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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

中桐 望 ピアノリサイタル

2016年08月09日 | pocknのコンサート感想録2016
8月7日(日)~お洒落なサロンで手作りピアノリサイタル(通算589回)~
尾上邸音楽室


<第35回プレコンサート>
S:中桐かなえ
1.高田三郎/くちなし
2.中田喜直/霧と話した
3.レスピーギ/舞踏への招待
4.プッチーニ/歌劇「ラ・ボエーム」~"私が街を歩けば"
【アンコール】
クルティス/忘れな草

♪ ♪ ♪

<ピアノリサイタル>
1.モーツァルト/幻想曲ニ短調 K.397
2.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第17番ニ短調 Op.17「テンペスト」
3.ショパン/幻想曲ヘ短調 Op.49
4.ショパン/バラード第3番変イ長調 Op.47
5.グリーグ/ペール・ギュント第1組曲 Op.46~第1曲「朝の気分」
6.グリーグ/ピアノ・ソナタ ホ短調 Op.7
7. シューマン/幻想小曲集 Op.12
【アンコール】
シューマン/トロイメライ

2014年12月に中桐望さんの演奏を「えん」主宰のリサイタルで初めて聴いてとても感銘を受けて以来、浜離宮朝日ホールでのリサイタルやコンチェルトの夕べなどで、中桐さんのピアノに触れる機会を得てきた。今回は再び「えん」の主宰による尾上邸音楽室というプライベートな空間で、中桐さんのピアノを堪能した。

中桐さんのMCによれば、今回は「幻想(ファンタジー)」をテーマに、リサイタルのプログラムを組んだとのこと。作曲家達が思い描いた「ファンタジー」と共に、聴く側も「ファンタジー」へのイメージを膨らませてくれれば、という思いがこもったリサイタルは、まさにファンタジーに溢れ、素晴らしい(ファンタスティック)ものだった。

多彩な選曲ではあったが、どの曲でも中桐さんの演奏には、揺るぎのないベースが常に存在する。それが、演奏に安定感や頼もしさをもたらす。これをベースに音楽全体を俯瞰し、構造を明確に捉え、今鳴っている音が何を目指しているかを聴き手に明確に示してくれる。そのため、やっていること全てから意味が伝わる。行きつ戻りつ迷いながら進むように聴こえる「テンペスト」の第1、第2楽章でベートーヴェンが訴えかけているものが伝わり、延々と紡いで行くようにも聞こえる第3楽章に、大きなクライマックスが存在することを、中桐さんははっきりと示してくれた。

ショパンは今日の素晴らしいリサイタルの中でもひときわ突出した魅力を放っていた。安定した揺るぎないベースに支えられているからこそ、その上で繰り広げられる独白や戯れ、心の底からの謳歌がその場限りではない意思を持ち、意味や持ち味が明確に生きてくる。センチメンタルでロマンチックなものとは対極にあるような、ショパンの本気の思い、苦悩、憧れなどが胸の奥底から溢れかえり、聴き手の心にグワングワンと迫ってきてトリハダが立った。これこそホンモノのファンタジーではないか!瑞々しくかつ深みのある音色の美しさも際立っていた。

後半に聴かせてくれたグリーグのソナタも良かった。グリーグにピアノソナタがあったことすら知らなかったが、4つの楽章それぞれに個性があり、抒情小曲集から聴こえてくるようなファンタジーと物語性も具えていて、これはもっと演奏されていい作品だ。中桐さんはそれぞれの楽章の魅力も伝えつつ重心を後半に置いて、ソナタとしての存在感も示していた。

最後のシューマンも大変充実した演奏。ここでも安定したベースに支えられているのを感じたが、この作品に関しては不安定さや気まぐれ的な気分が出た方が、作品がより語ってくれるようにも感じた。

中桐さんの妹さんでもある中桐かなえさんを迎えて行われたプレ・コンサートについても一言。
かなえさんの歌唱は清澄で、美しい声がまっすぐに耳に快く届いて来た。とても聴き取りやすいきれいな発音で歌われた日本歌曲は、優しくしみじみと語りかけ、ドラマもあり、イタリア語の歌ではそこに濃厚さも加わり、熱い歌を聴かせてくれた。

音楽ネットワーク「えん」 第4回コンチェルト演奏会 2015.12.25 大和田 さくらホール
中桐 望 ピアノリサイタル 2015.4.8 浜離宮朝日ホール
中桐 望 ピアノリサイタル 2014.12.28 尾上邸音楽室

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