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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル2011(8/24)

2011年08月24日 | pocknのコンサート感想録2011
2年振りに訪れた草津国際音楽アカデミー、いつものように関先生にお世話になって別荘に1泊させて頂き、24日と25日の演奏会、それに25日はインデアミューレのオーボエのマスタークラスとソプラノ歌手、リン・ドーソンの公開レッスンを聴講した。

8月24日(水)岡田博美とパノハ弦楽四重奏団の夕べ
草津音楽の森国際コンサートホール

【曲目】
1. バッハ/ブラームス編曲/左手のためのシャコンヌ
2. リスト/ラ・カンパネラ
【アンコール】
リスト/コンソレーション第3番
3. ヤナーチェク/弦楽四重奏曲 第1番 「クロイツェル」
4. ザレンプスキ/ピアノ五重奏曲 ト短調 Op.34

【アンコール】
ザレンプスキ/ピアノ五重奏曲~第3楽章

【演 奏】
Pf:岡田 博美/パノハ弦楽四重奏団

今年のアカデミーのテーマは、生誕200年を迎えたリストと、リストにちなんだハンガリーやボヘミアの音楽。この日のプログラムもそのテーマに沿って構成された。

まず岡田博美のピアノソロ。最初のブラームス編曲による左手のためのバッハのシャコンヌは、ブゾーニ版のようなドラマチックで派手な編曲ではなく、バイオリンの原曲の音がそのまま鍵盤上に移されたようなシンプルなもの。それだけに演奏者の感性や作品への深い洞察が問われる。岡田は一つ一つの音、フレーズを大切にしながらとても丁寧に弾き進んで行った。派手な演奏効果を狙ったようなパフォーマンスは一切なく、音楽の内面の声を切々と伝え、しっとりとした深みのある演奏を聴かせてくれた。

続くラ・カンパネルラは岡田にしては珍しく少々難ありだったが、アンコールに演奏したコンソレーションは絶品。聴き手の心に親密に寄り添い、優しく包み込む温かさは、クールな岡田の別の一面に触れた思いもあるが、ベーゼンドルファーという楽器の特性も関係しているのかも知れない。

続いてパノハ弦楽四重奏団が登場し、ヤナーチェクの代表作の1つでもあるカルテット「クロイツェル」を演奏した。チェコの代表的なカルテットである「パノハ」は毎年草津にやってくるので聴く機会も多いが、このアンサンブルの音色にあらためて聴きほれた。東欧のカルテットといっても最近はめっきり聴かなくなった、古き良き時代を思わせる温かな木のぬくもりの響きは、聴いてすぐにカルテットを当てることができるほど特徴的。

控えめな音量に、以前は物足りなさも感じたが、メンバーは弓を一杯に使い、この悲劇的な音楽を全身で表現しているのが伝わってくる。独特な音色によって単に東欧の懐古的な空気を運んでくるのではなく、4人の心の奥底からの熱いメッセージを伝える、極めて能動的な演奏が展開された。瞑想的とも言える内面の吐露からは、直接的にアグレッシブに訴えかけてくるような演奏よりも、心の痛みを伝えていた。

休憩後には、このパノハ・カルテットに前半の岡田博美が加わり、とても珍しいザレンプスキのピアノ・クインテットが演奏された。草津ではこうした珍しい曲が取り上げられることは少なくない。「隠れた名曲」に出会って嬉しくなることもある一方で、「陰の作品」として埋もれていても仕方なかったな、と思ってしまう曲もある。そんな中、このザレンプスキの作品は、まさしく「隠れた名曲」だと感じた。

全体に哀愁と熱気を帯び、各パートは各々の持ち味が十分発揮できるように書かれていて、アンサンブルとしての構成や、響きもとても充実している。特に、ロマンチックで、かと言ってそれに溺れてしまわない節度を持った第2楽章と、民族の血が躍るような第3楽章が印象的。第2楽章では、パノハの各パートの味わい深い歌がたっぷりと聴け、第3楽章では、彼らならではのリズム感や匂いが発散されて、聴き応え十分。

岡田のピアノもいい。単に「合わせ」のレベルで呼吸が合っているだけでなく、同じ空気を感じ取り、カルテットのメンバーと同じ歌を情熱的に奏でていた。この演奏には、ピアノはやっぱりベーゼンドルファーで良かった。


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