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エマニュエル・パユ(Fl)/ポーランド放送室内合奏団(指揮:アグニエシュカ・ドゥチマル)

2012年11月28日 | pocknのコンサート感想録2012
11月28日(水)Fl:エマニュエル・パユ/ アグニエシュカ・ドゥチマル指揮 ポーランド放送室内合奏団
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル

【曲目】
1.モーツァルト/ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
2. クヴァンツ/フルート協奏曲ト長調
3.C.P.E.バッハ/フルート協奏曲イ長調
4.パッヘルベル/カノン ニ長調
5.フリードリヒ2世/フルート協奏曲第3番ハ長調
 【アンコール】
 武満徹/VOICE
6.グリーグ/組曲「ホルベアの時代から」op.40
【アンコール】
W.キラル/オラヴァ

2年ぶりに聴くパユ、今回は弦楽オーケストラとの共演で、最近発売された話題のCD「ザ・フルート・キング」にも収録されている3曲のコンチェルトと、ポーランド放送室内合奏団単独の演奏が3曲。

まずは、ドゥチマル指揮のポーランド放送室内合奏団について。指揮者も合奏団も初めて聞く名前。最初のモーツァルトは、テンポはキビキビしてメリハリもあるが、あくまでタッチは柔らかくて繊細。この感触はコンチェルトでパユのバックを務めるときも含めて終始変わらなかった。フワリとした空気のような軽さ、無理のない自然な語り口、柔らかくブレンドされた淡い音色が持ち味。グリーグとアンコールでは、くすんだ趣の音色や、はにかんだ微笑みの表情が東欧的な印象も与えた。

指揮のドゥチマルは、弱音を主体に曲の細部を丁寧に扱い、音楽のエッセンスを抽出するかのようにダイナミックスを強調してメリハリ、濃淡のはっきりした演奏を聴かせた。モーツァルトやコンチェルトのバックではそれがとても好ましく気の利いた演出に聴こえたが、グリーグではあまりに細部まで細かく抑揚をつけるのが少々煩わしかった。アンコールでは、変化に富んだ演出効果が見事に発揮された。

パユのフルートにとっても、ドゥチマル指揮ポーランド放送室内合奏団は申し分ない共演者だった。両者の音楽的な方向性も一致した共演は、初めて聴く曲ばかりだったコンチェルトでも大いに楽しむことができた。パユの深くて柔らかな音色は、そのとき奏でている音楽にふさわしい色を選び、常に淀みなく、本当にこれ以上ないほどの滑らかさでマイルドに表情づけされ、優美に踊り、飛びまわる。伸縮自在に呼吸しながら芳香をあとに残し、極上の歌を奏でて行った。

演奏した3曲のなかで最も雄弁に訴えてきたのは、エマヌエルバッハのコンチェルト。音楽的な起伏、深み、多彩なハーモニーなど何を取っても別格で、特に第2楽章の、弦のユニゾンとフルートのモノローグ同士のやり取りは、ベートーヴェンの4番のビアノ協奏曲を先取りしたようなアイディアとセンスに溢れていた。今まで知らなかった名曲に出逢えたのもパユと共演者たちの素晴らしい演奏があってこそだろう。

「ザ・フルート・キング」のフリードリヒ大王のコンチェルトも生き生きとした多彩な表情を、パユは華やかに、ワクワクする臨場感を持って聴かせ、楽しませてくれたが、これはパユの妙技がモノを言ったところも多いのでは。

パユが出番を終えてアンコールで演奏してくれたのはなんと武満!今まで聴いたこの曲の演奏では、プレイヤーが作品と格闘するひたむきさに打たれたことはあったが、今夜みたいに自由自在に楽器を操り、集中力のある雄弁さで聴き手を異次元の世界まで運んでくれるような演奏は初めて。余興で息抜きにオモロイ曲を吹き始めたと勘違いした客から笑い声が出て、会場を場違いな空気にしてしまったのは残念だったが、やがてこの曲が笑いとは無縁だということを思い知らせるには十分な演奏で、最後は会場全体が熱くなり、割れんばかりの拍手とブラボーに包まれたのはさすがパユ!

エマヌエル・バッハの曲がとても気に入ったのもあって、休憩時間に2枚組みのCD「ザ・フルート・キング」を買った。

終演後にサイン会があるそうだけど、ま、いいか… と買ったときは思っていたが、後半の演奏で更にパユにほれ込んでしまい、やっぱりサインが欲しい!とサイン会に並んで、買ったCDにサインしてもらった。

今夜の演奏会は後半、僕たちと同じ2階バルコニーで美智子さまも鑑賞した。草津以来の再会、一緒に聴いていた奥さんはレア美智子さまを見るのは初めてで、たいそう興奮していた。美智子さまもきっと今夜の演奏には満足していたに違いない。

エマニュエル・パユ&クリスティアン・リヴェ デュオ・リサイタル 2010.10.22 王子ホール

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