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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024

2024年05月10日 | pocknのコンサート感想録2024
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024

GWに有楽町で行われる音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」は、初回の2005年から2017年まで毎年訪れていた。2018年以降はご無沙汰してしまっていたが(2020~22は中止)、7年ぶりに音楽祭に出向いた。チケットを取ったのが遅かったため多くのコンサートはすでにソールドアウトだったが、5月4日の有料コンサート3公演分のチケットを入手し、予約不要の無料コンサート2公演と併せて5公演を聴くことが出来た。

7年前までの大混雑状態より来場者は少ない気がしたが、コンサートはどれもほぼ満席で、イベント会場やフードコートエリアもまずまずの賑わい。ラ・フォル・ジュルネらしいお祭り気分を味わいつつ、演奏会では珍しくて刺激的な、普段は味わえないような体験も沢山できた。今年のテーマは「ORIGINES オリジン―すべてはここからはじまった」。この世に音楽が生まれた起源に立ち返るという壮大なヴィジョンを、様々な地域、時代の音楽から感じることができた。



5月4日(土)

鳥!鳥!北欧の鳥!
~ホールC:エスプレッシーヴォ~

1.シベリウス/トゥオネラの白鳥
2.ラウタヴァーラ/カントゥス・アルクティクス
3.ヒルボリ/ピーコック・テールズ(孔雀物語)-ソプラノ・サクソフォーンとオーケストラによるミレニアム版

Sax:ヴァランティーヌ・ミショー/角田鋼亮 指揮 横浜シンフォニエッタ

鳥をテーマにした北欧の曲を集めた演奏会。「トゥオネラの白鳥」は、薄い層が重なって生まれるデリケートな響きが幻想的な空気を醸し出していた。ヴァイオリンやチェロのソロが深く歌い上げる調べが寂寥を募らせた。主役のイングリッシュホルンは、この会場名にもなっているエスプレッシーヴォを効かせて、もう少し大胆に歌ってほしかった。

続くラウタヴァーラの作品は、様々な鳥の声の録音を取り入れたファンタジー溢れる音楽。静かで深い息遣いの弦楽合奏が優しく包み込むように悠久の時の流れを感じさせた。音楽と鳥の声で溢れていながら、えもいわれぬ静寂感ある。終盤は管弦楽が盛り上がり目映い光に包まれた。

ヒルポリの「孔雀物語」は、照明、衣装、演技による演出が入ったシアターピース。真っ暗なステージの中央に座るサックス奏者のヴァレンティーヌ・ミショーが照明で浮かび上がり、静かにサックスを奏で始めた。クラリネット奏者2人が加わった3人のパフォーマンスも印象的。ミショーは青の鮮やかな衣装に羽根飾りの帽子、時に仮面も着けて孔雀の舞いを踊る。演奏は動きを増して即興的に飛び回り、孔雀の孤独な鳴き声も聴き手を惹きつけた。オーケストラは大きく呼吸し、団員の声も加わり、幽玄の世界が広がった。北欧的な透徹とした空気に支配された音楽が終盤では快活なジャズ風の音楽となり、最後はミショーが大きく息をフーッと天に向かって吐くとステージは暗転して終演。ミショーのワンマンショーに酔いしれた。
藤木大地+みなとみらいクインテットによる歌の豊穣
~ホールC:エスプレッシーヴォ~

1.シューマン/ピアノ五重奏曲変ホ長調 Op.44~第1楽章
2.ラフマニノフ/ヴォカリーズ Op.34-14
3.シューベルト/魔王 D328
4.マーラー/歌曲集「リュッケルトによる5つの歌」~私はこの世に忘れられ
5.ヴォーン・ウィリアムズ: サイレント・ヌーン
6.ヴュータン/アメリカの思い出「ヤンキー・ドゥードゥル」 Op.17
7.加藤昌則/レモン哀歌
8.木下牧子/鷗
9.村松崇継/いのちの歌
(アンコール)
1.nella fantasia(?)
2.愛の讃歌

藤木大地(カウンターテナー)&みなとみらいクインテット (Vn:成田達輝、山根一仁/Vla:川本嘉子/Vc:遠藤真理/Pf:松本和将)

ピアノ五重奏と藤木大地との共演。抑揚たっぷりで歌心のあるシューマンのピアノ五重奏に続いて登場した藤木さんは、妖艶な美声を駆使して陰影に富んだ歌をデリケートに、心の端々まで優しく届けてくる。厳しく雄弁な「魔王」のあとは心の内にそっと語りかける歌が続いた。ピアノクインテットは柔らかな線による美しいハーモニーを織り成し、歌とよく調和していた。川本さんのヴィオラの熱い語りがグッと来たり、ヴュータンでの成田さんのヴィルトゥオーソが映えたり、各プレイヤーの演奏も楽しめた。最後の「いのちの歌」はとても沁みた。「魔王」は、子供の声はアルトで、他はテノールやバリトンの声域を使うなんてことがカウンターテナーに出来たら凄いだろうな、なんて無理な話?
アンサンブル・ルーキス ~LFJエリアコンサート~
~帝国ホテル東京 本館3階 富士の間~

1.バッハ/ブランデンブルク協奏曲第5番~第1楽章(一部カット版)
2.ドヴォルザーク/ユーモレスク
3.モンティ/チャールダッシュ
4.サン=サーンス/白鳥
5.魔女の宅急便~海の見える丘
6.リトルマーメイド~パート・オブ・ユア・ワールド
7.ミュージカル「ラ・ラ・ランド」~アナザーデーオブサン
8.ふるさとの四季
(アンコール)


東京21世紀管弦楽団アンサンブル・ルーキス(F:坂元理恵/Vn:小山啓久、高橋暁/Vla:佐々木真史/Vc:阪田宏彰/Pf:斎藤美香)

弦楽四重奏にピアノとフルートが加わった編成のアンサンブル・ルーキスの演奏で、クラシックからミュージカル、日本の唱歌など幅広いレパートリーの親しみやすい小品の数々を聴いた。メンバーそれぞれが伸びやかに歌い、瑞々しく生き生きとしたアンサンブルを聴かせてくれた。

メンバーで最も印象に残ったのは小山さんのヴァイオリン。ユーモレスクでの「溜め」を効かせた濃厚な歌や、チャールダッシュでは超高速でのノリの良さなど、曲の持ち味をよく伝えていた。高橋さんの颯爽としたセカンドVnも清々しい心地よさを運んでくれた。

心に沁みたのは「ふるさとの四季」。「ふるさと」で始まり、四季折々の懐かしい歌で季節を辿り、最後はまた「ふるさと」で締める日本の唱歌メドレーは、どの歌も温かくて優しい息遣いが感じられた。アレンジも原曲の良さをよく捉えていると思った。
ノルディック・ナイト~ノルウェー民族音楽の調べ~(フォル・ニュイ!! 第2夜)
~ホールEキオスクステージ~

ノルウェーの民族音楽、楽器紹介など

ノルカルTOKYO(モーテン J. ヴァテン、酒井絵美)/ホイッスル:高梨菖子/Perc:熊谷太輔/アコーディオン:ウルフ=アルネ・ヨハネッセン

次のコンサートまでの時間にたまたま聴いた無料コンサートは、思わぬ素敵な出会いとなった。ノルカルTOKYOが奏でるノルウェーの民族音楽は、メロディー、リズム、ハーモニーが、自然にノスタルジックな気分を盛り上げる。節回しを聴いているとアイリュシュとかケルトの民族音楽を思い起こさせる。どこかで繋がりがあるのだろうか。

ノルウェーの民族楽器独特の音色や節回しが耳に心地いい。酒井さんのMCで各楽器の紹介をやってくれて、珍しい楽器の音を実感することも出来た。酒井さんが持っているのはヴァイオリンかと思ったら、ハーディングフェーレという共鳴弦も含めて9本の弦を持つノルウェーの民族楽器だと知った。装飾もキレイ。ヴァテンさんとヨハネッセンさんによる口琴は、良く響いてメロディーも演奏できる個性豊かな楽器だった。試奏がそのまま楽曲の演奏へと繋がり、心踊る世界へと誘われた。

参加型ということで、途中で客席からダンスの参加者を呼びかけていたけれど、次のコンサートがあるので残念ながらその前に退席。このあと、酒井さんのハーディングフェーレが壊れるハプニングがあり、聴衆からヴァイオリンを借りるというレアなシーンがあったらしい。ハーディングフェーレ奏者はヴァイオリンも演奏できるということかな。






一閃!世界を貫き揺るがす太鼓の音
~ホールC:エスプレッシーヴォ~

1.林 英哲/序
2.石井眞木/モノクローム
3.林英哲/宴
4.林英哲/太鼓打つ子ら

林英哲&英哲風雲の会 (太鼓ユニット:上田秀一郎、はせみきた、田代誠、辻祐)

これまで体験したことのないような異世界を味わった公演。足踏みと鈴による儀式的な「序」に続く太鼓のパフォーマンスは、言葉に出来ないほど衝撃的だった。

「モノクローム」では、音程が異なる5つの小さな太鼓の響きが、細かい連打でみるみる膨らみ、最強音に達した時の怒涛のような響きのうねりが大地を揺るがすような巨大なパワーで迫って来て、これは何だ!とこの世のものとは思えないような神聖な空気に支配され、畏怖の念さえ覚えた。「宴」では大きな太鼓が大地を揺るがし、木遣りのようなかけ声が場の空気を引き締めた。「太鼓打つ子ら」は歌、マリンバ、鐘も加わり、太鼓の生産地でもある被災地への思いが込められた熱い演奏となった。

和太鼓は以前にも聴いて迫力満点のパフォーマンスをすごいと思ったことはあるが、これほど芸術性の高い神事のような世界とは認識していなかった。その場に立ち合った者なら誰もが引き込まれるのではないだろうか。和太鼓集団の中心にはいつも林英哲氏がいて、パワフルで集中力に満ち溢れるパフォーマンスを全身で演じ通した。「太鼓打つ子ら」ではピーンと張った力強い歌も入り、挨拶では声がガラガラで、全身全霊を使い果たした様子。若い「英哲風雲の会」の4人は、林氏の後継役としても世界で益々活躍することだろう。
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2017
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2016
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2015
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2014
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2013
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2012
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2011
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2010
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2009

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1 コメント

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5月10日に頂いたコメントについて (pockn)
2024-05-10 10:25:21
さくらもちさんからこちらにコメントを頂きましたが、投稿内容と全く関連しないコメントであるため、申し訳ありませんが、こちらでのコメントは非公開といたします。ただ、コロナ関連の記事に同内容でコメントを頂ければ公開いたしますのでご検討ください。
当ブログの運営上のことでお手数をおかけして申し訳ありません。ご理解ください。

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