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WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第50回 60歳超の働き盛り、60歳超の働き方

2010年02月01日 01時23分15秒 | 今日の気づき
【2010年2月1日(月)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 1月25日(月) 朝刊 11面


◆記事の見出し

《注目この職場》《虎屋本舗 従業員の4割 60歳以上》《シルバー職場 ブランドに》

《若手偏重、退職相次ぎ転換》《直接の技術指導で連帯感》《「おばあちゃんが働く店」PR》


◆記事の内容

 ★1620年創業の老舗菓子製造販売会社、虎屋本舗(広島県福山市、高田信吾社長)は2008年に定年を60歳から70歳に引き上げた。定年を超えても嘱託社員として単年度契約で働ける制度がある。正社員最高齢の和菓子作り約50年のベテラン職人は週4日、早朝から午後4時まで働く。自ら働き若手社員の指導も行う。売場で販売を担当するパート社員は70歳の女性と60代の女性が2人。パート社員を含む全従業員70人の4割が60歳以上という「超シニア職場」だが、そうした取り組みが評価されて「2009年度高年齢者雇用開発コンテスト」で厚生労働大臣表彰の特別賞を受けた。

 ★15年前に31歳の若さで経営を任された現社長は、意識的に若手社員の採用を増やして会社の雰囲気を変えようとした。菓子職人の修行は厳しく、期待を込めて採用した若手が次々と退職し、会社を支えているのは中高年社員であることに気が付く。方針を転換し、中高年社員が働きやすい職場環境を目指した。中高年社員が安心して働けるようにして、若手社員との連帯感が高まり、職場の雰囲気がぐっと良くなった。2010年2月期の売上高は1,000万円増の5億1,500万円を見込む。

 ★社長は、元気なうちは働きたいという中高年社員の要望に応えることもCSR(企業の社会的責任)だと言う。それを果たして、地域社会や消費者に愛される企業になれば会社のブランド力になるとも言う。直営店に従業員のためのスロープや広い休憩スペースを作る計画である。「おばあちゃんが働きつづけられる店」を積極的にPRしていく。「超シニア職場」という異色のブランド戦略は地域社会や消費者に好印象を与えているようである。


●今日の気づき

 ★街を歩いても、周りを見渡しても、「60歳」が「お年寄り」と思うことは、まずない。60歳以上の人たちが、これまでの経験を生かして、職場の第一線で働くことに違和感はない。一方、中高年者には向いてない職場もある。企業によって、職場によって、事情は様々、異なる。定年は何歳にしなければならないとか、求人案内に年齢制限を設けてはならない、など、決まり事を作るのが良いのかどうか、疑問に思う。求人案内などは年齢制限を設けなくても、書類選考でふるいにかければ決まり事をすり抜けることができる。職場事情は企業固有の問題なのに、一律的に決まり事を設けて良いのかどうか。しかし現実は、決まり事を設けないと従業員が不利な立場に立たされる懸念があるので、それを防がなければならない。それほどまでに、企業は信用されていないことになる。

 ★法律の専門家ではないので、専門家でどんな議論が交されているのかは分からないが、学生の時に受けた憲法概論の授業で、法律学者が考える理想の社会は法律のない社会である、ということを聞いて共感を覚えたことを思い出す。人間をどれだけ信用できるのか、そのレベルにまで引き上げられた倫理観、行動がスタンダードになる社会が理想ということであろうか。人の社会を治める政治家は、最も人の模範となり、人の尊敬を集める倫理観と行動を持ち合わせているべきなのに、その政治家に対して、繰り返し改正を余儀なくされる政治資金規正法という決まり事がある。その政治家とカネを通じて結び付いているのが企業であることを考えると、もちろん、すべての企業がそうではないことを前提にしても、利潤追求が最優先され、上場企業は株主利益を優先しなければならない現状を見る時、法律のない社会などは理想論の域を出ることはないのではないだろうか。

 ★虎屋本舗の経営方針、職場環境作りの取り組みは、厚生労働大臣表彰の特別賞に値する素晴らしいものだが、目の前の経営課題に取り組む中で出来上がってきた結果であって、個企業の立場からは、当たり前のことをしたというものではないだろうか。他者から見れば、特筆すべきものでも、当事者にとっては当たり前のことをしたということが多い。個企業にはその企業なりの個別の課題があり、それに立ち向かった結果は、当事者にとっては「当たり前」、他者にとっては「特筆すべき」になるのであろう。そういう意味では、「特筆すべき」は企業の数だけ存在できる。「特筆すべき」が多くなることを望みたい。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第49回 PB戦略は「第2ステージ」へ

2010年01月31日 19時19分00秒 | 今日の気づき
【2010年1月31日(日)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 1月22日(金) 朝刊 27面


◆記事の見出し

 《知りたい価格》《メーカー品安く PBにほぼ並ぶ》《カレー・茶飲料やティッシュ 消費者買い分け》
 
 《販促費増加、値引き原資に》《劣勢のメーカー、挽回に動く》


◆記事の内容

 ★メーカーのNB(ナショナルブランド)商品が値下がりし、PB(プライベートブランド)商品との価格が接近または逆転している商品が出てきた。1月19日のイトーヨーカドー木場店(東京・江東区)ではPB「セブンプレミアム」の緑茶と「生茶」、「爽健美茶」の2㍑入りがいずれも148円。同日のジャスコイオン南砂町スナモ店(東京・江東区)では大半の商品でPBの方が1~3割安いが、一部のNBはPBと同等まで値下がりする例が見受けられる。PB「トップバリュ」の納豆(40㌘×3)と特売の「あらっ便利!金のつぶほね元気」(45㌘×3)がともに78円。

 ★NBは特売などで価格が変動することが多いが、月間平均価格の推移を日経POSデータで見ると、NBとPBの価格差が縮小している商品が多い。逆転している例もある。箱入りティッシュ(200組×5箱)の月間平均価格は2008年12月はNBがPBより15円高かったが、2009年4月以降はNBがPBを下回っている。サラダ油でもNBがPBを下回る現象が起きている。

 ★NBとPBの価格が接近したり逆転する理由は、メーカー、小売双方にある。PBの急速な普及で劣勢に立たされるNBが増え、また2007年以降の原材料価格の高騰による値上げがPBとの価格差を大きくしたことから、現在はメーカー側が値引きの原資になる販促費などを増やすことで挽回を図っている。小売側も店舗間競争が激しくなる中で、より低価格政策を強化する必要に迫られ、PBの拡充だけでは不十分で、有力なNBの値下げが必要になっている。


●今日の気づき

 ★NBとPBの価格差の縮小は、小売業の経営姿勢、商品開発コンセプト、商品政策そのものが問われる時代に差しかかったことを示しているように思われる。いわば、PBの「第2ステージ」というものだろうか。小売業は「何」を販売するのか、販売する「商品」に小売業の経営哲学が反映していると言える。低価格で販売できる、利益が確保できる、ということに重きを置くPBだと、PB開発は「会社のため」という色合いが強くなる。しかし、同時に「顧客のため」という視点が必要である。価格はもちろん顧客のために大事だが、品質も価格以上に大事である。“価格に相当した品質”では顧客は満足しない。顧客に満足を与える品質のPBが多くなってきた。その品質路線がさらに強まることを期待したい。理想論かもしれないが、「顧客のため」を大事にすることで、「利は後からついてくる」的な経営哲学がPBに打ち込まれなければ、PBの寿命は長続きしないだろう。果たして、NBとの価格差がなくなればPB開発は下火になり、価格差の有利性が期待できるようになれば、また再燃するのであろうか。PB戦略とは、そういうものなのだろうか。今後が注目である。

 ★仕入商品であるNBは商品の品質責任はメーカーにある。小売側は仕入れた責任はあっても、商品本来の品質までは責任を負うことはない。しかし、PBは製造者としての責任が小売側に生じる。メーカーと同じように品質、商品コンセプトまで問われるのである。仕入商品は価格、品質、顧客支持率など様々な要素を加味して、品揃えの考え方に沿って、仕入れる商品を変えることはできる。しかし、自社開発・製造商品はそうはいかない。メーカーと小売業は「製造業者」として商品で競わなければならない。この時代、価格は消費者の支持を得る、非常に大きな要件だが、それがすべてではない。

 ★価格差がなくなったことで、価格以外の要素で競わなければならない。価格も含めて、小売業が自らの経営哲学に基づいて、「売りたい商品」を顧客の前に並べ、顧客の評価を得る絶好のチャンスが訪れたと言える。PB開発のきっかけがどうであれ、PB路線に歩み出したからには、メーカーの顔で勝負しなければならない。やがては、メーカーとしてのマーケティング戦略も必要になる。必然的に、自社向けの「プライベートブランド」に徹するのか、「ナショナルブランド」の世界に足を踏み入れるのか、選択肢も分かれてくる。

 ★メーカーと小売の垣根が低くなり、NBとPBの垣根が低くなり、商品の供給者と需要者の垣根も低くなってきた。消費者の要望で商品が開発される時代である。衣料品の世界では製造と販売を一体化させたファストファッションが脚光を浴びている。成熟社会の到来は、かつて経験したことのないような、様々な変化が出てくる。変化に飲み込まれ、埋没しない、確固たる「芯」が改めて求められているのではないだろうか。PBの「第2ステージ」を思う時、そういう時代の兆しを強く感じる。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第48回 アンテナ店の盛況はスーパーに希望を与える

2010年01月29日 06時20分24秒 | はじめに
【2010年1月29日(金)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 1月21日(木) 朝刊 31面


◆記事の見出し

 《地方産物アンテナ店 「民間版」相次ぎ開店》《都内 フジテレビやNPO》


◆記事の内容

 ★自治体のアンテナショップに続き、民間版店舗が独自性を売り物に相次ぎ出店する。

 ★フジテレビジョンは22日、自社の朝の情報番組「めざましテレビ」と連動させる、地方の産物を販売する「銀座めざマルシェ」を東京・銀座に開店する。売場面積は常設で約2,500㎡。アンテナショップでは最大規模。フロアごとに「中国・四国」など6地域に分け、地酒や地方食材を使う飲食店も設ける。約350ある商品陳列台を月額10万円で貸し出す。初年度20億~30億円の売上を目指す。

 ★東京・品川区の中延商店街では、地元の特定非営利活動法人(NPO法人)バリアフリー協会が23日、商店街の空き店舗を利用して、交流のある大分県竹田市の産物を扱う「街コン・マルシェ」を開店する。飲食施設も併設する。周辺の主婦が調理をし、独居老人が食事をとるコミュニティ食堂の機能も持たせる。今後、提携する市町村を4か所に増やして品揃えを充実させる。

 ★都内には自治体のアンテナショップも相次ぎ開店。2010年7月には東京・銀座に高知県が大型店を開店する。


●今日の気づき

 ★アンテナショップは人気がある。北海道の委託を受けて㈱札幌丸井今井が運営する東京・有楽町の「北海道どさんこプラザ」はいつも来店客で賑わっている。どのアンテナショップも盛況である。百貨店では地方物産展が集客の目玉イベントになっている。総合スーパーなど量販店でも物産展を企画する。取扱い商品を見ると、お土産品ばかりではない。日常の食卓に合う商品や日常でいつもと違う味を楽しむ食材も多くある。物産展でなくても、百貨店やスーパーの定番になってもおかしくない商品もある。そういう日常的な商品にも顧客の関心は強い。日常の食材を提供するスーパーなどでは売れない消費環境にあるのは確かだが、売る努力(仕入れる努力)がおろそかになっているということはないのだろうか。

 ★仕入は取引先の来社を待って本部で行うのではなく、仕入先に出向いて小売業が売りたい商品を探すことが大事だと言われる。待ちの商談では、取引先は自分たちが売りたい商品だけを持って来るが、それが仕入れたい商品と一致するとは限らない。顧客に売りたい商品が取引先の倉庫に保管されていることもある。もしも、そういうことができないほどバイヤーの仕事がいっぱいだとすると、消費者に自分たちが売りたいと思う商品を見つけ仕入れるのはバイヤーの仕事で優先順位がトップでないことになる。

 ★一般の家庭で日常の食卓に合わないような高価な食材の定番化は難しいかもしれないが、消費者が持っている「値ごろ感」はただ安いだけでなく、少しは幅があるはずである。スーパーの精肉売場では黒毛和牛が売られている。黒毛和牛は日常的に食する食材でないかもしれないが、消費者の購買基準は「安い」だけではないことを示している。

 ★消費者の低価格指向は、品揃えに差異がなく、価格でしか差を出せなくなっている小売業の現状を反映している面もあるのではないだろうか。同業他店との低価格競争に走り過ぎるのは、極論すれば、消費者が求めるニーズに対応したキメ細かな仕入を怠り、消費者不在の品揃えをしていることにならないのだろうか。

 ★消費市場の現状から、低価格指向への対応は重要課題であり、それへの努力を怠ることはできないが、一方で、仕入の基本に戻って、消費者が求めている商品、売れる商品を探し出す努力が必要ではないだろうか。消費市場の厳しい時代にあって、仕事を怠っているバイヤーは皆無と思われるが、地方物産展や地方産物のアンテナショップの盛況ぶりを見ていると、その努力が品揃えに反映していないように感じてならない。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第47回 消費市場変化の大潮流 新しい時代への兆し

2010年01月29日 04時07分23秒 | 今日の気づき
【2010年1月29日(金)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 1月20日(水) 朝刊 11面


◆記事の見出し

 《百貨店閉鎖 最悪に迫る》《松坂屋・丸井今井…今年8店決定》《関連業界含め再編も》

 《アパレル業界 打撃大きく》《価格・販路の見直し急務》


◆記事の内容

 ★百貨店の閉鎖が加速。2010年に閉鎖するのは8店に達する。2010年に入っても百貨店の市場環境は悪化している。大手に加え、経営再建に入る地方百貨店も多く、さらに数店増え、経営破綻したそごう(現そごう・西武)が9店を閉めた過去最悪の2000年の11店を上回る可能性も出てきた。

 ★百貨店の店舗数は1999年の311店がピークで2009年末は271店。需給ギャップは解消されず、さらなるリストラは避けられない。地方への影響も大きい。閉鎖した店舗の後継テナントが見つからないケースが多く、中心市街地のさらなる空洞化を招く恐れもある。

 ★百貨店の閉鎖が加速し、主要取引先のアパレルメーカーも経営の見直しを迫られる。インターネット通販や商業施設の開拓、価格を抑えたブランドの開発を急ぐ。少子高齢化や低価格専門店との競合などを背景に市場環境は厳しく、大手や中堅の再編につながる可能性もある。

 ★百貨店売上高に占める衣料品の構成比率は40%近くを占めるが、日本百貨店協会によると、衣料品売上高は1997年から2008年まで12年連続マイナス。消費者はファストファッションと呼ばれる低価格系の専門店や利便性の高いネット通販に流れ、2009年もマイナスが確実。

 ★アパレル大手では、ワールドが販売の軸足を商業施設に移し、一時は6割を占めていた百貨店の売上比率を3割台に下げた。7割超を百貨店に依存するオンワード樫山は価格を抑えた婦人服ブランドや路面店、本格的なネット通販サイトを立ち上げ、三陽商会は1月から「販路開発室」を設け、百貨店以外の店舗開拓を強化する。レナウンは今春、総合スーパーなど量販店向けに百貨店の6割程度に価格を抑えた婦人カジュアルブランドを立ち上げる。中堅アパレルではフランドルが百貨店の半額程度の価格帯に抑えた婦人服専門店を導入した。


●今日の気づき

 ★百貨店の閉鎖は、ある意味で自然の成り行きのような気がする。小売の現場では、前年対比はどうなのか、客数は、客単価は、何が売れて何が売れてないのか、競合店はどうなのか、他業態はどうなのか、売上を上げる企画は、販促イベントは、顧客サービスは十分なのか等々、日々の営業に追われているのが現状である。他店がイベントで売上を伸ばせば、他店を上回る売上を作るイベントを行おうと、熾烈な競争の日々が現場である。しかし、消費市場を俯瞰すると、需給のギャップが大きく、供給過剰であり、供給の担い手である店舗が「オーバーストア」である。既存の店舗数の減少は避けられない。強い店舗が生き残り、弱い店舗が消えていくというのは、社会の変化の中で避けて通ることができず、その中で、いかに生き残るかが課題と言えるが、従来の延長線上には解決策は見えて来ない。前提となる消費市場が変化しているからである。

 ★衣料品では、商品はファストファッションと競合し、販路はネット通販の伸張など、新興勢力の台頭の影響を受けているが、成長業態が必ずしも、先行き安定成長するかというと、その保障はどこにもない。「消費マインド」と表現されるように、「消費」に強い影響力を持つ「マインド」が変化しているからで、その「マインド」は社会の状況をはじめ、様々な要素の影響を受け、過去の経験では推し測れないような動きをするのが常である。しかも、消費の成熟社会になると、価値の基準軸も変化してくる。今までに経験したことのない時代が始まろうとしているのではないだろうか。

 ★少子高齢化や人口減少といった要因は消費量を減らす要因には違いないが、別の「マインド」も働き出しているのではないかと思えてならない。所得減少や所得の先行き不安などが消費を冷やしていることは確かだが、それをきっかけとして、新しい「マインド」が芽生えてきているのではないだろうか。そうだとすれば、景気が回復し、所得が増え安定しても、以前のような「消費」が戻ることはないと言える。

 ★アパレル業界で百貨店価格の6割とか5割に抑えたブランドの開発が進められているということだが、品質も6割、5割と下がるのであろうか。そこまで品質が下がると消費者はついてくるのかどうか疑問である。価格を抑えても消費者が納得するだけの品質を維持できる技術力が裏付けとなっているのではないだろうか。そうだとすれば、価格と品質の関係にも変化が出てきているということである。高度経済成長の過程で国民が総中産階級意識を持つようになり、富裕層的ライフスタイルへの指向が強まり、その新しい需要層に向けて高級指向の商品が供給され、中産階級意識を持つようになった消費者を高級品市場へ導くことで数量的にも金額的にも消費市場が拡大してきたという側面がある。この30~40年の間に品質はものすごく向上した。従来の百貨店ブランドでなくても、満足の合格点に入る商品が手に入るようになったと、所得の不安定感が、それに気付かせたのではないだろうか。そして、その「マインド」が新しい需要層を形成し出すと、それに対応した商品の供給が盛んになって、中産階級意識を持つようになった消費者を高級品市場へ導いてきたように、新しい市場の創出が始まっているのではないだろうか。市場の数量的あるいは金額的変化は従来と異なる軌道を描くことは間違いないと言える。品質やデザイン、イメージ、希少性などで付加価値を膨らませてきた市場で、それについて来る消費者と、そこまでしなくても満足できる商品が多くあるという認識を持って価値観を変化させた消費者に、消費の「マインド」が分化しつつあるのではないだろうか。

 ★長野県農業大学校(県立専門学校)農学部教授の吉田太郎氏が著した「世界がキューバ医療を手本にするわけ」、「世界がキューバの高学力に注目するわけ」が注目されていることを知り、インターネットなどで調べてみた。キューバの乳幼児死亡率は米国以下で、平均寿命は先進国並み。がん治療から心臓移植まで医療費は無料で、大都市の下町から過疎山村まで予防医療が全国土を網羅している。WHOも医療大国として認めているという。また、教育では、幼稚園から大学まで教育費は無料で、小学校は20人、中学校は15人の少人数教室を実現。過疎地では生徒一人の学校も維持しており、教育の地域間格差を作っていない。中南米統一国際試験で2位を大きく引き離す高得点を上げた。ユネスコはフィンランドとともにモデル国に推奨する教育大国だという。しかし、生活物資は乏しいようである。医師や大学教授でも携帯電話や自動車を持っていない。牛肉も観光客しか食べられないという。経済成長と豊かさの関係、モノの豊かさと幸せとの関係に示唆を与えている。

 ★日本経済新聞の2010年1月18日(月)~22日(金)の夕刊「人間発見」欄で元世界銀行副総裁の西水美恵子さんの記事が連載されているが、西水さんは講演などで、よくブータンの話をされる。前国王の雷龍王4世の「国民総生産より国民総幸福量が大切」という価値観が有名である。ここでも、経済成長と国民の幸福との関係で貴重な示唆を与えている。

 ★数字を指標として追いかける経済の成長には限界がある。モノ市場の成熟の次にはコト市場の成長に期待するのであろうか。コト市場もやがては成熟することになる。市場の成長を金額の数字の拡大で測っていけば、コト市場もモノ市場と同じ軌道を進んで行くことになる。

 ★従来の経済成長の価値観に並行して、経済成長や物的豊かさは幸福な生活の手段であって目的ではないという価値観の芽が大きくなりつつある。その背景となる要素を物的側面で見ると、市場の成熟と品質の向上がある。今後、「エコ」を加えた「成熟」、「品質向上」の3つが、消費市場に大きな変化をもたらす要素になると思われる。百貨店の閉鎖は、そういう大きな価値軸が変化する中で出てきた、潮の流れが変化する時に生じる渦潮のような「自然現象」に似たものを感じる。

(東)

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第23回

2009年12月29日 13時36分49秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

第39条、第40条


【2009年11月4日(水)】

◆第39条 店長は部門ごとの顧客サービス向上策の成果を全従業員に報告する

 ★店長は、部門ごとの顧客サービス向上策を店舗の方針として明確に打ち出したことで、その成果についても、全従業員に報告する義務がある。情報の共有は従業員の結束を強くする。従業員の結束は店舗の力となる。店舗の力は、目的・目標が明確になっていると、その達成への大きな推進力となる。目的・目標の明確化は蓄積された力を出す方向を明確に示すことだからである。力の蓄積は各従業員のスキルが集合したものである。方向が定まると各従業員に蓄積された力が結束力を持つ。成果を報告し従業員の意識を同一にすることは、次の出発への強い推進力を作ることである。

 ★成果の報告では、結果だけでなく、結果が出るまでのプロセスの説明が大事である。プロセス情報の中に成功要因が内在しているからである。プロセス情報の共有化は成功要因の共有化である。成功要因は普遍的な要素を含んでいる。普遍的要素は汎用性を持ち、どの部門でも活用できる。1つの部門の成果情報は全部門に通じるものがある。成果情報は部門の数だけある。成果情報の共有化は部門の数の情報を従業員が取得することであり、その蓄積効果は計り知れない。

 ★情報の共有化、意識の同一化で得られる大きな効果に、店舗の雰囲気、風土と言えるような店舗の「空気」を作れるということがある。人は「空気」によって育てられる。子供は言葉で教えられなくても家族と一緒に生活していく中で性格や思考の傾向が育てられていく。地域、学校、職場も然りである。本人は意識しなくでも、人が集まり、雰囲気(空気)が形成されている場に身を置くことで、多くのことを五感で学び吸収していく。情報の共有化には、そうした力がある。いかに、効果が出せるような情報共有化の環境を作るのか。店長の大切な責務の1つである。


◆第40条 店長はセルフレジ成功と業績の関係を全従業員に報告する

 ★店長は、セルフレジ導入の成功、各部門の顧客サービス向上策の成果など、1つ1つの方針・成果を全従業員に報告した次のステップとして、総括的に、あるいはセルフレジ導入から始まり店舗としての顧客サービスの向上、達成できた業績までをストーリー的に報告することが大事である。セルフレジの導入、各部門の顧客サービス向上策等すべての施策が店舗としての顧客サービスの向上、それによる業績向上を目的にしたものであるからである。総括的な評価、報告でセルフレジ導入の成功報告が1つ完結したと言える。

 ★報告は事例を交えるなど全員の理解を得るように工夫して具体的に行うことが大事である。人は理屈で理解する人もいれば、具体的な事例で説明することで理解を深める人、1つ1つの関係性を知ることで理解する人など、理解のアプローチへの「得意技」は様々である。事例で説明しないと理解できないようでは困ると言ってしまえば人は育たない。いったん相手のレベルにまで自分を持って行き、そこから自分が目指すところにまで相手の意識を引き上げていくという方法もリーダーシップの執り方の1つと言える。店舗の発展における、情報の共有化、状況認識の共通化、問題意識の同一化の重要性を考える時、その土壌作りには多くの努力を注ぎ込むことが必要となる。

 ★店長は、総括的な成果の報告と同時に、次の方針、目標を明確に示すことが大事である。店舗発展の土壌ができると、様々な種を植えても、きちんと芽が出て、花が咲き、実が育つ。方針から始まる成果の総括的な報告は、仮説・検証の結果を具体的に説明することであり、P(Plan)D(Do)S(See)C(Check)のサイクルを実証的に理解を得ることである。PDSCは繰り返すことで効果を出すマネジメントの手法である。成果の総括の後は必ず次の方針を打ち出すことが重要である。それゆえに、店長は、総括の報告では、次の方針、目標を用意して臨まなければならない。それが持続可能な発展につながっていくのである。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第22回

2009年12月29日 00時42分48秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

第37条、第38条


【2009年11月2日(月)】

◆第37条 店長は他部門の顧客サービス向上策を全従業員に打ち出す

 ★店長は、各部門チーフが練り上げ、策定した顧客サービスを向上させる部門方針を店舗の方針として、全従業員に発表することが大事である。そうすることで、部門方針は部門方針に留まらず、全従業員が店舗方針として理解する。店舗における新しい取り組みは、顧客の目に触れないバックヤード業務も含めて、全従業員が情報を共有することである。パート・アルバイト社員を含めて全従業員が同じ認識を持つことで店舗の運営に一体感が生まれる。一体感は各従業員の仕事に対する意識を高め、顧客への対応が向上する。

 ★店長が、各部門の顧客サービス向上策を発表する時、部門方針がセルフレジ導入の成功との関連で策定されたことを説明することが大事である。物事は関連付けると理解が深まる。1つ1つの具体的な施策が店舗における「顧客サービスの向上」、「顧客との関係性強化」という大きな目標に結び付いていることが全従業員の一致した認識になることで、店舗の結束力が高まり、店舗力が強くなる。

 ★店舗力の強さはマニュアルを超えた時に形成される。マニュアルは経験の浅い従業員の作業スキルをある一定の水準にまで短期間に引き上げることができる。従業員のスキルの水準を一定のレベルにまで引き上げて平準化もできる。しかし、マニュアルに頼っているだけではスキルはマニュアルを超えられない。顧客サービスで競合店に差を付けるのは、仕組みの作り方と、マニュアルの質と、マニュアルを超えた「従業員の自覚による行動」である。したがって、マニュアルを超える顧客サービスの向上は従業員の自覚の強弱で決まる。自覚の強弱は情報提供の仕方による。今、店舗では、何を目指し、何が起こっているのか。それを知ること、情報の共有化は従業員の自覚を高め、マニュアルを超えた顧客サービスを提供する土台を築くことになる。


◆第38条 他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を仮説・検証する 

 ★現場で作業をする末端従業員のスキルは、その上司である部門チームのスキルに従う。部門チーフのスキルが上がった分だけ部門内の従業員のスキルが上がる。部門チーフのスキルは行動に表れる。行動には「覚えた行動」と「考えた行動」がある。「覚えた行動」はマニュアルの範囲内の行動、教えられた範囲内の行動である。「覚えた行動」を超えた「考えた行動」がスキルを高める。「考えた行動」は仮説・検証の繰り返しでできるようになる。「仮説」も「検証」も「考えること」だからである。

 ★仮説・検証には2種類の形がある。1つ目は、方針、計画に基づいて、ある結果を想定して、仮説を組み上げ、行動計画を立て、実行し、結果を検証することである。仮説と結果の間には、計画と実行がある。仮説と結果の差が大きいと、仮説に問題があるのか、計画や実行に問題があるのかがわかってくる。差が小さくなると、仮説力が高まり、計画力、実行力が高まったと言える。2つ目は、日々の業務で経験的に行っている仮設・検証である。その蓄積は「経験則」とも言えるものである。天気予報を見て発注数を変えるとか、営業中の天気の変化、気温の変化で午前と午後、夕方で陳列の仕方を変えるとか、常に考えながら業務を進めていくことが仮説・検証になる。いずれの場合にも、「考える」ことがキーポイントである。

 ★仮説・検証は繰り返し行うことで効果が生まれる。繰り返すことで仮説と検証のデータが蓄積され、データベース化される。小売業は変化対応業と言われる。大きく、または小さく、常に売上にかかわる状況が変化している。変化に対応するためには仮説・検証が必須である。検証結果に基づいて、次の売上を予測し、仮説を立て、発注し、結果を検証していく。状況が変化しても変わらないもの、状況の変化に応じて変わるものなど、様々な仮説の基礎データが、仮説・検証を繰り返すことで蓄積され、仮説力が強くなってくる。仮説力が強くなるというのは発注精度が高くなることである。仮説・検証は繰り返し行わなければ高い効果は得られないのである。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第21回

2009年12月28日 19時14分59秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

第35条、第36条


【2009年10月30日(金)】

◆第35条 店長はセルフレジ導入の成果を全従業員に報告する

 ★店舗の部門チーフ以上の中心スタッフにセルフレジ導入の成果について共通認識ができると、その共通認識を全従業員に広げることが重要である。1部門の成果であっても、顧客から見れば、店舗のイメージアップの印象を与える。まして、セルフレジ導入の成果は店舗経営における根幹的に重要な顧客サービスの向上と顧客との関係性強化に直接結び付く問題である。全従業員が共通の認識を持つことで、店舗の雰囲気、顧客への対応で一体感が生まれる。セルフレジ導入の成果は、そういう店舗の風土作りにおいても良いきっかけとなる。
 
 ★知っていることと、知らないでいることの差は大きい。差は2つの面に出る。1つ目は顧客の店舗に対する印象において、2つ目は従業員のモチベーションにおいてである。顧客がセルフレジ導入の成果をよく知らないレジ係以外の従業員にセルフレジの評価を話したとする。顧客が店舗のイメージアップを感じていて、従業員がその要因を知らないのは、従業員の質において、店舗のイメージダウンにつながりかねない。従業員が恥ずかしい思いをすることもある。一方、知っていることが従業員のモチベーションを上げることは当然である。上がったモチベーションは仕事ぶりに表れる。顧客はセルフレジの導入と従業員の質の向上との両面で印象が良くなる。

 ★全従業員とはパート・アルバイト社員を含む全員である。顧客から見れば、正社員も、パート・アルバイト社員も同じ店舗従業員である。パート・アルバイト社員からすれば、他の従業員と区別なく情報が提供されることで「信頼されている」「有力な戦力の一員である」という意識が持て、モチベーションが上がる。パート・アルバイト社員の教育は特別なものでなく、与えるべき情報をきちんと提供し、正社員、先輩従業員が行動で模範を示し、かつ、そういう雰囲気、風土を店舗内に作ることが重要である。その雰囲気作り、風土作りは店長の責務である。従業員への情報提供は原則的にはパート・アルバイト社員にも共通に行うことが大事である。
 


◆第36条 他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を練り上げる 

 ★セルフレジ導入の成功は、顧客サービスの向上と顧客との関係性強化ということについて、他の部門にも共通する成功プロセスの要因を提供している。それをヒントに他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を考えることが重要である。レジ部門だけでなく、店舗の全部門が「顧客サービスの向上」、「顧客との関係性強化」という高い店舗目標に向かって努力し、その相乗効果が店舗の魅力を作り、店舗の競争力を強くしていく。セルフレジ導入の成功は、ある意味では、そのきっかけを作り、その可能性を実証し、その出発点に立たせたということである。

 ★顧客サービスの向上と顧客との関係性強化は終着点がない。顧客を取り巻く、経済・社会状況、商品の開発状況、ネット通販・地産地消など購買環境等々、さらには顧客自身の年齢、家族構成、嗜好、価値観の変化等々、生活者の消費環境は留まることなく変化している。顧客サービスや顧客との関係性は、そうした変化に常に対応していかなければならない。常に変化している顧客に対して、その対応も常に変化していなくては顧客サービスの維持・向上はできない。1つの成功事例は「到達点」ではなく「出発点」である。仮に、失敗事例であっても、1つの結果は「到達点」ではなく「出発点」でなければならない。様々な変化への対応において、現場の第一線で、その重要な役割を担っているのが各部門である。そのリーダーシップを執るのが部門チーフである。部門チーフの役割は大きい。

 ★現場の第一線でリーダーシップを執る部門チーフの高いモチベーションとスキルの向上が変化への対応のキーポイントとなる。変化への対応では、相手が変化しているので「やってみなければわからない」ことが多い。現場での仮説・検証が大切である。初めから中心の的に当たらなくても、仮説・検証を繰り返していく中で中心に近付いていくことが大切である。小売業では毎日の営業の中でも、その仮説・検証が可能である。部門チーフの仮説・検証作業は、担当部門を良くし、店舗の力を強くするとともに、部門チーフ自らのスキルを向上させる自己研鑽の「道場」でもある。部門チーフは店長に直結するキーマンである。キーマンの成長が店舗の成長に直結していく。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第20回

2009年12月26日 12時27分25秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

第33条、第34条


【2009年10月29日(木)】

◆第33条 店長とレジ係が一体となってセルフレジ成功に努力する

 ★現場の方針は店長の方針と一体でなければならない。その橋渡しをするのがチーフの役割だが、新しい取り組み、特にセルフレジの取り組みについては、チェッカーチーフがその役割を果たすとともに、店長自らが現場に足繁く通い、レジ係と一体になって成功への努力をしなければならない。1業務の問題ではなく、店舗と顧客の間で最も大事な顧客サービス、顧客との関係性強化にかかわる取り組みであるからである。セルフサービス店のレジでの接客は、顧客満足度の向上を目指す店舗経営の最も重要な業務であり、店長が陣頭指揮を執るのは当然である。その最高責任者が現場情報を体感的に収集することが重要である。

 ★どの部門の成功要因にも、業務横断的な共通要因がある。1つの部門の成功要因が普遍性を持った時、他の部門の成功要因を導き出すことができる。セルフレジの成功要因を他部門でも共有しなければならないのは、セルフレジの導入は従業員のスキルの向上と顧客サービスの向上を可能にするからである。「企業は人」と言われるように、従業員の力を強くすることは店舗経営で最も重要なことである。また、顧客サービスの向上はストアロイヤルティの向上では欠かせない要件である。導入までは経営者がリーダーシップを執ったが、運用段階に入ると経営者のリーダーシップはもとより、現場におけるリーダーシップは経営者の方針に従って店長が執るべきである。

 ★セルフレジの導入では、導入前のほとんどの企業が「顧客サービスが低下するのではないか」という懸念を抱いていた。従来は従業員が行っていたレジ操作を顧客に委ねるという、その一面だけを見ると顧客サービスの低下要因と言えるが、それを打ち消し、さらには顧客サービスの向上を先行導入企業が実現している。セルフレジを運用している限りは、店長には先行導入企業と同じように成功させる責務がある。そのためには実際に業務を行っている現場から運用の状況を見ていかなければならない。トップの店長と末端のレジ係が同じ認識に立つことがセルフレジ成功に結び付いていく。


◆第34条 店長は他部門チーフにセルフレジ導入の成果を報告する 

 ★1つの部門の成功はその部門だけの問題ではなく、店舗全体の問題である。どの部門の成功も店舗経営の目標である売上、利益、顧客サービスの向上に結び付いていくものだからである。店舗経営を担う各部門のチーフ以上の中心スタッフが、まずセルフレジの成功情報を共有することが大事である。店長が打ち出した方針の具体的な成果を中心スタッフが共有することで、セルフレジの成功が店舗共通の認識となる基盤ができる。

 ★共通認識の基盤ができることで、1つの部門の成功が他の部門の成功に波及していく。1つの成功は表面の結果だけを比べても共通項が見えてこないことが多い。共通項は成功へのプロセスにある。そのプロセス情報を各部門の中心者が共有することは、各部門における新しいことへの取り組み、現状の問題点の解決で大きなヒントを与えることになる。

 ★セルフレジにおいては、レジ操作を顧客に委ねるという顧客サービスの低下要因を跳ね除け、従業員のスキルの向上と顧客サービスの向上を実現したことの意味は大きい。どの分野にもプラス要因とマイナス要因がある。プラス要因がマイナス要因になり、マイナス要因がプラス要因になることもある。セルフレジはマイナス要因をプラス要因に転換させ、顧客が求める顧客サービスのあり方を引き出すことにも成功した。「接客しないことも接客サービスの1つの表し方である」ということが先行導入企業では一致した認識になっている。セルフレジの成功は、他部門が従業員のスキルの向上策と顧客サービスの向上策を考えるのに十分な事例となっている。セルフレジの成功事例を学ぶことは店舗全部門のスキルの向上を可能にする。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第19回

2009年12月26日 12時25分15秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

《章のはじめに》および第31条、第32条


【2009年10月28日(水)】

 《章のはじめに》第4章のポイントは5点である。すなわち、①リーダーが明確に方針を打ち出すこと、②方針はぶれさせないこと、③情報の収集・発信は現場型であること、④1部門の成功プロセスは普遍性を持っていること、⑤情報は全従業員で共有すること――である。

 ①リーダーが明確に方針を打ち出すこと。店舗のリーダーは店長である。レジ係のリーダーはチェッカーチーフである。リーダーが方針を明確にすることで、担当従業員の取るべき行動が明確になる。各部門の方針も店長が打ち出すことで、部門の方針に留まらず店舗の方針としての全従業員の共通認識ができる。共通認識は店舗(店長)の方針への求心力を高める。

 ②方針はぶれさせないこと。店舗の方針、部門の方針を店舗の最高責任者である店長が打ち出すことで、方針のぶれをなくすことができる。方針・目標と現実との差が克服すべき課題となる。方針がぶれると課題が見えてこない。問題解決する問題が定まらない。

 ③情報の収集・発信は現場型であること。新しいことへの取り組み、従来から継続していることへの取り組み、両方において仮説・検証が重要である。検証情報となる情報の収集・発信は情報の発生現場で行わなければならない。報告書形式だと「行間」の重要情報が伝わらないことがある。店長とチェッカーチーフ、チェッカーチーフとレジ係のコミュニケーションと意思の疎通が大切である。

 ④1部門の成功プロセスは普遍性を持っていること。業務の内容が異なっていても成功要因には共通項がある。セルフレジと他部門では、1つ目は人がかかわっていること、2つ目は「顧客サービス向上」が目的であるという共通項がある。1つの成功が持つ普遍性を他の部門に活用することが店舗力、企業力を強くする。セルフレジを導入する前の企業のほとんどが「顧客サービスが低下するのではないか」という懸念を抱いていた。それゆえに、従業員が行っていたレジ操作を顧客に委ねるというサービス低下要因を持つセルフレジが、そのサービス低下要因を打ち消し、顧客サービスを向上させている成功事例は他部門の顧客サービス向上策に多大なヒントを与えている。

 ⑤情報は全従業員で共有すること。店舗の方針情報、成果情報は全従業員が共有すべきである。店舗は店長を中心に各部門がチームとして運営されている。不要な部門はない。全部門が1つのチームとして店長と同じ目的観を持つということは部門を構成する全従業員が店長と同じ目的意識を持つことである。方針と成果の共通認識は店舗のチーム力を強くする。また、店舗の良い雰囲気を作り出す。パート・アルバイト社員も雰囲気を感じることで業務手順の意味や、店長、先輩社員の行動が理解できるようになる。店舗の雰囲気を作ることはパート・アルバイト社員の教育にもつながる。

 第31条 店長はセルフレジ成功の方針を全従業員に明確に打ち出す

 第32条 レジ係はチェッカーチーフ中心にセルフレジ成功の方法を話し合う

 第33条 店長とレジ係が一体となってセルフレジ成功に努力する

 第34条 店長は他部門チーフにセルフレジ導入の成果を報告する

 第35条 店長はセルフレジ導入の成果を全従業員に報告する

 第36条 他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を練り上げる 

 第37条 店長は他部門の顧客サービス向上策を全従業員に打ち出す

 第38条 他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を仮説・検証する

 第39条 店長は部門ごとの顧客サービス向上策の成果を全従業員に報告する

 第40条 店長はセルフレジ成功と業績の関係を全従業員に報告する


◆第31条 店長はセルフレジ成功の方針を全従業員に明確に打ち出す

 ★店長は店舗経営・店舗運営の最高責任者である。1部門の方針でも店舗の方針として店長が明確に全従業員に伝えることが重要である。正社員、パート・アルバイト社員と立場の違いがあっても、中心者の考え方を共通に理解して、同じ意識を持つことが店舗の結束力を強くする。担当の部門のことだけを知っているのと、店舗全体のことを知っているのとではモチベーションの高さに差が出るのは当然である。全従業員のモチベーションを高めていくのは店長の責務である。

 ★店長の方針は店舗の方針である。店長の方針は企業の方針と同一である。企業の方針達成への課題、目標達成への課題は、達成すべき方針・目標と現実の結果とのギャップである。課題を見つけ出す基準は方針・目標である。判断・評価の基準がぶれると課題が見えてこない。課題が見えないと問題を解決する方途を示せない。方針・目標は修正しなければならないことも起こるが、従業員には今目指すべき方向を常に明確に示さなければならない。従業員が目指すべき方向を示し続けることが店長の責務である。

 ★目指すべき方向が明確で、ぶれないことは従業員に安心感を与える。安心感を持った従業員は仕事で良い成果をもたらす。従業員の良い働きぶりは業務現場の雰囲気を良くする。雰囲気の良い現場は働きやすい環境を作り良い成果を導き出す。店舗の方針・目標を達成するためには働きやすい環境、成果を出しやすい環境が大事となる。その環境を作り出すのは店長の責務である。


◆第32条 レジ係はチェッカーチーフ中心にセルフレジ成功の方法を話し合う 

 ★レジ業務の現場のリーダーはチェッカーチーフである。チェッカーチーフは店長と同じ考えに立ち、現場のリーダーシップを執らなければならない。そのためには店長とチェッカーチーフとの情報交換は常に行わなければならない。チェッカーチーフがレジ係と話し合うことはレジ係の1人1人が店長の方針を理解し、店長と同じ考えに立つことことを可能にする。

 ★同じ現場で働く立場であっても、管理する側と管理される側では、業務に対する意識や認識に差があって当然である。チェッカーチーフとレジ係が率直に話し合うことで現場状況の共通認識ができる。共通認識は現場の結束力を強くする。結束力は業務環境を良くする。良い業務環境は良い成果を生み出す。上意下達型では共通認識は持てない。現場の共通認識は風通しの良い現場のコミュニケーションが作り出す。

 ★現場の従業員が共通認識を持つことで現場が取り組むことを同じ意識でスタートできる。同じ意識でスタートするので結果についても同じ認識が持てる。結果は次の目標へのスタートとなるが、そのスタートも同じ意識で行える。その繰り返しが現場の結束力を強くし、目標達成力を高めることになる。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第18回

2009年12月26日 12時21分50秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第3章 セルフレジは経営者のリーダーシップで決まる

第29条、第30条


【2009年10月27日(火)】

◆第29条 経営者が結果の責任を持つ

 経営者がセルフレジ導入を決断し、自らリーダーシップを執って導入を進めてきたのだから、経営者が最終責任者であるのは当然であると言えば、その通りである。そうすると、もちろん決断は経営者がするわけだが、それ以降は部下に任せた場合はどうなるのか。それでも最終責任者は経営者である。経営者が決断したからではない。店舗経営は企業経営そのものと考えた場合、かかわり方如何を問わず、企業経営そのものである店舗経営の最終責任は経営者が取るべきであるということである。自ら決断し、導入のリーダーシップを執り、最後の責任まで自らが取れば、そういう経営者に従業員は信頼し付いてくる。ただし、問題が生じた場合は経営者が責任を取り、成功した時には従業員の手柄にすると、さらに従業員の信頼は厚くなる。
 経営者としての「仮説・検証」がある。そして、経営者としての評価がある。経営的視点は経営者の考えの中にある。この部分を含めての総合的な評価、それに対する責任は経営者しか取れない。現場は決められたことの達成を目指す。それに対する責任は店長が負うべきである。ただし、努力したにもかかわらず、結果が思わしくないことがある。その場合は、結果を分析し原因を究明して、問題点を明らかにし、現場としての責任がどこまであるのかを明らかにし、その上で、最終責任は経営者が取らなければならない。
 店長が変われば利用率が変わるという例がある。利用率は店長の取り組み方、取り組む意欲によるということである。店長の取り組み姿勢に対する店長の責任は当然問われるべきである。会社の方針に従い会社の目標達成に努力するのが店長であるからである。しかし、その店長を任命したのは経営者である。任命責任は経営者にある。店長にセルフレジ導入についての経営者の考え方が十分に伝えられていなく、なぜセルフレジを導入するのか、店長の理解が十分でなければ、その責任は経営者にある。
 結果の原因は現場にある。経営者は現場の状況を十分に把握しなければ責任の所在を見誤ってしまう。経営者が最終責任を取れば良いということではない。例えば、POSシステムの導入が実験導入の域を出ていない頃から「POSデータは改ざんできる」と言われてきた。その通りで、今も変わらない。決められた棚割り通りに商品が並び、いつも決められたフェーシングで陳列されているかどうかで売上は変わる。現場が故意に棚への商品補充を怠ることもできる。データは発生条件が一定でないと正しい判断はできない。現場を知らないと、現場を見ないと、データを読み違えてしまう。セルフレジ導入の評価、判断も同様である。現場を見なければ正しい評価、判断はできない。経営者は現場を見て、正しく判断しなければならない。その判断の責任も経営者にある。


◆第30条 経営者が次の方針を出す 

 店舗の営業は店舗が閉鎖されるまで続けられる。セルフレジの稼働も導入を中止するまで続けられる。セルフレジは展示されているのではなく、日々稼働している。常に稼働条件は変化している。商圏特性も変化している。利用者も変化している。レジ係のスキルも変化している。導入1年目と2年目では状況は大きく変化しており、利用率は変わらないとしても、利用者、従業員のセルフレジへの評価も含めて、その中身は変化している。導入後半年あるいは1年を経て1つの評価が下されても、次の1年への挑戦が繰り返されていく。初めの導入と同じく、企業経営は店舗経営そのものという視点から、次の方針は経営者が打ち出し、その経緯を現場指向で注視し、評価し、結果責任を取っていかなければならない。
 先行導入企業の話で共通しているのは1年目と2年目、2年目と3年目では、利用者の意識、従業員の意識、利用の状況など、様々な大きな変化があるということである。店舗が努力しているから、利用者も変化し、利用状況も変化するである。努力をするには方針が必要である。努力の方向性、道筋が明確でなければならない。方針は経営者でなければ打ち出せない。その理由は、第3章の第21条から第29条までと同様である。

 そして、第3章で一貫して述べてきた「経営者のリーダーシップ」がなぜ大事なのかの理由は1点に集約できる。それは方針をぶれさせないためである。セルフレジの導入が進んでいくと、いわば外への力が増していくことになる。遠心力が大きくなるのである。遠心力が大きくなるにしたがって求心力が強くなっていかなければ中心軸は遠心力に引っ張られて外へ飛んで行ってしまう。遠心力を増し、増した遠心力を支える十分な力を持つ、ぶれない中心軸が求められる。中心軸となる、ぶれない方針は経営者にしか打ち出せない。変化の時代になればなるほど、ぶれない中心軸が必要であり、変化が常態化した時代では、ますます、ぶれない中心軸が求められる。セルフレジ導入を通して店舗力を考える時、経営者と店舗の一体感の必要性が強く感じられる。そのためには、ぶれない方針が必要なのである。