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WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第23回

2009年12月29日 13時36分49秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

第39条、第40条


【2009年11月4日(水)】

◆第39条 店長は部門ごとの顧客サービス向上策の成果を全従業員に報告する

 ★店長は、部門ごとの顧客サービス向上策を店舗の方針として明確に打ち出したことで、その成果についても、全従業員に報告する義務がある。情報の共有は従業員の結束を強くする。従業員の結束は店舗の力となる。店舗の力は、目的・目標が明確になっていると、その達成への大きな推進力となる。目的・目標の明確化は蓄積された力を出す方向を明確に示すことだからである。力の蓄積は各従業員のスキルが集合したものである。方向が定まると各従業員に蓄積された力が結束力を持つ。成果を報告し従業員の意識を同一にすることは、次の出発への強い推進力を作ることである。

 ★成果の報告では、結果だけでなく、結果が出るまでのプロセスの説明が大事である。プロセス情報の中に成功要因が内在しているからである。プロセス情報の共有化は成功要因の共有化である。成功要因は普遍的な要素を含んでいる。普遍的要素は汎用性を持ち、どの部門でも活用できる。1つの部門の成果情報は全部門に通じるものがある。成果情報は部門の数だけある。成果情報の共有化は部門の数の情報を従業員が取得することであり、その蓄積効果は計り知れない。

 ★情報の共有化、意識の同一化で得られる大きな効果に、店舗の雰囲気、風土と言えるような店舗の「空気」を作れるということがある。人は「空気」によって育てられる。子供は言葉で教えられなくても家族と一緒に生活していく中で性格や思考の傾向が育てられていく。地域、学校、職場も然りである。本人は意識しなくでも、人が集まり、雰囲気(空気)が形成されている場に身を置くことで、多くのことを五感で学び吸収していく。情報の共有化には、そうした力がある。いかに、効果が出せるような情報共有化の環境を作るのか。店長の大切な責務の1つである。


◆第40条 店長はセルフレジ成功と業績の関係を全従業員に報告する

 ★店長は、セルフレジ導入の成功、各部門の顧客サービス向上策の成果など、1つ1つの方針・成果を全従業員に報告した次のステップとして、総括的に、あるいはセルフレジ導入から始まり店舗としての顧客サービスの向上、達成できた業績までをストーリー的に報告することが大事である。セルフレジの導入、各部門の顧客サービス向上策等すべての施策が店舗としての顧客サービスの向上、それによる業績向上を目的にしたものであるからである。総括的な評価、報告でセルフレジ導入の成功報告が1つ完結したと言える。

 ★報告は事例を交えるなど全員の理解を得るように工夫して具体的に行うことが大事である。人は理屈で理解する人もいれば、具体的な事例で説明することで理解を深める人、1つ1つの関係性を知ることで理解する人など、理解のアプローチへの「得意技」は様々である。事例で説明しないと理解できないようでは困ると言ってしまえば人は育たない。いったん相手のレベルにまで自分を持って行き、そこから自分が目指すところにまで相手の意識を引き上げていくという方法もリーダーシップの執り方の1つと言える。店舗の発展における、情報の共有化、状況認識の共通化、問題意識の同一化の重要性を考える時、その土壌作りには多くの努力を注ぎ込むことが必要となる。

 ★店長は、総括的な成果の報告と同時に、次の方針、目標を明確に示すことが大事である。店舗発展の土壌ができると、様々な種を植えても、きちんと芽が出て、花が咲き、実が育つ。方針から始まる成果の総括的な報告は、仮説・検証の結果を具体的に説明することであり、P(Plan)D(Do)S(See)C(Check)のサイクルを実証的に理解を得ることである。PDSCは繰り返すことで効果を出すマネジメントの手法である。成果の総括の後は必ず次の方針を打ち出すことが重要である。それゆえに、店長は、総括の報告では、次の方針、目標を用意して臨まなければならない。それが持続可能な発展につながっていくのである。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第22回

2009年12月29日 00時42分48秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

第37条、第38条


【2009年11月2日(月)】

◆第37条 店長は他部門の顧客サービス向上策を全従業員に打ち出す

 ★店長は、各部門チーフが練り上げ、策定した顧客サービスを向上させる部門方針を店舗の方針として、全従業員に発表することが大事である。そうすることで、部門方針は部門方針に留まらず、全従業員が店舗方針として理解する。店舗における新しい取り組みは、顧客の目に触れないバックヤード業務も含めて、全従業員が情報を共有することである。パート・アルバイト社員を含めて全従業員が同じ認識を持つことで店舗の運営に一体感が生まれる。一体感は各従業員の仕事に対する意識を高め、顧客への対応が向上する。

 ★店長が、各部門の顧客サービス向上策を発表する時、部門方針がセルフレジ導入の成功との関連で策定されたことを説明することが大事である。物事は関連付けると理解が深まる。1つ1つの具体的な施策が店舗における「顧客サービスの向上」、「顧客との関係性強化」という大きな目標に結び付いていることが全従業員の一致した認識になることで、店舗の結束力が高まり、店舗力が強くなる。

 ★店舗力の強さはマニュアルを超えた時に形成される。マニュアルは経験の浅い従業員の作業スキルをある一定の水準にまで短期間に引き上げることができる。従業員のスキルの水準を一定のレベルにまで引き上げて平準化もできる。しかし、マニュアルに頼っているだけではスキルはマニュアルを超えられない。顧客サービスで競合店に差を付けるのは、仕組みの作り方と、マニュアルの質と、マニュアルを超えた「従業員の自覚による行動」である。したがって、マニュアルを超える顧客サービスの向上は従業員の自覚の強弱で決まる。自覚の強弱は情報提供の仕方による。今、店舗では、何を目指し、何が起こっているのか。それを知ること、情報の共有化は従業員の自覚を高め、マニュアルを超えた顧客サービスを提供する土台を築くことになる。


◆第38条 他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を仮説・検証する 

 ★現場で作業をする末端従業員のスキルは、その上司である部門チームのスキルに従う。部門チーフのスキルが上がった分だけ部門内の従業員のスキルが上がる。部門チーフのスキルは行動に表れる。行動には「覚えた行動」と「考えた行動」がある。「覚えた行動」はマニュアルの範囲内の行動、教えられた範囲内の行動である。「覚えた行動」を超えた「考えた行動」がスキルを高める。「考えた行動」は仮説・検証の繰り返しでできるようになる。「仮説」も「検証」も「考えること」だからである。

 ★仮説・検証には2種類の形がある。1つ目は、方針、計画に基づいて、ある結果を想定して、仮説を組み上げ、行動計画を立て、実行し、結果を検証することである。仮説と結果の間には、計画と実行がある。仮説と結果の差が大きいと、仮説に問題があるのか、計画や実行に問題があるのかがわかってくる。差が小さくなると、仮説力が高まり、計画力、実行力が高まったと言える。2つ目は、日々の業務で経験的に行っている仮設・検証である。その蓄積は「経験則」とも言えるものである。天気予報を見て発注数を変えるとか、営業中の天気の変化、気温の変化で午前と午後、夕方で陳列の仕方を変えるとか、常に考えながら業務を進めていくことが仮説・検証になる。いずれの場合にも、「考える」ことがキーポイントである。

 ★仮説・検証は繰り返し行うことで効果が生まれる。繰り返すことで仮説と検証のデータが蓄積され、データベース化される。小売業は変化対応業と言われる。大きく、または小さく、常に売上にかかわる状況が変化している。変化に対応するためには仮説・検証が必須である。検証結果に基づいて、次の売上を予測し、仮説を立て、発注し、結果を検証していく。状況が変化しても変わらないもの、状況の変化に応じて変わるものなど、様々な仮説の基礎データが、仮説・検証を繰り返すことで蓄積され、仮説力が強くなってくる。仮説力が強くなるというのは発注精度が高くなることである。仮説・検証は繰り返し行わなければ高い効果は得られないのである。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第21回

2009年12月28日 19時14分59秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

第35条、第36条


【2009年10月30日(金)】

◆第35条 店長はセルフレジ導入の成果を全従業員に報告する

 ★店舗の部門チーフ以上の中心スタッフにセルフレジ導入の成果について共通認識ができると、その共通認識を全従業員に広げることが重要である。1部門の成果であっても、顧客から見れば、店舗のイメージアップの印象を与える。まして、セルフレジ導入の成果は店舗経営における根幹的に重要な顧客サービスの向上と顧客との関係性強化に直接結び付く問題である。全従業員が共通の認識を持つことで、店舗の雰囲気、顧客への対応で一体感が生まれる。セルフレジ導入の成果は、そういう店舗の風土作りにおいても良いきっかけとなる。
 
 ★知っていることと、知らないでいることの差は大きい。差は2つの面に出る。1つ目は顧客の店舗に対する印象において、2つ目は従業員のモチベーションにおいてである。顧客がセルフレジ導入の成果をよく知らないレジ係以外の従業員にセルフレジの評価を話したとする。顧客が店舗のイメージアップを感じていて、従業員がその要因を知らないのは、従業員の質において、店舗のイメージダウンにつながりかねない。従業員が恥ずかしい思いをすることもある。一方、知っていることが従業員のモチベーションを上げることは当然である。上がったモチベーションは仕事ぶりに表れる。顧客はセルフレジの導入と従業員の質の向上との両面で印象が良くなる。

 ★全従業員とはパート・アルバイト社員を含む全員である。顧客から見れば、正社員も、パート・アルバイト社員も同じ店舗従業員である。パート・アルバイト社員からすれば、他の従業員と区別なく情報が提供されることで「信頼されている」「有力な戦力の一員である」という意識が持て、モチベーションが上がる。パート・アルバイト社員の教育は特別なものでなく、与えるべき情報をきちんと提供し、正社員、先輩従業員が行動で模範を示し、かつ、そういう雰囲気、風土を店舗内に作ることが重要である。その雰囲気作り、風土作りは店長の責務である。従業員への情報提供は原則的にはパート・アルバイト社員にも共通に行うことが大事である。
 


◆第36条 他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を練り上げる 

 ★セルフレジ導入の成功は、顧客サービスの向上と顧客との関係性強化ということについて、他の部門にも共通する成功プロセスの要因を提供している。それをヒントに他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を考えることが重要である。レジ部門だけでなく、店舗の全部門が「顧客サービスの向上」、「顧客との関係性強化」という高い店舗目標に向かって努力し、その相乗効果が店舗の魅力を作り、店舗の競争力を強くしていく。セルフレジ導入の成功は、ある意味では、そのきっかけを作り、その可能性を実証し、その出発点に立たせたということである。

 ★顧客サービスの向上と顧客との関係性強化は終着点がない。顧客を取り巻く、経済・社会状況、商品の開発状況、ネット通販・地産地消など購買環境等々、さらには顧客自身の年齢、家族構成、嗜好、価値観の変化等々、生活者の消費環境は留まることなく変化している。顧客サービスや顧客との関係性は、そうした変化に常に対応していかなければならない。常に変化している顧客に対して、その対応も常に変化していなくては顧客サービスの維持・向上はできない。1つの成功事例は「到達点」ではなく「出発点」である。仮に、失敗事例であっても、1つの結果は「到達点」ではなく「出発点」でなければならない。様々な変化への対応において、現場の第一線で、その重要な役割を担っているのが各部門である。そのリーダーシップを執るのが部門チーフである。部門チーフの役割は大きい。

 ★現場の第一線でリーダーシップを執る部門チーフの高いモチベーションとスキルの向上が変化への対応のキーポイントとなる。変化への対応では、相手が変化しているので「やってみなければわからない」ことが多い。現場での仮説・検証が大切である。初めから中心の的に当たらなくても、仮説・検証を繰り返していく中で中心に近付いていくことが大切である。小売業では毎日の営業の中でも、その仮説・検証が可能である。部門チーフの仮説・検証作業は、担当部門を良くし、店舗の力を強くするとともに、部門チーフ自らのスキルを向上させる自己研鑽の「道場」でもある。部門チーフは店長に直結するキーマンである。キーマンの成長が店舗の成長に直結していく。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第20回

2009年12月26日 12時27分25秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

第33条、第34条


【2009年10月29日(木)】

◆第33条 店長とレジ係が一体となってセルフレジ成功に努力する

 ★現場の方針は店長の方針と一体でなければならない。その橋渡しをするのがチーフの役割だが、新しい取り組み、特にセルフレジの取り組みについては、チェッカーチーフがその役割を果たすとともに、店長自らが現場に足繁く通い、レジ係と一体になって成功への努力をしなければならない。1業務の問題ではなく、店舗と顧客の間で最も大事な顧客サービス、顧客との関係性強化にかかわる取り組みであるからである。セルフサービス店のレジでの接客は、顧客満足度の向上を目指す店舗経営の最も重要な業務であり、店長が陣頭指揮を執るのは当然である。その最高責任者が現場情報を体感的に収集することが重要である。

 ★どの部門の成功要因にも、業務横断的な共通要因がある。1つの部門の成功要因が普遍性を持った時、他の部門の成功要因を導き出すことができる。セルフレジの成功要因を他部門でも共有しなければならないのは、セルフレジの導入は従業員のスキルの向上と顧客サービスの向上を可能にするからである。「企業は人」と言われるように、従業員の力を強くすることは店舗経営で最も重要なことである。また、顧客サービスの向上はストアロイヤルティの向上では欠かせない要件である。導入までは経営者がリーダーシップを執ったが、運用段階に入ると経営者のリーダーシップはもとより、現場におけるリーダーシップは経営者の方針に従って店長が執るべきである。

 ★セルフレジの導入では、導入前のほとんどの企業が「顧客サービスが低下するのではないか」という懸念を抱いていた。従来は従業員が行っていたレジ操作を顧客に委ねるという、その一面だけを見ると顧客サービスの低下要因と言えるが、それを打ち消し、さらには顧客サービスの向上を先行導入企業が実現している。セルフレジを運用している限りは、店長には先行導入企業と同じように成功させる責務がある。そのためには実際に業務を行っている現場から運用の状況を見ていかなければならない。トップの店長と末端のレジ係が同じ認識に立つことがセルフレジ成功に結び付いていく。


◆第34条 店長は他部門チーフにセルフレジ導入の成果を報告する 

 ★1つの部門の成功はその部門だけの問題ではなく、店舗全体の問題である。どの部門の成功も店舗経営の目標である売上、利益、顧客サービスの向上に結び付いていくものだからである。店舗経営を担う各部門のチーフ以上の中心スタッフが、まずセルフレジの成功情報を共有することが大事である。店長が打ち出した方針の具体的な成果を中心スタッフが共有することで、セルフレジの成功が店舗共通の認識となる基盤ができる。

 ★共通認識の基盤ができることで、1つの部門の成功が他の部門の成功に波及していく。1つの成功は表面の結果だけを比べても共通項が見えてこないことが多い。共通項は成功へのプロセスにある。そのプロセス情報を各部門の中心者が共有することは、各部門における新しいことへの取り組み、現状の問題点の解決で大きなヒントを与えることになる。

 ★セルフレジにおいては、レジ操作を顧客に委ねるという顧客サービスの低下要因を跳ね除け、従業員のスキルの向上と顧客サービスの向上を実現したことの意味は大きい。どの分野にもプラス要因とマイナス要因がある。プラス要因がマイナス要因になり、マイナス要因がプラス要因になることもある。セルフレジはマイナス要因をプラス要因に転換させ、顧客が求める顧客サービスのあり方を引き出すことにも成功した。「接客しないことも接客サービスの1つの表し方である」ということが先行導入企業では一致した認識になっている。セルフレジの成功は、他部門が従業員のスキルの向上策と顧客サービスの向上策を考えるのに十分な事例となっている。セルフレジの成功事例を学ぶことは店舗全部門のスキルの向上を可能にする。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第19回

2009年12月26日 12時25分15秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第4章 セルフレジは従業員のスキルを向上させる

《章のはじめに》および第31条、第32条


【2009年10月28日(水)】

 《章のはじめに》第4章のポイントは5点である。すなわち、①リーダーが明確に方針を打ち出すこと、②方針はぶれさせないこと、③情報の収集・発信は現場型であること、④1部門の成功プロセスは普遍性を持っていること、⑤情報は全従業員で共有すること――である。

 ①リーダーが明確に方針を打ち出すこと。店舗のリーダーは店長である。レジ係のリーダーはチェッカーチーフである。リーダーが方針を明確にすることで、担当従業員の取るべき行動が明確になる。各部門の方針も店長が打ち出すことで、部門の方針に留まらず店舗の方針としての全従業員の共通認識ができる。共通認識は店舗(店長)の方針への求心力を高める。

 ②方針はぶれさせないこと。店舗の方針、部門の方針を店舗の最高責任者である店長が打ち出すことで、方針のぶれをなくすことができる。方針・目標と現実との差が克服すべき課題となる。方針がぶれると課題が見えてこない。問題解決する問題が定まらない。

 ③情報の収集・発信は現場型であること。新しいことへの取り組み、従来から継続していることへの取り組み、両方において仮説・検証が重要である。検証情報となる情報の収集・発信は情報の発生現場で行わなければならない。報告書形式だと「行間」の重要情報が伝わらないことがある。店長とチェッカーチーフ、チェッカーチーフとレジ係のコミュニケーションと意思の疎通が大切である。

 ④1部門の成功プロセスは普遍性を持っていること。業務の内容が異なっていても成功要因には共通項がある。セルフレジと他部門では、1つ目は人がかかわっていること、2つ目は「顧客サービス向上」が目的であるという共通項がある。1つの成功が持つ普遍性を他の部門に活用することが店舗力、企業力を強くする。セルフレジを導入する前の企業のほとんどが「顧客サービスが低下するのではないか」という懸念を抱いていた。それゆえに、従業員が行っていたレジ操作を顧客に委ねるというサービス低下要因を持つセルフレジが、そのサービス低下要因を打ち消し、顧客サービスを向上させている成功事例は他部門の顧客サービス向上策に多大なヒントを与えている。

 ⑤情報は全従業員で共有すること。店舗の方針情報、成果情報は全従業員が共有すべきである。店舗は店長を中心に各部門がチームとして運営されている。不要な部門はない。全部門が1つのチームとして店長と同じ目的観を持つということは部門を構成する全従業員が店長と同じ目的意識を持つことである。方針と成果の共通認識は店舗のチーム力を強くする。また、店舗の良い雰囲気を作り出す。パート・アルバイト社員も雰囲気を感じることで業務手順の意味や、店長、先輩社員の行動が理解できるようになる。店舗の雰囲気を作ることはパート・アルバイト社員の教育にもつながる。

 第31条 店長はセルフレジ成功の方針を全従業員に明確に打ち出す

 第32条 レジ係はチェッカーチーフ中心にセルフレジ成功の方法を話し合う

 第33条 店長とレジ係が一体となってセルフレジ成功に努力する

 第34条 店長は他部門チーフにセルフレジ導入の成果を報告する

 第35条 店長はセルフレジ導入の成果を全従業員に報告する

 第36条 他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を練り上げる 

 第37条 店長は他部門の顧客サービス向上策を全従業員に打ち出す

 第38条 他部門チーフは自部門の顧客サービス向上策を仮説・検証する

 第39条 店長は部門ごとの顧客サービス向上策の成果を全従業員に報告する

 第40条 店長はセルフレジ成功と業績の関係を全従業員に報告する


◆第31条 店長はセルフレジ成功の方針を全従業員に明確に打ち出す

 ★店長は店舗経営・店舗運営の最高責任者である。1部門の方針でも店舗の方針として店長が明確に全従業員に伝えることが重要である。正社員、パート・アルバイト社員と立場の違いがあっても、中心者の考え方を共通に理解して、同じ意識を持つことが店舗の結束力を強くする。担当の部門のことだけを知っているのと、店舗全体のことを知っているのとではモチベーションの高さに差が出るのは当然である。全従業員のモチベーションを高めていくのは店長の責務である。

 ★店長の方針は店舗の方針である。店長の方針は企業の方針と同一である。企業の方針達成への課題、目標達成への課題は、達成すべき方針・目標と現実の結果とのギャップである。課題を見つけ出す基準は方針・目標である。判断・評価の基準がぶれると課題が見えてこない。課題が見えないと問題を解決する方途を示せない。方針・目標は修正しなければならないことも起こるが、従業員には今目指すべき方向を常に明確に示さなければならない。従業員が目指すべき方向を示し続けることが店長の責務である。

 ★目指すべき方向が明確で、ぶれないことは従業員に安心感を与える。安心感を持った従業員は仕事で良い成果をもたらす。従業員の良い働きぶりは業務現場の雰囲気を良くする。雰囲気の良い現場は働きやすい環境を作り良い成果を導き出す。店舗の方針・目標を達成するためには働きやすい環境、成果を出しやすい環境が大事となる。その環境を作り出すのは店長の責務である。


◆第32条 レジ係はチェッカーチーフ中心にセルフレジ成功の方法を話し合う 

 ★レジ業務の現場のリーダーはチェッカーチーフである。チェッカーチーフは店長と同じ考えに立ち、現場のリーダーシップを執らなければならない。そのためには店長とチェッカーチーフとの情報交換は常に行わなければならない。チェッカーチーフがレジ係と話し合うことはレジ係の1人1人が店長の方針を理解し、店長と同じ考えに立つことことを可能にする。

 ★同じ現場で働く立場であっても、管理する側と管理される側では、業務に対する意識や認識に差があって当然である。チェッカーチーフとレジ係が率直に話し合うことで現場状況の共通認識ができる。共通認識は現場の結束力を強くする。結束力は業務環境を良くする。良い業務環境は良い成果を生み出す。上意下達型では共通認識は持てない。現場の共通認識は風通しの良い現場のコミュニケーションが作り出す。

 ★現場の従業員が共通認識を持つことで現場が取り組むことを同じ意識でスタートできる。同じ意識でスタートするので結果についても同じ認識が持てる。結果は次の目標へのスタートとなるが、そのスタートも同じ意識で行える。その繰り返しが現場の結束力を強くし、目標達成力を高めることになる。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第18回

2009年12月26日 12時21分50秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第3章 セルフレジは経営者のリーダーシップで決まる

第29条、第30条


【2009年10月27日(火)】

◆第29条 経営者が結果の責任を持つ

 経営者がセルフレジ導入を決断し、自らリーダーシップを執って導入を進めてきたのだから、経営者が最終責任者であるのは当然であると言えば、その通りである。そうすると、もちろん決断は経営者がするわけだが、それ以降は部下に任せた場合はどうなるのか。それでも最終責任者は経営者である。経営者が決断したからではない。店舗経営は企業経営そのものと考えた場合、かかわり方如何を問わず、企業経営そのものである店舗経営の最終責任は経営者が取るべきであるということである。自ら決断し、導入のリーダーシップを執り、最後の責任まで自らが取れば、そういう経営者に従業員は信頼し付いてくる。ただし、問題が生じた場合は経営者が責任を取り、成功した時には従業員の手柄にすると、さらに従業員の信頼は厚くなる。
 経営者としての「仮説・検証」がある。そして、経営者としての評価がある。経営的視点は経営者の考えの中にある。この部分を含めての総合的な評価、それに対する責任は経営者しか取れない。現場は決められたことの達成を目指す。それに対する責任は店長が負うべきである。ただし、努力したにもかかわらず、結果が思わしくないことがある。その場合は、結果を分析し原因を究明して、問題点を明らかにし、現場としての責任がどこまであるのかを明らかにし、その上で、最終責任は経営者が取らなければならない。
 店長が変われば利用率が変わるという例がある。利用率は店長の取り組み方、取り組む意欲によるということである。店長の取り組み姿勢に対する店長の責任は当然問われるべきである。会社の方針に従い会社の目標達成に努力するのが店長であるからである。しかし、その店長を任命したのは経営者である。任命責任は経営者にある。店長にセルフレジ導入についての経営者の考え方が十分に伝えられていなく、なぜセルフレジを導入するのか、店長の理解が十分でなければ、その責任は経営者にある。
 結果の原因は現場にある。経営者は現場の状況を十分に把握しなければ責任の所在を見誤ってしまう。経営者が最終責任を取れば良いということではない。例えば、POSシステムの導入が実験導入の域を出ていない頃から「POSデータは改ざんできる」と言われてきた。その通りで、今も変わらない。決められた棚割り通りに商品が並び、いつも決められたフェーシングで陳列されているかどうかで売上は変わる。現場が故意に棚への商品補充を怠ることもできる。データは発生条件が一定でないと正しい判断はできない。現場を知らないと、現場を見ないと、データを読み違えてしまう。セルフレジ導入の評価、判断も同様である。現場を見なければ正しい評価、判断はできない。経営者は現場を見て、正しく判断しなければならない。その判断の責任も経営者にある。


◆第30条 経営者が次の方針を出す 

 店舗の営業は店舗が閉鎖されるまで続けられる。セルフレジの稼働も導入を中止するまで続けられる。セルフレジは展示されているのではなく、日々稼働している。常に稼働条件は変化している。商圏特性も変化している。利用者も変化している。レジ係のスキルも変化している。導入1年目と2年目では状況は大きく変化しており、利用率は変わらないとしても、利用者、従業員のセルフレジへの評価も含めて、その中身は変化している。導入後半年あるいは1年を経て1つの評価が下されても、次の1年への挑戦が繰り返されていく。初めの導入と同じく、企業経営は店舗経営そのものという視点から、次の方針は経営者が打ち出し、その経緯を現場指向で注視し、評価し、結果責任を取っていかなければならない。
 先行導入企業の話で共通しているのは1年目と2年目、2年目と3年目では、利用者の意識、従業員の意識、利用の状況など、様々な大きな変化があるということである。店舗が努力しているから、利用者も変化し、利用状況も変化するである。努力をするには方針が必要である。努力の方向性、道筋が明確でなければならない。方針は経営者でなければ打ち出せない。その理由は、第3章の第21条から第29条までと同様である。

 そして、第3章で一貫して述べてきた「経営者のリーダーシップ」がなぜ大事なのかの理由は1点に集約できる。それは方針をぶれさせないためである。セルフレジの導入が進んでいくと、いわば外への力が増していくことになる。遠心力が大きくなるのである。遠心力が大きくなるにしたがって求心力が強くなっていかなければ中心軸は遠心力に引っ張られて外へ飛んで行ってしまう。遠心力を増し、増した遠心力を支える十分な力を持つ、ぶれない中心軸が求められる。中心軸となる、ぶれない方針は経営者にしか打ち出せない。変化の時代になればなるほど、ぶれない中心軸が必要であり、変化が常態化した時代では、ますます、ぶれない中心軸が求められる。セルフレジ導入を通して店舗力を考える時、経営者と店舗の一体感の必要性が強く感じられる。そのためには、ぶれない方針が必要なのである。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第17回

2009年12月26日 12時14分55秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第3章 セルフレジは経営者のリーダーシップで決まる

第27条、第28条


【2009年10月26日(月)】

◆第27条 経営者が効果をチェックする

 セルフレジ導入は経営者の決断、リーダーシップが成否に大きな影響を与える。効果のチェックは導入を決断した経営者が行うことが必要である。店舗経営は企業経営だということを強調してきたが、その視点に立てば、経営者が効果のチェックにかかわることは経営者が「経営の現場を知る」ということである。
 効果をチェックする時、現場の目と経営者の目が必要になる。重要度に優劣があるわけではない。両方が同じように大事である。立場が違うだけである。経営者が決断する時は、「経営」という大きな全方位的な視点で判断している。レジ待ち時間が短縮した。顧客のプライバシー保護に効果があった。エンターテイメント性が顧客に喜ばれている。リピート利用が増えている。採用難が解消した。従業員不足が解消した。人件費の削減ができた。これらの直接的な効果だけを見ている限りでは、業務が改善できたという現場視点の効果チェックと言える。しかし、セルフレジの導入効果が現場の業務改善の域を出て、顧客サービスが向上したということになれば、これは店舗だけの問題でなく、経営の問題に押し上げられる。顧客満足度を向上させ、来店客数を増やし、顧客の来店頻度を高め、客単価を上げるように努力するのが小売業経営であるからである。経営者は企業経営におけるセルフレジ効果の位置付けを考えている。極論すれば、数字で表せない効果をも経営者は見ている。経営者が人材(人財)を決算書に表れない会社の資産と言うのと同じである。
 効果チェックの結果は戦略につながる。戦略の決定は経営者が行う。そうした視点で効果をチェックできるのは経営者しかいない。経営者には企業経営の立場で、現場で効果をチェックすることが求められる。


◆第28条 経営者が効果を評価する

 セルフレジの導入は経営者が決断し、準備から効果チェックまでリーダーシップを執ることが大事である。経営者がリーダーシップを執ってきたのであれば、評価も経営者が判断すべきである。経営者の決断の中には、経営者としての「仮説・検証」がある。仮説を立てて導入を決定し、検証することが評価となる。
 前条で、現場の目と経営者の目による判断の重要度に優劣はない、とした。同様に、現場の視点と経営者の視点で、客観的な評価が必要である。その評価においては、両方の視点が重要である。その上で、大所高所から見て、最終的な評価の結論は経営者が下すものだということである。
 経営者の評価は、次の経営方針につながる。セルフレジの導入効果が経営の問題に押し上げられた時、経営視点の評価では2つのことが考えられる。1つ目はプラス効果である。これは更なる積極的な導入に結び付いていく。2つ目は、当初の仮説より効果が上がらなかったという意味でのマイナス効果である。概して、顧客サービスが向上したというのは、セルフレジ導入先行企業の評価である。先行企業ほど評価ができないとすれば、どこに問題点があるのか。問題点は企業内にあるのか、商圏特性、顧客特性にあるのか。問題点が把握できれば、それへの対応が、次の経営方針となる。いずれの評価にしても、企業経営の視点に立てば、その評価は、次の成長、発展のための経営方針と結び付くのである。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第16回

2009年10月23日 22時28分01秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第3章 セルフレジは経営者のリーダーシップで決まる

第25条、第26条


【2009年10月23日(金)】

◆第25条 経営者は店舗で情報を得る

 情報は現場で発生する。正確な情報は発生現場に行かないと得られない。セルフレジは店舗に設置されている。セルフレジに関する情報は店舗で発生している。セルフレジ導入と運用の最高リーダーである経営者が店舗で情報を得るのは当然である。現場へ行けば、レジ係、チェッカーチーフ、店舗オペレーション担当、店長からも情報を得られる。多くの情報源は情報発生の背景理解をより正確にする。報告書などの紙情報は結果が情報の中心になる。結果の背景、プロセスまでは伝わりにくい。情報にも「行間」がある。「行間」を読む力が情報を読む力でもある。現場に行けば「行間」の生情報がある。紙情報で「行間」を読むのと生情報から読むのとでは情報を読む精度に格段の差が出る。店舗経営は企業経営そのものである。店舗経営の現場で経営者が情報を取得することで「店舗経営=企業経営」の図式が明確になる。
 また、直接、間接に顧客からも情報を得られる。顧客と会話をしなくても、顧客の行動、態度、表情を見ているだけでも伝わってくる情報がある。アテンダントが対応している状況からも貴重な情報を得られる。その上で、顧客に話を聞くことができれば最高の情報収集となる。顧客にとっても、経営者と話を交わしたことでストアロイヤルティが強くなることが考えられる。強くなったストアロイヤルティは他の顧客へのクチコミ効果も期待できる。店舗は顧客の来店、顧客の買物で経営が成り立っている。すなわち、小売企業は店舗での顧客の買物で経営が成り立っているのである。経営者が顧客に関心を持ち、顧客と接し、顧客の情報を得ようと努力をし、顧客の満足度を向上させることは、企業経営そのものである。アメリカ・コネチカット州に日本人も視察によく訪れるスーパーマーケット「スチューレオナルド」がある。ディズニーランドのようなエンターテイメント性も有名だが、店舗入口正面に置かれた大きな御影石が有名である。石には、企業哲学とも言える2つのルールが刻まれている。ルール1は「顧客は常に正しい」、ルール2は「顧客が間違っていると思えば、ルール1を読み返せ」とある。これを見た時、顧客を大事にすること、顧客第一主義、顧客との関係性の大切さなど、店舗と顧客の関係について考えさせられたが、一方で考えたことは、「否定」からは情報は得られず、「肯定」からは様々な情報を得られるということであった。例え、思索の結論では否定することになっても、入口が「否定」であれば、それ以上は前に進まない。「肯定」から入るのと「否定」から入るのとでは、得られる情報に天地雲泥の差がある。経営者が店舗の現場で「肯定」から入って顧客と接することの重要性を改めて感じる。
 さらに、人を動かすには、説得力と納得性が大事になる。人は納得すれば積極的に動くが納得しないと行動に心が入らない。笑顔であいさつしても笑顔が相手に通じない。経営者には、従業員が納得するだけの説得力が求められる。思考または発言の元に明確な情報源があると説得力が増す。その強い説得力を生む情報源は現場、すなわち店舗にある。経営者が店舗で情報を得ることは、発言に説得力が増し、従業員を納得させ自信を持って行動させることになる。その自信を持った行動は顧客に伝わり、顧客へのサービス向上にもつながっていくのである。


◆第26条 経営者は店舗を軸足に改善点を考える

 問題は現場で起こっている。改善点も現場で発見できる。しかし、改善点は現場で生じた問題を改善するだけではない。問題は現場で顕在化するが、その原因は問題発生の現場にある場合と、現場以外のところにある場合がある。セルフレジを考える時の現場はレジ設置場所であり店舗である。セルフレジの設置または運用段階で問題が発生していることと、システム自体の問題、本部施策の問題など店舗以外で問題が発生していることがある。すべての施策は最終的には売上を作り利益を得る店舗に行き着き、問題が顕在化するのは店舗の現場であるから、問題が発生した現場を見ると、原因の所在、すなわち改善すべきところが見えてくる。店舗に軸足を置いて改善点を考えるのが改善の近道である。
 また、改善はマイナス面をゼロないしはプラスに変えるだけではない。プラス面をさらに高いレベルのプラスに押し上げていく改善がある。この改善点は見えにくい。見るには2つの視点が大事になる。1つは、強い問題意識を持つことである。良好な結果が得られても「これで良いのか」ともう一度考え直すことである。2つは、現場を見ることである。現場を見ていると、問題を感じれば、それが改善点に結び付いていく。強い問題意識を引き出すのが現場情報である。
 主にマイナス面が改善される第一段階は、どこの企業でも得られる改善効果と言えるが、改善によるプラス効果をさらに高める第二段階の改善が競合他店との差異化につながっていく。ただし、マイナスが生じている問題の改善点はわかりやすいが、プラスからさらにプラスへの改善点となると、机上の理想論に走る懸念がある。机上論に走ることを防ぐのは現場からの発想である。現場に軸足を置くと改善点を見る視点がぶれない。そこに経営者がかかわってくると、さらにぶれることがなくなる。
 店舗を軸足に改善点を考えるメリットには、改善点がより具体的になるということがある。具体的になれば、改善の道筋が見えやすく、目的達成意欲が出てくる。経営者が店舗に軸足を置いて、情報を収集し、改善点を打ち出し、達成された改善の成果を公平に評価することで、経営者ならびに施策に対する求心力が増し、店舗力、企業力を強くすることになる。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第15回

2009年10月22日 06時18分55秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第3章 セルフレジは経営者のリーダーシップで決まる

第23条、第24条


【2009年10月22日(木)】

◆第23条 経営者は準備のリーダーシップを執る

 経営者は決断して、方針を出したら、導入に向けた具体的な準備段階でもリーダーシップを執ることが導入、運用をスムーズにする。準備で経営者がリーダーシップを執る最大の理由は、準備に携わる人たちに安心を与えることと、迅速に決済をするためである。もちろん、自らが出した方針に沿って準備が進められているかどうかを確かめるためでもある。大事な会議に出席したり、要所要所の進捗状況の報告を受けて迅速に決済するなど、常に要にいることがポイントとなる。
 準備の良し悪しで、その後の導入と運用がスムーズに進むかどうかが決まる。「安心」の反対語は「心配」「不安」である。初めての導入であったり、導入店舗が少なくて経験が浅い状態では、担当者は「心配」と「不安」がいっぱいである。それを取り除くのが「安心」を与えることである。
 その地方で初めてセルフレジを導入した店舗を取材した。店長は顧客にレジ操作をさせてクレームが来るのではないか、顧客サービスが低下するのではないかなど、「不安」と「否定」がいっぱいだった。しかし、経営者のトップダウンで導入が決まり、その地方で初めてのセルフレジ導入で成功させなければならないという強いプレッシャーも感じていた。しかし、導入が始まってみると、子供連れの顧客が楽しそうに使うなど、導入前に抱いていた「否定」が1つ1つ「肯定」に変わっていったことで、導入に自信が持てるようになった。その自信が積極的に顧客の利用を推進するようになったという。経営者の方針だから「仕方なく…」ということもあったが、経営者が決断し、方針を出し、導入のリーダーシップを執ったことで「不安」「心配」を「安心」に変えた。成功の理由を店長に聞くと、「否定」が1つ1つ「肯定」に変わり、自信が持てたことだと振り返る。



◆第24条 経営者は店舗に足を運ぶ

 導入後も機会を見つけて店舗を訪れ、実際に、顧客がセルフレジをどう感じ、どう利用しているかを確かめることが大事となる。繰り返し述べていることだが、企業経営は店舗経営でもある。店舗は企業の顔であり、経営方針も本部の施策も店舗に反映される。売上、利益を得るのも店舗であり、売上を支えているのは来店してくれる顧客の買物である。経営者が現場を肌で感じることが重要である。顧客にも経営者が店舗を大事にしていること、顧客を大切にしていることが伝わる。印刷物など間接的な媒体では伝え切れないものが、実際に店舗を訪れることで伝えられる。
 従業員に対しても同じである。経営者がリーダーシップを執っていることは理解していても、実際に訪問を受けると、そのことの伝わり方が違ってくる。経営者との一体感も強くなるし、経営者の方針を実行しているという目的達成意欲も強くなり、モチベーションが上がる。モチベーションが上がると、目的達成感においても、感じ方が違ってくる。逆に、そうならないとすれば、何かが欠けていることになる。そういうことの発見も実際に店舗を訪れてみなければわからないことである。
 導入後もリーダーシップを執るということは店舗にも足を運ぶということだが、店舗に足を運ぶことは導入準備の段階でも必要なことである。導入の目的、考え方をレジ係だけでなく、他部門の店舗従業員にも伝えることで、セルフレジ導入がレジ業務の問題だけではないことを理解させることができる。印刷物などで間接的に説明するのと、対面で説明するのとでは伝わり方が違ってくる。レジにおける顧客との関係と同じである。顧客サービスのレベルを上げるためにレジでの対面の接客を大事にしてきたのである。ここまでは経営者が対面で説明するのと同じである。その先で、対面で接客しないことも顧客サービスの1つの形態ととらえ、広く顧客サービスのあり方を考えた時、現行の有人レジで対応できないところが見えてきて、それをセルフレジで補完し、セルフレジだからこそ実現できる顧客サービスのあり方を考えた時、有人レジを上回る顧客サービスが可能となったのである。「対面で直接」という原理は、レジ係が顧客に対するのと、経営者が店舗を訪れるのと同じである。セルフレジの顧客サービスの原点、起点も「対面で直接」ということである。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第14回

2009年10月21日 08時23分18秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第3章 セルフレジは経営者のリーダーシップで決まる

《章のはじめに》および第21条、第22条


【2009年10月21日(水)】

 《第3章のはじめに》第3章のテーマは「セルフレジは経営者のリーダーシップで決まる」とした。人はリーダーの率先垂範の行動に付いて来る。成功はかかわる1人1人の行動によって決まる。1人1人の行動は1人1人がどれだけ自分の力を発揮できるかがポイントとなる。1人1人が持てる力をより大きく発揮するには1人1人が強いモチベーションを持ち続けなければならない。モチベーションを持ち続けるには目的意識、目的達成意欲、目的達成感、目的達成評価、その繰り返しが必要である。また、発揮した1人1人の力が最大の効果を出すのは1人1人の力を集めた総合力が最大になった時である。総合力は1人1人の力が1+1=2でなく1+1=3になった時、より大きくなる。総合力の大きさは求心力の強さで決まる。セルフレジにかかわる1人1人のモチベーションを強め、持続させ、強い求心力を生み出すのが経営者のリーダーシップである。経営者のリーダーシップがセルフレジ成功のカギを握っている。
 そして、経営者の強いリーダーシップはセルフレジにかかわる1人1人に安心と勇気を与える。安心と勇気は良い思索、良い行動、良い結果をもたらす。良い結果は次の良い思索、良い行動、良い結果を生む。企業経営は店舗経営の集積である。経営者が店舗経営でリーダーシップを執ることは企業経営そのものである。セルフレジの成功は店舗経営の根幹にかかわる大きな経営課題でもある。
 第3章は以下の10ヶ条の構成とした。第21条~第23条は導入前、第24条~第26条は導入後、第27条~第30条は結果の評価と次への出発、である。
  
 第21条 経営者が決断する

 第22条 経営者が方針を出す

 第23条 経営者は準備のリーダーシップを執る

 第24条 経営者は店舗に足を運ぶ

 第25条 経営者は店舗で情報を得る

 第26条 経営者は店舗を軸足に改善点を考える

 第27条 経営者が効果をチェックする

 第28条 経営者が効果を評価する

 第29条 経営者が結果の責任を持つ

 第30条 経営者が次の方針を出す



◆第21条 経営者が決断する

 セルフレジの導入はレジコーナーの変更、新しいレジの追加、人件費の削減、レジ係の採用難対策など、1つの業務部門だけの問題ではない。小売業は接客を大事にする。特にセルフサービス販売方式を採用しているスーパーでは、顧客と店員が唯一必ず対面で接する場所としてレジを重要視してきた。また、小売業の営業は顧客に商品を買ってもらい、顧客の大事なお金を受け取ることで成り立つとして、レジでの商品の扱い方に気を配り、代金・釣銭の受け渡し場所としてのレジ業務に注力してきた。そして、丁寧なあいさつと応対で精算を終えることは、買物の終わりでなく、次の来店、次の買物の始まりとも考えられてきた。その小売業が店舗で最も重要視しているレジの仕組みの変更である。しかも、顧客と店員が唯一必ず対面で接する場所として、その接客スキルの向上に努めてきたレジからチェッカーがいなくなり、アテンダントを配置しているとはいえ、レジ操作を顧客に委ね、金銭授受を顧客が機械に向かって行うのである。
 ここの部分だけを見ると、顧客サービスが低下するような印象を持つが、実際の導入店舗では、セルフレジの導入で顧客サービスが向上しているというのが一致した評価である。レジ待ち時間の短縮やプライバシーの保護といったハードメリット的な評価だけではない。親子やカップルで楽しく使ってもらえるエンターテイメント性やアテンダントの接客レベルの向上などソフトメリット的な評価、対面で接客しないことも顧客サービスの1つの形態という認識も共通している。セルフレジの導入で従来の有人レジがなくなるわけではない。有人レジをなくしてセルフレジの利用を強要するのではなく、顧客にはセルフレジも有人レジも自由に選べるように、選択肢を増やしているのである。導入店舗の利用状況では、1人の顧客がセルフレジと有人レジを使い分けているケースが多いこともわかっている。レジ操作を顧客に委ね、金銭授受を顧客が機械に向かって行うことが顧客サービスの低下になっていないことが検証されている。
 小売業では企業経営の良否は店舗経営に表れ、店舗経営の良否が企業の業績を左右させる。小売業の収益は店舗からしか得られない。収益は店舗で商品が販売され代金を得ることで可能となる。商品が店舗に届くまでの仕入や物流、商品が売場に並ぶまでの店舗バック業務が改善され利益が出る仕組みが構築されたとしても、来店客が減り商品が売れなければ、後方部門の収益構造は企業の業績に反映しない。店舗で顧客サービスが向上し、ストアロイヤルティが高くなり、顧客の来店回数が増えれば、後方部門のレベルが下がらない限りは、企業の業績はアップする。
 セルフレジが顧客サービスとのかかわりを強くした時、セルフレジは企業経営との関係性が大きくクローズアップされることになる。しかも、店舗経営は企業経営そのものである。セルフレジの導入は経営者が決断し、経営者がリーダーシップを執って推進するのが成功への直道と言える。
 また、経営者のリーダーシップが導入店舗はもとより社内の成功への結束力を高める。経営者が先頭に立つことで、店舗の1つの業務を「改善」するものではなく、企業レベルで業務を「改革」するというような強い意思表示ができ、成功への強い求心力を生む。さらに、経営者がリーダーシップを執ることで、店舗、本部、あるいはセルフレジ納入業者を含めたセルフレジ導入にかかわるすべての人に安心と勇気を与える。安心は良い思索、良い行動、良い結果に結び付く。セルフレジ成功のすべての出発点は経営者の決断とリーダーシップにあると言える。


◆第22条 経営者が方針を出す

 セルフレジの導入で経営者がリーダーシップを執るということは、経営者が明確な方針を打ち出すことである。方針は具体的でなければならない。方針が具体的になることで方向性が定まる。達成すべき方向性が定まれば、従業員の行動の方向性が明確になり、導入店舗、社内に一体感が生まれ、結束が強まる。日々の業務の推進が企業の方針、経営者の方針を実現することになるが、日々の業務を担うのは1人1人の従業員である。従業員が業務を遂行しやすい環境を作るのが経営者の責務である。
 また、具体的な方針を打ち出すためには、「近く」を見て、「遠く」も見なければならない。「近く」は導入店舗や未導入店舗の状況、それをマネジメントする本部の現場、人材の状況などである。一方、「遠く」は経営計画、投資計画をはじめとする中・長期の経営方針など企業の近未来像といった企業固有の問題、および顧客の動向、消費の動向、競合の動向、ITの動向、さらには金融・証券市場の動向など経営環境全般にわたる見通しである。経営にかかわる方針の決定は高度な判断力だ必要である。具体的な方針を示せるのは経営者しかいない。
 そして、経営者が方針を明確に示すことで、方向性がぶれなくなる。物事を進めていく時には必ず予期しないことが起り得る。再検討が必要になったり、中止を選択肢の1つにするような判断に迫られることもある。そういう時には立ち戻れる基本方針があることが大事になる。方針がぶれると判断もぶれる。越えられる壁も越えられなくなる。常に立ち戻れる、ぶれない方針を出せるのは経営者しかいない。