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プーランクのグローリアを歌う ~東京理科大学管弦楽団第50回定期演奏会~

2009年11月17日 | pocknのコンサート感想録2009

11月15日(日)川合良一指揮 東京理科大学管弦楽団
~第50回記念定期演奏会~
練馬文化センター

【曲目】
1.ラヴェル/組曲「マ・メール・ロア」 (未聴)
2.プーランク/グローリア(出演)
 S:出口麻美/合唱:コール・ポリフォニー、コール・ヴァフナ、Locus、鎌倉混声合唱団員他
3.フランク/交響曲ニ短調
【アンコール】
1.ラヴェル/組曲「クープランの墓」~メヌエット
2.ビゼー/「カルメン」前奏曲

10月にバッハのモテットを歌ったのに続き、同じ川合先生の指揮のもと、東京理科大オケの第50回!定期演奏会でプーランクのグローリアの合唱に参加した。

学生時代にプーランクのアカペラのミサを歌ったことはあり、その独特なハーモニーやリズムの魅力は味わった経験があるし、六重奏曲やフルートソナタ、2台のピアノコンチェルトなどお気に入りの曲はいくつかあるが、このグローリアの譜面を手にして、またCDを聴いてみて、最初はつかみどころがない音楽という印象を持った。しかし譜読みを進めて練習に参加しているうちに、この曲の魅力というか「魔力」にだんだん取り付かれていった。

それはプーランクらしい思いがけない遠隔調へ転調を繰り返す面白さだったり、非和声音による独特のハーモニーの美しさだったり、タッグマッチのようなオケとのやり取りだったり、音楽的な「演出」に共感を覚えたこと、或いは全部で3回オケ合わせが行われたおかげで、オーケストラパートの魅力、しかもパート毎にさらわせることも多いため各パートがどんなことをやってどんな音色でどんな役割を果たしているのかがわかったことなどいろいろ理由はあるが、何よりもこの曲を長年温めてきて並々ならぬエネルギーを注いだ川合先生の求心力によるところが大きい。

このグローリアは6曲から構成されているが、川合先生は特徴的なキャラクターを持つそれぞれの曲から歌詞と関連してどんな音色や表情が欲しいかを明確に伝え、それを自らの指揮で明快に示してくれる。なかでも第6曲で音楽がfffで最高潮に達し、それがGPで途切れ、続いてソプラノソロの朗々とした歌声を響かせる場面を「興奮した群集が猛スピードで壁に激突してシーンとしたところに卑弥呼が現れて、群集に向かって神の栄光を唱えるような…」と表現、そして最終場面の穏やかなppの歌は、「映画のラストシーンが終わり、エンディングロールが流れている感じ」という形容を聞いてから、この場面のイメージが自分のなかでもどんどん膨らんできた。

それまでのプーランクの音楽はおしゃれで、おどけていて、挑発的で… というイメージに加えて熱く血がたぎるような情熱があることを感じ、「すごい音楽だな」と歌うたびに音楽に引き込まれていった。

合唱団もオケもそんなとても良い上り調子で迎えた本番、客席は驚くばかりの満員!自分のコンディションは1ヶ月以上前にひいた風邪が未だに残っていて本調子とは言えず(誠に情けない限り。。。)、リハーサルでも声が思うように出ていない気がしたが、直前ヴォイトレで「頑張り過ぎず、冷静さを保って大きな力を出そう」というアドバイスのお陰か、大勢のお客さんを前にして気合いが十分に入ったお陰か、調子が悪いことなど忘れて気持ちよく歌うことができた。

理科大のオーケストラは、若いパワーと気合いだけでは到底太刀打ちできない、ソロ楽器にもアンサンブルにも高度な技術や鋭い感性、リズム感を要求するこのプーランクの音楽を本当に立派に演奏した。オケと合唱の掛け合いが続く場面など、オケがテンションの高い良い音を鳴らしてくるので、歌うほうもそれに高められて持っている以上のパワーを引き出されるよう。ソロを歌った出口先生もまさしく卑弥呼のような妖しくも高貴で芯のある歌声を響かせ、合唱はそれに唱和する群集の気分も味わった。

曲が静寂の闇に吸い込まれるように終わり、しばらくの静けさのあと「ブラボー」と大きな拍手を聞いてホッとした。客席に家族の面々をみつけて思わずニンマリ… 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。今年は4月からずっと合唱にかかわって来たが、これで予定は全て終了。聴きに来てくださった皆さん、本当にありがとうございました。

♪♪♪

後半のプログラムは客席で鑑賞。合唱で歌っていたときはずっとオケの背中を眺めていたが客席からオケを見ると、メンバーがとても入魂の豊かな表情で演奏しているのが目に飛び込んできた。

フランクのシンフォニー、地の底から沸き上がるようなエネルギーを内包した序奏から決然としたテーマが始まり、やがて大きな幸福感に溢れるフレーズを朗々と誇らしげに歌い上げる。オケはメンバー同士顔を見合わせながらたっぷりと呼吸し、歌をつなぎ、豊かな響きを作り上げて行った。頑張りすぎず、デリケートな表現の魅力もたっぷりで、全体としてパンチを効かせるやり方ではなく、大きな流れによる力強さで訴えてきた。

長年にわたり川合良一先生という卓越した指揮者や多くの優れたトレーナーに恵まれた理科大オケは、結束力、良いものを目差してそこに向かうテンション、それに見合った演奏を聴かせるための努力といった点ではプロと比べても勝るとも劣らないし、ただ1回だけの演奏会に照準を合わせた思い入れや意気込みはプロにはできないこと。そういう意味でまさに一期一会の演奏が聴くものの心に訴えてくるのだろう。そんな素敵なオーケストラと共演できたことは幸せだったし、そこに参加した自分もそのような気持ちで臨むことができ、とても清々しい気分だった。

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