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【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第45回 「買わない」「売れない」には理由がある

2009年12月07日 16時17分48秒 | 今日の気づき
【2009年12月7日(月)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 12月7日(月) 朝刊 1面


◆記事の見出し

 《春秋》


◆記事の内容

 ★若者はなぜ自動車を買わなくなったのか。自動車メーカーで販売戦略に携わる人が、ある研究会で理由をあげた。所得の減少。公共交通の充実する都市部への人口集中。未婚率の上昇。こうした要因に加えて、価値観の変化も大きいという。

 ★「デートにクルマはいらない」と言う女子大学生。「友人を乗せて事故などの責任を追うのが嫌」と言う男子大学生。市場調査で集めた生の声に、クルマ好きが多い自動車メーカーの大人たちは大きな衝撃を受けたという。

 ★借金をしてでも車を手に入れ、仲間や恋人とぶっ飛ばすような青春像へのあこがれは乏しい。今の若者は自動車だけでなく、上の世代と違って「3K商品」に関心が薄いという。マーケティング研究者は近著で、3Kはクルマ、カデン(家電)、カイガイ(海外)旅行を指す、と語る。

 ★消費にまったく興味がないわけではない。ファッション、ゲーム、情報機器、家具、外食への関心は高い。日常的で事故とも無縁。しかも、買う時期を待てば値段が下がるものが多いと、先のマーケティング研究者は言う。買物は先送りがお得というのが若者の常識だとすれば、財布を開いてもらうのは容易ではない。



●今日の気づき

 ★消費の動向は生活者の価値観を反映する。価値観は人の外的要因と内的要因が影響して形成される。外的要因は、経済情勢、社会環境、生活環境、家族構成、学歴、モノ・コトの消費財事情、行動範囲、交友関係、情報環境等々、様々である。一方、内的要因は購買の直接的な推進力となるものだが、それを静的にあげるのは難しい。一言で言えば、感性とか心ということになるが、これは、常に変化し、つかみ難いからである。例えば、所得問題が抑止力となって買いたくても買えなかった商品があるとする。それでは、所得問題が解決すれば、直ぐに購買に結び付くかというと、そうとは限らない。購買に結び付かないこともある。内的要因は外的要因の影響を強く受けるが、影響を及ぼす外的要因は1つとは限らないからである。外的要因と内的要因の関係度合いは常に変化している。

 ★経済が発展途上で、生活物資が社会に不足していた頃は、個人差はあるが、一般的には内的要因に影響を及ぼす外的要因は上位が集中的に大きく、それ以外は影を潜めるほど小さくなって存在していた。大きな外的要因が解決に向かうと、小さな外的要因が顔を出す余地もなく、店頭に置けばモノが売れる時代を到来させた。やがて、影を潜めていた外的要因が大きくなってくると、購買を促す内的要因に様々な外的要因が影響を及ぼすようになり、消費が多様化し、川上・川中・川下が描く筋書き通りには消費が動かなくなってきた。生活者のニーズが見えないと、会員制カードシステムやCRMなどの導入が盛んになってくる。とともに、FSPなど消費を誘導する手段への関心も高まってくる。

 ★外的要因が内的要因に強い影響力を与えるといっても、内的要因は「時流」と表現すればよいのか、実在するが実体の把握が非常に困難な「時代の空気」のようなものにも影響されている。同じ外的要因でも、時として、敏感に受け止められる場合と、そのまま素通りしてしまう場合がある。個人によっても、世代によっても違い、その違いは、様々な外的要因の影響が人の意識の中にその人が気付かないうちに蓄積され、行動に影響を与えるまでに膨らんできていることがある。自らの経験の積み重ねの中で同じく無意識のうちに蓄積されていることもある。購買行動に駆り立てる内的要因は、外的要因と内的要因の様々な絡み合いの中から生まれてくる。

 ★成熟社会は、外的要因がそれぞれの存在感を大きくし、外的要因同士の差を小さくしている。内的要因も外的要因や自己蓄積の影響を受けながら価値観を多様に顕在化させている。そういう状況が生まれている成熟社会も到達点ではない。通過点である。成熟しているとはいえ、成長は続いていく。成長の基軸、変化の基軸が大きく動き出している。今は「成熟」という新しい状況の出発点に到達したところである。今後は、かつて経験したことのない変化がどんどん現れてくると予想される。「変化」という表現が当たっていないかもしれない。今は過去の経験を基準にした「変化」だが、これからは「変化」自体の基軸が変わっていくからである。

 ★その中で、変わらないものと変わるものがある。例えば、パソコンやケータイなど、パーソナル情報機器、モバイル情報機器の発達とインターネットの進化で、テレビCMの効果に変化が出てきているという議論があるが、一方で、視聴者にテレビCMのメッセージがきちんと伝わり、きちんと好感度が得られれば、きちんと売上に反映しているということが客観データに基づいて検証されてもいる。かつて、1台のカメラに2つのレンズが上下に装着されている「二眼レフカメラ」があった。成熟社会のマーケティングは、変わらないものと変わるもの、2つのレンズで焦点を合わす時代かもしれない。しかも、過去の経験を生かしつつ、新しくスタートラインに着き直すという思考が求められる。

 ★室町時代に創業した和菓子の「とらや」は、「伝統は革新の連続である」を信念としている。今は「伝統」の味になっている商品も生まれた時は「革新」だった。今の新商品も、開発者は100年先にも生き続けているものを作りたいという信念を持っている。時代は変化しても、「伝統」を重んじ「革新」を続ける精神は変わらない。成熟社会という新しい時代環境の中で、いかに生活者の「心」をつかむのか。日本の消費市場は、かつて経験したことのない新しいマーケティングの時代に入ったようである。

(東)

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