【2010年2月1日(月)】
◆読んだ新聞
日本経済新聞 1月25日(月) 朝刊 11面
◆記事の見出し
《注目この職場》《虎屋本舗 従業員の4割 60歳以上》《シルバー職場 ブランドに》
《若手偏重、退職相次ぎ転換》《直接の技術指導で連帯感》《「おばあちゃんが働く店」PR》
◆記事の内容
★1620年創業の老舗菓子製造販売会社、虎屋本舗(広島県福山市、高田信吾社長)は2008年に定年を60歳から70歳に引き上げた。定年を超えても嘱託社員として単年度契約で働ける制度がある。正社員最高齢の和菓子作り約50年のベテラン職人は週4日、早朝から午後4時まで働く。自ら働き若手社員の指導も行う。売場で販売を担当するパート社員は70歳の女性と60代の女性が2人。パート社員を含む全従業員70人の4割が60歳以上という「超シニア職場」だが、そうした取り組みが評価されて「2009年度高年齢者雇用開発コンテスト」で厚生労働大臣表彰の特別賞を受けた。
★15年前に31歳の若さで経営を任された現社長は、意識的に若手社員の採用を増やして会社の雰囲気を変えようとした。菓子職人の修行は厳しく、期待を込めて採用した若手が次々と退職し、会社を支えているのは中高年社員であることに気が付く。方針を転換し、中高年社員が働きやすい職場環境を目指した。中高年社員が安心して働けるようにして、若手社員との連帯感が高まり、職場の雰囲気がぐっと良くなった。2010年2月期の売上高は1,000万円増の5億1,500万円を見込む。
★社長は、元気なうちは働きたいという中高年社員の要望に応えることもCSR(企業の社会的責任)だと言う。それを果たして、地域社会や消費者に愛される企業になれば会社のブランド力になるとも言う。直営店に従業員のためのスロープや広い休憩スペースを作る計画である。「おばあちゃんが働きつづけられる店」を積極的にPRしていく。「超シニア職場」という異色のブランド戦略は地域社会や消費者に好印象を与えているようである。
●今日の気づき
★街を歩いても、周りを見渡しても、「60歳」が「お年寄り」と思うことは、まずない。60歳以上の人たちが、これまでの経験を生かして、職場の第一線で働くことに違和感はない。一方、中高年者には向いてない職場もある。企業によって、職場によって、事情は様々、異なる。定年は何歳にしなければならないとか、求人案内に年齢制限を設けてはならない、など、決まり事を作るのが良いのかどうか、疑問に思う。求人案内などは年齢制限を設けなくても、書類選考でふるいにかければ決まり事をすり抜けることができる。職場事情は企業固有の問題なのに、一律的に決まり事を設けて良いのかどうか。しかし現実は、決まり事を設けないと従業員が不利な立場に立たされる懸念があるので、それを防がなければならない。それほどまでに、企業は信用されていないことになる。
★法律の専門家ではないので、専門家でどんな議論が交されているのかは分からないが、学生の時に受けた憲法概論の授業で、法律学者が考える理想の社会は法律のない社会である、ということを聞いて共感を覚えたことを思い出す。人間をどれだけ信用できるのか、そのレベルにまで引き上げられた倫理観、行動がスタンダードになる社会が理想ということであろうか。人の社会を治める政治家は、最も人の模範となり、人の尊敬を集める倫理観と行動を持ち合わせているべきなのに、その政治家に対して、繰り返し改正を余儀なくされる政治資金規正法という決まり事がある。その政治家とカネを通じて結び付いているのが企業であることを考えると、もちろん、すべての企業がそうではないことを前提にしても、利潤追求が最優先され、上場企業は株主利益を優先しなければならない現状を見る時、法律のない社会などは理想論の域を出ることはないのではないだろうか。
★虎屋本舗の経営方針、職場環境作りの取り組みは、厚生労働大臣表彰の特別賞に値する素晴らしいものだが、目の前の経営課題に取り組む中で出来上がってきた結果であって、個企業の立場からは、当たり前のことをしたというものではないだろうか。他者から見れば、特筆すべきものでも、当事者にとっては当たり前のことをしたということが多い。個企業にはその企業なりの個別の課題があり、それに立ち向かった結果は、当事者にとっては「当たり前」、他者にとっては「特筆すべき」になるのであろう。そういう意味では、「特筆すべき」は企業の数だけ存在できる。「特筆すべき」が多くなることを望みたい。
(東)
◆読んだ新聞
日本経済新聞 1月25日(月) 朝刊 11面
◆記事の見出し
《注目この職場》《虎屋本舗 従業員の4割 60歳以上》《シルバー職場 ブランドに》
《若手偏重、退職相次ぎ転換》《直接の技術指導で連帯感》《「おばあちゃんが働く店」PR》
◆記事の内容
★1620年創業の老舗菓子製造販売会社、虎屋本舗(広島県福山市、高田信吾社長)は2008年に定年を60歳から70歳に引き上げた。定年を超えても嘱託社員として単年度契約で働ける制度がある。正社員最高齢の和菓子作り約50年のベテラン職人は週4日、早朝から午後4時まで働く。自ら働き若手社員の指導も行う。売場で販売を担当するパート社員は70歳の女性と60代の女性が2人。パート社員を含む全従業員70人の4割が60歳以上という「超シニア職場」だが、そうした取り組みが評価されて「2009年度高年齢者雇用開発コンテスト」で厚生労働大臣表彰の特別賞を受けた。
★15年前に31歳の若さで経営を任された現社長は、意識的に若手社員の採用を増やして会社の雰囲気を変えようとした。菓子職人の修行は厳しく、期待を込めて採用した若手が次々と退職し、会社を支えているのは中高年社員であることに気が付く。方針を転換し、中高年社員が働きやすい職場環境を目指した。中高年社員が安心して働けるようにして、若手社員との連帯感が高まり、職場の雰囲気がぐっと良くなった。2010年2月期の売上高は1,000万円増の5億1,500万円を見込む。
★社長は、元気なうちは働きたいという中高年社員の要望に応えることもCSR(企業の社会的責任)だと言う。それを果たして、地域社会や消費者に愛される企業になれば会社のブランド力になるとも言う。直営店に従業員のためのスロープや広い休憩スペースを作る計画である。「おばあちゃんが働きつづけられる店」を積極的にPRしていく。「超シニア職場」という異色のブランド戦略は地域社会や消費者に好印象を与えているようである。
●今日の気づき
★街を歩いても、周りを見渡しても、「60歳」が「お年寄り」と思うことは、まずない。60歳以上の人たちが、これまでの経験を生かして、職場の第一線で働くことに違和感はない。一方、中高年者には向いてない職場もある。企業によって、職場によって、事情は様々、異なる。定年は何歳にしなければならないとか、求人案内に年齢制限を設けてはならない、など、決まり事を作るのが良いのかどうか、疑問に思う。求人案内などは年齢制限を設けなくても、書類選考でふるいにかければ決まり事をすり抜けることができる。職場事情は企業固有の問題なのに、一律的に決まり事を設けて良いのかどうか。しかし現実は、決まり事を設けないと従業員が不利な立場に立たされる懸念があるので、それを防がなければならない。それほどまでに、企業は信用されていないことになる。
★法律の専門家ではないので、専門家でどんな議論が交されているのかは分からないが、学生の時に受けた憲法概論の授業で、法律学者が考える理想の社会は法律のない社会である、ということを聞いて共感を覚えたことを思い出す。人間をどれだけ信用できるのか、そのレベルにまで引き上げられた倫理観、行動がスタンダードになる社会が理想ということであろうか。人の社会を治める政治家は、最も人の模範となり、人の尊敬を集める倫理観と行動を持ち合わせているべきなのに、その政治家に対して、繰り返し改正を余儀なくされる政治資金規正法という決まり事がある。その政治家とカネを通じて結び付いているのが企業であることを考えると、もちろん、すべての企業がそうではないことを前提にしても、利潤追求が最優先され、上場企業は株主利益を優先しなければならない現状を見る時、法律のない社会などは理想論の域を出ることはないのではないだろうか。
★虎屋本舗の経営方針、職場環境作りの取り組みは、厚生労働大臣表彰の特別賞に値する素晴らしいものだが、目の前の経営課題に取り組む中で出来上がってきた結果であって、個企業の立場からは、当たり前のことをしたというものではないだろうか。他者から見れば、特筆すべきものでも、当事者にとっては当たり前のことをしたということが多い。個企業にはその企業なりの個別の課題があり、それに立ち向かった結果は、当事者にとっては「当たり前」、他者にとっては「特筆すべき」になるのであろう。そういう意味では、「特筆すべき」は企業の数だけ存在できる。「特筆すべき」が多くなることを望みたい。
(東)