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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ブリン・ターフェル バスバリトンリサイタル

2019年03月31日 | pocknのコンサート感想録2019
3月28日(木)ブリン・ターフェル(B) /ナターリア・カチュコヴァ(Pf)  
~東京・・音楽祭 2019~

東京文化会館小ホール


【曲目】
♪ アイアランド:海ヘの情熱/放浪者/サン・マリーの鐘
♪ クィルター:今や深紅の花びらは眠る/もう泣かないで《7つのエリザベス朝の詩》Op.12より/行け、愛らしいバラよ/喜びの麗しき家
♪ イベール:「4つのドン・キホーテの歌」
♪ シューベルト:酒宴の歌 D888/セレナード D889/シルヴィアに D891

♪♪♪

♪ クィルター:「3つのシェイクスピアの歌」Op.6
♪ グウィン・ウィリアムス:なつかしきウェールズの小さな家/神の恵み
♪ オーエン・ウィリアムズ:棕櫚の祝日/海辺/にがり鳥
♪ ブリテン:霧めく、霧めく露(民謡編曲 第3集《イギリスの歌》より)
♪ コープランド/川のほとり/チンガ・リング・チョウ

【アンコール】
♪ シューベルト:万霊節のための連禱 D343
♪ ジェリー・ボック:ミュージカル《屋根の上のヴァイオリン弾き》より「金持ちだったなら」
♪ アッリーゴ・ボーイト :オペラ<メフィストーフェレ>より

現代屈指の名バス・バリトン歌手、ブリン・ターフェルのリサイタルを、東京文化会館小ホールというプライベートスペースで聴ける稀有の機会に立ち会った…、と言っても、ターフェルがどんな歌手なのか、大物歌手ということ以外に実はよくわかっていなかった。実演に接した記憶もないが、この一夜のリサイタルで、名歌手ターフェルの存在が強烈に心に刻印された。

ステージに現れるや、持っていたハンカチをポイっとピアノに放り投げて歌いはじめるところからして役者!そしてその歌は、第一声を発した瞬間から、全ての聴衆の心を鷲づかみにした。ターフェルの声は、強音でも弱音でも朗々とバリバリと響き渡り、その歌唱は人間の持つ喜怒哀楽すべてのエモーションをストレートにリアルに、聴衆一人一人に歌いかけ、語りかけ、心を掴み、揺さぶってくる。これは稀有の声帯と、鍛え抜かれた表現力の賜物ではあるが、それよりも何よりも、ここまでターフェルの歌が心を捉えるのは、この人の人間としての魅力、人間力だろう。

ターフェルは、揺るぎない自信と共に、音楽への、そして聴衆への親しみと愛情を持っている。折に触れて入れるMCでは、自身の師のこと、お酒のこと、故郷ウェールズのこと、シェイクスピアのことなど、役者の語りのように抑揚たっぷりに聴衆に語りかけ、笑いを取り、時に問いかけ、思いを共有させる。歌にもその語りのバックグラウンドが濃厚に、ドラマチックに沁みている。曲目の多くは知らない歌のはずなのに、どこかで聴いたことがあるような懐かしさ、親しみを感じさせてしまうのも、ターフェルが聴衆との心の距離を縮めてしまうおかげ。ここまでそれを出来てしまうのは、ターフェルの人間力の成せる技なのだろう。シューベルトの最初の2曲は第1シラブルしか歌ってくれなかったが、まあこれもいいか!という気分にさせられてしまった。

最後の「チンガ・リング・チョウ」では指笛を交え(実は笛を隠し持っていたことをあとでばらす)、聴衆の手拍子を求め、ステージと客席が完全一体!3曲のアンコールのあとはスタンディングオベーション。リサイタルに共感していない聴衆なんて、1人もいやしないに違いない。僕も立ち上がって歓声を投げかけた。こんな大物歌手と共演したピアニストのカチュコヴァが、ノリも良く、詩情に溢れたピアノを生き生きと聴かせたことも、コンサートの一体感を高めた。演奏曲目の全ての歌詞対訳を作って配ってくれた「東京春祭」の主催者にも感謝。

ターフェルの歌と人にすっかり惚れ込んでしまいCDを買い、行列に並んでサインしてもらった。次に来日するときも絶対に聴きたい。


♪ブログ管理人の作曲♪
「子守歌」」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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