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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

今こそ音楽を!弦楽六重奏の喜び

2020年06月25日 | pocknのコンサート感想録2020
6月23日(火)Hakuju New Style Live
~今こそ音楽を!弦楽六重奏の喜び~
ハクジュホール

【曲目】
1.R.シュトラウス/歌劇「カプリッチョ」Op.85~前奏曲
2.チャイコフスキー/弦楽六重奏曲ニ短調Op.70「フィレンツェの思い出」
【演奏】
Vn:尾池亜美、田代裕貴/Vla:安達真理、多井千洋/Vc:荒井 結、伊東 裕



先週金曜日の超々久々の演奏会に続いて、またコンサートを聴くことができた。今日の演奏会はFacebookにシェアされて知った。ハクジュホールがコロナ禍で演奏会をいかに行えるかを試みるコンサートシリーズの一環で、ヴァイオリンの尾池さんが企画し、呼びかけた仲間たちによる弦楽六重奏。「フィレンツェの思い出」一曲だけということだが、演奏会のメインを飾る曲だし、アンコールも期待できる(ブラームスをやってくれるかも!)。何よりこの時期にトッププレイヤー達によるアンサンブルが聴けるチャンスを逃すわけにはいかないと、すぐにチケットを予約した。その後早々に完売したそうだ。

同じ時間に入場者が集中しないように入場推奨時刻が記されたチケットを持って、それを目安に演奏会場へ。入口では検温と手指消毒。座席指定の席は隣との間に2席分が空けられていて各列5名が定員。

静まり返った客席の照明が落ちて6人のプレイヤーが登場。「フィレンツェの思い出」で、全員が食らいついてくる冒頭をイメージして身構えていたら、柔らかく穏やかな弦の織り成す調べが始まった。サプライズのオープニングを用意してくれていたなんて!と感動(このシュトラウスも事前に発表されていたことをあとで知ったのだが)。

6つの弦楽器による熟成した響きはホレボレする美しさ。深くて長い呼吸から紡ぎだされる歌が対話し、歌い継ぎ、唱和する。滑らかで柔らかな調べがホールの隅々まで豊かに響き、そのただ中に身を置いている幸せ。ホール自体も楽器であることを実感。これは実際のホールでしか絶対に得られない感動だ。あまりの美しさにウルっときた。

続いて「フィレンツェの思い出」。充実の極み!圧巻の名演だった。6人のパッションが炸裂し、血がたぎるような熱気に溢れ、聴き手を別の次元へ連れ去って行くよう。力任せに演奏するのではなく、それぞれの波がアンサンブルとして重なり、増幅し合って、とてつもなく巨大なエネルギーを持つ大波を生み出す効果。どこまで加速するの?と思うほど一気果敢に突き進んで第1楽章を終えたときは、まさに音楽を全身で「体験」した感覚。

穏やかな第2楽章では各プレイヤーのソロやデュオにホレボレ。郷愁、あこがれ、愛、切なさ… 様々な感情が呼び覚まされる。一人一人が音楽に愛情を注ぎ、大切に歌い上げるのが伝わってくる。深い味わいをくっきりと聴かせる安達さんのヴィオラの歌にはハッとした。

演奏も後半に入ってくると、終わりが近づいてきたことに名残惜しさが募ってきた。それにしても凄いのは、各プレイヤーの抜群の腕前もさることながら、アンサンブルとしてじっくりと練られた高い完成度。もう3カ月も人前で演奏していないというプレイヤー達だが、演奏の勘が鈍るどころか、益々研ぎ澄まされているよう。この鋭い集中力は曲の最後の最後まで持続した。空中分解スレスレのスリリングな演奏というのもあるが、今日の演奏は果敢な「攻め」の姿勢を常に保ちつつ、そこには一種の余裕と安心感さえあった。大人の魅力!「フィガロ」のパッセージからは更にギアアップ。ドキドキしてトリハダが立ったと同時に、生の演奏ってホントにいいもんだとジーンと熱いものがこみ上げてきた。そして終演。素晴らしい時間だった。ホールは熱い喝采に包まれた。大幅な人数制限で開催されている分、聴けなかった人の分も拍手を送った。

尾池さんがマイクを取って、コロナ禍で人生観が変わったこと、聴衆の前で演奏できることの喜びを語った。期待していたアンコールはなし。ブラームスでなくていいので今の曲の一部でもやってほしかったな…

ハクジュホールのこの試みは、コロナがいつ終息するか全く見えない状況下においてとても大切だと思う。今日のコンサートはそれだけに重い意味を持つし、生の演奏会を有難く感じる。だけど敢えて言わせてもらえば、「演奏会を聴けるということがどんなに恵まれてあり難いことか」なんて云う状況が続き、演奏会をひとつ開催することがそんなにも貴重なことになっている現状こそ異常なのだ。コロナがたとえ終息しなくても、演奏会をもう少し日常の一コマとして取り戻すためのハクジュホールの試みに期待したい。

♪この演奏会の全編がYouTubeで聴けます。

超久々にコンサートを聴いて(江口 玲&川口成彦 ピアノリサイタル) 2020.6.19 紀尾井ホール
上原彩子 ピアノリサイタル 2020.3.25 東京オペラシティコンサートホール
新型コロナウイルスによるコンサート中止に思う 2020.3.21
アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル 2020.3.15 東京オペラシティコンサートホール

♪ブログ管理人の作曲♪
第1行進曲「ジャンダルム」
森田利明指揮 ヤマハ吹奏楽団


拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け

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