稀勢の里よ、よくやった。
周りからのプレッシャーは半端なく、
場所直前の調整も万全でなく、
対戦成績も五分で決して得意な相手ではなく、
同部屋の関取衆はみな負けてしまい、
何よりも土俵に集中しきれない状況で、
よくぞ落ち着いて前に出る相撲を取りきった。
取り組み後、土俵下で亡き親方に白星の報告をするかのように、
天を仰いでいたときの潤んだ瞳に、
こちらも思わず胸が熱くなった。
普段、滅多に喜怒哀楽を表に出さない君が、
土俵下であのような姿を見せるのは、
よっぽどのことだろう。
でも、いつまでも悲しんでいるわけにはいかない。
これから厳しい毎日が続くが、
君には、やらなければならないことがある。
親方のことは、一旦、胸の奥にしまって、
今日からは土俵に、そして目の前の相手に集中しよう。
また、十三日後に、親方に嬉しい報告が出来るように・・・