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神尾真由子 & ミロスラフ・クルティシェフ デュオ・リサイタル

2012年11月25日 | pocknのコンサート感想録2012
11月24日(土)神尾真由子(Vn)/ミロスラフ・クルティシェフ(Pf) デュオ・リサイタル
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調y Op.30-2
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第8番ト長調 Op.30-3
3.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調 Op.47「クロイツェル」
【アンコール】
1.モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ第28番ホ短調 K.304~第2楽章
2.ラヴェル/ヴァイオリン・ソナタ~第3楽章

去年、N響との共演でプロコフィエフのコンチェルトで初めて聴いた神尾真由子のヴァイオリンにいきなり魅せられ、今年3月に東響との共演で聴いたコルンゴルトのコンチェルトで、その妖艶なヴァイオリンにノックアウト、そのあとすぐこのリサイタルのチケットを買って楽しみにしていた。曲はオールベートーヴェン。プロコフィエフやコルンゴルトとは全く毛色の違う音楽でも、神尾はきっとあのむせるほどの色気を振りまいてくれるに違いない、そんな期待を抱いて臨んだリサイタル。

神尾さんのヴァイオリンの音は、ベートーヴェンのソナタでもやっぱり濃厚で艶やか。たっぷりと呼吸して、深くて柔軟で滑らかな歌を聴かせた。けれど、深刻な雰囲気で始まるハ短調のソナタでは、そんな色香を厳しく熱い闘志が更に上回った。クルティシェフのピアノとがっちりと組み合い、しなやかに力強く曲を掘り下げていく。これはとても能動的で、掘り下げたあとに音が自らを主張して深いところからぐうっと身を起こして語りかけてくる。垂直方向の幅が広く、音楽が立体的に立ち上がってくる。第2楽章では、ヴァイオリンの瑞々しい伸びやかな歌が、ピアノが主導権を握るところでも存在感を示しているのが神尾さんらしい。次の第8番は、ハ短調とは一転した明るく簡潔な曲調であるため、屈託のない伸びやかさと、躍動感のある呼吸がいいリズムを作っていた。

後半は「クロイツェル」。無伴奏の序奏を熱く粘っこく、じっくり歌う。颯爽と入るクルティシェフのピアノにも熱がこもり、神尾のヴァイオリンと濃厚に歌い交わす。この第1楽章、末端までエネルギーを送り込み、歌うところはためらうことなくたっぷりと歌い、むせかえるような若さに満ちた快演。第2楽章では、神尾の持ち前の美音が惜しみなく降り注ぎ、ヴァイオリンが歌う楽器であることをあらためて実感。第3楽章は、第1楽章のボリューム感とは対照的に楽し気で清々しい気分に満ちた心浮き立つ演奏。個人的には、もう少し濃い目で重心が低い方が全体のインパクトが更に強烈になるように思ったが。

今日のリサイタルでは、さすがに先のコンチェルトのときのように、オケを従えて女神のような妖艶な色香を振りまく姿とは少し異なり、ヒアニストと対峙し、ひとつひとつ積み上げていく、堅実な神尾真由子の姿を見た。同時に、コンチェルトではただただひれ伏したくなる女神だった神尾真由子が、今日はその魅力を少しばかり持て余しているように感じるところもあった。けれど、ベートーヴェンでもほしいままに女神を演じる姿よりも、今日のように堅実に取り組む姿に接したことで、まだまだ大きく成長するに違いない神尾真由子の進化の可能性がより楽しみになった。

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