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NHK交響楽団 6⽉公演(パーヴォ・ヤルヴィ 指揮)

2021年06月19日 |  pocknのコンサート感想録2021
6月17日(木)パーヴォ・ヤルヴィ 指揮 NHK交響楽団
サントリーホール


【曲目】
1.ペルト/スンマ(弦楽合奏版)
2.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47
 【アンコール】
 ♪ イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 Op.27-1~第3楽章
 Vn:青木尚佳
3.ニルセン/交響曲 第4番 Op.29「不滅」


今のN響の「顔」、首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィが、コロナ禍に入って初めてN響に登場した。去年2月の定期以来。この日を待っていた人は多かったようで、久々に多くの聴衆がN響の演奏会に集まった。パーヴォが登場すると既に大喝采。立ち上がる人も。

ぺルトの「スンマ」が弦楽合奏で始まると、ホールが静寂と云うより沈黙と云っていい静けさに支配された。それは、衣擦れとか葉擦れがもたらすかすかに知覚できる音が、静寂をより沈黙に近づけるようだった。

シベリウスのコンチェルトでソロを弾く青木尚佳さんは、ジュニアオーケストラのコンミスでたまたま聴いた「シェエラザード」に魅せられて以来、注目し続けているヴァイオリニスト。活躍は目覚ましく、今年の1月からミュンヘン・フィルのコンミスに就任した。

青木さんのヴァイオリンは冒頭から魅了した。熱を帯びて遥か遠くを見つめるような調べにはオーラがかかっていた。深い森の中に聳えるお城に佇む、神話に出てくるような姫が、気高くも魔性がかった歌を奏で、それが森に深々と響き渡るイメージ。針葉樹の深い森を思わせる色の衣装が更に気分を高めた。懐の深さや大きさを持つ一方で、姫のたおやかな所作は指先まで神経が行き届き、優美で生き生きとした表情を聴かせた。

パーヴォ/N響のパワーと集中力の演奏がこれまた素晴らしい。決めるところをビシッと決めて青木さんを更に鼓舞し、両者はアクロバティックな対峙を繰り広げ、大きな生命体のように迫ってきた。完成度も極めて高く、CDにすればこの曲の名盤に一気にランクインするのでは。

アンコールで弾いたイザイは、デリケートでプライベートに語りかけてきた。去年の春に予定されていた青木さんのイザイの無伴奏のリサイタルが中止になっただけに、密かにアンコールではイザイを期待し、少しだけリベンジできた気分。N響は、よくわからない外来アーティストを連れてくることが多かったが、この1年は多くの優秀な日本人アーティストがN響のステージに立ち脚光を浴びた。この路線を是非続けてもらいたい。

後半はニルセン。これもすごい演奏になった。ただならぬ空気を漂わせ、ギラリと輝く刃物のような光をリアルに放った。オケは並々ならぬ気合いでパーヴォの指揮に食らいつき、冴えと切れ味で異様な高揚感を築いた。その中で聴こえてきた牧歌的な木管アンサンブルでは各プレイヤーの技が冴え、奥行きと透明感のある調べが響いたが、そこにはいつまた暗雲が垂れ込めるかわからない緊迫感があった。

ステージ両翼に配されたティンパニは存在感もアリアリ。1stを受け持つ首席の植松さんのティンパニは、人間の鼓動のようにそれぞれのシーンでの心境をリアルに表現していた。2ndはパーカスの大御所、元読響の菅原さんという方だそうで、終盤で大活躍。決めるポイントを的確に狙い撃ちした一撃の数々が、植松さんと共に大きなインパクトを与えた。

そんなティンパニの演出も加わった終盤はオケ全体のテンションと熱量も益々上がり、超次元的な演奏となった。天からの神の啓示のような勝利宣言が轟き、畏怖を覚えるほどだった。全身トリハダ!パーヴォ/N響の真骨頂ここにあり、という感じ。万雷の拍手は止まず、パーヴォが一人ステージに呼び戻された。

この1年、N響は定期演奏会を中止し、代わりに同じスケジュールで演奏会を行ったが、客の入りは他のオケよりずっと少ない状態が続いた。こんないいオーケストラなのにどうして、とも思うが、N響の会員は年配者が多いこと、N響定期はステイタスシンボルのようなイメージがあり、大手企業が多くを買い占めて顧客にばら撒いていたこと(予想)が大きな要因では。今の状況ではそのような客は来ず、今夜集まった聴衆はホンモノのN響とパーヴォファンばかりのはず。素晴らしい演奏にも客の反応が鈍いN響定期が、新シーズンからはいい方向へ変わるかも。コロナ禍以来始まった楽員登場時の客席からの拍手が定期でも続くかが気になるところだ。

N響公演の感想タイトルリスト(2017~)

N響 2020年2月B定期(パーヴォ・ヤルヴィ 指揮) 2020.2.6 サントリーホール
青木尚佳ヴァイオリン・リサイタル 2020.2.8 越谷市中央市民会館
東京ジュニアオーケストラソサエティ定期演奏会 (Vn:青木尚佳) 2008.8.24 杉並公会堂

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