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中野りな ヴァイオリンリサイタル

2023年06月18日 | pocknのコンサート感想録2023
6月15日(木)中野りな (Vn)/小井土文哉 (Pf)
~第8回仙台国際音楽コンクール優勝記念
浜離宮朝日ホール

【曲目】
1.モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタイ長調 K.305
2.プーランク:ヴァイオリン・ソナタ FP119
3.イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番ト長調 Op.27-5
4.R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
【アンコール】
♪ パガニーニ/カンタービレ


中野りなのヴァイオリンは、去年、オペラシティでやった音コン受賞者演奏会で聴いたのが初めて。このときの強烈なインパクトに加えて、FM「リサイタル・パッシオ」でも魅了されてこのリサイタルに行くことにした。

中野はシルクを思わせる極上の美音で、音楽を大きく俯瞰したダイナミックな表現と、柔らかく繊細な表現を共存させ、正確無比に音楽を深く掘り下げ、切れと冴えのある鮮やかな演奏で、様式の異なるそれぞれの作品が最も輝く姿を聴かせてくれた。

最初に演奏したモーツァルトのソナタで、主導権を握る小井土の上品で瑞々しいピアノにそっとヴェールをかけるような軟らかくて優しい演奏にいきなり魅了された。優美で伸びやかな美音が雅な空気を醸し出す。両者の呼吸の妙、溜めの微妙なタイミングなど同じ空気を感じてピッタリとシンクロした演奏だった。

プーランクでは、寸分違わず狙いを定めた刀さばきで、迷うことなく彫刻を彫り進めて行き、ムーヴマンみなぎる彫像を仕上げて行くのを見ているような演奏だった。ヴァイオリンとピアノはバトルを繰り広げ、息を呑む切迫感は孤高の美しさに達していた。

後半はイザイの無伴奏で始まった。中野は、厳しく精巧で隙のない世界を作り上げた。第1楽章の終盤では、音楽がしなやかに波打つ様子が視覚からも感じ取ることができ、ボウイングで弓がゴムのようにしなって見えた。インスピレーションに富んだ自由自在な柔軟性と艶やかな音色で、攻めの姿勢を崩すことなく颯爽と駆け抜けた。

最後はシュトラウス。全身で体当たりしてダイナミックな演奏を聴かせることが多いこのソナタを、中野と小井土は気負い過ぎず、血気盛んでビンビンの若さから一歩引いた大人のアプローチで臨んだ。冒頭の小井土のピアノが柔らかく語りかけると、これに中野は優しく呼応し、しなやかで優美な演奏を繰り広げた。奥ゆかしい深みがある演奏は雄弁で、底力も伝わって来た。ピアノが第2楽章で聴かせた星が煌めくような美しい輝きも絶品で、音楽の多彩な魅力を伝える演奏だった。

滑らかで温かい歌心が滲み出る美音にホレボレしたアンコールに至るまで、常に魅了し続けたリサイタル。前回はかわいらしい印象だった中野さんは、衣装や立ち居振る舞いからも大人っぽさが感じられ、前回は前回ならではの素晴らしさはあったが、そこに奥行きが加わった演奏からは、着実に進化を続けるアーティストのこの先に益々期待が膨らんだ。

第90回日本音楽コンクール受賞者発表演奏会(Vn:中野りな)~2022.3.4 東京オペラシティ~
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最新アップロード:「かなりや」(詩:西條八十)


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