こんばんは。今日はマグネットの続編です。
各マグネットについて個別にお話を進めたいところですが、その前にマグネットの減磁について説明をしておく必要があります。というのがマグネットについて非常に重要なポイントである減磁は、各マグネットによって事情がかなり違うので、先に説明しておいた方が話が分かりやすいのです。
さて減磁とは何かですが、これは名前のとおりマグネットの磁力が減っていく(弱くなっていく)現象です。そもそもマグネットとは永久磁石とも呼ばれるように、一度着磁をして磁力を与えると、その磁力が半永久的に持続するものですが、実はいろいろなタイプの減磁という現象が存在します。
減磁には現象面で大きく分けると下記の3つになります。
1)可逆変化
状態によって磁束が変化するもので、一度減磁しても状態が元に戻れば磁束も復帰するもの。これは減磁の中では、あまり大きな問題にはなりません。ある範囲内での温度差による変化などがこれになりますが、詳しくは各マグネットの項目で説明することにします。
2)不可逆変化
これは一度減磁するとそのままでは元には戻らないので厄介ですが、再着磁をすれば元の磁束に復帰します。ただ一般の使用事例では再着磁というのは難しいので、設計的に一番考慮しないといけないのはこれになります。これにあたるのは着磁後の経年変化や高温減磁、低温減磁、パワー減磁などがありますが、経年変化以外の3点は設計的には慎重に検討する必要があります。
3)永久減磁
これは一度減磁すると、その名のとおり永久に元に戻らない減磁で、例としてはアルニコマグネットの熱処理温度以上の温度(500~600℃)に対してマグネットを構成する組成や組織が物理的または化学的に変化してしまうために起こるものなどです。ただ実際での使用環境ではあまり考えられないので、ユニットの設計上ではあまりこれを考慮することはないと思います。
次に上記の中で一番注意しなければいけない不可逆減磁について、少し個別に話を進めたいと思います。
2-1)経年変化
マグネットは着磁した状態で室温で放置しておいても時間とともに減磁していきます。その変化は時間の対数に対して直線的に起こることが知られています。経年減磁は、マグネットの種類や磁気回路の状態などによって変化率が変わりますが、たまに見かける「アルニコマグネットは未使用の状態でも10年間に5%以上減磁する」などということはありません。アルニコである減磁は殆どがパワー減磁であって、それと経年変化がごっちゃにされている悪い例ですね。
ちなみに古い資料ではありますがアルニコの経年変化についてちょっと変化率を計算してみましたが、10年で0.17%、20年で0.18%くらいでしたので、実用上大きく問題になることはないと思います。もし実際に数%も自然放置で経年変化しているとしたら、それはその磁気回路の設計がよほどまずくてパーミアンスが異常に低いというような場合ではと思いますが、実際の製品ではまず無いのではと思います。私自身、長年ユニットの設計をやっていますが、この経年変化で何か設計上問題になったということはあまり記憶がありません。
2-2)高温減磁
これはネオジムマグネットに多く見られる減磁で、ネオジムの最大の欠点と言えます。ネオジムは温度によってBHカーブが大きく変わりますが、温度が高くなるとカーブが立ってきて屈曲点が上に上がってくるので、磁気回路のパーミアンス係数を予想される最高使用温度でも動作点がその温度での屈曲点よりも下にならないようにしておかないとその温度になった時に大きく減磁が起こり、元に戻れなくなります。
う~ん分かり難い説明ですよね。まぁ簡単に言うと、ネオジムは実際に使われる最高の温度の時(ボイスコイルの温度上昇なども考慮して)のBHカーブで設計をしておかないと、減磁するということです。ウーファーでネオジムの使用例が少ないのはこのためです。
分かり難いので、実際のBHカーブを見ながら説明しましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/11/1d490e60ac23e6047177f70a33cacec7.jpg)
上の図は、ネオジムマグネットのBHカーブの例ですが、温度によってBHカーブが大きく変わっていることが分かります。ここで20℃の時に最大効率となるように動作点A点(P=0.4)で磁気回路を設計したとすると、この磁気回路が100℃まで上がるとその時の動作点はBHカーブが変化することにより、A点→B点に移動します。この時のB点は、屈曲点よりもかなり下になっているので、温度が20℃になっても磁束は元に戻れなくなり、減磁が起こります。この例で言えば、例えば100℃まで動作保証をしようとすると、動作点は100℃での屈曲点よりも上にもっていかないとだめなので、動作点はC点(P=2.5)以上に設定する必要があります。
2-3)低温減磁
ネオジムとは逆にフェライトマグネットは温度が下がるとBHカーブが立ってきます。そのため、フェライトでは低温になると減磁が起こることがあります。ただ低温といっても-40℃以下というようなレベルなので、カーオーディオ用など特殊な用途を除けばよほどパーミアンスが低くなければ、低温減磁の発生はあまりないと思います。実際のユニット設計でも、ホーム用ではあまり低温減磁については心配しなくてもよいと思います。ちなみにスピーカーは動作するとボイスコイルの温度上昇で自然に温度が上がるので、その点でも低温減磁は起き難いと言えます。
こちらも実際のBHカーブで説明しましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/77/8fca86b4298c3bb5cc8813abd0f33ba5.jpg)
フェライトの場合はネオジムと逆で、低温の方がカーブが立ってきます。そのため、例えば20℃の最大効率を狙って動作点をA点(P=0.3)で設計すると、この磁気回路が-100℃まで温度が下がると動作点はBHカーブの変化に伴いA点→B点に移動するので、やはり屈曲点より大幅に下になるので減磁が起こります。この場合-100℃まで保証するのであれば、動作点はC点(P=3.5)くらいまで上げておく必要があります。
2-4)パワー減磁
実際のユニット(特に古いモデル)で発生している減磁で一番多いのはこれでしょう。これはボイスコイルに大入力が入った時に発生する逆磁界が磁気回路に影響し、動作点を下に移動させることにより発生する減磁で、もともとBHカーブが立っているアルニコマグネットに一番多く見られます。アルニコは温度特性は非常に安定しているのですが、このパワー減磁の弱さが一番の弱点と言えます。これを防ぐためには、パーミアンスを余裕をもって高くしておくのがベストですが、それは言い換えれば効率を落として大きな(高さのある)マグネットを使うということで、コスト的には非常に不利なので、昔の効率最優先のユニットでは結構厳しいものが散見されます。
以上駆け足で説明しましたが、ちょっと今回の説明は分かり難かったですかねぇ。本当は各BHカーブの実例を見ながら説明すれば少しは分かりやすいのですが、なかなか転載OKのデータが見つからず今回は文章だけの説明となってしまいました。次回は各マグネットの説明をして、一応このシリーズは完結させたいと思いますので、もう少しだけ我慢してくださいね。では今日はこの辺で。
各マグネットについて個別にお話を進めたいところですが、その前にマグネットの減磁について説明をしておく必要があります。というのがマグネットについて非常に重要なポイントである減磁は、各マグネットによって事情がかなり違うので、先に説明しておいた方が話が分かりやすいのです。
さて減磁とは何かですが、これは名前のとおりマグネットの磁力が減っていく(弱くなっていく)現象です。そもそもマグネットとは永久磁石とも呼ばれるように、一度着磁をして磁力を与えると、その磁力が半永久的に持続するものですが、実はいろいろなタイプの減磁という現象が存在します。
減磁には現象面で大きく分けると下記の3つになります。
1)可逆変化
状態によって磁束が変化するもので、一度減磁しても状態が元に戻れば磁束も復帰するもの。これは減磁の中では、あまり大きな問題にはなりません。ある範囲内での温度差による変化などがこれになりますが、詳しくは各マグネットの項目で説明することにします。
2)不可逆変化
これは一度減磁するとそのままでは元には戻らないので厄介ですが、再着磁をすれば元の磁束に復帰します。ただ一般の使用事例では再着磁というのは難しいので、設計的に一番考慮しないといけないのはこれになります。これにあたるのは着磁後の経年変化や高温減磁、低温減磁、パワー減磁などがありますが、経年変化以外の3点は設計的には慎重に検討する必要があります。
3)永久減磁
これは一度減磁すると、その名のとおり永久に元に戻らない減磁で、例としてはアルニコマグネットの熱処理温度以上の温度(500~600℃)に対してマグネットを構成する組成や組織が物理的または化学的に変化してしまうために起こるものなどです。ただ実際での使用環境ではあまり考えられないので、ユニットの設計上ではあまりこれを考慮することはないと思います。
次に上記の中で一番注意しなければいけない不可逆減磁について、少し個別に話を進めたいと思います。
2-1)経年変化
マグネットは着磁した状態で室温で放置しておいても時間とともに減磁していきます。その変化は時間の対数に対して直線的に起こることが知られています。経年減磁は、マグネットの種類や磁気回路の状態などによって変化率が変わりますが、たまに見かける「アルニコマグネットは未使用の状態でも10年間に5%以上減磁する」などということはありません。アルニコである減磁は殆どがパワー減磁であって、それと経年変化がごっちゃにされている悪い例ですね。
ちなみに古い資料ではありますがアルニコの経年変化についてちょっと変化率を計算してみましたが、10年で0.17%、20年で0.18%くらいでしたので、実用上大きく問題になることはないと思います。もし実際に数%も自然放置で経年変化しているとしたら、それはその磁気回路の設計がよほどまずくてパーミアンスが異常に低いというような場合ではと思いますが、実際の製品ではまず無いのではと思います。私自身、長年ユニットの設計をやっていますが、この経年変化で何か設計上問題になったということはあまり記憶がありません。
2-2)高温減磁
これはネオジムマグネットに多く見られる減磁で、ネオジムの最大の欠点と言えます。ネオジムは温度によってBHカーブが大きく変わりますが、温度が高くなるとカーブが立ってきて屈曲点が上に上がってくるので、磁気回路のパーミアンス係数を予想される最高使用温度でも動作点がその温度での屈曲点よりも下にならないようにしておかないとその温度になった時に大きく減磁が起こり、元に戻れなくなります。
う~ん分かり難い説明ですよね。まぁ簡単に言うと、ネオジムは実際に使われる最高の温度の時(ボイスコイルの温度上昇なども考慮して)のBHカーブで設計をしておかないと、減磁するということです。ウーファーでネオジムの使用例が少ないのはこのためです。
分かり難いので、実際のBHカーブを見ながら説明しましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/11/1d490e60ac23e6047177f70a33cacec7.jpg)
上の図は、ネオジムマグネットのBHカーブの例ですが、温度によってBHカーブが大きく変わっていることが分かります。ここで20℃の時に最大効率となるように動作点A点(P=0.4)で磁気回路を設計したとすると、この磁気回路が100℃まで上がるとその時の動作点はBHカーブが変化することにより、A点→B点に移動します。この時のB点は、屈曲点よりもかなり下になっているので、温度が20℃になっても磁束は元に戻れなくなり、減磁が起こります。この例で言えば、例えば100℃まで動作保証をしようとすると、動作点は100℃での屈曲点よりも上にもっていかないとだめなので、動作点はC点(P=2.5)以上に設定する必要があります。
2-3)低温減磁
ネオジムとは逆にフェライトマグネットは温度が下がるとBHカーブが立ってきます。そのため、フェライトでは低温になると減磁が起こることがあります。ただ低温といっても-40℃以下というようなレベルなので、カーオーディオ用など特殊な用途を除けばよほどパーミアンスが低くなければ、低温減磁の発生はあまりないと思います。実際のユニット設計でも、ホーム用ではあまり低温減磁については心配しなくてもよいと思います。ちなみにスピーカーは動作するとボイスコイルの温度上昇で自然に温度が上がるので、その点でも低温減磁は起き難いと言えます。
こちらも実際のBHカーブで説明しましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/77/8fca86b4298c3bb5cc8813abd0f33ba5.jpg)
フェライトの場合はネオジムと逆で、低温の方がカーブが立ってきます。そのため、例えば20℃の最大効率を狙って動作点をA点(P=0.3)で設計すると、この磁気回路が-100℃まで温度が下がると動作点はBHカーブの変化に伴いA点→B点に移動するので、やはり屈曲点より大幅に下になるので減磁が起こります。この場合-100℃まで保証するのであれば、動作点はC点(P=3.5)くらいまで上げておく必要があります。
2-4)パワー減磁
実際のユニット(特に古いモデル)で発生している減磁で一番多いのはこれでしょう。これはボイスコイルに大入力が入った時に発生する逆磁界が磁気回路に影響し、動作点を下に移動させることにより発生する減磁で、もともとBHカーブが立っているアルニコマグネットに一番多く見られます。アルニコは温度特性は非常に安定しているのですが、このパワー減磁の弱さが一番の弱点と言えます。これを防ぐためには、パーミアンスを余裕をもって高くしておくのがベストですが、それは言い換えれば効率を落として大きな(高さのある)マグネットを使うということで、コスト的には非常に不利なので、昔の効率最優先のユニットでは結構厳しいものが散見されます。
以上駆け足で説明しましたが、ちょっと今回の説明は分かり難かったですかねぇ。本当は各BHカーブの実例を見ながら説明すれば少しは分かりやすいのですが、なかなか転載OKのデータが見つからず今回は文章だけの説明となってしまいました。次回は各マグネットの説明をして、一応このシリーズは完結させたいと思いますので、もう少しだけ我慢してくださいね。では今日はこの辺で。
各磁石の種類での音質の傾向、
また同一種でマグネットの大小での音質の違いなど、社長さんのご意見やポリシーなどお聴かせ願えませんか。
固定磁石が永久磁石でなくて電磁石のタイプ(励磁型というんでしょうか?)も少なくなったと思いますが、まだ存在するようです。
このタイプは装備は大げさですが減磁の心配をしなくて良いし、磁力の強弱の調整が容易、磁気回路に抵抗が少ないなど、素人が考えると永久磁石よりメリットが多い気がするのですが、専門家から見るといかがなものでしょうか?
唐突な質問で恐れ入ります。宜しくお願い致します。
丁寧にご説明ありがとうございます。また、いくつか質問させてください。
1. 高温減磁は磁石を強く熱するとダメになる、ということでキュリー温度と関係があり、熱で磁石の分子がランダムに動き回って磁気モーメントが狂って弱ってしまう、のかなぁ、となんとなく理解できましたが、だいたいそれでいいのでしょうか?
2. パワー減磁は、棒磁石を超強力な別の磁石で、磁極と逆向きにこすり続けると、棒磁石が弱ってしまう、とこんな具合に理解していいのでしょうか?
3. しかし、低温減磁という現象は初めて聞きましたが、いったいどういう理屈で起きるのでしょうか? フェライト磁石の作り方とも関係があるのでしょうか? それともフェライト磁石の磁性のあり方が、アルニコやネオジムなど金属材料とは違う、ということなのでしょうか?
直接、音とは関係ないとは思いますが、ご教示いただければ幸いです。
小学生の頃、ペアになった棒磁石を拍子木よろしく叩いて遊んでいたら、「バカ野郎、磁石がぱぁになるだろうが。今、磁石をぶん殴った分、おまえの頭もかわいがってやる」と、磁石よろしく教師に頭をぶん殴られたことがありますが、スピーカーに使われる磁性材料で耐衝撃性が問題になるのはどれなのでしょう?
フェライトなんかは、もとが「焼き物」だけにヤバそうだな、とは思うのですが、それは別にして、カーステレオ用などだと問題になりそうな木がするんですが。
設計時におけるマグネット径(種類)の決定にはきっと「ちょうど良い按配」というものがあるのでしょうね。
上の穴さんの質問とも重複するのですが、このあたりのことを社長さんの私見を大いに絡めて語っていただけると幸いです。
でもきっと他の様々なファクターとの関連で決まることであり、なかなか簡単には説明し難いことなのでしょうね。
穴さん
先日は<冨宅先生と二人の悪童>みたいな展開になってしまいましたが、今後もお互い悪童であり続けましょうね。
また私の発言でおかしなところがあれば、ご指摘くださいね。
そうそう、この読者コメはやはり「大人」の集まりですから、穏やか和やかなんですけど、それ故に時々単調な流れ(偏見で失礼!)の傾向も出てくる。
そんな時は我々悪童も必要でしょう。
時にお互いに刺激を与えあっていければと思います。
わたしこそこんなお調子者なので、時に外れたことを言うかもしれませんが、その時はSophieさんからチクリとお願いいたします。
社長が発言する前に磁石と音色の関係を云々するのは僭越とは思うのですけれど、
磁力がアップしてくると制動力が増して、音にも元気感やメリハリ感が出てくると思うのですが、行き過ぎると何かドライな感じがして、豊饒感が無くなるというか、物足りなさが出てくるようにも思えます。まあソフトとかアンプとかの相性もあるかと思いますが。
でもあまり貧弱なマグネットだと、緩んだ、力のない音になりますから、その辺の匙加減なんかも社長から教えて頂ければユニット購入の一つの指針になると思うのです。
PARCさんのユニットにも各型番で大きめの設計のもの、小さめのものが有ると思っているのですが、どうでしょうか?
>各磁石の種類での音質の傾向、また同一種でマグネットの大小での音質の違いなど、社長さんのご意見やポリシーなどお聴かせ願えませんか。
了解しました。次回の続編で私なりの印象などを書きたいと思います。
>このタイプは装備は大げさですが減磁の心配をしなくて良いし、磁力の強弱の調整が容易、磁気回路に抵抗が少ないなど、素人が考えると永久磁石よりメリットが多い気がするのですが、専門家から見るといかがなものでしょうか?
正直なところ、私自身は励磁型の設計は経験がないので、あまり具体的なことは言えません。(知ったかぶりは嫌なので)
個人的な予想として、通常のマグネットを用いたものに対して悪くなることはないと感じますが、ただ商品として見た時に電源が別途必要なことや、その価格などを考えるとちょっと微妙かなぁとも思います。何人かの業界人に励磁型への評価を聞いたことがありますが、正直なところ彼らの評価も人によってかなり温度差がありましたね。
ちなみに私も以前国内製の某励磁ユニットと、アルニコタイプの比較試聴をさせていただく機会がありましたが、確かに励磁型のモデルの方が音は良かったです。これを聴いた時、音量を上げていっても音がうるさくなく、なかなか破綻しないところなどは、L11やT11のことを思い出しました。でも同時に、その価格を聞いて、その価格をかけるのであれば自分なら別の手法でやるなぁと思ったのも事実です。例えば、L11でやったようなアルニコ内磁で完全シンメトリカルデュアルダンパーなどの方がロジック的にも効果が分かりやすく、音質面でもより効果を出せるのではと思います。
>磁力がアップしてくると制動力が増して、音にも元気感やメリハリ感が出てくると思うのですが、行き過ぎると何かドライな感じがして、豊饒感が無くなるというか、物足りなさが出てくるようにも思えます。
この辺は、マグネットというよりQを含めたユニットのベーシックな設計そのものなので、ちょっと別のエントリーで説明した方が分かりやすいかなぁと思っています。
>高温減磁は磁石を強く熱するとダメになる、ということでキュリー温度と関係があり、熱で磁石の分子がランダムに動き回って磁気モーメントが狂って弱ってしまう、のかなぁ、となんとなく理解できましたが、だいたいそれでいいのでしょうか?
う~ん難しい話になってきましたね。でもこの高温減磁はエントリーにも書いたように、温度によってBHカーブが変わることによって同じ動作点でも屈曲点よりも下になって、その結果元に戻れなくなって減磁するというのが一番分かりやすい説明なのですが、やっぱり分かり難いですかねぇ・・。やはりBHカーブのデータを掲載してもう一度説明を補足した方が良さそうですね。
「磁石を強く熱するとダメになる、ということでキュリー温度と関係があり、」という表現はどちらかと言えば高温減磁(不可逆減磁)よりも、永久減磁に対しての方がイメージ的に近いような気がします。
>スピーカーに使われる磁性材料で耐衝撃性が問題になるのはどれなのでしょう?
実際の設計でこれが問題になった経験はあまりありませんが、あるとしたらフェライトですかね。でも試作の時なんかは、よく磁気回路を脱磁後に熱をかけてプラハンでたたいてばらしたりしてましたからねぇ。
>設計時におけるマグネット径(種類)の決定にはきっと「ちょうど良い按配」というものがあるのでしょうね。
はいそのとおりです。もちろんコスト的に許されれば、あえて大きなマグネットを使って歪み対策などで磁束を落として余裕を持って使うなどという手法もありますが、PARCがやっているようなクラスではなかなか難しいですね。単純に大きいマグネットを使うだけなら、素人でも金さえあれば出来ますからねぇ。商品として重要なことは、むしろ限られた予算の中でいかにバランスをうまく取ってまとめるかということでないかと思います。
>でもきっと他の様々なファクターとの関連で決まることであり、なかなか簡単には説明し難いことなのでしょうね。
PARCのことで言えば、最大の課題はやはりその生産ロットが少ないということで、結果として各パーツも専用設計で全てを新規でというわけにはいかないので、いかに既存の標準パーツをうまく組み合わせて最大の効果を出すかということで常に奮闘しています。
>冨宅先生
「先生」だけはご勘弁を。私はそのような器ではありませんので。強いて言えば、クラフトスピーカーファンの同士といったところでしょうか。
でも「クラフトスピーカーファンの同士」というには、アマチュアリズム、遊び心、ガキっぽさがやや不足かなぁ(貶している訳ではありませんよ)。この点では往年の長岡鉄男さんなんかは、晩年に至るまでアマチュアリズムを堅持されていたように見えますね。本物のプロのエンジニアとF社とコラボしていたとはいえ1文筆家との違いかな?
>本物のプロのエンジニアとF社とコラボしていたとはいえ1文筆家との違いかな?
いや長岡先生の影響力の凄さは十分プロ以上だと思いますね。いまだに多くのファンの方がいることには本当に感心します。F社も長岡先生がいなければ、今の地位は築けなかったのではとも思います。
ちなみに私は先生のところへ伺う機会は無かったのですが、ソニーでも商品導入で多くの者がお世話になったと記憶しています。
ただ率直に言わせていただければ、私の目指す音の方向とは対極にあったようにも感じます。まぁそれだからこそ、オーディオは面白いとも言えますが。