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ベルリン・バロック・ゾリステン

2007年10月11日 | pocknのコンサート感想録2007
10月11日(木)ベルリン・バロック・ゾリステン
<ライナー・クスマウル プロジェクト 5>
トッパンホール

【曲目】
1.ヘンデル/オペラ「アルチーナ」より 弦楽のための組曲
2. モーツァルト/チェンバロ協奏曲 ニ長調 K107 [原曲 J.C.バッハ:クラヴィア・ソナタOp.5-2]
 Cemb:ラファエル・アルパーマン
3. テレマン/ヴィオラ協奏曲 ト長調 TWV51:G9
 Vla:ヴォルフラム・クリスト
4. ピゼンデル/弦楽のためのソナタ ハ短調
5. バッハ/ヴァイオリン協奏曲 イ短調 BWV1041
 Vn:ライナー・クスマウル
6. パッヘルベル/カノン
7. テレマン/弦楽のための協奏曲 変ホ長調 TWV43:Es1
【アンコール】
1.ヴィヴァリデォ/弦楽のための協奏曲 ト短調RV156~第1楽章
2.ヘンデル/オペラ「ソロモン」~シバの女王の入城

クスマウルがベルリン・フィルのコンマスをやっていた時代にベルリン・フィルのメンバーで結成したというベルリン・バロック・ゾリステンのコンサートは、バロックの名曲に加え、クリスチャン・バッハの作品のモーツァルトによるクラヴィーアコンチェルトへの編曲版が入る楽しいプログラム。

ベルリン・フィルのメンバーがやるバロックはモダンな演奏かと思いきや、ノン・ヴィヴラート主体のピリオド風な演奏。ただ、完全なピリオド奏法ではなく、ピリオド奏法のメリットも取り入れた、という感じ。

一番心惹かれたのはテレマンのヴィオラ協奏曲。クリストのヴィオラは本当に素晴らしかった。海のように深く、包み込むような、柔らかく陰影に富んだ響き、音色、語り口… 大地の底から湧き上がってくるような温かく人間味溢れる音にどっぷりとつかった。何か特別な楽器を使っているのかと思うような(プログラムによると楽器はCh. Boullangier Paris 1867を使用とのこと)その音色は、バックのアンサンブルから柔らかな光を受けて、特別な存在であるように浮かび上がっていた。もちろん音だけでなく腕前も超一級。ヴィヴラートをかけて朗々と歌っていたが、ノン・ヴィヴラートのオケとの毛色の違いがあるかどうかなんて考えるより、ただただクリストのヴィオラの音にいつまでも浸っていたかった。

ただ、今夜のコンサートでの主役は無論クスマウル率いるアンサンブル全体… であるんだけれど、アンサンブルに関してはこれといった特徴は見出せなかった。思うに、ピリオド奏法というのは、ちょっと取り入れるというのではなく、徹底的に極めないと、ピリオド奏法独特の雄弁さや、ふわりとしたデリケートさは出なんじゃないかな… 見当外れかも知れないが。かえってモダンな演奏に徹したほうが、ベルリン・フィルの良さが出るのではないかという気がした。

また、クスマウルのヴァイオリンはこの演奏会で聴いた限り、職人的な巧さは感じても、ソリストとしてはもう一つ面白味に欠ける、なんて言ったら叱られるだろうな…

それでもプログラム最後のテレマンの弦楽合奏の協奏曲は、熱のこもった良い演奏だったと思うし、アンコールのヘンデルの充実した響き、嬉々とした高揚感は大いに会場を盛り上げた。それにアンコールで曲を紹介したヴァイオリンのヘーシュの日本語はハンパじゃなくて流暢。外来演奏家が「どーもアリガトウございまス!」なんて言っただけで会場に笑いと拍手が起きる次元とはわけが違う(こういう場面で笑って拍手するのは日本人としておれは恥ずかしいと思うのだが…)。一体この日本語、どこで習ったんだろうか、なんてことを考えながら帰路についた。

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