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新国立劇場オペラ公演 「さまよえるオランダ人」

2012年03月08日 | pocknのコンサート感想録2012
3月8日(木)新国立劇場オペラ公演
新国立劇場

【演目】
ワーグナー/「さまよえるオランダ人」

【配役】
ダーラント:ディオゲネス・ランデス、ゼンタ:ジェニファー・ウィルソン、エリック:トミスラフ・ムツェック、マリー:竹本節子、舵手:望月哲也、オランダ人:エフゲニー・ニキティン
【演出】
マティアス・フォン・シュテークマン
【美術】堀尾 幸男 【衣装】ひびのこづえ 【照明】磯野 睦

【演奏】
トマーシュ・ネトピル指揮 東京交響楽団/新国立劇場合唱団

今シーズンの新国の「オランダ人」は、2007年にやったものの再演。この時も観に行っていたのだが、実はそれを忘れていてチケットを買った。そう言えば行ったし、とても良かった覚えもある。自分の感想を読み返してみたら、かなり感動していた。指揮者も歌手陣の大部分も違うが、今回、特にゼンタやオランダ人役の歌手がどんな歌を聴かせてくれるかが楽しみだった。

で、公演を観おわって一番感銘を受けたのは、歌手ではなく合唱だった。というか、とにかく合唱に尽きた。第1幕の水夫達の男声合唱から圧巻。第2幕で登場する女声合唱も素晴らしい。そして合唱のオンパレードとも言える第3幕の前半で完全にノックアウトされた。力強さと柔らかさ、輝きと深み、激しさと優しさ… 合唱の魅力を全て網羅して、その全てで魅了した。男声と女声の鮮やかなコントラストやニュアンスの違いがこれほどのインパクトを与えてくれる体験も新鮮だったし、混声でのパワーの炸裂もすごい。均質な響きといい、鮮明な輪郭といい、幅広い表現力といい、これぞプロの合唱という底力を見せつけた。

プロの証は歌だけに及ばず、演技力においてもみせた。顔の表情や所作などもハマっていて、第3幕で、屈託ない大騒ぎから、恐怖のおののきへの移り変わりの様子がリアルに伝わってきた。ここでは、幽霊船のマストが、変幻する照明効果とともに大活躍するが(見てのお楽しみ!)、シュテークマンの演出、衣装や照明のスタッフの力も発揮され、映画の一シーンをみているような素晴らしい舞台だった。この場面は本公演の最大の見どころ、聴きどころといえる。

合唱に比べると今回の歌手陣は少々精彩を欠いた。その中で最も輝いていたのは、オランダ人役のニキティン。引きしまった輝きのある美声が、くっきりとオランダ人の人格と心情を描き、存在感も抜群。高貴な装いのオランダ人だった。終盤でちょっと疲れが見えてしまったのは残念。他の外国人勢もそれぞれ健闘していたが、明晰さや説得力がもうひとつで、声の抜けもあまりよくなく、何となく野暮ったい感じがした。ゼンタ役のウィルソンは、十分役をこなしていたとは思うが、あの体格を持ってすれば、もっと心を鷲づかみにするような歌を聴かせてくれてもいい。

キャストで唯一人、5年前にも出演していたのはマリー役の竹本さん。糸紡ぎの女たちを束ねる頼もしさや、ゼンタの乳母らしい包容力が感じられてよかった。もう一人の日本人、舵手役の望月さんも個性と存在感のある歌が光っていた。これならわざわざ外国から歌手を呼ばなくてもいい公演ができるのでは?

オケは前回と同じ東響。東響は新国のピットでいつも立派な演奏を聴かせてくれて感心するのだが、今回はちょっと。。弦などには「いいな」と感じるところもあったが、「凄み」に欠ける序曲からずっと消化不良気味で物足りない。木管や金管が時々すごくヘンな音を出して興ざめする場面もあった。指揮者のネトピルは世界的に活躍しているそうだが、その実力を確かめることはできなかった。合唱は素晴らしかったが、その功績はひたすら新国の合唱団の実力と、合唱指導者(三澤洋史)のおかげかも。

「オランダ人」はワーグナーの出世作と言われるが、ヴェルディの出世作と言われる先月観た「ナブッコ」と比べるとどちらも合唱が活躍するが、出世作対決ではワーグナーの完全勝利だな、と思った。

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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
合唱! (一静庵)
2012-03-10 02:12:06
私も初日を観ました。
なんといっても合唱ですね
返信する
Re: 合唱! (pockn)
2012-03-10 11:56:09
一静庵さん、久々のコメントありがとうございます。07年公演のときもご一緒でしたね!
新国の合唱は、マリーを歌った竹本さんも新国のサイトのインタビューで絶賛していました。
こういう合唱に接すると、合唱が活躍する新国の公演はみんな行ってみたくなります。
返信する
さまよえるオランダ人 (dezire)
2012-03-20 18:16:41
こんにちは。
合唱と演出はたしかにすばらしかったと思います。
新国立劇場の画商はどんな歌手を連れてきても気おとりしないのは立派だと思います。
歌手陣ははあまりご満足されなかったようですね。
私は海外の歌劇場の演奏をほとんど聞かないので。結構よかったと思いましたが、ご指摘のような点は、あったかもしれませんね。

私も別の視点で「さまよえるオランダ人」の鑑賞記を書きましたので、ぜひご覧になってください。
ブログに感想などなんでも結構ですので、コメントをいただけると感謝致します。
返信する
はじめまして (pockn)
2012-03-22 17:35:00
dezireさま、コメントありがとうございます。
歌手陣はそれなりによかったとは思いますが、かなり差があったようには思いました。
僕も海外の引っ越し公演はもうずっと行っていません。
海外へ行った時にはオペラを観るようにはしていますが、
新国の公演レベルは決してヨーロッパのオペラ劇場の公演と比べても遜色はないと
思います。なので、日本では専ら日本のプロダクションへ行っています。
dezireさんのブログも近いうちに是非拝見させて頂きます。
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