こんばんは。今日は13cmPPコーン(DCU-F131PP)への非常に興味深いユーザーレポートをいただいたこともあり、PARC AudioのPPコーンについてちょっと書いてみたいと思います。レポートの主は横浜にお住まいのT.S様で、詳しいことは書けないのですが、音響関連のお仕事をされており、以前からDCU-F131PPをお使いいただいていたのですが、今回マルチシステムをトライされ、かなり良い結果が得られたようでした。レポートに関しては、こちらをご覧ください。
通常ユーザーレポートに関してこちらからコメントをすることは、ちょっと生意気な感じがしてあまりやってないのですが、今回のレポートでは非常に本質的なご質問が含まれていたので、先ずこの件についてちょっとお話したいと思います。そのポイントとは下記のところです。
同じ口径で能率が同じでも「重い振動系+強力磁気回路」と「軽量振動系+小型磁気回路」では応答性として同じ条件なのでしょうか?
これに対して私は、下記のような回答をさせていただきました。
TSパラメーターで計算される低域特性や、SPL等のデータで言えば、振動系を重くしても磁気回路を強力にすればある程度等価にできることになっていますが、実際にはそんなことはありません。具体的な例で言えば、例えば同じ重量の振動系でも「軽い振動板+ウエイトリング」と「重い振動板」では音の出方は全く違います。私が軽量振動板(振動系ではなく)にこだわるのもそのためです。同じSPLでも軽い振動板から出てくる音には変な固有音が少なく、またSPLとは違う音離れの良さ(これをデータで表すのは難しいですが)があります。
またPARCが他社と違うのは、他社(F社が典型的ですが)では振動板を軽量にすると同時にボイスコイル等の他のパーツも軽量化し、振動系全体としても軽量化するのに対し、PARCでは振動板を軽くしても、最終的に中低域のバランスを取るためにあえて重めのボイスコイルを使ったり、時にはウエイトリングや重めのネック接着材を使ったりします。まぁこの辺のことがおそらく他社のユニットと少し違う点かも知れません。
ちょっと難しかったかも知れませんが、簡単に言えば軽量化が音離れなどの音質に一番効いてくるのは、振動系全体ではなく振動板そのものの重量だ ということです。(振動系とは、振動板+ボイスコイル+ダンパー+センターキャップ+ネック接着剤等のことを言います) ですのでPARCのユニットが軽量化と言っているわりにSPLはそんなに高くないユニットがあったりするのはこのためなのです。
そんなPARCのユニットの中でも、この思想を一番はっきりと具現化しているモデルがPPコーンのDCU-F131PPとDCU-C171PPだと思います。T.S様のレポートの中にある
DCU-F131PPに驚いたのは生の肉声や楽器ならではの音のエネルギー感が良く出る事でした。しかしプラスチックコーンでその様な鳴り方をする話は聞いたことがありませんでしたので・・・(略)
音楽ではありませんが雷の音の鋭い立ち上がりにも驚きました。これも生の(?)雷と区別しがたい鳥肌ものです。因みに似た様なPPコーンでも、他社のモデルではここまでは鳴りません。
のようなコメントをいただけるのも、このPARCの設計思想が一番効いているのではと私は感じています。PARCのPPコーンについての具体的な設計手法については過去のブログに書きましたのでそちらをご覧いただければと思いますが、最近このユニットを採用していただけるプロのユーザー様も増えてきており、本当にうれしい限りです。前にも書いたかと思いますが、17cmコアキシャルでは珍しくPPコーンが兄貴分のウッドコーンより売れたりもしています。それと、偶然ではありますが今週末開催される第11回 聴こう!ハセヒロ・バックロードin日本橋でもDCU-F131PPがデモにお使いいただけるようですので、是非お時間がある方はご参加いただければと思います。では今日はこの辺で。
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>F171Pの高域は自然でいいですね。フルレンジとはおもえない。
お褒めのお言葉ありがとうございます。実際に使われている方のコメントだけに重みがありますね。
でも最近はコアキシャルの方がメインのようで。たまにはF171Pもかわいがってくださいね。
なりっぷりもすばらしくPPよりつややかだと思いました。
人に勧めやすいユニットです。
今メインはコアキシャルPPですけど。
>こうやって、実際に設計者に相談できる場所というと、世界広しといえど、代表のブログだけと思います。
世界とは大げさですが、まぁこういうのがガレージメーカーの強みかも知れません。F171Pも17cmという口径の割には頑張って高域まで出している子なので、是非是非大切にしてやってくださいませ。
あの、サブコーンの形、カッコいいと思うのです。サブコーンというとローサーといいますが、この田舎でローサーは店で見ることはあるが、まともに音を出したものは見たことがありません。もう古レンジの時代ではないと思うのです。
DCU-F171Pはまだまだ手がかけられそうです。
ちょっとRS様の状況を勘違いしていたようです。ご不満を感じていらっしゃるのは高域のレベル不足ではなく質感そのものということですね。
そうであれば、前回の私の提案はあまり役に立たないかと思います。というかむしろ逆で、中低域を少し増やす方向の方が相性が良いかと思います。前回お知らせした手法の逆を試してみてください。中低域が増えることで相対的に中高域を抑えたことと同様になりますので、少し印象が変わるかと思います。
また中高域を整理する方向ですので、どちらかと言うと抑える手法も有効かも知れません。以前のエントリーでご紹介した各種制振材の付加が少し効くかも知れません。
あとサブコーン固有の弱点としてサブコーンとコーンの間での共振があり、これの対策としてはサブコーンの背面に軽い吸音材を少し入れるということがあります。吸音材としてはミクロングラスをお勧めします。
F171PにTWをプラスする件はあまりお勧めしません。とうのはF171Pはフルレンジということでサブコーンを使って中高域を出していますので、通常のウーファーに比べれば当然中高域の質は不利となります。そういうハンディのあるユニットを無理にウーファーとして使うことはあまり合理的ではありません。F171Pはフルレンジとして使うことでフルレンジでしか出せない世界があることが最大のメリットですので、いろいろ調整をしてみてやはり不満があるということであれば、最善の方向はやはりコアキシャルにユニットごと換えることをお勧めします。これが一番効率的で、結果的に一番安い方法にもなるかと思います。おそらくTWを追加していろいろ調整されても、ちゃんとした2wayモデルにはかなわないと思います。フルレンジ+TWに負けるような2wayモデルでは存在価値がありませんから。
以上ご参考まで。
1案
寸法に互換性があるので、DCU-C171PPやDCU-C171Wと交換してみて、その音に違いを楽しむ。
2案
20cmのコアキシャルの計画があるようなので、それを待つ。でもどうせなら25cmでコンプレッションドライバーでと、夢は膨らみます。
3案
代表からコメントをいただきましたように、高域の改善のため、モンスターケーブルに変える。BOXの仕上げをピアノ塗装に変える。
4案
ツイーターを追加して2ウエイにする。ヤマハのベリリュームツイーターの部品取りしたものを使ったことがあります。以前、簡易的に(安易に)他のスピーカーのネットワーク3000Hz6dBをつないでいたことがありましたが、やはりオリジナルのDCU-F171Pが聴きたくて現状に戻しました。
コメントをいただいた結果、以上の4案の選択となりました。「すべてやってみてはどうだ、それが趣味というものだ。フルレンジもコアキシャルもだ」という声が聞こえてきます。
「高域が出ない」ということはまったくありません。そこにまったく不満はないのです。40年近く前になります。パイオニアのPE-16(フルレンジ)を買って、材木屋からホモゲンといってましたが板を買って、鋸を引いて箱を作って以来の、フルレンジ挑戦でしたが、PE-16は本当に高域が出ていなかった。安物のトランジスタアンプで鳴らしたから音にも潤いがなかった。あの頃はJBLのLE8Tがフルレンジとしては高嶺の花でしたが、あれに比較しても高域、低域ともDCU-F171Pはでているのではないでしょうか。もう古レンジの時代ではないなと思いました。
でも、やはり高域はでているのだが、合唱や弦楽器の高域で荒さがあります(3か月エージングしたが)。18cm2ウエイのシステムと比較すると差は明らかにわかるのです。やはりフルレンジの限界なのでしょうか。代表はソニーのSS-A5などスピーカーシステムを開発されていますから、釈迦に説法ですが、フルレンジで事足りるなら、2ウエイのスピーカーシステムがこの世に存在するはずがない。むしろ、そのネットワークの調整、匙加減で音作りがなされているのかも知れません。
オーデイオフェアで優秀録音のソフトでデモをやりますが、むしろ劣悪な録音、癖のある録音で私はテストしてみます。シゲテイの演奏でバッハの無伴奏バイオリンの曲集があります。この高域のヒリヒリ加減は前から悩みの種でしたが、これを18cmの2ウエイはうまく鳴らしますが、やはりフルレンジでは無理かなと思います。それとツイーターで演奏会場の雰囲気、反響音、包まれているような音場が再現できます。ただ、ボーカルやジャズなどは音が中域に寄ってきてフルレンジがいいと思っています。
ご教示いただきましたように3案かあるいは4案と思っています。
3案でフルレンジの可能性を探求してみたいと思います。時間をかけてこれが趣味かもしれません。
4案もできればご教示いただきたいのです。3000HzのクロスオーバーとしてLやCはどうしたらいいでしょうか。それとも2ウエイは考えないほうがいいでしょうか。
いろいろフォローありがとうございます。PARCのモデルを実際に沢山使っていただいている方の発言だけに重みがありますね。
>DCU-C171PPを買うとDCU-C171Wも聞きたくなります。そして、パーク・オーディオの虜に成るのです。(ハハハ)
最初から意図していたわけではないのですが、17cmの場合取り付け互換の3モデルはそれぞれ個性がはっきりしているので、たしかに他のモデルにも興味が出てくるのかも知れませんね。
>やはりクラシックとなると、ツイーターが必要と思います。何かDCU-F171Pを生かす方策があるでしょうか。
高域が不足されているということでしたら、下記のような手法が考えられます。ご参考まで。
1)低域を抑えて相対的に高域を出す。
*ダクトを長くしてポートチューニングを下げる。
*箱鳴りがあるようなら、少し補強桟を加えてみる。
*吸音材を少し増やす。
2)高域の分解能が高いケーブルにかえる。
PARCではモンスターケーブルなんかがこれにあたると思います。
3)BOX仕上げを中高域の分解能が上がる方向のものにかえる。ピアノ塗装などは非常に効果があります。
>このblogを整理して本にすれば、「一つのスピーカー論」教科書になるような気がしてなりません。
いやぁ残念ながらここに書かれているのはローテクでとても教科書になるようなものではありません。でもそのローテクが効いてくるスピーカーというのはほんと面白いです。
もちろん、TWを追加するのもいいですが。
そして、パーク・オーディオの虜に成るのです。(ハハハ)
因みに、私の場合はDCU-F171Pで充分にクラシックを楽しめております。
参考にはなりませんが、悪しからず。
F171Pでご不満な場合は、やはりC171PPでしょうか?
弦の音が重要なら、C171Wも有りですが。
いつも思うのですが、このblogを整理して本にすれば、「一つのスピーカー論」教科書になるような気がしてなりません。あえて「一つの」と申し上げたのは、「良い音」という頂上はあっても、それはいくつかの峰からなる連峰であり、それを究めるルートも多様であっていいし、自己弁護ながら、それにアタックする人々を目を細めて見守る私のような存在もあっていいのかな、と思うからです。
でも、ほんとにますますPARC党に深入りしそうな自分が怖いです、はい。