ニュース#163
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太陽系外の他の恒星に、地球のような岩石惑星と思われる惑星が見つかったょ。地球の役7.5倍の重さで、これまで発見された恒星の惑星の中では最も小さな惑星なんだ。今回発見された惑星の昼間の表面温度は200~400℃とかなり高くて生命が生きていくのにはちょっと厳しい環境だけど、これからも地球のような小型の岩石惑星がいっぱい発見されていくはずだょ。
この惑星が発見されたのはグリーゼ876っていう名前の恒星だょ。みずがめ座の方向、地球から約15
光年離れたところにあるんだ。太陽の約3分の1の重さしかない、赤くて小さな恒星で、
赤色矮星っていう種類の恒星だょ。赤色矮星は小さくて暗いために肉眼で見ることはできないけれど、実は銀河系の中では一番多い種類の恒星なんだ。グリーゼ876は惑星が発見された恒星の中では最も小さい恒星だょ。
実はこのグリーゼ876には既に2つの恒星が発見されているんだ。これらの惑星は
ドップラーシフト法っていう方法を使って発見されたょ。まずはそのドップラーシフト法について簡単に説明しておこうね。
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オリンピックにハンマー投げっていう種目があるよね?重い球にひもがついてて、選手はそのひもを持って振り回し重い球を遠くまで投げるんだ。ハンマー投げのように重いものを振り回すと、振り回している人間も大きく揺さぶられるょね。球が重いほど遠心力が強く、球が外側へ飛んでいこうとして、人間を引っ張るからなんだ。
これと同じことが恒星とその周りを回る惑星の間でも起こってるょ。恒星と惑星の間には重力(
万有引力)がはたらいているから、惑星の公転に合わせて、恒星もわずかに揺さぶられるんだ。万有引力は重さ(質量)に比例し距離の二乗に反比例するから、惑星が重く恒星に近いほど強くなり、恒星の振動も大きくなるんだ。
でも恒星の振動はわずかで、それを直接望遠鏡で観測することはできないょ。そこで
光のドップラー効果っていう性質を利用するんだ。近づいてくる物質から出る光の
波長は縮み、近づく速度が速いほど大きく波長が縮むんだ。逆に遠ざかる物質から出る光の波長は延びるょ。つまり恒星が振動して地球の方向に近づくときには波長が短くなり、地球から遠ざかる方向へ動くときには波長が長くなるってわけ。恒星の光の波長のわずかな変化を捉えれば、恒星の振動の大きさや周期がわかり、そこから惑星の軌道や重さ(質量)が計算されるんだ。このようにして惑星を発見する方法がドップラーシフト法だょ。
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このドップラーシフト法を使って、1998年、グリーゼ876に最初の惑星グリーゼ876bが発見されたょ。木星の約2倍の惑星で、グリーゼ876の周りをわずか60日間で1周しているんだ。その後2001年には2番目の惑星グリーゼ876cが発見されたょ。木星の半分くらいの惑星で、周期は約30日間なんだ。2つの惑星の周期がちょうど2:1になってるねぇ。お互いに重力によって影響を及ぼし合っている結果なんだ。どちらも木星や土星と同じように、主にガスでできた巨大ガス惑星だと考えられているょ。このような恒星のすぐ近くを回る巨大ガス惑星を
ホットジュピターと呼ばれるんだ。恒星に近いためにガスは高温になっていて、同じ巨大ガス惑星でも太陽系の木星や土星とはかなり異なる姿をしているょ。
ドップラーシフト法を使って2つの惑星の軌道が詳しく計算されたょ。その結果、2つの惑星は互いに影響を及ぼし合って軌道を変化させていることがわかったんだ。ところが、2つの惑星の存在だけでは、それら2つの惑星の軌道の変化を完全に説明することができないことがわかってきたょ。もしかすると第3の惑星があるのかも知れない。科学者らはもう一つの惑星が存在すると仮定してもう一度計算し直してみたんだけど、そうしたら計算結果と観測結果がよく一致することがわかったんだ。
予想される第3の惑星は他の2つの惑星に比べるとかなり軽いと推定されたから、その惑星によるグリーゼ876の振動の大きさも小さいと考えられたんだ。だから、ドップラーシフト法でこの惑星を発見するためには、ほんのわずかな波長のずれを検出することができる観測装置を使わなくちゃいけないってわけ。そこで研究者らが使ったのが、ケック望遠鏡の高分解能分光計(HIRES : HIgh-REsolution Spectrometer)だょ。分光計っていうのは、光を波長ごとに分解する観測装置のことで、高分解能っていうのはわずかな違いを区別できるってことなんだ。このHIRESと新しく開発されたCCD検出器を使えば、わずか1m/sの速さによる波長の変化そ捉えることも可能だょ。そして研究チームはついに第3の惑星グリーゼ876dを発見したんだ。
下の3つのグラフは各惑星の運動によるグリーゼ876の振動を表してるょ(Eugenio Rivera et al提供)。下から、最初に発見されたグリーゼ876b、グリーゼ876c、そして一番上が今回発見されたグリーゼ876dだょ。横軸が時間で、縦軸が振動の速度なんだ。惑星の重力の影響を受けて、グリーゼ876が周期的に振動してるのがわかるね。特にグリーゼ876c(中央)の軌道は他の惑星の重力の影響を受けて変化していて、グラフにもばらつきが見られるね。
新しく発見された惑星グリーゼ876dの重さは地球の役7.5倍だょ。これまで太陽系外の恒星で発見された惑星としては最も小さいんだ。地球の約15倍の惑星は発見されてるけど、地球よりもむしろ天王星や海王星に似ていて、厚い大気に覆われた惑星だと考えられているょ。今回発見された惑星はその重さから、多分地球のように主に岩石でできた岩石惑星みたいだねぇ。とは言っても岩石でできていることが観測によって直接確かめられたわけじゃないょ。
実はこのような岩石惑星と思われる小さな惑星は、これまでも3つ発見されてるんだ。でもこれら3つの惑星はPSR 1257+12と呼ばれる
パルサーの周りを回ってるょ。パルサーっていうのは恒星が
超新星爆発を起こして死んだ後に残る小さな天体なんだ。だから惑星と言っても、普通の恒星の周りを回る惑星とは大分違うんだ。
新しく発見された惑星グリーゼ876dの、中心にあるグリーゼ876からの距離は0.021
AU(320万km)しかなく、これはグリーゼ876の半径の10倍程だょ。太陽系で言えば、太陽‐水星間距離の10分の1未満なんだ。その軌道を1.94日で1周しているょ。
恒星から近いために、表面温度は200~400℃くらいみたい。地球に似た岩石惑星とは言っても生物にとってはかなり厳しい環境かも知れない。ただこれだけの質量を持っていることから、恐らくこの惑星は大気を持ってるはずだょ。その大気の成分や量によって惑星表面の環境は大きく左右されるから、生命の存在の可能性は0ではないかなぁ。
下の表は、グリーゼ876と、今回発見された惑星を含めたグリーゼ876の周りを回る3つ惑星のデータだょ。
中心恒星データ | | |
名称 | | Gliese 876 |
赤経 | (h m s) | 22 53 13 |
赤緯 | (°′″) | -14 15 13 |
距離 | (パーセク) | 4.72 |
スペクトル型 | | M4V |
実視等級 | | 10.17 |
質量 | (太陽質量) | 0.32 |
鉄含有率 | (Fe/H) | 0.02 |
惑星データ | | | | |
名称 | | Gliese 876 b | Gliese 876 c | Gliese 876 d |
質量 | (木星質量) | 1.935(±0.007) | 0.56 | 0.023(±0.003) |
軌道長半径 | (AU) | 0.20783(±0.00005) | 0.13 | 0.0208067(±0.0000007) |
公転周期 | (日) | 60.94(±0.013) | 30.1 | 1.93776(±0.00007) |
離心率 | | 0.0249(±0.0026) | 0.27 | 0 |
昇交点経度 | (°) | 175.7(±0.6) | 330 | 0 |
軌道傾斜角 | (°) | - | 84(±6) | - |
近星点通過時 | (ユリウス日
2.450.000) | 106.2 | - | - |
合通過時 | (ユリウス日
2.450.000) | - | 2517.633(±0.051) | 2490.756(±0.027) |
研究チームは他にも150個以上の赤色矮星を観測しているんだけど、今のところ惑星が発見されている赤色矮星はグリーゼ876だけ。現在の技術では発見できない小さな惑星があるのかもしれないねぇ。とにかく今後地球のような小型の惑星がたくさん発見されていくことは間違いないょ。その中には地球のように生命が生きている惑星もあるかもしれないんだ。
光年 光が1年間に進む距離で、約9.460528348兆kmだょ。他の恒星や銀河などの天体までの距離を表すのに使われるんだ。
赤色矮星 一人前の恒星としては最も小さな星のグループ。温度が低いために赤く見えるんだ。エネルギー源となる水素を少しずつ使うから寿命も長く、数兆年にもなるょ。表面で起こるフレアと呼ばれる爆発現象が活発なのが特徴なんだ。
ドップラーシフト法 惑星の公転に合わせてその重力によって恒星が揺さぶられる現象を利用して、恒星の振動を観測することによって惑星を発見する方法のことだょ(詳しくは本文参照)。振動の速度の測定には光のドップラー効果を使うんだ。
万有引力 質量がある物質はみんな重力を持っていて、2つの物質の間には引力がはたらくんだ。これを万有引力というょ。万有引力の大きさFは、それぞれの物質の質量M、mに比例し、物質間の距離rの二乗に反比例するんだ。この法則を万有引力の法則といって、数学者ニュートンが発見したんだょ。数式で表すとこんな風になるょ。
M × m
F = G ――――
2
r
Gは万有引力定数。
光のドップラー効果 光のドップラー効果は、光を出す天体が近づく(または遠ざかる)速度が速ければ速いほど、光の波長が短くなる(または長くなる)現象だょ。つまり光の波長がどれだけずれているかを測定すれば、天体の近づいてくる(または遠ざかっていく)速度が計算できるんだ。
波長 光は波となって伝わっていくんだけど、その波の間隔を波長っていうんだ。
ホットジュピター 恒星のすぐ近くを回る、主にガスでできた大型の惑星。大きさは木星や土星などとほとんど同じなんだけど、恒星のすぐ近くにあるから温度がとっても高いんだ。
パルサー パルス状に電磁波を出す(点滅させるように光を出す)天体だょ。その正体は高速で回転する中性子星っていう天体なんだ。実際には、電磁波のビームの方向が天体の回転に合わせて回転するために、ビームが地球の方向を横切るとき、地球からは点滅しているように見えるってわけ。
原子っていうのは実は真ん中にある小さな原子核とその周りを回る電子からできてるんだょ。電子はものすごく軽いから、原子の質量のほとんどは原子核の質量ってことになるんだ。でも原子核の大きさは原子の更に1万分の1程しかないんだ!!!この原子核は+の電気を帯びた陽子と電気を帯びていない中性子からできているょ。
太陽より少し重い恒星は燃え尽きて死を迎えると、中心では陽子が電子を取り込んで中性子に変わる反応が進んで、中性子だらけになるんだ。この恒星の中心部が中性子星になるんだょ。中性子星はものすごく重力が強いから、原子でさえつぶされてしまって中性子になっちゃうんだね。さらに重い星では中性子までもがつぶされて、そうなるともはや星を支えるものが何もなくなって星の中心の1点に向かって物質がとめどなく集まる重力崩壊っていう現象が起こるんだ。これがブラックホールだょ。
超新星爆発 恒星の内部では核融合反応っていう反応が起きてて、ものすごいエネルギーを生み出してるんだよ。そのエネルギーを使って恒星は光ってるんだけど、水素がなくなると(つまり燃料がなくなると)寿命ってことになるんだ。例えば太陽は誕生してから約45億年たつけどこれから約50億年間今のように光り続けるって考えられてるんだ。
超新星っていうのは太陽よりずっと重い恒星が燃料を失って死ぬ間際に起こる大爆発のことだょ。爆発して星の外側が吹っ飛ぶと、中心にはとっても密度が高い(ぎゅっとつまって重い)中性子星やブラックホールが取り残されるんだ。それまでは水素などを使った核反応が星を支えていたんだけど、燃料がなくなると支えをなくして自分の重さに耐えられなくなり、自分の重さで自分が潰されちゃうってわけだね。
爆発の時にはその星の成分、つまり水素や核反応で恒星自らが作り出したいろんな物質、その他様々な粒子を光とともに撒き散らすんだ。
AU 天文単位。長さの単位の一つで、およそ地球と太陽の平均距離。=149597870km