10月24日(水)ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団
《10月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
Vn:アラベラ・美歩・シュタインバッハー
【アンコール】
イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番から第4楽章
2.ブラームス/交響曲第4番ホ短調Op.98
9月のプレヴィンのあとはマリナーとN響の定期に大物指揮者が続く。
マリナーというと室内オーケストラの名匠という印象が強く、優しくデリケートな音楽を作る指揮者というイメージを勝手に持っていたが、実際に生で聴いたマリナーの演奏はそうしたイメージとはかなり異っていた。
まずはベートーヴェン。ティンパニの柔らかなD音の連打に続いて、何ともデリケートな木管合奏。それは弦へと引き継がれ、表情豊かな素晴らしい序奏の開始だ。奥行きのある充実した響きには凛とした輝きがある。堀さん、店村さん、木越さん、そして山口さん(第2ヴァイオリンに転向してから僕の席からはあまり姿が見えなくなってしまったが、この曲ではよく見える位置に座っていて、実に良い表情をして弾いているのが見えた)という第1プルトの弦の錚々たるトッププレーヤーの顔ぶれは演奏する姿にも貫禄があり、みんなひとくせありそうなところにN響の弦を代表する頼もしい個性を感じる。第2楽章のホルンも素晴らしい。
そんな充実したN響の演奏をバックにソロを弾いたシュタインバッハーのヴァイオリンがまた素晴らしかった。磨かれた音色は瑞々しい美しさに溢れ、表現力はしなやかでダイナミック、2楽章では甘くデリケートな音や表情にうっとりしたかと思えば、第3楽章では活力に満ち溢れた溌剌とした演奏を繰り広げる。ピチピチしたはじけるような魅力を放っていた。アンコールで弾いてくれた曲ではそこに深遠な宇宙を見るような気がした。ソリストとしての風格を十分に持つこれからがますます楽しみなヴァイオリニストだと感じた。
さて、この調子で期待した後半のブラームス。響きは相変わらず大変充実していた。83歳になる指揮者とは思えないようなみなぎるエネルギーが伝わってくる。ホルンの合奏がいつもよりもガンガンと耳に届いてくる。とてもカッコイイ、けれどちょっと聞こえすぎ。
そんなホルンが代表しているかのように、演奏全体がなんかギンギンで明るくて、この曲のイメージに合わない気がした。第2楽章の奥行きのある抒情もあまり感じられない。第4楽章の終わりも大いに盛り上がったが、この盛り上がりが、それまでのパッサカリアでの積み上げた結果であるということがあまり伝わってこない。なんかあっけらかんとしていてヤンソンスみたいな演奏だなぁ(過去2回聴いただけの印象ですが…)、なんて思っていたら、最初は温和そうに見えたマリナーの風貌がヤンソンスみたいに見えてきた。
来週のヴィヴァルディとモーツァルトではどんな演奏を聴かせてくれるんだろうか…
《10月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
Vn:アラベラ・美歩・シュタインバッハー
【アンコール】
イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番から第4楽章
2.ブラームス/交響曲第4番ホ短調Op.98
9月のプレヴィンのあとはマリナーとN響の定期に大物指揮者が続く。
マリナーというと室内オーケストラの名匠という印象が強く、優しくデリケートな音楽を作る指揮者というイメージを勝手に持っていたが、実際に生で聴いたマリナーの演奏はそうしたイメージとはかなり異っていた。
まずはベートーヴェン。ティンパニの柔らかなD音の連打に続いて、何ともデリケートな木管合奏。それは弦へと引き継がれ、表情豊かな素晴らしい序奏の開始だ。奥行きのある充実した響きには凛とした輝きがある。堀さん、店村さん、木越さん、そして山口さん(第2ヴァイオリンに転向してから僕の席からはあまり姿が見えなくなってしまったが、この曲ではよく見える位置に座っていて、実に良い表情をして弾いているのが見えた)という第1プルトの弦の錚々たるトッププレーヤーの顔ぶれは演奏する姿にも貫禄があり、みんなひとくせありそうなところにN響の弦を代表する頼もしい個性を感じる。第2楽章のホルンも素晴らしい。
そんな充実したN響の演奏をバックにソロを弾いたシュタインバッハーのヴァイオリンがまた素晴らしかった。磨かれた音色は瑞々しい美しさに溢れ、表現力はしなやかでダイナミック、2楽章では甘くデリケートな音や表情にうっとりしたかと思えば、第3楽章では活力に満ち溢れた溌剌とした演奏を繰り広げる。ピチピチしたはじけるような魅力を放っていた。アンコールで弾いてくれた曲ではそこに深遠な宇宙を見るような気がした。ソリストとしての風格を十分に持つこれからがますます楽しみなヴァイオリニストだと感じた。
さて、この調子で期待した後半のブラームス。響きは相変わらず大変充実していた。83歳になる指揮者とは思えないようなみなぎるエネルギーが伝わってくる。ホルンの合奏がいつもよりもガンガンと耳に届いてくる。とてもカッコイイ、けれどちょっと聞こえすぎ。
そんなホルンが代表しているかのように、演奏全体がなんかギンギンで明るくて、この曲のイメージに合わない気がした。第2楽章の奥行きのある抒情もあまり感じられない。第4楽章の終わりも大いに盛り上がったが、この盛り上がりが、それまでのパッサカリアでの積み上げた結果であるということがあまり伝わってこない。なんかあっけらかんとしていてヤンソンスみたいな演奏だなぁ(過去2回聴いただけの印象ですが…)、なんて思っていたら、最初は温和そうに見えたマリナーの風貌がヤンソンスみたいに見えてきた。
来週のヴィヴァルディとモーツァルトではどんな演奏を聴かせてくれるんだろうか…