鹿島の元日本代表FW興梠慎三(26)が浦和への移籍を決断したことが29日までに分かった。近日中に両クラブから発表される。鹿島から契約延長オファー、F東京、柏からも獲得オファーが届いたが、成長のために浦和を選択。さらにDF新井場徹(33)もC大阪への移籍を表明。鹿島は最低でも主力2人の移籍が決まった。
悩み抜いた末の決断だ。興梠は05年のプロ入り後鹿島に8年間所属し、優勝を7度味わった。自らも大きく成長。とりわけ「ゴールを取れない試合が続いても常に声援をくれた」サポーターの存在は大きかった。ただ、今季は先発機会が減少。恩義を感じつつも、環境を変えることを選んだ。関係者によれば、浦和とは3年契約を結ぶ見込みだという。
不動の左サイドバックの新井場もG大阪戦後、C大阪への移籍を表明した。C大阪が高く評価してくれたことに加え、家族の問題が決断の背景にあった。地元大阪に妻子を残し、08年から5年間の単身赴任生活。「長女が小学生のうちに、父親を必要としている間に戻りたいという思いがあったのは間違いない」と心境を明かした。
[12.29 天皇杯準決勝 G大阪 1-0 鹿島 エコパ]
ガンバ大阪よりも10本も多い19本のシュートを放った鹿島アントラーズだったが、最後までゴールは遠かった。0-1で敗れたこの試合が、チームを指揮する最後の試合となったジョルジーニョ監督は「自分が愛するクラブを去る際に、ACLの出場枠を与えて帰国したかった。その目標を達成できなかったことを、残念に思っている」と、唇を噛んだ。
後半開始からMFレナトを起用したが「失点した直後に入れようかという思いはあったが、感情的な判断になるといけないので、ハーフライムまで待って、時間を賭けてプランを練った」と、振り返る。後半は狙い通り、中央のレナトを軸に、G大阪を押し込んだ。「レナトが入ることで、ボールポゼッション率を高めることができたし、サイドにジュニーニョとドゥトラを入れることで、スピードを生かすことができた。中央のパサー(レナト)から、いろいろな状況をつくりだすことができたが、結果を出せなかったことが残念」。
敗戦を悔しがるジョルジーニョ監督は、同時に勝者を称えることも忘れなかった。「G大阪はJ1にいなくてはいけないチーム。それだけの質、能力があります。今回、降格をしましたが、J1で通用する力のあるチームですし、天皇杯の決勝でも成果を出し、ACLを戦いながら1日でも早くJ1に復帰することを願っている」と、エールを送った。
もちろん、それ以上の期待を鹿島にはかけている。「移籍する選手もいるでしょうし、新たに加入する選手もいると思いますが、土台となる部分は築くことができたと思います。あとは移籍組がいかにフィットできるか。来季、アントラーズがJリーグを勝ち取れるように、そしてまだアントラーズが獲得していないACLのトロフィーを1日でも早くクラブハウスに飾れるように、ブラジルから応援していきたい」と、来季だけでなく、今後のチームに期待をかけた。
最後にジョルジーニョ監督は「この場を借りて、日本国民のみなさんに感謝を述べたい。素晴らしい国、素晴らしい文化、敬意、尊重、いろんな献身的なサポートを受けました。そのことに感謝します。鈴木(満)常務に『ドアのカギはかけない』と約束してもらったので、またいつかチャンスがもらえると思っています。そのときに、再会できることを心待ちに帰国します。心から感謝します。ありがとうございました」と挨拶をし、会見場を後にした。