私が購読している新聞の見出しに意味不明のものがあったと書いた記憶がある。友人である小説家から「俺は大した作家ではないが、読者が小学生でも正確に理解出来るような文章を書くことを心掛けている」と云われたことがあった。
アメリカ空軍の勤務を終え、貿易の仕事を始めるときに、一から教えて下さった先輩にも同じようなことを云われた。「取引先に手紙を書くときに、文章は下手でもいいから、相手からどのような事かと、内容について質問されるような文章は絶対に書くな」と強く注意された。
外国との通信手段が手紙、電報、テレックス、ファックスと進歩してきたが、現在のようなメールが全盛になるころは貿易の仕事を手じまいしてしまった。当時はビルマ(現ミャンマー)に電話すると3分間で3千円をKDD(KDDIの前身)に払わなければならなかった。例え、5秒か10秒で終わる会話でも3千円を請求された。現在のラインなら全くの無料だ。
当時の国際郵便の料金は非常に高く、何枚もの便箋を使用することは費用がかさんで使えなかった。電報は目の玉が飛び出る程に高かったので、電文を短くするために、貿易業界で世界共通の短縮法に基いて単語は出来る限り短くした。手紙に書くような通常の住所など書かず、今で云うメール・アドレスのように国際電報用のケーブル・アドレスを使用した。非常に短い住所の表記(通常は10文字以内の国際電報用のアドレス)にした。テレックスの時代になると電報よりはかなり楽になったが、さん孔テープが90センチから100センチの長さに収まるような文章を書いて経費の節減に努めた。このような状態下でも、先輩から忠告を受けた文章を書くことに心がけていた。それがファックスの時代になると、世界が変わったような感覚だった。だが、KDDへの支払いは毎月かなりの額になった。
現在の貿易業者は通信費など全く気にしないで済むのではないだろうか。大企業は別として、私共のような零細企業は如何に通信費を抑えるかに知恵を絞っていた。KDDだけではない。NTTだってそうだ。我々のようなちっぽけな企業からふんだくるだけふんだくり、両社とも巨大な存在になっていった。NTTなどは電話を新しく引く際に7万2千円の加入料をふんだくっておきながら、必要のなくなった電話を引き取ろうともせず、使わなくなった電話の保管料を請求されていた。政府の方針で加入料が必要なくなっても、我々に当初の加入料を一円も払い戻そうとしなかった。だから、私はNTT以外の電話会社が設立された途端にNTTから新会社に乗り換えた。
今回は以前に或る旅行会社の写真講師をアルバイトにしていたころに行った上三依水生植物園の写真である。