年2月から始まっている。それから間もなく2年。その副作用が、あらゆる角度から銀行の経営を圧迫し始めた。最近では日銀の内部でも、副作用について心配し始めたと伝えられる。だが物価2%の目標を捨てられない日銀には、どうすることもできない。結果として、メガバンクが従業員を何万人も減らすことになってしまった。その影響は想像以上に大きい。

      ≪22日の日経平均 = 上げ +106.67円≫

      ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ


追い詰められた メガバンク (上)

2017-11-22 08:02:48 | 銀行
◇ 人員・店舗の大幅削減へ = メガバンクが一斉に、経営の大改革に踏み切ることになった。みずほフィナンシャル・グループは①現在7万9000人いる従業員を、26年度末までに6万人に削減する②現在500ある店舗を、24年度末までに400に減らす――と発表して世間を驚かせた。また三菱UFJグループは、現在500ある店舗を今後6年間で半減することを検討中。さらに三井住友グループも、19年度末までに人員を4000人削減する方針だ。

先ごろ発表された4-9月期の決算をみると、これらメガバンクの業績は決して悪くない。たとえば三菱UFJは6269億円、三井住友は4201億円、みずほは3166億円の連結純利益をあげている。だが問題は、その内容。利益の大半は保有株式の売却や貸倒引当金の戻し分、海外投資に関係した為替差益やカード・ローンなどから生み出された。いずれも長期にわたって利益を生むような要因ではない。

銀行の本業は、預金と貸し出しの業務にある。ところが、この本業が急速に悪化した。たとえば、みずほフィナンシャルの4-9月期決算では、この本業の儲けを示す業務純益が1907億円。前年同期に比べて41%も減少している。これでは行き詰まることが目に見えている。メガバンクの経営者はこうした状態に強い危機感を持ち、高コスト体質にメスを入れる決断を下した。

業務純益が悪化した原因は、日銀のマイナス金利政策にある。預金金利はゼロに近づいたが、貸出金利も急降下してしまった。みずほ銀行の4-9月期でみると、預金と貸し出しの金利差はわずか0.81%にまで落ちている。1億円の預金を集めて貸し出しても、81万円しか儲からない。そこで生き残るためには人員と店舗の削減で、とにかくコストを下げるしかないということになった。

                    (続きは明後日)

      ≪21日の日経平均 = 上げ +154.72円≫

      ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ


行き先不明の トランプ減税法案

2017-11-21 08:05:04 | アメリカ
◇ 問われる大統領の統率力 = トランプ米大統領が“史上最大”と自負する大幅減税法案は、成立するのかしないのか。全く宙に浮いた形となっている。というのも下院は減税法案を可決したが、上院は実施を1年遅らせて19年とする法案をまとめたからだ。これが与党と野党の対決というのなら、よくある話。だが今回は共和党の下院と上院が、真っ二つに割れてしまった。トランプ大統領の統率力が問われる問題に発展している。

アメリカ下院は先週16日、税制改正法案を可決した。その内容は①法人税率を35%から20%に引き下げる②所得税率の分類を10-39.6%の7段階から、12-39.6%の4段階へ簡素化する③相続税を段階的に廃止する――など。法人税については、トランプ大統領が公約した15%への引き下げは見送られたが、それでも大幅減税となることに変わりはない。実施はもちろん18年からだ。

上院も似たような法案をまとめて、審議に入った。ところが実施は19年からという内容。これでは18年は減税がない。理由は財政の赤字拡大を抑制するため。仮に下院の法案が成立すると、減税の規模は今後10年間で1兆5000億ドル(約171兆円)にのぼる。アメリカ政府の債務残高は、ことし9月末で20兆ドルにも及んでいる。この財政悪化を問題視する共和党議員が上院には多いため、減税を先送りする法案がまとまってしまった。

これから共和党内で上下両院の交渉が始まるが、年内に妥協できないと減税法案は廃案になってしまう可能性もある。その成否をめぐって、ニューヨーク市場の株価も上げたり下げたりしている昨今だ。まだ共和党の指導者が話し合っている段階だが、間もなくトランプ大統領の出番になりそう。表に出てくるか裏で工作するかは判らないが、とにかく調整力・統率力を試されることになるのは確か。その結果は、政治と経済の両面に大きな影響を及ぼすことになる。

      ≪20日の日経平均 = 下げ -135.04円≫

      ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2017-11-20 08:28:31 | 株価
◇ あと2週間は調整する? = 株価は典型的な調整局面に入った。日米の株価は先週、やや大き目な上下動を繰り返しながら下落。日経平均は週間285円の値下がり。ダウ平均も64ドル値下がりした。トランプ減税法案の行く方や中国経済の減速傾向などが下げ材料になったが、要は10月以降の上げ過ぎ訂正の動きだと考えることができる。東京市場の方が上げ過ぎていたから、それだけ調整も大きくなった。

日経平均の場合は先々週2万3000円に達したときから、利益を確定する売り物が膨らんだ。国内の個人投資家も売ったようだが、海外ヘッジファンドの売りが大きい。多くのヘッジファンドは12月決算。それに備えて、利益の確定を急いだとみられる。この決算対策は12月に入ると終わるので、あと2週間ほどは調整局面が続くかもしれない。

ただ12月になると、世界のカネの流れに変化を生じる可能性がある。というのもFRBが4回目の利上げに踏み切るからだ。資金が株式市場から債券市場に流れたり、新興国からアメリカに引き揚げられたりするかもしれない。その影響の大きさはまだ推測できないが、要注意であることに間違いはない。

今週は20日に、10月の貿易統計。21日に、9月の全産業活動指数。アメリカでは20日に、10月のカンファレンス・ボード景気先行指数。21日に、10月の中古住宅販売戸数。22日に、11月のミシガン大学・消費者信頼感指数が発表される。

      ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ
 

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2017-11-19 07:27:12 | SF
第1章  ダー ス ト ン 星 

≪8≫ 胸番号の秘密 快適な20階建てマンションの最上階。今夜はぼくの手術をしてくれた医師ブルトン氏の招待を受けている。ぼくがこの国のことを理解できるようにと、ウラノス科学院長が配慮してくれたのだそうだ。

テーブルの上には、肉と野菜の料理。グラスには、ワインに似た液体も注がれている。電燈のようなものはいっさいないが、天井や四方のカベそのものが発光していた。40畳ほどの部屋には、戸棚もテレビも置いていない。ただ窓際の角に小さな机があって、その上に真っ赤な大輪のダリアのような花が活けてあった。素っ気ない感じだが、光線の柔らかさが心地よく落ち着く。マーヤもぼくの隣に座っているが、彼女は飲んだり食べたりはしない。

ブルトン氏は病院で見た白衣姿とは違って、柔和な紳士。茶系のガウンに光るプレートの数字は「48」だから、いま52歳ということになる。隣に座った奥さんを紹介してくれた。ぽっちゃり系の美人で、黄色のガウン。赤いプレートの数字は「52」だ。乾杯のあと、ブルトン氏がゆっくりした口調で話し始めた。

「ウラノス院長とお会いになって、どうでしたか。立派な人物だったでしょう」
――ええ、300年前の祖先がチャイコ星から移住してきたときの話。200年前の国民投票で全国民の寿命を100歳と決めたこと。ほんとうに驚くと同時に、深い感銘を受けました。

「私たちは幼いころから家でもその話を聞かされ、学校でも歴史として習います。妻や子どもたちを宇宙船に乗せるため、チャイコ星に残った夫や親の言動など。この国の人々は、決して忘れません。その証しとして、みんなが胸にプレートを付けているのです。これも200年前に、当時の賢人会が決めました」

――でも、なんで年齢ではなく、100から年齢を引いた数字になっているのでしょうか。
「まあ、食べながらお話しましょう。やはり昔の賢人会が、そう決めたのです。理由はいろいろありますが、寿命はだれもが100歳。残りの人生を大切にするため、あと何年生きるのかを常に意識するようにしたのだと言われています。人生設計を立てるのにも、とても役立ちますね」

――100歳で死ぬのはイヤだという人は、いないのですか。

そう尋ねたとき、目を大きく開いた夫人が会話に割り込んできた。

                   (続きは来週日曜日)

          
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