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【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第43回 PB新時代 三者三様にメリット

2009年12月03日 14時14分52秒 | 今日の気づき
【2009年12月3日(木)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 12月3日(木) 朝刊 13面


◆記事の見出し

 《ブランド変調 2 危機後の選択》《PB・新興勢台頭》《実質本位、低価格が魅力》


◆記事の内容

 ★イトーヨーカ堂の売場に4月、市場シェアトップのハウス食品の主力カレールー「バーモント」のそばに、同じくハウス食品が製造元のセブン&アイ・ホールディングスのPB商品「セブンプレミアム」のカレールー2品目が並んだ。「バーモント」より約2割安い。

 ★カレールーは味やコクに応じて商品が細分化しており、顧客は好みのブランドを繰り返し購入する傾向が強く、汎用品のPBには馴染まないとされてきた。しかし、発売半年で売れ筋2位に浮上し、業界の常識をあっさり覆した。

 ★日本ハム、カルピス、味の素……。セブン&アイのPB生産を請け負うメーカーには食品各分野のトップが名を連ねる。大手小売だけでなく、中堅スーパーのベイシアのPBも鍋つゆやレトルト米飯などは大手メーカーが供給する。食品市場の縮小が加速しており、有力メーカーもラインの稼働率維持を考えると、攻勢を強めるPBを無視できない。

 ★調査会社の富士経済によると、2009年のPB食品の市場規模は前年比22%増の2兆3,380億円の見込み。食品全体の9%になる。食用油や即席みそ汁など30%に迫る分野もある。NB(ナショナルブランド)神話は揺らぐ。

 ★家電製品でも「日の丸ブランド」が押されている。調査会社のBCNによると、10月のネットブック販売台数で台湾勢のシェアは計約3割という。白物家電では中国メーカーが台頭しアジアブランドが店頭を浸食する。PB同様に、余分な機能や宣伝費を削ぎ落とした低価格を武器に、消費者をとらえる。

 ★NBの逆襲はあるのか。日清食品は4月、「カップヌードル」の希望小売価格を据え置き、具材のミンチ肉をより上等なチャーシューに替えた。以来、PBに押されて減っていた販売量は回復している。

 ★技術力の向上などでコストを下げつつ、商品の品質を高める。NBメーカーの進化を、変わる消費者を味方につけたPBや新興ブランドが促している。


●今日の気づき

 ★PBの動向は、消費社会の成熟、消費市場の縮小、品質の向上、賢い生活者の台頭等々、今までの延長ではない、まったく新しい消費市場が誕生していることを如実に示している。新しい市場といっても、時間軸は過去・現在・未来と途切れることなく連続しているので、徐々に継続しながら変化しているように見えるが、変化軸が上記のように変わっているので、同じ線上での変化ではない。まったく新しい消費市場が芽生え形成されつつあると見るべきだろう。

 ★食品トップメーカーのPB製造を考えてみる。顧客、小売企業、メーカーの三者ともメリットがある。従来に比べてマイナスの数字が出るなどの損をするところが見当たらないのである。マイナスの数字が出ないので小売企業はPBを充実させ、メーカーはPB製造を請け負うのである。

 ★まず、顧客はトップメーカーの製造技術で生産されたNB並みの商品をいつでも割安価格で購入できる。安心・安全面でも信頼できるので、メリットがある。

 ★小売企業はトップメーカーの製造技術で生産されたNB並みの商品をいつでも割安価格で販売できるので、顧客にメリットを与えられ、来店を促し、売上・利益に貢献し、ストアロイヤルティを向上させることができる。また、トップメーカーが持つ商品開発とマーケティングのノウハウを生かした「よく売れるPB」を充実させることができる。

 ★メーカーは生産ラインの稼働率を維持し、雇用を維持し、市場が縮小する中でPB価格ラインの市場向けに商品を投入でき、その市場情報の入手も可能となる。また、NB強化にもメリットがある。NB対PBという競争の構図を描いてみると、競争相手のPBの手の内と市場を知ることができるので、NBの顧客価値再構築では得がたい情報を手に入れることができる。大手小売企業とのパイプが強固になり有力な販路の確保にもつながる。

 ★一方、PBを手がけることで、顧客から見たメーカーのイメージが低下することはあるのだろうか。小売企業の下請け企業になったようなイメージになるのであろうか。NBにこだわる以上は、そうはならない。仮にNBから撤退しPB専業のようになれば別だが、むしろ、こういう時代で生活者が求める低価格商品を小売企業に協力して製造しているというイメージの方が評価は高まるかもしれない。それには条件がある。NBなど自社商品へのこだわり、より良い自社商品を提供していこうという強い意思を生活者に伝えることが重要になる。

 ★かつてのPBは小売企業のメリットが優先されていた。顧客は「安かろう、悪かろう」を買わされ、トップメーカーはメリットがないのでPBに対応してこなかった。時代は変わった。顧客は家計が厳しく、小売企業は売上が伸びず、メーカーは縮小する市場への対応に迫られている。三者三様に厳しい状況の中で、三者三様にメリットが見出せる今のPBの登場となった。これは当面の厳しい状況の打開策ではなく、新しい消費市場対応への模索の第一歩でもある。

(東)

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