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2012年10月B定期(マゼール指揮)

2012年10月25日 | N響公演の感想(~2016)
10月25日(木)ロリン・マゼール指揮 NHK交響楽団
《9月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.モーツァルト/交響曲第38番ニ長調 K.504「プラハ」
2. ウェーバー/クラリネット協奏曲 第2番 変ホ長調 Op.74
 【アンコール】
 ウェーバー/クラリネットと小管弦楽のための変奏曲ハ長調から
Cl:ダニエル・オッテンザマー
3. ラヴェル/スペイン狂詩曲
4. ラヴェル/ボレロ

今月のN響定期はマゼールが登場。超大物指揮者が登場したときのN響は決って超名演を聴かせてくれるので期待大。

1曲目は大好きな「プラハ」。序奏は力みがなく、滑らかで豊かな表情を醸し出していい滑り出し。続いてヴァイオリンが、瑞々しく澄んだ第1主題を伸びやかに奏でる。いいぞ! 第2主題に入るところでマゼールは大胆にテンポを落とした。どうしたことか、N響がこの揺らしについて行き切れずアンサンブルが乱れた。それが原因かどうかはわからないが、その先も、第2楽章も、どこかアンサンブルに淀みが出ているように聴こえた。第3楽章ももうひとつ冴えが感じられないままに終わった。これはどうしたことか。コンマスが慣れないゲスト(エシュケナージ)だった影響はなかったか。

でも次の曲ではオッテンザマーのクラリネットに心底魅了された。こんなに流麗で生き生きとした、完全無欠のクラリネットの演奏って聴いたがあっただろうか。オッテンザマーのクラリネットは、激しいところも穏やかなところも、常に攻めの姿勢で聴き手の心をぐいっと捕まえてくる。どんなフレーズにも命が宿り、それが訴えかけてくる。耳元で温かくほそ~い息をそお~っと吹きかけるような最弱音で、いつ果てることなく歌い続けるのも驚異的だし、高貴なほどの輝きを放つ明朗な響きにも惚れ惚れ。

ウィーン・フィルのクラリネットというと、あの忘れもしないショルティ/ウィーンフィルの来日公演、ベト7の演奏の途中で遅れてツカツカとステージにやって来て気分をぶち壊してくれたS氏の事件が尾を引いてあまりいい印象がなかったが、これからはウィーン・フィルのクラリネットに注目したいし、それよりオッテンザマーのリサイタルに行きたい。アンコールが聴けたのも良かった。

休憩後、ステージから溢れるほどの大編成になったN響がまず演奏したのはラヴェルの「スペイン狂詩曲」。冴えた輝きのあるN響サウンドを期待したのだが、どうも冴えがもうひとつ。いちばん聴き栄えのする終曲の「祭り」ではいい音が聴こえたが、ドロドロした沼で必死に舟を漕いでいるような鈍さや重さが付きまとう。こうなると最後の「ボレロ」もどうなることか。

案の定、上手いはずのN響の管楽器のソロ達が、前半では音抜けが目立った。だが中盤を過ぎたあたりからようやく噛み合ってきたのか、すごい演奏になってきた。さっきのスペイン狂詩曲で、「ドロドロした沼で必死に舟を漕いでいるような」と書いたが、力をみなぎらせてぐいっぐいっと調子よくオールが動きだし、力強く舟が進みはじめた。密度が濃く、弾力性があってしなやかに運動する様は、強力なゴムを思うがままに伸び縮みさせたり曲げたりしているような柔軟性と力強さがある。響きは鮮やかというより濃厚で深い。終盤に向かってどんどんヴォルテージを上げても、まだまだ圧倒的な音響をいくらでも轟かせられそうで、噴き出し口を探すマグマのような底知れぬエネルギーを感じた。最後は思い切りテンポを落として圧倒。すごい力で演奏の渦中に引き込まれた。

マゼールって実はあまりちゃんと聴いたことがなく、スマートで洗練されたイメージを何となく持っていたが、こうした濃くて熱い演奏がマゼールの真骨頂なのかも。そこら辺は来週もう一度聴く演奏会で確かめたい。今夜の最後は良かったが、マゼール/N響がこの程度で終わってしまってはちょっと…

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