facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

堀米ゆず子 ヴァイオリン・リサイタル

2015年01月10日 | pocknのコンサート感想録2015
1月10日(土)堀米ゆず子(Vn)/津田裕也(Pf)
~「次代へ伝えたい名曲」 第3回 (彩の国さいたま芸術劇場開館20周年記念)~
彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール

【曲目】
1.モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ第40番 変ロ長調 K.454
2.ドビュッシー/ヴァイオリン・ソナタ
3.三善晃/ヴァイオリンのための鏡
4.フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調
【アンコール】
1.ラフマニノフ/ハイフェッツ編曲/「6つの歌」Op.38~第3番〈ひなぎく〉
2.ラフマニノフ/ハイフェッツ編曲/「2つの小品」Op.2~第2番〈東洋風舞曲〉
3.ドビュッシー/美しき夕べ

2015年の初日のコンサートはダブルヘッダーとなった。まずは堀米ゆず子のリサイタル。
2010年1月のN響B定期で、急病で来日できなくなったヴィヴィアン・ハーグナーの代役としてベートーヴェンのコンチェルトを弾いた堀米ゆず子の演奏が素晴らしく、その時の印象がずっと強く残っていたことが今日のリサイタルを聴くことにした一番の理由。

真紅のチャイナドレス風のコスチュームに身を包んで登場した堀米が最初に弾いたのはモーツァルト。天衣無縫、縦横無尽に歌うというよりは、つつましさを保ち、品よく密度の濃い音楽を聴かせる。その密度の濃さを支えるものは、流れに任せることなく、誠実に作品に向き合い丁寧に音を紡いでいく姿勢と、磨き抜かれた艶と光沢を発するきりっとした美音。津田のピアノも清楚で柔軟、ヴァイオリンと優雅な対話を交わしていた。

次のドビュッシーになると、堀米の音色のパレットにより多彩な色が並び、表現にもアグレッシブな能動性が増すが、音楽のツボを常に捉え、明確なメッセージを伝える姿勢はぶれることがない。これがドビュッシー晩年の傑作に気高さを与え、音楽を雄弁に語らせた。

艶やかな美音で奏でる堀米の濃密な演奏は、後半のプログラムで更に魅力を発揮した。「今日が誕生日」という、一昨年惜しくも亡くなった三善晃の無伴奏曲では、研ぎ澄まされた音が格調高く鳴り響き、純度の高い結晶となった。中間部の三善らしい情念のこもった熱い独白では、熱のこもった音が更に高揚し、「気」を集中させ、聴き手と音楽を一本の太い線で結びつけた。三善晃という作曲家が、妥協のない厳しい音楽を書いたことを改めて認識。

プログラム最後のフランクのソナタの開始からは、その直前の三善の曲と全く別の音が聴こえてきた。穏やかな情感がこもった親密な歌。けれど、ぶれることのない音楽へのアプローチという点では一貫している。多彩で多様な世界を表現しながら、それらを束ねているスピリッツはいつも揺るがない。

このフランクのソナタはリサイタルのクライマックスとなった。柔らかく親密な第1楽章のあと、第2楽章では燃焼し過ぎず、寡黙に凝縮された緊張感を保つ。これが、この後の楽章へ繋がっていく。第3楽章で徐々に熱せられて高った濃密なエキスが、フィナーレで一気に噴出した。そのエネルギー、華やかさ、解放感が織りなすドラマ!ヴァイオリンとピアノが共に鳴るべき音を高らかに鳴らして繰り広げる音の饗宴が、聴いている僕の心に完全に共鳴した。堀米さんのヴァイオリンは、赤血球をたっぷり含んだ熱い血潮のような溌剌とした生命力を湛えていた。津田さんのピアノも表現の幅が広く、緻密さと柔軟さを兼ね備えていて素晴らしい。

アンコールも含め、今日のリサイタルで堀米ゆず子は本物の音楽を聴かせる大家の貫録を感じた。彼女のヴァイオリン、これからも聴いて行きたい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2015年 新年のごあいさつ | トップ | 蓮の会ホールオペラ ニュー... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2015」カテゴリの最新記事