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WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第39回 時代に敏感な広告ページに学ぶ

2009年11月27日 00時15分53秒 | 今日の気づき
【2009年11月27日(金)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月27日(金) 夕刊 10~11面 全面広告


◆記事の見出し

 《Tasting Time 広告企画》


◆記事の内容

 ★2ページ見開きの全面広告のページである。10ページの上約8段のスペースに第一ホテル東京のフランス料理「アンシャンテ」の紹介と同店シェフのおすすめレシピが、11面も同様のレイアウトで上約8段のスペースにロイヤルパークホテルの中国料理「桂花苑」の紹介と同店総料理長のおすすめレシピが掲載されている。おすすめレシピの詳細はTasting Timeのホームページで見られる。

 ★両ページの下約7段は広告スペースの「The Hotel Information」で、15のホテルのおせち料理やディナープランなどを紹介している。
 
 ※新聞は1面を15段で組んでいる。縦のスペースを段で表現するので、8段は縦半分より少し広いスペース、7段は同少し狭いスペースとなる。


●今日の気づき

 ★普段なら広告スペースは飛ばすように目を通すだけだが、11月25日の本コラムで「プロの技の生活者への提供は社会を豊かにする」とタイトルを付けて原稿を出したところだったので、広告の「シェフのおすすめレシピ」の文字に目が留まった。

 ★Tasting Timeのホームページを開いてみた。「レストラン 今月の旬の味」、「シェフの味にトライ!」、「レストランガイド」、「ホテルカード&メンバーズカード」、「ホテルインフォメーション」、「コラム」に分けて情報を提供している。「シェフのおすすめレシピ」は「シェフの味にトライ!」に収められている。そして、「シェフの味にトライ!」は日本料理、中国料理、イタリアン、フレンチ、洋食一般、エスニック・その他、デザートのカテゴリーから過去に掲載したレシピが見られる。その数からして、かなり前から続けられている広告企画のようである。使う食材や調味料の数が多くなく家庭でも簡単にできそうなメニューを探してみると、案外多くある。食材や調味料の多少をどの基準で見るかにもよるが、料理素人が見ても、簡単に一味違う料理ができそうと感じるものが多い。頻繁にではなくても、たまに忘れたころに食卓に出てくると、家庭の食生活が豊かになるだろうと思われる。

 ★ホテル内レストランのシェフがレシピを生活者に提供することで、自店の顧客が減るとか、同業他店の営業にマイナスの影響を与えることはない。ホテル、レストランは広告に付加価値を付けて広告効果を高めることができる。生活者は無料でプロの技を織り込んだレシピ情報が得られ、それにかかる経費は広告料で吸収されている。ホームページとも連動させ効果をより高める「広告」という側面と、プロの技を生活者に金銭的負担をかけないで提供することによる家庭内食事シーンに豊かさを提供するという成熟社会におけるプロの「社会貢献」の要素を含んでいる。成熟社会の広告企画として評価したい。

 ★広告ページも重要な時代の変化を伝えるメッセージを含んでいる。広告は内容やセンスもさることながら、読者の反応と読者の購買行動にどれほど結び付くかが評価の基準になる。広告は時代に敏感である。広告ページも大事に見ていく必要がある。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第38回 新市場でも蓄積が大事。そして革新性。

2009年11月26日 21時26分26秒 | 今日の気づき
【2009年11月26日(木)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月26日(木) 朝刊 1面


◆記事の見出し

 《JTB、国内200店閉鎖》《11年度メド 全店の2割 ネット強化、商品倍増》
 《旅行、値下げ競争加速へ》


◆記事の内容

 ★旅行業最大手のJTBは2011年度末までに全国店舗網の約2割に当たる200店近くを閉鎖する。閉鎖は集客力の低い駅前立地の中規模店など。店舗には従業員の3割に当たる8,800人を抱えるが、閉店後は主に配置転換で対応する。一部の退職は避けられない見通し。観光庁によると、主要旅行62社の2009年度上期(4~9月)の取扱高は2兆8,600億円弱で前年同期比約17%減。うちJTBはグループで約18%減の7,400億円強。JTBは旅行市場全体で2011年度の店頭販売額は2007年度に比べて約3割落ち込むと見ている。

 ★需要低迷を受け主力の店舗販売を縮小する一方、成長市場のネット事業を強化する。JTBは取扱額に占めるネット比率(2009年度見込みで7%)を2011年度に12%へ引き上げる計画。外部企業・観光団体サイトからのJTB商品のネット予約を可能にしているが、提携先を2010年度に10倍の100社・団体に増やす。ネット販売の商品数も2倍の約30万種類にする。

 ★コストの安いネット商品に本格的に取り組むことで値下げ競争が激化するのは必至。ネット旅行商品は他社と価格比較が容易のため店頭商品より安い場合が多い。ネット通販の消費市場は身近な分野で急速に拡大しており、企業の事業構造転換を加速しそうである。


●今日の気づき

 ★見出しを見て一番初めに感じたのは、旅行商品に対する安心感がネット販売を拡大させているということである。物品であれ、サービスであれ、商品に信頼が増してくると、ネット市場に載ってくる。ネット通販が成長する背景には商品の品質の向上と商品の信頼性が必ずある。マクロ的な消費市場の変化軸に品質の向上と商品への信頼性が加わる時代に入った。

 ★ネットで紹介される旅行商品を見ると、安心できる情報が多いと言える。旅行先のホテルや旅館が有名であること。知らないホテルや旅館であっても、一般的には無名でも個性のあるところがあるが、有名な旅行会社が案内するので信頼できること。価格比較など旅行商品を横断的に比べられるサイトで旅行会社が提供する商品を判断できること。ホテルや旅館がいい加減な情報を提供したり、旅行会社がいい加減な提案をすると、利用者のリピートが来ないだけでなく、評判がネットで伝わり、リピートを得られない以上のダメージを受けることになる。もう1つ。旅行商品のネット購入者が増えており、自らの経験や友人の経験など身近に判断材料が多くなっていることなども商品の信頼性を高くしている。

 ★チケット購入などで旅行会社の店舗に行った時、隣りで旅行商品の説明を受けている顧客がいることがある。その機会に少し見る限りだが、旅行先や宿泊施設はネットで見るのと同じようなパンフレットを見せているし、説明も基本的にはネットでもわかるような内容が多いように感じる。パソコンを利用している人にとっては、店頭まで足を運ぶメリットが少なくなっているのではないだろうか。ネット情報ですべてが満足できるというのではなく、知りたいことがあれば、電話で聞くことができるし、ネットで調べることもできる。予約の申込やチケットの発券などの事務的なことはパソコンからで十分である。店頭で説明を受けたり申し込んだりすることの半分以上が、または当然店頭に行かないので100%が、パソコン上で事足りることになる。

 ★旅行商品を考えると、旅行会社のオリジナル要素は、交通手段、観光スポット、宿泊施設以外で作らなければならない。宿泊施設が旅行会社によって同じ条件なのに料理や料金を変えるのは難しい。価格も同じ条件で公共交通機関を利用する限りは差異を付けにくい。付加価値サービスをどう設定して、どう価格的な魅力を付けるかである。ネット通販の拡大は市場を形成する要件をフラットにする。要素の組み合わせだけでは差異が出せない。顧客が認める付加価値をどう創り出すかがポイントになる。ある意味で、ネット通販の普及は、従来の思考では大手の規模のメリットが出せなくなってくるのではないだろうか。市場の変化軸が変わるということは、スポーツであれば競技場だけでなく競技の内容も変わっているということで、戦う選手に求められる条件も違ってくる。新しい消費市場への対応では蓄積と革新の重要性が増している。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第37回 プロの技の生活者への提供が社会を豊かにする

2009年11月25日 05時46分19秒 | 今日の気づき
【2009年11月25日(水)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月25日(水) 朝刊 35面


◆記事の見出し

 《カルチャー教室 都市ホテル盛況》《接待作法など プロの指導 好評》


◆記事の内容

 ★都市ホテルが開くカルチャー教室が盛況。接待の作法、料理、葉巻の吸い方までテーマは様々。一般的なカルチャー教室より割高だが、ホテルのプロから学べる点が受けている。

 ★京王プラザホテル(東京・新宿)の「ビジネスパーソン向け接待術講座」は宴会に不慣れな20~30歳代の男性会社員に人気。グランドハイアット東京(東京・港)は12月に親子で参加できる料理教室を開く。クリスマス料理をホテルの総料理長から学べる。ホームパーティを控えた主婦の予約が目立つ。セルリアンタワー東急ホテル(東京・渋谷)は来年2月にホテル内のバーで葉巻の吸い方を学ぶ講座を開く。


●今日の気づき

 ★学歴、知識、情報、行動範囲、生活物資、消費など、あらゆる分野で、特に質より量の部分で成熟してきている。こうした成熟社会における「豊かさ」を考える時、プロの知識や技をいかに一般庶民に還元するかが大きなポイントになると考えてきた。それもビジネス色をできるだけ小さくして専門知識を提供することが大事だと思っている。人が動き、事を起こすためには費用がかかるが、それをいかに吸収し、専門知識の循環システムを築くかが課題である。

 ★記事で紹介しているカルチャー教室はビジネスだが、プロの知識と技の生活者への提供では注目したい。といって、この類いのカルチャー教室は今に始まったことではなく、ずっと前から行われてきたし、もちろん、ホテルだけでなく、百貨店や自治体などでも実施されてきた。ただ、こうしたことが、特別な催しでなく、地域の有名店や商店街の老舗、特技を持った地域の人たちが普段に行うことで「豊かな地域」ができないだろうかと、いつも考えてきたが、記事の見出しが、その考えを思い起こさせた。ビジネスとはいえ、プロの知識や技の社会への還元は大賛成である。

 ★発生する費用の負担をどういう形で吸収するかは別にして、プロの知識と技の範囲にもよるが、生活者の出費はゼロか少額が望ましい。ゼロより少額の方が学ぶルールを作りやすいかもしれない。料理教室などがわかりやすいので、1つの仮定で考えてみた。町の大衆食堂、高級レストラン、ホテルのレストランがそれぞれ料理教室を開いたとする。開く場所は地元とそれ以外の両方を考えてみる。

 ★そうすると、自店と同業他店にマイナスの影響を与えるのは町の大衆食堂だけである。ここで想定した大衆食堂は料理のコツを伝授することで家庭でも同じ味が出せて顧客の来店が減る懸念がある場合である。食堂で外食する要素は味だけでなないこと、大衆食堂の味のレベルは様々なので、あくまでも仮定として考えたい。そうした大衆食堂が地元で料理のコツを提供すれば、地元の顧客の来店が減ることがあり得る。他地域で教室を開いた場合は、自店の地元客への影響はないが、教室を開いた地域の同じような大衆食堂にはマイナスの影響が出る可能性がある。自店に影響がないとはいえ、同業者にマイナスの影響が出ることは行うべきではない。また、生活者のためになるとはいえ、自店ならびに同業者にマイナスの影響が出ることを自ら行う理由は見当たらない。

 ★一方、高級レストランとホテルのレストランの場合は、一般的には、生活者の料理知識と技との差が大きいので、プロの技の伝授は、生活者の家庭内料理の質を高めることはできても、レストランの味との差は歴然なので、技の伝授が顧客の来店に影響を与えることはない。むしろ、店舗の宣伝になり来店客が増えることが考えられる。どの地域でも同じ状況が考えられるので、自店の出店地域以外で料理教室を開催しても、その地域の同業者に影響を与えることはないと言える。高級レストランやホテルのレストランは広域商圏なので出店地域外での教室は自店の宣伝にもなる。間接的に、生活者の料理技術の向上は家庭内料理と大差のない味の領域で止まっている大衆食堂は影響を受けてしまうかもしれない。

 ★大衆食堂とはいえ、料理のコツを公開しても、家庭内料理との差が埋まらない味と来店のメリットを十分に提供できていれば、高級レストランやホテルのレストランと同じように宣伝効果を出すことができる。大事なことは、顧客に支持されるプロの要素を、レストランの規模や業態に関係なく、それぞれの対場で提供できているかどうか、提供できる努力をしているかどうかが問題である。

 ★競争の激しい時代には、何か1つ光るものを持っているところが生き残っていける。そうしたプロの知識と技の生活者への提供と自店の繁栄は両立できるものと考えられる。その結果、自店も繁栄し地域の生活者の生活も豊かになると。成熟社会の先を目指して、様々な試行錯誤が続けられていくだろうが、「生活者が主役」の一点だけは外すことはできない。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第36回 顧客の「囲い込み」は時代遅れの戦略

2009年11月24日 16時04分58秒 | 今日の気づき
【2009年11月24日(火)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月23日(月) 朝刊 1面


◆記事の見出し

 《企業 強さの条件》《序章 多極世界に挑む 5》
 《地方にある「国際価格」》《小回り生かし外資に勝つ》


◆記事の内容

 ★「新北海道価格」を掲げる札幌の食品スーパー、ビッグハウスエクストラは競合店が追随できない低価格で年間売上高は50億円にのぼる。利幅を削る値下げ競争とは一線を画し、売上高経常利益率は業界平均の2倍以上の7%。惣菜の容器をポリ袋にし、電気代もぎりぎりまで削るなど、経費削減に努力しており、まだ値下げ余力はあるという。同店を運営するアークスの横山 清社長が言う「所得が低下しても十分な生活ができる価格」という方針も紹介している。

 ★東北のユニバースや東海・北陸のバローなど地方の上場スーパーの業績予想は半数以上が増収増益である。鹿児島の東京ドーム3.7個分の「A-Zスーパーセンター」を構えるマキオも2010年2月期は30%近い増収を見込んでいる。牧尾英二社長の「消費が多様化すれば、品ぞろえや値決めで小回りがきく地方企業が強い」とのコメントも紹介している。

 ★首都圏地盤の食品スーパー、オーケーは価格交渉を進めやすい2位以下の企業の商品を中心に大量調達し顧客の強い支持を受けているが、飯田 勧社長は米ウォルマート・ストアーズの幹部の訪問を受けて、顧客に支持されている理由を聞かれたという。

 ★グローバル化が進んでも、国や地方ごとの消費動向に違いは残る一方で、ネット通販の普及で価格はフラット化する。法政大学の矢作敏行教授は「国際価格」の広がりを予測する。消費者は世界を見渡して安い商品を探し出す。

 ★北海道の地方企業から家具最大手になったニトリはアジア生産で低価格を実現してきたが、次のターゲットは物流だという。「割高な日本のインフラは可能な限り使わないようにしたい」という似鳥昭雄社長の話も紹介している。ニトリの価格は世界最大手のイケアにほぼ並ぶ。両社はさらに激しい値下げ合戦を繰り広げ、ニトリの効率経営が巨大外資の価格戦略を変えるという。


●今日の気づき

 ★この記事を読んで、一番初めに感じたことは、「顧客は賢い」ということと、メーカーが追い続けてきた付加価値が“飾り物化”して、メーカーが作ってきた商品の価値と顧客のニーズとの間が広がりつつあるのではないかということである。その背景にあるのは「品質の向上」である。賢い生活者と品質の向上が世界の消費社会を大変革させようとしている。そういう賢い生活者を相手に「顧客の囲い込み」という戦略は時代遅れになっているのではないだろうか。

 ★小売業は、商品は変わらないのに、きれいな陳列ケースに並べることで商品の見栄えを良くし、きれいなトレーに惣菜を盛ることで、商品陳列の見栄えを良くし、そのまま食卓にも出せるというイメージを提供してきた。しかし、顧客は、陳列ケースは清潔でさえあれば特別のこだわりを意識しなくなり、トレーはトレーという認識で、きれいなトレーが食卓に並んでいても、陶磁器の盛り皿の代わりになって素晴らしい食事のシーンが作れたと感じる顧客はほとんどいないのではないだろうか。むしろ、用済みのトレーはきれいに洗ってリサイクルに出さなければならなくなり、後始末の方が面倒だと感じている生活者も多いと思われる。皿に移し替えた時に美味しく感じられるようにできるのであれば、持ち帰る容器がトレーであることに付加価値は見出しにくいのではないだろうか。味が良ければポリ袋で十分で、それで安くなるなら、さらに良いということになる。

 ★2位以下のメーカーといえども、大企業である。万が一にも億が一にも、粗悪品を造っているメーカーであったとしても、いくら安くても生き残っていける時代ではない。小売業も粗悪品を売って廉価販売をしていては生き残ることはできない。生活者はきちんと見るべきものは見ている。信頼できる小売業が仕入れた信頼できるメーカーの商品は生活者の支持が得られる。顧客がその商品を選ぶかどうかは、顧客の嗜好と価格への納得性による。生活者が見極めに失敗しても、連戦連敗はあり得ない。商品の陳列の仕方、提供の仕方などは商品を選ぶ要素のランクを下げてきていると感じている。

 ★かつて、家電製品であまりに多機能化して、生活者にとっては、あったらいいなと思っても使わない機能が盛りたくさんで、“シンプル・イズ・ベスト”指向が強調された時期があった。使わない機能をカットして、その分、価格を下げた方が購買マインドが強くなるということである。家計支出に今より余裕のあった時ですら、そうである。家計支出が縮小している現在では、なおさらである。

 ★品質の向上は、世の中を大変大きな変革へと向かわしめる。現在のパソコンの能力は初期の汎用コンピュータを凌駕していると言われている。品質の向上がパーソナル市場からビジネス市場への発展を実現させた。インターネットのビジネス市場での活用では、ついこの間まで、回線ダウンが心配だと言われていたが、今は言われなくなった。「クラウド・コンピューティング」という言葉を目にしない日がないくらいである。

 ★品質の向上は生活者の価値観を変えた。生活者は、失敗もするが、日々の買物で学習している。消費期限間近の商品をディスカウント販売している小売店に顧客が押し寄せている光景がテレビで紹介されたりしているが、安いからだけで顧客が集まっているのでない。品質への安心感が背景にある。中国食品を敬遠する生活者も消費期限間近の商品を買っている生活者も、同じ価値観を持つ生活者である。20年ほど前、ニューヨークのドラッグストアでカメラのフィルムを買ったが、消費期限2か月前のフィルムであった。日本で売られているフィルムの消費期限が2年くらい先のものが普通だった時のことである。商品の保管に少し不安を感じたが、すぐ使うものだったので安心して買った。世界のコダックの商品であることが安心感を与えた。使ってみて何の問題もなかった。店舗経営上は発注管理や在庫管理に問題はあったと言える。品質に裏付けされた商品の信頼感は、小売の形態、販売の仕方を大きく変える可能性を秘めている。ネット販売が伸びるのも、買物の便利さや価格比較をしやすいという理由だけでなく、品質への安心感が背景にあるからである。

 ★生活者にとっては、これだけ自由に店舗や商品を選べて、買い方や支払方法まで選択肢が広がっているのに、小売業に「固定客」にされたり、「囲い込み」をされるのは、決してうれしく思っているわけはないと思う。小売業がそういう言葉を使っていても、顧客にその言葉を直接伝えるわけでもないので、戦略の表現の仕方に過ぎないとも言えるが、「固定客」、「囲い込み」という言葉には、海で魚を獲るように、魚の方が人間より「下」というようなニュアンスを感じてしまう。人間と魚の関係でなく、人間と人間の関係だから、そういうニュアンスには抵抗感を感じる。

 ★顧客には自由に泳いでもらって、こちらの企画を投げた時に、どれだけ集まってもらえるかの勝負である。「固定客」や「囲い込み」というと、固定化されたターゲットの顧客があって、その顧客のニーズにいかに対応していくのかという印象になるが、顧客横断的にニーズを切り口に集客するポジショニングの確立が最も必要な時代に来ているのではないだろうか。低価格ニーズの恒常的な高まりの中で同質化競争が強くなっている。同質化競争でも勝ち、異質化競争でも勝たなければならない、大変舵取りの難しい時代に入っている。時代の大きな変革期、なかんずく、小売業にとっては消費社会、消費者意識の大変革期である。これからの日本、世界の動向を考える時、避けて通れない、通過しなければならない「時」を迎えているように感じている。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第35回 「値下げ」は「客単価アップ」挑戦への好機

2009年11月20日 17時28分17秒 | 今日の気づき
【2009年11月20日(金)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月20日(金) 朝刊 1面


◆記事の見出し

 《食品・日用品の6割 値下げ》《7~10月店頭価格 本社60品目調査》《ティッシュ サラダ油 特売で集客》
 《原料高、値上げの動きも》


◆記事の内容

 ★食品・日用品の店頭価格下落が続いている。日本経済新聞社は、全国のスーパーの販売情報を集める「日経POSデータ」を使い、7月~10月の食品・日用品60品目の店頭価格を調査した。その結果、7月から10月にかけて6割弱の34品目が値下がりした。

 ★調査したのは生鮮食品を除く食品38品目、日用品22品目で、主要メーカー品やPB商品の平均価格を調べた。10月の価格が7月に比べて下がったのは、ティッシュ(下落率4.4%)、食品包装フィルム(同5%)、バター(同3.6%)、サラダ油(同3.3%)など集客の目玉商品が多い。

 ★一方、22品目は値上がりした。食パン(上昇率2.5%)、シャンプー(同1.6%)、牛乳(同0.5%)などである。

 ★店頭価格の推移では、昨年夏までは原材料高騰を受けて上昇したが、昨年9月のリーマン・ショックを機に消費が低迷すると、今年に入り小売各社が値下げ競争に突入した。今年の10月の価格を1月と比較すると、9割弱の52品目が下がり、上昇は1割の6品目にとどまる。昨年1月と比較してもサラダ油、ティッシュなど5割強の32品目が下がっている。

 ★集客をねらった小売の値下げは必ずしも売上の増加につながっていない。価格下落はなお続く可能性が高く、景気の落ち込みを招く恐れもある。


●今日の気づき

 ★一度値を下げた商品を値上げするのは難しい。顧客を「値上げ」に付いて来てもらうためには顧客の所得環境が相当改善しなければならない。また、相当納得してもらえる材料がなければならない。原料高で軒並み値上がりをした時には、顧客は仕方なくという気持ちを抱きつつも、「値上げ」に付いて来た。しかし、所得環境が悪化すると、値下げをしないと、顧客は財布を開けなくなった。顧客が、値下げした商品の値上げを受け入れるほどには所得環境の改善は望めないだろう。値下げした価格が顧客にとっての「値ごろ感」になっている。定着した「値ごろ感」を変えるのは至難のことと言える。

 ★特売も同じである。いつも特売の対象になる商品などの店頭価格の下落は特売チラシを見ている限りは底値感がある。特売価格が通常価格化している。小売業が努力をして特売価格を10円や20円安くしても、顧客は買得と感じなくなっている。基本的には特売常連商品は特売で買うものという認識が強くなっている。冷凍食品は5割引特売で買うものと考えている顧客が多い。値上げすると、顧客は値上げしていないスーパーに奪われてしまう。チラシで特売常連商品を見続けていると、小売の値下げ努力は限界に近く、顧客離れを食い止めるためには値上げもできないという状況にあるように感じている。結果として、特売価格は通常価格化し、通常価格化した特売価格は、ワクワクするような特売の魅力を失いつつあるのではないだろうか。

 ★しかし、小売業側にとっての特売の魅力は集客できるということではないだろうか。問題は特売で集客しても売上増に結び付かなく、客単価が上がらないことである。価格訴求の特売は、現状以上に大きく変化させるのは難しそうである。特売はあくまでも集客手段と考え、客単価アップは他の売場の販売で行うべきだと考えている。小売業は当然、そう考えていることと思われるし、小売のプロが施策を練っても、それができないから売上が低迷しているのであろう。

 ★しかし、顧客の立場で店舗に行くと、考えさせられることがある。例えば、食パンは特売常連商品である。特売では大量陳列されている。食パンが特売で売られていても、インストアベーカリーのある店舗では、インストアベーカリー売場にも顧客はレジにたくさん並んでいる。インストアベーカリーの「値ごろ感」への対応が顧客の支持を受けているのだろうが、インストアベーカリーの食パンは大手メーカーの食パンより高いし、菓子パンも同様である。メーカーパンの2倍以上するような商品は多く買われないかもしれないが、決して安価なパンしか買われないということでもないと思われる。

 ★「低価格」という言葉を聞くと、消費の「二極化」を連想することが多いように思われる。確かに、二極化には違いないが、低価格指向の顧客層と、ちょっと上の価格帯を指向する顧客層に分かれるのではなく、一人の顧客が低価格指向とちょっと上指向を使い分けているのである。特売で集客しても客単価が上げられていないとすれば、ちょっと上指向への対応ができていないのではないだろうか。逆に言えば、ちょっと上指向への対応ができていれば特売による客単価アップ効果が出せるということである。

 ★「値ごろ感」の作り方の問題と言える。特売の「値ごろ感」は出来上がっていて変えるのは難しいかもしれないが、もう一方の「値ごろ感」作りは可能性を秘めている。その可能性を、どれだけ引き出せるかが「デフレ時代」の舵取りの妙味ではないだろうか。

(東)

【木曜コラム】万華鏡/電車の中から   第8回 鞄の多様化は人間力を発揮する環境の象徴!?

2009年11月19日 15時22分20秒 | 電車の中から(「今日の気づき」に統合)
【2009年11月19日(木)】電車の中は「気づき」の宝庫である。何かと、心に響くものがある。といって、いつも響いているわけではない。同じ光景でも、気に留めないで見過ごしていることの方がものすごく多いのだが、ちょっとしたきっかけで、「関心」のスイッチがONになる。

 人は外出する時には、ほとんど、物を携帯するために「かばん」を持っている。鞄にはビジネス用、トラベル用、スクール用、タウン&スポーツと様々ある。これは社団法人日本かばん協会のホームページで知ったことだが、日本で初めて鞄が作られたのは明治初期で、外国人が修理に持ち込んだものを真似たのが始まりのようである。
 しかし、用途から考えると、それよりずっと前となる。武士が鎧を入れるために使った「鎧櫃」(よろいびつ)、庶民が旅行の時に使った「柳行李」(やなぎごうり)など様々な名称の様々な形態のものがあった。同協会による「かばん」の定義は「身の回り品の保護または、運搬を目的とした容器のうち主として、素材を問わず、携帯用に供する容器として用いるもの」である。

 ちなみに、小学生の必需品化しているランドセルは、その歴史は古く江戸時代にさかのぼるという。幕末の日本に西洋式の軍隊制度が導入され、同時に荷物を入れて背負う方形のかばん、背嚢(はいのう)も輸入され、これがランドセルのルーツのようである。これをオランダ語で「ランセル」と呼ばれており、やがて「ランドセル」になったという。
 また、現在の箱型のランドセルを初めて使ったのは大正天皇である。明治10年に開校した学習院が同18年に生徒の馬車や人力車での通学を禁止し、軍用の背嚢に学用品類を詰めて通学させるようにした。初めはリュックサックに近いものだったが、同20年に、大正天皇の学習院入学を祝して、内閣総理大臣の伊藤博文が特注で作らせたものを献上したのが、その始まりだという。

 同じく日本かばん協会のホームページは2008年1月~12月のかばん類輸出通関実績と同輸入通関実績を紹介しているが、それによると、総輸出個数は約400万個で前年に比べて42%強伸び、アメリカ、ドイツへの輸出数量が大幅に増えている。総輸出金額は 約32億円で前年より8%弱下回った。一方、総輸入個数は約6億6,000万個。前年比1.8%増である。中国およびアジア諸国が伸びている。総輸入金額は約3,286億円で、前年を4.4%下回った。
 また、矢野経済研究所は2008年の国内の鞄・袋物市場の調査を行い、その概要を公表しているが、それによると、2008年は小売金額ベースで1兆300億円(前年比94.6%)と推計し、2009年は同1兆100億円(同98.1%)と予測している。市場は縮小傾向にあるとはいえ、1兆円の巨大市場である。

 電車の中は全員が外出している人である。ほとんどの人は「携帯に供する容器」を持って乗っている。学校名の入った学生の鞄を除くと、誰一人として同じ鞄を持っている人がいない。前の席の真ん中にキャリーバッグを持った男性が座った。その時、「関心」のスイッチがONになった。ビジネスマン風の男性は皆、形態の違う鞄を持っているのに気が付く。従来型の手提げ型はほとんどなく、ショルダー型、パソコンバッグ型、手提げ型でありながらリュックサックのように背負えるタイプ、タウン用のようなカジュアルなものまで、実に様々である。
 かつても、同じメーカーのまったく同じ型のものを同じ場所で見かけることはほとんどなかったが、形態は似ていたし、色も黒か茶色であった。ビジネスマンの象徴のようにアタッシュケースを持つ人が街中に溢れていた時期もあった。価値観と言うほど大げさなことではないが、選択の多様性が進んでいることを改めて認識する。

 車内の鞄を持っている人の服装を見ると、ネクタイを付けている人は少なく、靴もウォーキングタイプのカジュアルっぽいものが目立つ。ビジネス社会でもカジュアル指向が強くなっているようである。服装や持ち物で人の意識を「しゃきっと」させることがある。今も変わらないが、自由度が拡大している。自由度が拡大した時には、人間そのものの真価が問われてくる。自身を律する意識が弱くなると、「自由」に流されてしまう心配がある。学生の制服論争に似たようなものも感じる。

 これからは、人は組織に埋没するのではなく、一人一人の真価を発揮しながら組織を動かしていく時代に入っている。カジュアル化は、その試金石かもしれない。

(荒井)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第34回 新しい価値を創る「無形の付加価値」受難の時代

2009年11月19日 15時21分19秒 | 今日の気づき
【2009年11月19日(木)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月19日(木) 朝刊 13面


◆記事の見出し

 《CCC、999円のCD》《レコード大手と組み来月発売》《洋楽ベスト60タイトル 販売をテコ入れ》


◆記事の内容

 ★カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)はレコード会社最大手ユニバーサルミュージックと同大手ビクターエンタテイメントの2社と組み、PB(プライベートブランド)のCD「ザ・ベスト・バリュー999」を12月4日から同社が運営するCD販売・レンタル店「TSUTAYA」約1,380全店で独占販売する。12月12日からはレンタルも始める。

 ★今回は第1弾となるもので、カーペンターズやスティービー・ワンダーなどのベスト盤60タイトルを一斉に発売する。レコード会社2社が持つ各アーティストの楽曲を再編集しジャケットに共通の帯を付けてPBとしての統一感を出す。今後も洋楽ア-ティスト、邦楽アーティスト作品のPB化を進め、2010年3月末までに40万枚の販売を見込んでいる。

 ★CCCは通常2,000円以上するベスト盤を低価格で販売し集客の目玉にする。一方、レコード会社はCCCの販路を利用することでまとまった出荷枚数を見込め、販促費負担も軽減できる。

 ★日本レコード協会によると、CD生産額は1998年の5,878億円強をピークに前年割れが続いており、現在は11年前の2分の1程度まで落ち込んでいる。CCCはPBの手法を活用した低価格品で音楽ソフト市場をテコ入れする考えである。


●今日の気づき

 ★これからも、いろんな分野で「低価格品」が開発されてくることが予想される。止めようのない大きな潮流と言える。

 ★ある意味では、「無形の付加価値」受難の時代と言える。

 ★品質が保証されたものの低価格化でしか生活者は目を向けなくなっている。かつてよくあった有名な映画音楽を無名のアーティストが演奏する安価なミュージックカセットテープのようなものではない。まして、海外で出回って問題になっている海賊盤でもない。有名ブランド衣料のバーゲンセールが恒常的に行われているような印象である。低価格指向は品質指向でもある。「安かろう、悪かろう」でなく「安かろう、良かろう」でなければ売れない時代になってきた。そうした生活者の「値ごろ感」に対応した商品が、いろんな分野で出てくることは間違いない。

 ★今の「値ごろ感」を言う時には、生活者の収入環境が厳しいので、定量的な判断が優先されがちである。コストと利益の計算が優先される。定性的な無形の付加価値を評価する余裕がなくなってきている。商品の価値は、金額計算の域を超えるような無形の付加価値を大きくすることで、高めてきた。そういう価値形成の構図をいったん否定する時代に入ったとも言える。その時代を経て、新しく「無形の付加価値」が認められる時代になっていくものと思われる。いわば、時代の大きな転換点である。その転換点を引き寄せたのは、経済の低迷、消費市場の成熟、品質の底辺向上の3点である。

 ★100円ショップのわが国消費市場に与えた最大の功績は「100円の価値」を生活者に知らしめたことである。これまで200円で買っていたものが100円でも納得できる品質なので100円のものを買うようにしようとか、あるいは200円で買っていたものは200円の価値があり100円の商品を買うのはやめようというように、「100円の価値」を生活者が認識し、その認識を基準に200円の商品、300円の商品も買うようになった。100円ショップで200円や300円の商品も販売しているが、「100円の価値」が認識できたので、100円ショップで200円や300円の商品が売れているのだと考えている。しかも、200円や300円の商品を選択する生活者は、当たり前のように、無意識に、デザイン性や使い勝手など、感性的な「無形の付加価値」を認めているのである。

 ★商品を提供する側も、商品を購入する側も、今までの価値観をいったん崩壊させ、新たに商品の価値観を再構築する時期に突入したのではないかと感じている。ただ1つ、これまでの価値観を築いてきた環境と、これから価値観を築いていこうとする環境に、大きな違いがある。それは、もの不足からもの充足への過程且つ経済の高度成長という環境と、ものの豊かさ且つ経済の低迷状態という環境の、違いである。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第33回 格の違いを感じさせるホテルの「変化対応業」

2009年11月18日 16時38分34秒 | 今日の気づき
【2009年11月18日(水)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月18日(水) 朝刊 35面


◆記事の見出し

 《プリンスホテル レストラン「前売り券」》《食べ放題など 景品向け需要に狙い》


◆記事の内容

 ★プリンスホテルが東京の品川・高輪地区の4つのホテルでレストランの前売りチケットを発売した。3つのホテルは4,500円、1つのホテルは3,900円のチケットを扱い、4つのホテルで和洋中の18店舗のレストランで利用できる。しゃぶしゃぶの食べ放題やすしの食べ放題、高層レストランでのディナーコースなども選べる。

 ★贈答用や忘年会・新年会の景品向け需要を掘り起こす。企業の経費削減が続く中で、ホテル周辺の住民にも売り込む考えである。12月30日ないしは来年1月末までの期間限定で、計7,700万円の売上を見込む。


●今日の気づき

 ★ホテルビジネスの商魂のたくましさを感じる。「ホスピタリティ」や「コンシェルジュ」といった接客のサービスやおもてなしのサービスだけを学ぶのではなく、ホテルの商魂そのものを、小売業はもっと学ぶべきではないだろうか。

 ★ホテルライフが身近でない一般庶民にとっては、「ホテルは非日常の空間」という意識が頭の中に張り付いている。今や、ホテルのビュッフェスタイルのレストランやランチバイキング、ケーキバイキングは珍しくないが、街中のレストランのバイキングサービスとは区別して考えてしまう。もちろん、ホテルのそれはブランド品のバーゲンセールのような価値があることは認めるが、「バイキング」を求める顧客の「心」には共通した意識があるはずである。顧客の「非日常空間」の意識の中に「日常空間」をぶつけることで、ホテルの敷居を低く感じさせ、「日常空間」にいる顧客をホテルの中に誘い込み、しかも、磨かれた「ホスピタリティ」のサービスを提供することで、ホテルに足を踏み入れた顧客を新しいホテルファンにし、顧客の拡大、顧客層の裾野の広がりを創出しているように感じる。

 ★百貨店に100円ショップや低価格指向の専門店がテナント出店したり、セルサービスの売場ができても、驚くことではないかもしれない。百貨店のたくましい商魂という見方ができるのではないだろうか。

 ★最近では、法事もホテルで行われることが増えている。同じ建物内で結婚式の披露宴と法事が同時に行われても不思議がってはいけないのではないだろうか。当事者が納得していれば問題はない。大観光都市の京都市には、繁華街から少し北にある市役所と鴨川の間に高級ホテルとセレモニーホールが隣り合って並んでいる。高級ホテルのある市内の中心地へのセレモニーホールの建設は、多分、反対運動もあったことと思われるが、ホテルでの法事が珍しくない時代になって、むしろ、先見の明があったのかもしれない。

 ★ホテルの蓄積してきたノウハウ、信用、経験等々、あらゆる有形、無形の資産を総動員してビジネスに生かそうとする「商魂」という視点で見ると、百貨店や総合スーパーは、もっともっと変化に対応してもよいのではないかと思えてくる。「変化対応業」の精神は、ホテル業界の方が、一歩も二歩も先を行っているように感じる。

(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第32回 SCの新規開業4割減にほっとする

2009年11月17日 02時49分47秒 | 今日の気づき
【2009年11月17日(火)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月17日(火) 朝刊 3面


◆記事の見出し

 《ショッピングセンター 開業 今年4割減に》《郊外規制や投資抑制 地方経済 影響も》《イオン3分の1》《シネコン都心へ》
 《消費の変化に対応後手》


◆記事の内容

 ★日本ショッピングセンター協会によると、2009年のSC開業数は2008年の88か所に対して4割減の50か所程度にとどまる見通し。2009年1~11月の開業は46か所、前年同期は82か所だった。

 ★原因は大手の投資抑制と2007年11月に完全施行された延べ床面積1万㎡超の郊外出店を規制する「改正まちづくり3法」の影響。今後は出店ペースがさらに鈍り淘汰も本格化する可能性が高い。

 ★SC開業はテナント企業の出店、地方の雇用と経済波及効果を生み出してきたので、テナント企業、地方経済にも影響を与えそうである。

 ★SCを主な出店先としてきたシネマコンプレックス(複合映画館)も出店場所を郊外SCから都心へ移す傾向にある。

 ★SCは幅広い客層を人気店の誘致に注力し、結果として、同質化と新鮮味の欠如を招いた。人口減少、成熟社会、節約志向、高齢化で消費のダウンサイジングが顕著になっている。環境問題を意識した車社会への反省もある。ネット通販も伸びている。SCの存在意義が改めて問われている。


●今日の気づき

 ★「4割減」の見出しを見て、ちょっと、ほっとしたような気持ちになる。むしろ、今までが「異常」だったようにも思う。毎年、100か所規模でSCが開業し続けるのは持続可能な形だろうか。自分の買物圏内に大型SCがない生活者にはSC数はまだ足りないと感じるかもしれないが、開業がゼロになるわけでもないので、商業集積過疎地域は別にして、今後は、同質化から個性化、よく言われる「オンリーワン」指向も望まれるのではないだろうか。

 ★日本ショッピングセンター協会のデータによると、1008年末のSC数は2,980か所である。そのうち、30,000㎡以上のSCが284か所ある。10,000坪以上クラスのSCが300近くあることになる。ちなみに、年別の新規開業の1SC当たり平均店舗面積は2003年以降、20,000㎡を超えている。2008年は27,791㎡である。また、2008年の推計総売上高は27兆2,585億円となっている。1SC当たりの平均は91億5,000万円となる。生活者の所得の状況、人口の状況、量的消費市場の状況等を考えると、これまでの成長路線を見直す時期に来ているのではないだろうか。経済社会の低迷が、そうせざるを得ない状況を作っているとも言える。よく言われる「ピンチがチャンス」なのかもしれない。

 ★SCの同質化競争は、いわば、デベロッパーとテナント企業のもたれ合いの結果とも言える。デベロッパーは人気のあるテナント、集客力のあるテナント誘致に注力し、テナント企業は競争力のあるSCへの出店で成長してきた。これまでの成長過程では「正解」かもしれないが、これからは、相手の力に頼るだけでなく、自力で集客できるような実力を持つこともテナントに求められているのではないだろうか。デベロッパーも、テナントが自力を強くできるような環境づくりが求められているように思われる。大事な視点は、見ている先に「生活者」がきちんと見えているかどうかということである。

(東)

【月曜コラム】自由席/店ウォッチング  第6回 鍋料理を訴求する店内放送で3度も驚く

2009年11月16日 17時01分41秒 | 店ウォッチング(「今日の気づき」に統合)
【2009年11月16日(月)】昨年の冬のことである。今年も鍋料理がうれしい季節が来たので、是非書き留めておきたいことがあって、1年前の店ウォッチングのことを紹介する。

 その日の朝のテレビは、「今日の夜は冷え込む」と天気予報を伝えていた。見事に天気予報は当たり、夜は気温が下がっていることが肌で感じる。夜10時半ごろ、11時閉店のスーパーに行った。閉店まで30分しかなく、店内はほとんど顧客がいない。数人の顧客は学生風の男性、若い独身風の女性、ネクタイを締めた単身赴任らしき中年の男性だけである。

 店内放送に3度驚いた。店内には「今夜は冷え込みます。ご家族で暖かい鍋料理はいかがでしょうか」という放送が繰り返し流れている。1度目の驚きは、朝の天気予報の情報がその日のメニュー提案放送に使われていたことである。キャッチした有効な情報の素早い活用に脱帽の思いである。多分、夕方には効果があったと思われる。

 2度目の驚きは、夜の10時半で家族のための買物をする主婦の来店がなく、来店しているのがほとんど単身者だけの時間帯に、「ご家族で……」、「鍋料理は……」の放送の違和感にである。主婦が夕食の買物をしている時間帯には、素晴らしい放送だったと思われるが、夜の10時半ともなれば、逆に、寒々しさを感じる。エンドレスで繰り返し流れていると、余計に違和感を覚える。多分、夕方のピーク時から流れ続け閉店まで放送は続いたのだろう。

 3度目の驚きは、店舗の従業員は誰も、その違和感を覚えなかったのだろうかということである。パート社員でもアルバイト従業員でも、それに気が付けば、責任者に言って放送のスイッチを切ってもらえばよい。その時間帯に流すより、切った方がよい。もしも、顧客が違和感を覚えて、従業員が平気だったとすれば、それこそ大きな問題である。与えられた時給に見合う仕事だけしていれば良いと考えているのだろうか。そういうことが言いにくい風通しの悪さがあるのだろうか。それとも、まったく不自然な放送と思わなかったのだろうか。パート社員とアルバイト従業員を例に挙げたが、少なくとも、社員は気が付かなければならない。社員の責任は重いと言える。パート社員やアルバイト従業員の比ではない。社員教育で教えられなかったのであれば、本部にも責任がある。

 顧客より従業員が早く気が付き修正すると顧客は違和感を覚えないが、顧客の方が早く気が付けば、顧客は管理の行き届いていない店と思ってしまう。

冬に限らず、季節に関連したメニュー提案はよく行われる。顧客への訴求がミスマッチになっている場面はよくあるのではないだろうか。特に、鍋料理の提案はよく聞く題材である。昨年の店舗が今年も同じことをしていないことを望むとともに、同じようなミスマッチの放送をする店舗が他に現われない ことを願いつつ、あえて、1年前に感じたことを書き記した。

(田中)