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WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第17回

2009年12月26日 12時14分55秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第3章 セルフレジは経営者のリーダーシップで決まる

第27条、第28条


【2009年10月26日(月)】

◆第27条 経営者が効果をチェックする

 セルフレジ導入は経営者の決断、リーダーシップが成否に大きな影響を与える。効果のチェックは導入を決断した経営者が行うことが必要である。店舗経営は企業経営だということを強調してきたが、その視点に立てば、経営者が効果のチェックにかかわることは経営者が「経営の現場を知る」ということである。
 効果をチェックする時、現場の目と経営者の目が必要になる。重要度に優劣があるわけではない。両方が同じように大事である。立場が違うだけである。経営者が決断する時は、「経営」という大きな全方位的な視点で判断している。レジ待ち時間が短縮した。顧客のプライバシー保護に効果があった。エンターテイメント性が顧客に喜ばれている。リピート利用が増えている。採用難が解消した。従業員不足が解消した。人件費の削減ができた。これらの直接的な効果だけを見ている限りでは、業務が改善できたという現場視点の効果チェックと言える。しかし、セルフレジの導入効果が現場の業務改善の域を出て、顧客サービスが向上したということになれば、これは店舗だけの問題でなく、経営の問題に押し上げられる。顧客満足度を向上させ、来店客数を増やし、顧客の来店頻度を高め、客単価を上げるように努力するのが小売業経営であるからである。経営者は企業経営におけるセルフレジ効果の位置付けを考えている。極論すれば、数字で表せない効果をも経営者は見ている。経営者が人材(人財)を決算書に表れない会社の資産と言うのと同じである。
 効果チェックの結果は戦略につながる。戦略の決定は経営者が行う。そうした視点で効果をチェックできるのは経営者しかいない。経営者には企業経営の立場で、現場で効果をチェックすることが求められる。


◆第28条 経営者が効果を評価する

 セルフレジの導入は経営者が決断し、準備から効果チェックまでリーダーシップを執ることが大事である。経営者がリーダーシップを執ってきたのであれば、評価も経営者が判断すべきである。経営者の決断の中には、経営者としての「仮説・検証」がある。仮説を立てて導入を決定し、検証することが評価となる。
 前条で、現場の目と経営者の目による判断の重要度に優劣はない、とした。同様に、現場の視点と経営者の視点で、客観的な評価が必要である。その評価においては、両方の視点が重要である。その上で、大所高所から見て、最終的な評価の結論は経営者が下すものだということである。
 経営者の評価は、次の経営方針につながる。セルフレジの導入効果が経営の問題に押し上げられた時、経営視点の評価では2つのことが考えられる。1つ目はプラス効果である。これは更なる積極的な導入に結び付いていく。2つ目は、当初の仮説より効果が上がらなかったという意味でのマイナス効果である。概して、顧客サービスが向上したというのは、セルフレジ導入先行企業の評価である。先行企業ほど評価ができないとすれば、どこに問題点があるのか。問題点は企業内にあるのか、商圏特性、顧客特性にあるのか。問題点が把握できれば、それへの対応が、次の経営方針となる。いずれの評価にしても、企業経営の視点に立てば、その評価は、次の成長、発展のための経営方針と結び付くのである。

【お知らせの修正】2009年12月14日(月)の「お知らせ」を修正しました。(12月26日)

2009年12月26日 12時02分02秒 | お知らせ
【お知らせ】2009年12月14日(月) セルフレジ成功の100ヶ条 15日より連載を再開します

【2009年12月14日(月)】 

 上記タイトルの【お知らせ】を12月26日(土)に本文中★印を修正しました。


 『WINS通信』読者の皆様へのお詫びとお知らせ

 『WINS通信』は創刊時より《【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く》を連載してきましたが、10月23日付・第16回(第25条、第26条)で中断していました。章の構成(第1章~第10章)は変わりませんが、第4章以降の各条(第31条以降)の構成と原稿の書き方を再検討していました。第3章までは従来通りとし、第4章以降、各条を簡潔に要点をまとめていきたいと考えています。毎日のコラム原稿に、優先的に時間を割き、連載の見直し作業が後回しになってしまいましたことにつきまして、続けて読んでいただいていた読者の皆様ならびに新しく読者になっていただきました皆様に、心よりお詫び申し上げます。

 12月15日(火)より【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】の連載を続けさせていただきます。

 ★なお、第17回の原稿の日付は当初予定の10月26日(月)となります。その後も当初予定の原稿日付順に投稿します。

 ★ただし、投稿の日付は最新の投稿日となります。トップページのカテゴリー欄の『最新記事』は投稿日の新しい順に表示されるため、読者の皆様には最新の投稿記事を読んでいただきたいからです。1日も早く遅れを取り戻してまいります。

 ●本「お知らせ」原稿は上記の2ヶ所の★印を修正しました。第17回以降の原稿を12月26日(土)に『最新記事』の上位に移動させます。

 また、連載を優先しますので、各コラムは掲載が遅れることが予想されますが。こちらも当初予定の日付順に遅れを取り戻しつつ、投稿してまいります。ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

 以上、連載中断のお詫びと再開等のご連絡をさせていただきました。

 今後とも、『WINS通信』のご愛読を、よろしくお願い申し上げます。


                                                            WINS企画 東 秀夫

【お知らせ】2009年12月14日(月) セルフレジ成功の100ヶ条 15日より連載を再開します

2009年12月14日 16時43分43秒 | お知らせ
【2009年12月14日(月)】

『WINS通信』読者の皆様へのお詫びとお知らせ

 『WINS通信』は創刊時より《【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く》を連載してきましたが、10月23日付・第16回(第25条、第26条)で中断していました。章の構成(第1章~第10章)は変わりませんが、第4章以降の各条(第31条以降)の構成と原稿の書き方を再検討していました。第3章までは従来通りとし、第4章以降、各条を簡潔に要点をまとめていきたいと考えています。毎日のコラム原稿に、優先的に時間を割き、連載の見直し作業が後回しになってしまいましたことにつきまして、続けて読んでいただいていた読者の皆様ならびに新しく読者になっていただきました皆様に、心よりお詫び申し上げます。

 12月15日(火)より【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】の連載を続けさせていただきます。

 なお、第17回の掲載の日付は当初予定の10月26日(月)となります。その後も当初予定の日付順に掲載し、1日も早く遅れを取り戻してまいります。

 また、連載を優先しますので、各コラムは掲載が遅れることが予想されますが。こちらも当初予定の日付順に遅れを取り戻しつつ、投稿してまいります。ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

 以上、連載中断のお詫びと再開等のご連絡をさせていただきました。

 今後とも、『WINS通信』のご愛読を、よろしくお願い申し上げます。


                                                            WINS企画 東 秀夫

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第46回 今はネット通販が「安・安・安・近」で成長

2009年12月08日 23時02分51秒 | 今日の気づき
【2009年12月8日(火)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 12月8日(火) 朝刊 3面


◆記事の見出し

 《年末商戦ヤマ場》《「巣ごもり」「生活防衛」鮮明》《ネット通販好調》《百貨店・スーパーは苦戦》


◆記事の内容

 ★先週から冬のボーナス支給が始まり、ヤマ場を迎えた年末商戦は手軽で割安な通信販売はネット大手の売上が前年比1~2割伸び、おせち料理や鍋物が好調である。不振の百貨店やスーパーは前倒しセールなどで前年並みを確保するのがやっとの状態である。デフレと所得減で消費市場が冷え込む中で、「巣ごもり」「生活防衛」志向にどう応えるかが明暗を分ける。

 ★「ボーナスサンデー」の12月6日の仮想商店街「楽天市場」の総売上高は30億円超と、昨年12月の日曜日のピークだった14日の実績を上回った。楽天市場は前年比10%以上の伸びで推移している。11月中旬から予約を開始したおせち料理は1.6倍。鍋の食材も値下げ効果で、例えばズワイガニ約1.2㎏5,250円(通常1万500円)などが人気である。年末は通販の最大の商戦期だが、今年はパソコンや携帯電話で価格を比較しながら割安商品を購入する消費スタイルが追い風となった。

 ★巣ごもりが直撃しているのは旅行である。JTBの年末年始(23日~1月3日)予測では、国内外旅行の人数・費用とも1999年以来、10年ぶりの低水準である。

 ★百貨店は通常なら年明けに実施するセールの前倒しが相次いでいる。大丸東京店は先週から8日まで全館セールで冬物コートなどを均一の格安で提供し前年並みの売上を確保している。これといった販促を打ち出していない高島屋と伊勢丹は1割程度の減収傾向から抜け出せないでいる。イオンは12月も厳しく、10~14日にグループのショッピングセンターに入居する専門店約2万2,500店とジャスコなど約500店で1~2割引のセールに踏み切る。



●今日の気づき

 ★所得不安などで生活者の消費行動が消極的になっていることは間違いないが、ネット通販好調、百貨店・量販店不振は、業態自体への生活者の支持マインドの変化を反映したもので、あまり驚きは感じない。当然と言える。所得事情が改善しても、この傾向は変わらず、むしろ余裕が出た支出が、よりネット通販に向かうのではないだろうか。

 ★楽天市場が前年比10%以上の伸びで推移しているというので、楽天㈱の2009年度(決算期:12月)第3四半期の決算説明会の資料を見てみた。売上が伸びているということは出店店舗数も伸びていると思われるので、そのデータを見るためである。同資料によると、2009年度第3四半期の契約済店舗数は30,203店舗である。同社は前四半期までは出店店舗数を各四半期最終月に月額利用料を課金する課金店舗数で計算し、2009年度第3四半期からは四半期末の契約済店舗数で表示するように変更した。従来の課金店舗数ベースでは2009年度第3四半期の出店店舗数は30,602店舗となる。これは前年同期に比べて5,192店舗増えて、20.4%の伸び率である。出店店舗数の増加が楽天市場総売上高の伸びに好影響を与えていることが考えられる。

 以下に、直近四四半期(直近1年間)の出店店舗数をあげてみる。(店舗数は課金店舗数)

 2009年度第3四半期 30,602店舗 (2008年度第3四半期 25,410店舗)  前年同期比 120.4%

 2009年度第2四半期 28,969店舗 (2008年度第2四半期 24,273店舗)  前年同期比 119.3%

 2009年度第1四半期 27,258店舗 (2008年度第1四半期 23,176店舗)  前年同期比 117.6%

 2008年度第4四半期 26,223店舗 (2007年度第4四半期 22,396店舗)  前年同期比 117.1%

 ★ネット通販の伸びを支えている大きな要素に、まず商品の「安心」、「安全」がある。自らネットのバーチャル店舗で買物をした経験がある。同じ製造業者の同じ商品をリアル店舗で見たことがある、買ったことがある。ネットでその商品の評価を調べることができる。その評価の信頼性を友人に確かめることもできる。安心の根拠を得る環境がネット上でも拡大している。商品の質が悪いとネット市場で淘汰されていく。ネット市場で生き残り成長していくためには品質の向上は不可欠である。ネット通販の便利さもさることながら、全体的な品質の向上が生活者の消費マインドをとらえていると言える。

 ★次にネット通販は「安い」ということがある。価格比較がネット上で行える。リアル店舗との価格比較もできる。有名店や有力企業はホームページを開設しネット販売を行っていることが多く、商品によってはチラシ広告が入ることもあり、店舗に足を運ばなくてもパソコンの前でリアル・バーチャルの店頭価格比較が行える。自分にとっての値ごろ感で売る店舗、最安値で売る店舗を容易に見つけることができる。

 ★次にネット通販は買物をする場所が「近い」。自宅で買物ができ、移動中でも携帯電話から買物ができる。机の上の目の前のパソコンや移動中の携帯電話が「店舗」である。その中には世界中の店舗があり、世界中で24時間営業をしている。究極の近さに店舗が無数にあることになる。

 ★ネット通販は「安心」、「安全」、「安い」と3つの「安」と1つの「近」が充実してきている。生活者の買物方法の大きな選択肢の1つとして伸びてきて不思議ではない。

 ★リアル店舗とバーチャル店舗が融合して小売・サービス市場を形成する時代に入って、同一製造業者の同一商品あるいは生活者が求める品質の範囲内の商品であれば、リアル店舗、バーチャル店舗の別なく価格競争は避けられそうにない。所得不安・節約指向に対応した低価格化がそれに拍車をかけているが、店舗の維持・運営費など営業コストが異なるリアル店舗とバーチャル店舗が「売価」だけに焦点を絞ったような価格競争には、いずれは川上・川中・川下で「無理」が露呈してくるのではないだろうか。懸念される。

 ★それでは、リアル店舗が売価以外でバーチャル店舗に優るものは何だろうか。リアル店舗では、直接商品を見られる。店員から生の声で説明を受けられる。他の陳列商品または映像・画像を使って他の商品を見て比較できる。試着できる。試食できる。直ぐに持って帰れる。返品などの手間がない。買物以外に飲食・娯楽関係など他の楽しみがある。等々、多くの優位点がある。しかし、従来の延長では、その優位性も魅力薄となる。様々な商品を見て、試して、買った経験のある顧客には、従来の比較購買(品揃えや見せ方、売り方)では満足を与えられない。店員の説明も同様である。飲食・娯楽も同じである。飲食・娯楽は店舗外の飲食・娯楽と競争しなければならない。「ワンストップ」の意味が変わってきている。店舗内での「ワンストップ」でなく、地域内での「ワンストップ」、移動行程内での「ワンストップ」である。店舗内の各ショップも顧客の移動範囲内でナンバーワンまたはオンリーワンにならないと生き残っていくことは難しくなってきている。

 ★リアル店舗とバーチャル店舗はまだまだ同質化競争の最中のように感じている。同じ消費財の販売でも戦う「戦場」が異なる。同じ格闘技でも、離れて打ち合うボクシングと体をぶつけ合い組み合い投げ合う相撲以上の違いがあるのではないだろうか。「戦場」はボクシングはロープで囲まれた四角いリングで相撲は俵で円を描いた土俵と、その違いは大きいが、ともにリアルの「戦場」である。リアル店舗とバーチャル店舗は、リアルとバーチャルという異次元の違いがある。逆に、それなら、同じ小売業・サービス業といえども、明らかな差異は作れるはずである。顧客の側から見れば、リアル店舗もバーチャル店舗も選択肢の1つである。どちらかの選択肢が便利であればそちらを利用する比重が大きくなり、別の選択肢の利便性が高まれば、そちらの比重が大きくなる。バーチャル店舗の成長がリアル店舗の成長に結び付いていくことを期待したい。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第45回 「買わない」「売れない」には理由がある

2009年12月07日 16時17分48秒 | 今日の気づき
【2009年12月7日(月)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 12月7日(月) 朝刊 1面


◆記事の見出し

 《春秋》


◆記事の内容

 ★若者はなぜ自動車を買わなくなったのか。自動車メーカーで販売戦略に携わる人が、ある研究会で理由をあげた。所得の減少。公共交通の充実する都市部への人口集中。未婚率の上昇。こうした要因に加えて、価値観の変化も大きいという。

 ★「デートにクルマはいらない」と言う女子大学生。「友人を乗せて事故などの責任を追うのが嫌」と言う男子大学生。市場調査で集めた生の声に、クルマ好きが多い自動車メーカーの大人たちは大きな衝撃を受けたという。

 ★借金をしてでも車を手に入れ、仲間や恋人とぶっ飛ばすような青春像へのあこがれは乏しい。今の若者は自動車だけでなく、上の世代と違って「3K商品」に関心が薄いという。マーケティング研究者は近著で、3Kはクルマ、カデン(家電)、カイガイ(海外)旅行を指す、と語る。

 ★消費にまったく興味がないわけではない。ファッション、ゲーム、情報機器、家具、外食への関心は高い。日常的で事故とも無縁。しかも、買う時期を待てば値段が下がるものが多いと、先のマーケティング研究者は言う。買物は先送りがお得というのが若者の常識だとすれば、財布を開いてもらうのは容易ではない。



●今日の気づき

 ★消費の動向は生活者の価値観を反映する。価値観は人の外的要因と内的要因が影響して形成される。外的要因は、経済情勢、社会環境、生活環境、家族構成、学歴、モノ・コトの消費財事情、行動範囲、交友関係、情報環境等々、様々である。一方、内的要因は購買の直接的な推進力となるものだが、それを静的にあげるのは難しい。一言で言えば、感性とか心ということになるが、これは、常に変化し、つかみ難いからである。例えば、所得問題が抑止力となって買いたくても買えなかった商品があるとする。それでは、所得問題が解決すれば、直ぐに購買に結び付くかというと、そうとは限らない。購買に結び付かないこともある。内的要因は外的要因の影響を強く受けるが、影響を及ぼす外的要因は1つとは限らないからである。外的要因と内的要因の関係度合いは常に変化している。

 ★経済が発展途上で、生活物資が社会に不足していた頃は、個人差はあるが、一般的には内的要因に影響を及ぼす外的要因は上位が集中的に大きく、それ以外は影を潜めるほど小さくなって存在していた。大きな外的要因が解決に向かうと、小さな外的要因が顔を出す余地もなく、店頭に置けばモノが売れる時代を到来させた。やがて、影を潜めていた外的要因が大きくなってくると、購買を促す内的要因に様々な外的要因が影響を及ぼすようになり、消費が多様化し、川上・川中・川下が描く筋書き通りには消費が動かなくなってきた。生活者のニーズが見えないと、会員制カードシステムやCRMなどの導入が盛んになってくる。とともに、FSPなど消費を誘導する手段への関心も高まってくる。

 ★外的要因が内的要因に強い影響力を与えるといっても、内的要因は「時流」と表現すればよいのか、実在するが実体の把握が非常に困難な「時代の空気」のようなものにも影響されている。同じ外的要因でも、時として、敏感に受け止められる場合と、そのまま素通りしてしまう場合がある。個人によっても、世代によっても違い、その違いは、様々な外的要因の影響が人の意識の中にその人が気付かないうちに蓄積され、行動に影響を与えるまでに膨らんできていることがある。自らの経験の積み重ねの中で同じく無意識のうちに蓄積されていることもある。購買行動に駆り立てる内的要因は、外的要因と内的要因の様々な絡み合いの中から生まれてくる。

 ★成熟社会は、外的要因がそれぞれの存在感を大きくし、外的要因同士の差を小さくしている。内的要因も外的要因や自己蓄積の影響を受けながら価値観を多様に顕在化させている。そういう状況が生まれている成熟社会も到達点ではない。通過点である。成熟しているとはいえ、成長は続いていく。成長の基軸、変化の基軸が大きく動き出している。今は「成熟」という新しい状況の出発点に到達したところである。今後は、かつて経験したことのない変化がどんどん現れてくると予想される。「変化」という表現が当たっていないかもしれない。今は過去の経験を基準にした「変化」だが、これからは「変化」自体の基軸が変わっていくからである。

 ★その中で、変わらないものと変わるものがある。例えば、パソコンやケータイなど、パーソナル情報機器、モバイル情報機器の発達とインターネットの進化で、テレビCMの効果に変化が出てきているという議論があるが、一方で、視聴者にテレビCMのメッセージがきちんと伝わり、きちんと好感度が得られれば、きちんと売上に反映しているということが客観データに基づいて検証されてもいる。かつて、1台のカメラに2つのレンズが上下に装着されている「二眼レフカメラ」があった。成熟社会のマーケティングは、変わらないものと変わるもの、2つのレンズで焦点を合わす時代かもしれない。しかも、過去の経験を生かしつつ、新しくスタートラインに着き直すという思考が求められる。

 ★室町時代に創業した和菓子の「とらや」は、「伝統は革新の連続である」を信念としている。今は「伝統」の味になっている商品も生まれた時は「革新」だった。今の新商品も、開発者は100年先にも生き続けているものを作りたいという信念を持っている。時代は変化しても、「伝統」を重んじ「革新」を続ける精神は変わらない。成熟社会という新しい時代環境の中で、いかに生活者の「心」をつかむのか。日本の消費市場は、かつて経験したことのない新しいマーケティングの時代に入ったようである。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第44回 「どれがおいしい」でなく「どれもおいしい」

2009年12月04日 18時53分13秒 | 今日の気づき
【2009年12月4日(金)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 12月4日(金) 朝刊 11面


◆記事の見出し

 《ブランド変調 3 危機後の選択》《次の「公式」模索》《巨費投入の宣伝 限界》


◆記事の内容

 ★キリンビールが創業100周年の2007年3月に「ラガー」、「一番搾り」に続く主力ブランドに育てることを念頭に投入した「ザ・ゴールド」が今春、全国の店頭から姿を消した。発売当初につぎ込んだ販促費用は数十億円に上るとみられる。500万本のサンプルを配るなど全国でPRした。テレビCMなどメディアでの宣伝も過去最大級で展開した。しかし、初年度の販売量は予定の6割にとどまり、2008年はさらに販売量がしぼんだ。

 ★原材料高による食品・日用品などの値上がりで、生活防衛から消費者はビールより約3割安い「第三のビール」へのシフトをすでに強めていた。2008年秋の同時危機がこの傾向を顕著にした。経営陣は生産中止を決断せざるを得なかった。

 ★有力企業がヒト・モノ・カネをつぎ込み、消費者へ浸透を図るブランドづくりの「公式」が世界経済の大きな転換の中で機能しにくくなっている。

 ★サマンサタバサジャパンリミテッドは、若い女性向けバッグなどのブランド「サマンサタバサ」を
日本発の世界ブランドに育てようと、広告に米人気歌手のビヨンセさんなど日米欧のセレブを起用するマーケティングを展開、女性のあこがれを誘う手法で成長したが、2008年度は一転して最終赤字となった。同社の寺田和正社長は「有名人と同じモノを持とうとする気持ちが薄れた」と語っている。宣伝手法を見直すほか、海外出店もニューヨークに広告塔をつくるやり方からアジアで地道に広げる戦略に転換する。

 ★ブランドコンサルタント、ビーエムウィン・ブランディングオフィスの水野与志朗社長は「広告など既存の手法だけではブランド価値を高めるのは難しくなった」と指摘する。

 ★1~10月の登録台数が前年同期比22.8%減となるなど低迷が続く輸入車市場で、9月に輸入車初のハイブリッド車(HV)を発売したメルセデス・ベンツ日本は、日本でだけ「ハイブリッド」の文字を記したプレートを車体に付けられるオプションを設けた。トヨタ自動車のHV「プリウス」は一目でプリウスと認識できる外観が特徴である。しかし、ベンツのHVの見た目は普通のSクラスと変わらない。「販売店から外観でハイブリッドを強調できる方が売りやすいと言われた」ことのよる措置だが、老舗ブランドのベンツでさえ消費者の価値観の変化を考慮せざるを得ない。

 ★ティッシュ「ネピア」ブランドを持つ王子ネピアは、テレビCMを取りやめて、その宣伝費の半額を東ティモールのトイレ整備に振り向けたところ、値上げにもかかわらず衛生用紙市場でシェアがわずかに拡大した。

 ★新たな答えを導く公式は、エコや社会貢献なのか。ブランド力を磨くための模索は続く。


●今日の気づき

 ★生活者主権の時代に生活者を「魚」に見立てるのは、してはならないことだが、自分も「魚」の1匹だという認識で、あえて分かりやすい例として、世界の海を泳ぐ魚と漁師の関係で考えてみる。海面下の魚群は水温や餌事情など様々な変化で移動を始めているにもかかわらず、漁師は従来からよく獲れた漁場に従来と変わらない餌を撒き、網を張る。しかし、漁獲量は思わしくない。魚群探知機には確かに魚影が映っているので、同じことを繰り返すが、結果は同じで、むしろ漁獲量は減る一方である。魚に「意志」があるかどうかは分からないが、魚群探知機では魚影は映し出せても、魚群の「意志」、魚群の「意志」が向いている方向までは探知できない。海面の上からはよく見えないのだが、漁場が大きく変化していることは間違いない。

 ★消費市場も大きく変化している。過去の経験では予想がつかない変化軸を変えた変化が起こっているのではないだろうか。巨費を投入して効果のない宣伝などあろうはずがない。効果が出ないのは効果の出せない宣伝をしているからではないだろうか。的を射ていないだけであろう。あたかも魚影が見えているものの、魚群が変化を起こしているのに、従来と同じように餌を撒き、網を張っているのと似ている。

 ★「ザ・ゴールド」が例に取り上げられているが、すでに自社内で巨大2銘柄があり、それをも凌ぐようなインパクトがなかったように感じている。既存2銘柄に対して、激しい自社競合を展開するほどの目が覚めるような驚きと違いがあれば、メディアが取り上げ、消費者の関心も集めたと思われる。「ビール素人」にも分かるくらいの強いインパクトがあれば、自社3銘柄揃い踏みも可能であったように思う。

 ★しかし、これは現実が示すように、不可能に近いほど困難なことではなかったのかもしれない。あまりにも周りの味が向上しているので、違いが出し切れなかったのではないか。あるいは、専門家から見て、確かな違いがあったとしても、周りの味のレベルアップが、その違いを生活者に気づかせられなかったのではないだろうか。一方、割安とはいえ、「第三のビール」は競うように味を上げ、新商品を連発し、次から次へと宣伝攻勢をかけている。「ザ・ゴールド」の宣伝展開も品質・味のアピールも、こうした新しい動きの中に埋没した観があり、宣伝の効果を目立たなくしてしまったのではないだろうか。

 ★そういう市場環境を作ってきたのはビール業界自身である。毎年、銘柄名を覚えられないほど、ビール系3ジャンルで新商品が発売される。銘柄名だけを見て、ビールなのか、発泡酒なのか、第三のビールなのか、言い当てられる人は少ないのではないだろうか。値段を見て、初めて判別でき、売場で買おうかどうしようかと考えていると、頭に映像が残るテレビCMに背中を押されて、つい買ってしまうと、意外とおいしいと、買ったことに後悔をしない。といって、次もその銘柄を買うかというと、違った銘柄を試してみようと、初めて経験する銘柄を買ってみる。ほとんど後悔することはなく、それなりに、味に合格点を与えている。銘柄に頑なにこだわっている人以外は、そんな感じではないだろうか。銘柄にこだわっている人でも、大勢で飲む時には、普段はあまり飲まない銘柄でも、おいしく飲んでいる光景をよく見る。

 ★2008年11月初旬1週間の首都圏コンビニエンスストアのビール系飲料のPOSデータが手元にある。ビール、発泡酒、第三のビールとも、上位の銘柄を見ると、同じ銘柄の500ml缶と350ml缶が隣り合わせの順位で並んでいる。ところが、ビールは「アサヒ スーパードライ」と「キリン ラガー」は500mlが上位で350mlが下位だが、他の銘柄は350mlが上位で500mlが下位となっている。一方、発泡酒と第三のビールは同じ銘柄で500mlが上位で350mlが下位で並ぶ。ビール党は量を我慢して出費を抑え、ビール党以外は量を優先して出費を抑える傾向が見て取れる。

 ★ビール市場は縮小傾向にあるとはいえ、ビッグマーケットであることには変わりはない。ビール系飲料全体の味が上がり、味の差が接近している。様々と飲み比べて、「どれがおいしい」でなく「どれもおいしい」というのが現状と言える。そういう市場では、宣伝の効果が現われやすいはずである。金額もさることながら、マーケティングの在り方が問われているのではないだろうか。

 ★消費市場全体が冷え込む中で、エコカーの販売が好調である。様々な特典があるとはいえ、エコカーの市場は、従来の車の市場の延長でなく、新しい市場を形成しているのではないだろうか。PB商品が好調なのは、従来商品が安いというのでなく、「PB」という新しい市場が形成されているという見方ができる。従来の延長でありながら、そのつながりをいったん断ち切って、新しい市場を創造する、そういう市場の変化が大きく顕在化しているのではないだろうか。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第43回 PB新時代 三者三様にメリット

2009年12月03日 14時14分52秒 | 今日の気づき
【2009年12月3日(木)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 12月3日(木) 朝刊 13面


◆記事の見出し

 《ブランド変調 2 危機後の選択》《PB・新興勢台頭》《実質本位、低価格が魅力》


◆記事の内容

 ★イトーヨーカ堂の売場に4月、市場シェアトップのハウス食品の主力カレールー「バーモント」のそばに、同じくハウス食品が製造元のセブン&アイ・ホールディングスのPB商品「セブンプレミアム」のカレールー2品目が並んだ。「バーモント」より約2割安い。

 ★カレールーは味やコクに応じて商品が細分化しており、顧客は好みのブランドを繰り返し購入する傾向が強く、汎用品のPBには馴染まないとされてきた。しかし、発売半年で売れ筋2位に浮上し、業界の常識をあっさり覆した。

 ★日本ハム、カルピス、味の素……。セブン&アイのPB生産を請け負うメーカーには食品各分野のトップが名を連ねる。大手小売だけでなく、中堅スーパーのベイシアのPBも鍋つゆやレトルト米飯などは大手メーカーが供給する。食品市場の縮小が加速しており、有力メーカーもラインの稼働率維持を考えると、攻勢を強めるPBを無視できない。

 ★調査会社の富士経済によると、2009年のPB食品の市場規模は前年比22%増の2兆3,380億円の見込み。食品全体の9%になる。食用油や即席みそ汁など30%に迫る分野もある。NB(ナショナルブランド)神話は揺らぐ。

 ★家電製品でも「日の丸ブランド」が押されている。調査会社のBCNによると、10月のネットブック販売台数で台湾勢のシェアは計約3割という。白物家電では中国メーカーが台頭しアジアブランドが店頭を浸食する。PB同様に、余分な機能や宣伝費を削ぎ落とした低価格を武器に、消費者をとらえる。

 ★NBの逆襲はあるのか。日清食品は4月、「カップヌードル」の希望小売価格を据え置き、具材のミンチ肉をより上等なチャーシューに替えた。以来、PBに押されて減っていた販売量は回復している。

 ★技術力の向上などでコストを下げつつ、商品の品質を高める。NBメーカーの進化を、変わる消費者を味方につけたPBや新興ブランドが促している。


●今日の気づき

 ★PBの動向は、消費社会の成熟、消費市場の縮小、品質の向上、賢い生活者の台頭等々、今までの延長ではない、まったく新しい消費市場が誕生していることを如実に示している。新しい市場といっても、時間軸は過去・現在・未来と途切れることなく連続しているので、徐々に継続しながら変化しているように見えるが、変化軸が上記のように変わっているので、同じ線上での変化ではない。まったく新しい消費市場が芽生え形成されつつあると見るべきだろう。

 ★食品トップメーカーのPB製造を考えてみる。顧客、小売企業、メーカーの三者ともメリットがある。従来に比べてマイナスの数字が出るなどの損をするところが見当たらないのである。マイナスの数字が出ないので小売企業はPBを充実させ、メーカーはPB製造を請け負うのである。

 ★まず、顧客はトップメーカーの製造技術で生産されたNB並みの商品をいつでも割安価格で購入できる。安心・安全面でも信頼できるので、メリットがある。

 ★小売企業はトップメーカーの製造技術で生産されたNB並みの商品をいつでも割安価格で販売できるので、顧客にメリットを与えられ、来店を促し、売上・利益に貢献し、ストアロイヤルティを向上させることができる。また、トップメーカーが持つ商品開発とマーケティングのノウハウを生かした「よく売れるPB」を充実させることができる。

 ★メーカーは生産ラインの稼働率を維持し、雇用を維持し、市場が縮小する中でPB価格ラインの市場向けに商品を投入でき、その市場情報の入手も可能となる。また、NB強化にもメリットがある。NB対PBという競争の構図を描いてみると、競争相手のPBの手の内と市場を知ることができるので、NBの顧客価値再構築では得がたい情報を手に入れることができる。大手小売企業とのパイプが強固になり有力な販路の確保にもつながる。

 ★一方、PBを手がけることで、顧客から見たメーカーのイメージが低下することはあるのだろうか。小売企業の下請け企業になったようなイメージになるのであろうか。NBにこだわる以上は、そうはならない。仮にNBから撤退しPB専業のようになれば別だが、むしろ、こういう時代で生活者が求める低価格商品を小売企業に協力して製造しているというイメージの方が評価は高まるかもしれない。それには条件がある。NBなど自社商品へのこだわり、より良い自社商品を提供していこうという強い意思を生活者に伝えることが重要になる。

 ★かつてのPBは小売企業のメリットが優先されていた。顧客は「安かろう、悪かろう」を買わされ、トップメーカーはメリットがないのでPBに対応してこなかった。時代は変わった。顧客は家計が厳しく、小売企業は売上が伸びず、メーカーは縮小する市場への対応に迫られている。三者三様に厳しい状況の中で、三者三様にメリットが見出せる今のPBの登場となった。これは当面の厳しい状況の打開策ではなく、新しい消費市場対応への模索の第一歩でもある。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第42回 無形の価値再構築と付加価値マーケティング時代

2009年12月02日 18時41分10秒 | 今日の気づき
【2009年12月2日(水)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 12月2日(水) 朝刊 11面


◆記事の見出し

 《ブランド変調 1 危機後の選択》《消える欧米品信仰》《消費者成熟、背伸びせず》


◆記事の内容

 ★モノやサービスの信頼の証しであり、付加価値を生む「ブランド」に変化の波が押し寄せている。海外高級品は顧客離れに直面し、小売業の自主企画品や新興国の製品が国内有力メーカー品に匹敵する支持を得ている。変わったのは経済危機を経験し多くの情報と肥えた目を持つようになった消費者である。

 ★高級ブランドの中古品販売最大手のコメ兵の業績が振るわない。減収減益だった2009年3月期に続き2009年4~9月期もバッグ・衣料の売上高が前年同期比5%減、時計は同28%減である。「信仰」とまで評された日本の消費者の高級ブランド志向が昨秋のリーマン・ショックを境に薄らいでいる。割安な中古品ですら手が伸びないのだから、新品を扱う海外ブランドの日本法人はどこも苦しい。

 ★仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは日本国内の2009年1~9月期売上高は前年同期比19%減。「カルティエ」などを持つスイス・リシュモンの同4~9月期売上高は同25%減である。大手海外ブランドの日本市場の売上高構成比は約1割だが、旅行先での日本人観光客の購入分も含めると2~3割に上ると言われている。

 ★仏服飾雑貨ランセルジャパンの今村真也社長は「1990年代のバブル崩壊時は需要が潜在化しただけで、時間がたてば客足が戻った。今は欲しいと考える顧客そのものが減った」と話す。J・フロントリテイリングの奥田 務社長は「欧米のように身の丈にあわせた消費になってきた」と。

 ★こうした変化にさらされるのはバッグや時計だけではない。ブランドの持つ付加価値をいま一度問い直す動きは、あらゆる商品やサービスに広がる。企業はブランドづくりの根本的な転換点に立たされている。


●今日の気づき

 ★もともと、ブランドは商品の品質を保証する信頼の証しだった。有形の商品自体と無形の信頼の証しは一体となって商品の価値を高めてきた。それが進むと、ブランドは商品自体に信頼の証しを与えつつ、信頼だけでなくデザインなど無形の付加価値をどんどん膨らませて「高級ブランド」という商品のカテゴリーを形成してきた。有形の商品価値さえ保証されていれば、無形の付加価値はそこまで大きくなくても良いというニーズが出てきてもおかしくない。経済危機がきっかけとなったことは否めないが、成熟社会では、たどり着くスピードはともかく、当然の帰結に向かっているのではないだろうか。

 ★商品の品質は下がることはない。向上に向かい続ける。極論すれば、ブランドマークで保証されなくても、生活者の信頼を得る品質レベルの商品が今後どんどん増えてくるということになる。そうなるとブランドは不要ということにもなる。今のブランドに求められているのは品質保証以外の部分で膨らませてきた付加価値の再構築である。東京・大阪間を3時間で結ぶ新幹線ができた時は「夢の超特急」と言われた。「夢」が日常的な「現実」になった時、2時間半に短縮されると、一部には3時間で良いという利用者が出てきた。将来1時間が実現した時には、新幹線のすべての利用者を「1時間」の顧客へと誘導することはできないだろう。2時間半や3時間のダイヤが組まれている限りは。

 ★市場が今までの延長線上で変化しているのではなく、市場を貫く価値観(価値基準)が変化しているので、市場が置かれている次元そのものが変化しているとも言える。当然、マーケティングも変わらなければならない。付加価値も「付加」の意味するものと「価値」の意味するものを分けて見直さなければならないかもしれない。

 ★「成熟」と「品質の向上」が市場の変化に大きな影響を与える。いったん過去の価値観を否定し、かつ過去の価値観の延長線上にまったく異なる新しい価値観を構築しなければならない時代に来ていると言える。その時、もう1つ大きな要素が加わることになる。エコ、環境問題、企業の社会的責任・社会貢献などである。付加価値をいかにマーケティングに結び付けていくのか。付加価値マーケティングの時代が来たと言えるのではないだろうか。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第41回 HCのPBに賢い生活者への対応が望まれる

2009年12月01日 23時00分28秒 | 今日の気づき
【2009年12月1日(火)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 12月1日(火) 朝刊 13面


◆記事の見出し

 《ホームセンター PB重視》《コメリ、インテリア製品開発》《ペット用品 カインズ拡充 円高生かし海外調達》


◆記事の内容

 ★ホームセンターがPB商品の拡大を急いでいる。各社は円高を生かして国外から調達した住居関連用品に自社ブランドを付け、低価格で消費者への浸透を狙う。PBはスーパーの食品などを中心に広がってきたが、ホームセンターがインテリア分野などで本格化することで市場拡大に弾みがつく。

 ★業界4位のコメリは11月から日曜大工や園芸用品など分野ごとに分かれていたPBを「コメリセレクト」に1本化し新たなロゴマークや包材を用意してブランド力を高める。新たにカーテンや寝具などの分野でもPBを開発する。PBの売上高構成比率を28%から5年後をメドに40%に引き上げる。今後は円高を利用して東南アジアなどからの仕入を拡大し店頭売価の値下げも検討する。

 ★2位のカインズはペット用品などの海外調達を増やすのに加えて薄型テレビや加湿器などの家電製品の開発も積極化する。PB比率を現在の3割超から数年内に5割まで高める。

 ★3位のコーナン商事は輸入品を含むPB比率20%を半年前倒しでほぼ達成し来期中に25%まで上げる。

 ★中堅では今春に資本・業務提携したダイユーエイト(福島市)とリックコーポレーション(岡山市)が12月から共同PBを本格展開し2011年2月期に2,000~3,000品目を販売する。

 ★ホームセンターは、近年、ドラッグストアなど他の小売業との競合が激化し主力の住関連用品の価格競争力も低下している。日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会によると、2008年度の市場規模は約3兆9,000億円で3年連続で前年割れしている。

 ★各社の取り扱う住関連用品は一部を除き中堅・中小メーカー製が多かった。今後は円高を追い風に自社PBを浸透させて顧客の囲い込みにつなげる。

 ★スーパーも住関連分野でPB強化の動きが目立つ。イオンや西友が寝具などの格安PBの投入を積極化しており、こうした分野でのPB開発競争が激化しそうである。


●今日の気づき

 ★PB化、低価格化の流れは止まらないであろうし、もっと様々な分野で出てくるものと予想される。その背景にあるのは、品質の向上(安心・安全の確保)と生活者の賢明な買物意識の向上(品質と価格のバランスを見極める判断力の向上)である。量ではなく、いわば質の需要と供給の関係である。

 ★品質の向上は、素材開発技術や生産技術の向上により実現されてきた。商品作りの技術の向上は止まることはない。今後も進んでいく。その結果もたらされる商品は、価格軸で見れば、低価格商品、中価格商品、高価格商品に分かれるだろうが、低価格商品とはいえ、かつての中価格商品以上の品質が得られており、安心・安全の確保は格段に向上していると言える。

 ★生活者の賢明な買物意識の向上は、経済情勢の悪化がその傾向を促進させているということもあるが、商品の品質向上が進んでいくと、賢明な買物意識は必ず高まっていく。賢明な買物というのは品質と価格のバランスを見極めた買物ということである。

 ★今の生活者のPB支持率の向上は、価格だけの問題ではなく、品質の向上、すなわち商品の安心・安全の確保が前提にある。中国製冷凍餃子事件以降の中国産食品の購買意欲の減退は低価格指向だけで生活者は買物行動を起こしているのではないことを示している。

 ★食品PBは「安かろう、悪かろう」から「安かろう、良かろう」へと、様々な経験を積んで進化してきた。その土台が今のPB開発を支えている。食品と住関連用品・インテリア商品では、購買頻度も川上・川中事情も異なるので、同じ平面状で「PB市場」を考えることはできないが、生活者は「安かろう、良かろう」を求めていることは共通している。食品では体の中の安心・安全を求め、住関連用品では体の外の安心・安全を求めている。生活関連用品のPB開発においても、食品PBの経験を生かし切り、生活者の生活環境が向上することを期待したい。生活者は賢明である。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第40回 万引をしない させない 見逃さない

2009年11月30日 23時38分32秒 | 今日の気づき
【2009年11月30日(月)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月30日(月) 夕刊 19面


◆記事の見出し

 《警視庁、都内の被害試算 万引き 年670億円》《届け出の100倍》


◆記事の内容

 ★警視庁はこのほど、東京都内の万引き被害額の総額は年間約670億円という試算を初めてまとめた。実際に警察に届けられる被害額の約100倍になる。

 ★警視庁は「『たかが万引き』と思われがちだが、経済的損失は甚大で厳しい対応が必要」と指摘し、万引き容疑者を発見した場合は必ず警察に届けるよう店舗側に呼び掛けている。
 
 ★試算に協力した特定非営利活動法人「全国万引犯罪防止機構」(東京)の調査によると、小売業で仕入れた商品のうち販売されないまま所在が分からなくなった商品の割合「ロス率」は平均で0.94%に上り、このうち約半分が万引き被害とみられている。警視庁は都内の小売業のうち書店やスーパーなど万引き被害が想定される57業種の2007年度の総販売額約14兆2,712億円に、このロス率の半分を掛け合わせることで被害額を推計した。

 ★警視庁によると、2004~2008年の都内の万引き認知件数は約1万5,000~1万8,000件で被害額は5億~6億円。推計被害額と大きな開きがあることから、警視庁は「被害に遭っても、店舗側が警察に届けないケースが相当数ある」と分析している。

 ★被害を届けるには従来、手続きに数時間かかっており、店舗側がその手間を嫌って通報を敬遠しているとの指摘があった。そこで警視庁は11月、届け出を促そうと手続きを大幅に簡素化。必要な調書や証拠類を見直し、約1時間で手続きが終わるようにした。

 ★警視庁幹部は「ゲーム感覚で万引きを繰り返しているケースもある。軽い犯罪として大目に見るのではなく、社会全体が万引きに厳しく対応する必要がある」と話している。


●今日の気づき

 ★大事な内容なので、記事の内容をほぼ紹介した。試算の内容をもう少し詳しく知りたくて警視庁に問い合わせたが、警視庁からの発表ではなく、日経独自の取材のようである。全国万引犯罪防止機構のホームページを開くと、12月2日に、警視庁において「東京万引き防止官民合同会議」が開催されるとある。17の小売業団体をはじめ、18の関係団体、都庁、東京都教育庁、警視庁関係者等約100人近い構成の大規模な会議になる予定である。最初から最後まで報道関係に公開される。同会議では、「万引きをしない させない 見逃さない」共同宣言が行われることになっている。

 ★警視庁は、特に少年の万引は将来の治安に悪影響を及ぼすとして、万引防止には強い関心を持っており、2008年4月から6月にかけて万引被疑者の犯行の態様、動機・原因、再犯等に関する調査を実施した。調査結果に専門的な分析、検証等を加え、社会全体としての万引防止の諸対策の提言を行うために、「「万引きをしない・させない」社会環境づくりと規範意識の醸成に関する調査研究委員会」を設置し、同委員会は2008年8月に「万引きに関する調査研究報告書」をまとめた。同報告書の冒頭「まえがき」で警視庁の万引防止対策についての基本的な考え方が示されているので、その一部概要を次に紹介する。

 ★上記報告書の「まえがき」より。警視庁は2007年12月に政府の犯罪対策閣僚会議が策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」に基づき、各部門が横断的に取り組むべき新たな治安上の課題について総合的な検討を行い、的確な施策の策定と推進に資するため、「警視庁施策総合検討委員会」を設置、同委員会の1つの柱として、「社会における規範意識向上に向けた対策」を検討してきた。これは、社会における規範意識の低下が、万引、落書き、ゴミ放置、交通ルール違反といった軽微な秩序違反行為の蔓延につながっており、これらの問題にきちんと対処しなければ、将来の東京の治安に悪影響を及ぼすとの問題意識からくるものである。
 軽微な犯罪の中でも、万引をめぐる状況は極めて深刻である。万引は初発型の犯罪であり、これを放置することで再犯を繰り返して犯罪がエスカレートしていく傾向がある。特に少年による万引は「初発型非行」の1つとして、他の重大な非行の入口となる犯罪である。2008年に入って少年による万引、特に中学生による万引が著しく増加していることは極めて憂慮すべき変化である。将来の治安を考えれば、今こそ抜本的な取り組みが不可欠である。
 2003年以降、高齢者による万引が急増していることは非常に注意を要する。今後の更なる高齢化の進行を踏まえれば、この点での対策も急務である。
 被害者の側から万引問題を見ると、小売業にとって万引の被害は極めて深刻な状況にある。とりわけ金融・経済危機により厳しい経営状況が続く中では、万引被害は各小売店舗にとって経営を左右しかねない死活問題となっている。
 こうした状況下で、われわれに求められていることは、「たかが万引き」といった社会の風潮に警鐘を鳴らし、人々が万引に手を染めないような、あるいは手を染めさせない環境をつくり、万引の犯行を可能な限り抑止することである。不幸にして万引に手を染めてしまった者に対しては「二度と万引を犯すまい」と当人が決意するような感銘力のある措置を講ずる必要がある。
 最も大切なことは、これらの取り組みを、警察、行政、小売店舗、家庭、学校、地域住民、民間ボランティア等社会を挙げた総合的な取り組みとすることである。

 ★同報告書をまとめるに当たり、都内6店舗に対して委員による現地聞取調査を行っているが、そのうちの1店舗は住宅街の中規模スーパーである。同報告書は現地調査結果の特徴的な部分を抽出して記載しているが、中規模スーパーの記載部分を以下に紹介する。
 ・中高年の万引が多い。主に食料品が被害に遭っている。エコバッグに盗んだ物を入れる犯人が多いので注意して見ている。
 ・販売履歴を毎日確認して被害を把握している。
 ・声かけ運動により「いらっしゃいませ」と声をかけることにより、被害を防止している。
 ・状況によって警察に通報している。初犯の者は犯人に買い取らせている。
 ・高齢者(女性)の万引犯人を出入禁止にした後、「万引しない」旨の誓約をさせてから入店を許可したが、直ぐに万引をしたので万引は病気だと思う。

 ★引用が長くなったが、万引対策の大事なことと、万引は「する側」が悪いのはもちろんだが、「される側」の責任も深く考える必要があることから、引用を長くした。万引が将来の社会の治安に大きな影響を与えるのであれば、企業の社会的責任という観点からも、万引対策を考えなければならない。社会的責任ということでは、自店だけの対策ではなく、業界全体としても意思統一的に取り組む必要があるし、他の関係団体・機関または行政との連携も必要になってくる。

 ★自店だけの問題とするなら解決策は難しくないかもしれない。かつてテレビゲーム時代の始まりを告げるようなインベーダーゲームが大流行した時期があった。㈱タイトーが1978年にスペースインベーダーを発売し人気が沸騰、「インベーダーハウス」と呼ばれるゲームセンターや店内にインベーダーゲームマシンを並べた「インベーダ喫茶」が各地にできた。駄菓子屋の店頭や待合室にまで設置され、1日に何十袋も集金袋を運ぶので腰痛を起こす従業員が出たり、トラックの後部に機械や硬貨を楽に上げ下げするためにリフトが装備されたりした。このリフトが今日では一般的になっているトラック後部のリフトの元祖と言われている。全国で100円硬貨が不足気味になり、大蔵省・日本銀行・造幣局が100円硬貨を多く鋳造するというエピソードまで生んだ。その当時、総合スーパーでもインベーダーゲームマシンを置いて集客を促した。しかし、素行の良くない若者が集まる温床ともなり店内の雰囲気を悪くする店舗も出てきた。同一商圏で競合する2店舗の総合スーパーも同じ状況にあった。その時、1店舗が体育会系の学生をアルバイトで雇い警備に当てた。結果、その店舗から素行の悪い若者の姿が消え、もう一方の店舗に集まるようになった。

 ★万引防止も同じで、万引されにくい店舗づくり、万引しにくい店格づくりが求められる。万引防止対策を考えるということは自店を見直すということである。しかし、万引が病気の性格を持っているのであれば、その店舗で万引しなくなった病的万引常習者は他の店舗で万引するようになる。インベーダーゲームに群がる素行の悪い若者が集まる店舗を変えただけというのと同じである。素行の悪い若者が少なくなったり、素行が良くなったわけではない。

 ★万引防止ということを、自店の損失解消、企業の社会的責任など、局面ごとに考えることも大切だが、自店を見直す機会を含めて、総合的に考える必要がある。万引防止対策の先には企業体質改善の問題点が見えてくるかもしれない。

(東)