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伶楽舎雅楽公演:武満徹「秋庭歌一具」/勅使川原三郎 他

2016年12月05日 | pocknのコンサート感想録2016
11月30日(水)伶楽舎第十三回雅楽演奏会
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル


[第一部]
芝 祐靖 復元・構成/露台乱舞
[第二部]
武満徹/秋庭歌一具

【演奏】
伶楽舎
【舞】
る勅使川原三郎、佐東利穂子


武満イヤーの今年は、沢山の武満作品の演奏に接することができたが、今夜が今年最後に聴く武満の演奏会になりそう。聴いたのは雅楽作品。雅楽の静謐な雰囲気は武満の音楽に通じるものがあり、武満もきっと雅楽の響きに引かれたに違いない。

今夜演奏を担当した伶楽舎は1985年に発足した比較的新しい雅楽演奏団体で、現代作品も積極的に手がけ、武満の「秋庭歌一具」はこれまでに24回演奏してきたという。今夜は伶楽舎の通常の演奏会として、第1部では平安時代に宮中で行われた歌舞の宴を再現した音曲が演奏され、第2部で「秋庭歌一具」が、舞踏と共に上演された。

第1部の「露台乱舞」では、伝統的な雅楽の響きと旋律を楽しんだ。有名な越天楽の旋律が何度も現れ、優美な今様が歌われ、華やいだ平安貴族の宴の様子が伝わってきた。ただ、これまで雅楽を聴いた体験から、雅楽を聴けば眠くなることはわかっていて、今夜もやっぱり気持ちよくなってウトウトしてしまった。雅楽の調べからは眠りに誘うリラックス物質が放出されるのかな。

第2部の武満作品では、1部よりもずっと長かったにもかかわらず眠くならなかった。武満の音楽が、伝統的な雅楽とはかなり毛色の異なる響きで、更に楽師達がステージ上だけでなく、左右のバルコニーにも陣取って、立体的な音響を作り出したことに加え、ダンスが加わるなど、様々な刺激があったためだろう。

伝統的な雅楽では、篳篥が主体のゆったりとした旋律を他の楽器が装飾し、全体として一つの旋律が平行して進行するのに対し、武満の作品は笛や篳篥、時には笙まで、同じ時間上で異なる旋律を奏でる。また、複数の篳篥がハーモニーを奏でるなど、音の構成に色彩と奥行きと広がりが付加される。そんな風に音響が多彩になったのに、そこからは透徹とした沈黙が迫ってくる印象を受けた。静寂のなかに響く水滴の音や、鹿おどしの乾いた音が、静寂感を一層高めるのに似ている。

更に、勅使川原三郎と佐東利穂子のゆっくりと舞う姿が、その静寂感を視覚的に強めている気がした。二人のダンサーは非常に滑らかに少しずつ四肢を動かし、全身で雅な精が降り立つような精神性を表現。音楽が曲間で途切れ、演奏者が一息つく間も二人は常に舞い続け、ピーンとした緊張感を持続させる。それが音響の合間を超えて大きな線で繋げ、全曲が大きくゆっくりと静かに呼吸しているシーンを伝えた。ダンサーの存在が、武満作品に新たな可能性を与えた。
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