さて無事に旅行から帰ってまいりまして、
印象の鮮明なうちに旅行記を書きましょうか、
それとも先に2月の金沢旅行記を完結させましょうか……と迷ったんですが、
前回「オッペンハイマー」についてちょっと書いたらやっぱりもっともっと書きたくなってきたので、
こちらを先に書くことにします。
と言ってもごくごく私的な、あまりにプライベートな感想を2点ほどということになりますが、
高校の授業中、窓際の席で遠くのほうをぼーっと眺めていると、
宅地造成工事か何かをやってて、杭を打ってるんですよ。
あれは何て言うのか知らんけど、大きな杭に向かって大きくて重そうなものを落として、
それを引き上げてまた落として……を繰り返してたんですけどそれが、
落とすのが見えてからドスンッという音が聞こえるまでワンテンポずれてるんですよね。
なんでやろと不思議に思って、後に光速と音速の差によるものと知りまして、
光速は秒速30万km、1秒間に地球を7週半するのに対し、
音速は秒速340mなので、その差がずれになってるんですよね。
それで「オッペンハイマー」ですけど劇中、原爆の実験の準備段階で、
あれは起爆装置みたいなのを爆発させる実験のところで、かすかにタイムラグが見られるんですよ。
爆発が起きてから少しだけ遅れて爆音が聴こえるという演出、
光速と音速の差をこういう風に厳密に表現した映画って他にあるんでしょうか、
僕はちょっと記憶にないんで、さすがノーランこだわるなあって思ってたんですね。
そしていよいよ原爆の実験ですよ。
ここでは爆発が起きてから爆音が聴こえるまで、相当長い時間がかかってるんですね。
で、僕は最初、これは誇張された演出やと思ったんですよ。
閃光のあまりの強烈さに皆が畏れ、畏怖の念を抱いたことを表現するために、
実際よりも長く時間をかけたんやなあって思ったんですけどしかし、
確か爆心地は20マイル離れてるって言ってたんですよね。
20マイルと言えば約32kmですよ。
32kmと言えばほぼ大阪神戸間の距離ですよ。
計算してみると音が届くまでざっと100秒弱ですよ。
今度、自宅で見る機会があったら時間を計ってみようかいな、
きっとそれぐらいの時間をかけてタイムラグを表現してたことでしょう。
ノーランと言えばフィルム撮影にこだわりCGを極力使わないのみならず、
日頃からネットもEメールも利用せず携帯もスマホも持ってないとか、
そんなアナログ人間でありながらこういうところに正確さを期してるのがなんか、
根っからの文系人間のくせに中途半端にデジタルに足を踏み入れてる僕のような者からすると、
とても好ましく思えてならないんですよねえ。
そしてもう1点は共産主義とのかかわりについて。
僕自身は保守派や右翼に属する人たちは大嫌いやけど、
だからといって共産主義や共産党に肩入れもできないしなあというところなんですが、
しかしそれは子供が勉強できない言い訳をあれこれ探してるようなものかも知れず、
そんな口先だけで何も行動しない僕のような者にとって、
共産党員になってまで活動してる人、とくに女性にはどこか憧れる部分があって、
だからオッペンハイマーの女性関係についても興味深く見ることができたんですけど、
このパターンのドラマの代表作と言えば何と言ってもあれですよ、
シドニー・ポラックの「追憶」。
配給会社としてはロバート・レッドフォードとバーブラ・ストライサンドのロマンスものとして売りたかったろうけど、
これがれっきとしたアメリカにおける共産主義の受容されなさ、赤狩りといった辺りがみっちりと描かれてて、
「オッペンハイマー」と共通するところもある作品で僕も大好きなんですが、
えー、余談ですがストライサンドによる主題歌は有名で誰でも耳にしたことがあるでしょうけど、
これの劇中で流れるヴァージョン、サントラ盤に収録されてるそれは、
とくにイントロの辺りのアレンジがとても素晴らしく、
映画のオープニングタイトルの、大学のキャンパスの光景のキラキラ輝いてるのと重ね合わされるともう、
あまりにも美しすぎて切なすぎてたまらないんですが、
さて、このテーマでもうひとつ挙げたいのが、
これは小説ですけどカート・ヴォネガットの「ジェイルバード」。
これも「追憶」と並んで素晴らしいもので、
って言うか共通点が結構あって、ひょっとしてヴォネガットは「追憶」をヒントにしたんちゃうかって思えるくらいなんですが、
そんなこの小説の終盤で主人公の男性が共産党員だった女性からかけられる言葉、
「あなたはいい人であろうとした、だからあなたはいい人なのよ」
いま手元にないので正確に覚えてないけど、だいたいこんな感じの言葉、
これがとても心に残ってるんですよね。
そう、僕もいい人にはなれないかもしれないけど、せめていい人であろうとしよう、
そうすれば僕のような者でも人生の末期に誰かが認めてくれるかもしれない……そう思って、
例えば気に入らない人がいるからといってネット上で口汚く罵ったりしないようにしようとか心がけてるんですけど、
そんなこの言葉、そのままオッペンハイマーにもかけてあげたいですねえ。
科学者にありがちな無自覚さを抱えながらも、譲れない点については誠実さを貫いた、
いい人であろうとした姿を描く秀作として大好きな「オッペンハイマー」なのであります。
というわけで本作についてはこれくらいにして次は旅行記に、
いやまだまだ書きたい映画もいろいろあるし、その他にも……というわけで、
ネタはいっぱいあるのに更新がままならない今の状況、なんとかならんかなあ。
「あなたはブログを書こうとした、だからあなたはブログを書いたのよ」
みたいなことにはならんもんやろかホンマに。
印象の鮮明なうちに旅行記を書きましょうか、
それとも先に2月の金沢旅行記を完結させましょうか……と迷ったんですが、
前回「オッペンハイマー」についてちょっと書いたらやっぱりもっともっと書きたくなってきたので、
こちらを先に書くことにします。
と言ってもごくごく私的な、あまりにプライベートな感想を2点ほどということになりますが、
高校の授業中、窓際の席で遠くのほうをぼーっと眺めていると、
宅地造成工事か何かをやってて、杭を打ってるんですよ。
あれは何て言うのか知らんけど、大きな杭に向かって大きくて重そうなものを落として、
それを引き上げてまた落として……を繰り返してたんですけどそれが、
落とすのが見えてからドスンッという音が聞こえるまでワンテンポずれてるんですよね。
なんでやろと不思議に思って、後に光速と音速の差によるものと知りまして、
光速は秒速30万km、1秒間に地球を7週半するのに対し、
音速は秒速340mなので、その差がずれになってるんですよね。
それで「オッペンハイマー」ですけど劇中、原爆の実験の準備段階で、
あれは起爆装置みたいなのを爆発させる実験のところで、かすかにタイムラグが見られるんですよ。
爆発が起きてから少しだけ遅れて爆音が聴こえるという演出、
光速と音速の差をこういう風に厳密に表現した映画って他にあるんでしょうか、
僕はちょっと記憶にないんで、さすがノーランこだわるなあって思ってたんですね。
そしていよいよ原爆の実験ですよ。
ここでは爆発が起きてから爆音が聴こえるまで、相当長い時間がかかってるんですね。
で、僕は最初、これは誇張された演出やと思ったんですよ。
閃光のあまりの強烈さに皆が畏れ、畏怖の念を抱いたことを表現するために、
実際よりも長く時間をかけたんやなあって思ったんですけどしかし、
確か爆心地は20マイル離れてるって言ってたんですよね。
20マイルと言えば約32kmですよ。
32kmと言えばほぼ大阪神戸間の距離ですよ。
計算してみると音が届くまでざっと100秒弱ですよ。
今度、自宅で見る機会があったら時間を計ってみようかいな、
きっとそれぐらいの時間をかけてタイムラグを表現してたことでしょう。
ノーランと言えばフィルム撮影にこだわりCGを極力使わないのみならず、
日頃からネットもEメールも利用せず携帯もスマホも持ってないとか、
そんなアナログ人間でありながらこういうところに正確さを期してるのがなんか、
根っからの文系人間のくせに中途半端にデジタルに足を踏み入れてる僕のような者からすると、
とても好ましく思えてならないんですよねえ。
そしてもう1点は共産主義とのかかわりについて。
僕自身は保守派や右翼に属する人たちは大嫌いやけど、
だからといって共産主義や共産党に肩入れもできないしなあというところなんですが、
しかしそれは子供が勉強できない言い訳をあれこれ探してるようなものかも知れず、
そんな口先だけで何も行動しない僕のような者にとって、
共産党員になってまで活動してる人、とくに女性にはどこか憧れる部分があって、
だからオッペンハイマーの女性関係についても興味深く見ることができたんですけど、
このパターンのドラマの代表作と言えば何と言ってもあれですよ、
シドニー・ポラックの「追憶」。
配給会社としてはロバート・レッドフォードとバーブラ・ストライサンドのロマンスものとして売りたかったろうけど、
これがれっきとしたアメリカにおける共産主義の受容されなさ、赤狩りといった辺りがみっちりと描かれてて、
「オッペンハイマー」と共通するところもある作品で僕も大好きなんですが、
えー、余談ですがストライサンドによる主題歌は有名で誰でも耳にしたことがあるでしょうけど、
これの劇中で流れるヴァージョン、サントラ盤に収録されてるそれは、
とくにイントロの辺りのアレンジがとても素晴らしく、
映画のオープニングタイトルの、大学のキャンパスの光景のキラキラ輝いてるのと重ね合わされるともう、
あまりにも美しすぎて切なすぎてたまらないんですが、
さて、このテーマでもうひとつ挙げたいのが、
これは小説ですけどカート・ヴォネガットの「ジェイルバード」。
これも「追憶」と並んで素晴らしいもので、
って言うか共通点が結構あって、ひょっとしてヴォネガットは「追憶」をヒントにしたんちゃうかって思えるくらいなんですが、
そんなこの小説の終盤で主人公の男性が共産党員だった女性からかけられる言葉、
「あなたはいい人であろうとした、だからあなたはいい人なのよ」
いま手元にないので正確に覚えてないけど、だいたいこんな感じの言葉、
これがとても心に残ってるんですよね。
そう、僕もいい人にはなれないかもしれないけど、せめていい人であろうとしよう、
そうすれば僕のような者でも人生の末期に誰かが認めてくれるかもしれない……そう思って、
例えば気に入らない人がいるからといってネット上で口汚く罵ったりしないようにしようとか心がけてるんですけど、
そんなこの言葉、そのままオッペンハイマーにもかけてあげたいですねえ。
科学者にありがちな無自覚さを抱えながらも、譲れない点については誠実さを貫いた、
いい人であろうとした姿を描く秀作として大好きな「オッペンハイマー」なのであります。
というわけで本作についてはこれくらいにして次は旅行記に、
いやまだまだ書きたい映画もいろいろあるし、その他にも……というわけで、
ネタはいっぱいあるのに更新がままならない今の状況、なんとかならんかなあ。
「あなたはブログを書こうとした、だからあなたはブログを書いたのよ」
みたいなことにはならんもんやろかホンマに。