ヘッドロックをやらないレスラーはいない、と断言してもいいだろう。
ヘッドロックの解説はいらないと思うが、日本語にすると「頭蓋締め」である。こう書くと凄まじい感じがする。しかしこの技、もちろん必殺技でもないし痛め技の範疇にももはや入らないかもしれない。「繋ぎ技」だろう。しかしかつては重要な技であった。
100年前のプロレス。それは時間無制限の「相手が倒れるまでやる」世界だったらしい。そこでは現在の投げ技、関節技などはまだなく、胴締めを3時間かけ続けて相手を倒す、などのスピード感まるでなしの現在からは考えられない試合が主流。そうした中でヘッドロックは必殺技として認知されていた。元祖はエド・ストラングラー・ルイス。伝説の「絞め殺し屋」と言われたレスラーであり、ヘッドロックをかけ続けて相手を発狂させたという逸話まである。
このエド・ルイス、もちろんレスラー時代は知る由もないが、あの鉄人ルーテーズの師匠であることで高名である。ルイスはテーズにヘッドロックの奥義を叩き込み、そのルイス譲りのテーズの強烈なヘッドロックが、バックドロップを君臨させた複線となっている。このことは村松友視氏の著作に記してあるが、テーズ曰く「人間と言うものは、やられたらやりかえす習性を持つ」。テーズは相手に執拗にヘッドロックをかけ、思わず相手も仕返しにテーズにヘッドロックをかける、その瞬間こそバックドロップのチャンスなのだ、と。
もうこのテーズの時点でヘッドロックが繋ぎ技になっていることに注目。ヘッドロックの必殺技の命脈はテーズによっていったん断たれたのだ。
しかし今でもヘッドロックは滅びてはいない。一試合に一度は出てくる。単純だがアタマを抱え込まれて締められるのはイヤな技だ。長時間になると体力も消耗する。なのでかけられた相手は早々に背中を押してロープに飛ばすか、バックドロップなどの技で切り返そうとする。
ビリー・ジャックというレスラーを憶えている人がいるだろうか。アメリカの怪力選手権か何かで優勝したと言う触れ込みで新日本のリングにあがった。どちらかというと力だけのレスラーで二流だったが、ヘッドロックは凄まじかった。木村健吾のアタマをガッチリ極め、その太い腕の輪を上下にブルブル震わしながら締める。何度もギュッギュッと締めなおす。ありゃやられているレスラーは発狂する、ということもありうるのではないかと思われた。木村健吾はヘッドロックのあと精彩を欠きエルボードロップでフォールされていた。ヘッドロックもなかなかやるのである。
そして最近、ヘッドロックが滅んではいないことを証明する画期的な男が出てきた。カッキーこと垣原賢人である。(カッキ的なカッキー…ヾ(_ _。)ハンセイ) カッキーはアウトドア大好き男で昔アウトドア専門誌に連載経験もあり僕も大ファンなのだが、ヘッドロックを得意としていて、昨今はグラウンドヘッドロックでギブアップを奪うという試合をやっている。首の椎間板ヘルニアを克服してリングに上がる様はそれだけで感動ものであるのに、ヘッドロックを決め技とするとは素晴らしい。先日も田中稔からタップを取っていた。カッキーはエド・ルイス以来の必殺ヘッドロックの使い手ではないかと思うのだがどうだろう。頑張れカッキー。
さて、ちょっと思い出話を。
かつて、初代タイガーマスクが「ケーフェイ」を出版しプロレス界に反旗を翻していたころ、よくバラエティ番組に出演してウラ話を喋っていた。確か欽ちゃんの番組だったと思うが、マスクをとって佐山聡として出演して、ヘッドロックについて語っていたのを思い出す。
「ヘッドロックという技は、パッと見には効いていないように見えますが、人の顔面の、ちょうど頬の下あたりには急所があり、その急所に、かけている手の親指の付け根の骨をめり込ませるような形で引っ掛けて締め上げるので効くのです。ホント涙が出るほど痛いですよ」
と言って、実際にそこに居た見栄晴にヘッドロックを軽くかけた。見栄晴は悲鳴を上げて涙をこぼしていた。なるほど、ヘッドロックは「頭蓋締め」ではなく一種の極め技なのだな、とそのとき認識を新たにした。
この話は実に興味深く、当時高校生だった僕は学校でよくヘッドロックを友人にかけては嫌われた。この「泣き所攻撃」であるヘッドロックは、言わばエド・ルイスの頭蓋骨を締め上げるヘッドロックと比べて「新バージョン」であると言っていいだろう。力任せではなく急所を効率よく極める。なるほどなあ。
今は、この新式ヘッドロックがヘッドロック界の主流なのだろうと佐山タイガーの話を聞いて以来思っていた。みんな頬骨の急所を極めているのであろうと。しかし、まだ旧バージョンヘッドロックも滅びていなかった。
またバラエティ番組だが、「笑っていいとも」のゲストに上田馬之助が出演した際でのタモリとの会話。
タモリ「ヘッドロックってーのは、頬骨の下の急所を締める技なんですってね。」
馬之助「いやーそんなもんじゃないんだ。今からかけてわからせてやる」
と言って、タモリに馬之助はヘッドロックをかけた。それはまさに「旧式」ヘッドロックであって、頭蓋骨をぐいぐい締め上げる。タモリはやはり悲鳴を上げていた。もちろん本気でやっていないだろうが、本気で締めればヤワな頭蓋骨なら砕けてしまうに違いない。タモリは懲りたのか、後に長州力がゲストの際、プロレス技を見せてくれ、という声に長州が「じゃヘッドロックをかけましょうか」と言ったところタモリは必死になって断り、コブラツイストにしてもらっていた。ヘッドロックの怖さがわかる話だと思う。
(みんな記憶で書いているので細部に間違いがあったらごめんなさい。)
上田馬之助とヘッドロックの話は、佐山(タイガー)が新世代のレスラー、馬之助が旧世代のレスラーという対比にもなっているような気がする。しかしながら、この「旧世代レスラー」のことを忘れたくないと思うのである。
話が長すぎた。こんな単純な技の話なのに。次回に続く。
小技さんのブログに垣原賢人のヘッドロックの掲載あります。参照してみてください。カッキーが叫びながらぐいぐい締め上げています。いいですねー。こちらに載ってます。「まむしヘッドロック」とはカッコいい♪
ヘッドロックの解説はいらないと思うが、日本語にすると「頭蓋締め」である。こう書くと凄まじい感じがする。しかしこの技、もちろん必殺技でもないし痛め技の範疇にももはや入らないかもしれない。「繋ぎ技」だろう。しかしかつては重要な技であった。
100年前のプロレス。それは時間無制限の「相手が倒れるまでやる」世界だったらしい。そこでは現在の投げ技、関節技などはまだなく、胴締めを3時間かけ続けて相手を倒す、などのスピード感まるでなしの現在からは考えられない試合が主流。そうした中でヘッドロックは必殺技として認知されていた。元祖はエド・ストラングラー・ルイス。伝説の「絞め殺し屋」と言われたレスラーであり、ヘッドロックをかけ続けて相手を発狂させたという逸話まである。
このエド・ルイス、もちろんレスラー時代は知る由もないが、あの鉄人ルーテーズの師匠であることで高名である。ルイスはテーズにヘッドロックの奥義を叩き込み、そのルイス譲りのテーズの強烈なヘッドロックが、バックドロップを君臨させた複線となっている。このことは村松友視氏の著作に記してあるが、テーズ曰く「人間と言うものは、やられたらやりかえす習性を持つ」。テーズは相手に執拗にヘッドロックをかけ、思わず相手も仕返しにテーズにヘッドロックをかける、その瞬間こそバックドロップのチャンスなのだ、と。
もうこのテーズの時点でヘッドロックが繋ぎ技になっていることに注目。ヘッドロックの必殺技の命脈はテーズによっていったん断たれたのだ。
しかし今でもヘッドロックは滅びてはいない。一試合に一度は出てくる。単純だがアタマを抱え込まれて締められるのはイヤな技だ。長時間になると体力も消耗する。なのでかけられた相手は早々に背中を押してロープに飛ばすか、バックドロップなどの技で切り返そうとする。
ビリー・ジャックというレスラーを憶えている人がいるだろうか。アメリカの怪力選手権か何かで優勝したと言う触れ込みで新日本のリングにあがった。どちらかというと力だけのレスラーで二流だったが、ヘッドロックは凄まじかった。木村健吾のアタマをガッチリ極め、その太い腕の輪を上下にブルブル震わしながら締める。何度もギュッギュッと締めなおす。ありゃやられているレスラーは発狂する、ということもありうるのではないかと思われた。木村健吾はヘッドロックのあと精彩を欠きエルボードロップでフォールされていた。ヘッドロックもなかなかやるのである。
そして最近、ヘッドロックが滅んではいないことを証明する画期的な男が出てきた。カッキーこと垣原賢人である。(カッキ的なカッキー…ヾ(_ _。)ハンセイ) カッキーはアウトドア大好き男で昔アウトドア専門誌に連載経験もあり僕も大ファンなのだが、ヘッドロックを得意としていて、昨今はグラウンドヘッドロックでギブアップを奪うという試合をやっている。首の椎間板ヘルニアを克服してリングに上がる様はそれだけで感動ものであるのに、ヘッドロックを決め技とするとは素晴らしい。先日も田中稔からタップを取っていた。カッキーはエド・ルイス以来の必殺ヘッドロックの使い手ではないかと思うのだがどうだろう。頑張れカッキー。
さて、ちょっと思い出話を。
かつて、初代タイガーマスクが「ケーフェイ」を出版しプロレス界に反旗を翻していたころ、よくバラエティ番組に出演してウラ話を喋っていた。確か欽ちゃんの番組だったと思うが、マスクをとって佐山聡として出演して、ヘッドロックについて語っていたのを思い出す。
「ヘッドロックという技は、パッと見には効いていないように見えますが、人の顔面の、ちょうど頬の下あたりには急所があり、その急所に、かけている手の親指の付け根の骨をめり込ませるような形で引っ掛けて締め上げるので効くのです。ホント涙が出るほど痛いですよ」
と言って、実際にそこに居た見栄晴にヘッドロックを軽くかけた。見栄晴は悲鳴を上げて涙をこぼしていた。なるほど、ヘッドロックは「頭蓋締め」ではなく一種の極め技なのだな、とそのとき認識を新たにした。
この話は実に興味深く、当時高校生だった僕は学校でよくヘッドロックを友人にかけては嫌われた。この「泣き所攻撃」であるヘッドロックは、言わばエド・ルイスの頭蓋骨を締め上げるヘッドロックと比べて「新バージョン」であると言っていいだろう。力任せではなく急所を効率よく極める。なるほどなあ。
今は、この新式ヘッドロックがヘッドロック界の主流なのだろうと佐山タイガーの話を聞いて以来思っていた。みんな頬骨の急所を極めているのであろうと。しかし、まだ旧バージョンヘッドロックも滅びていなかった。
またバラエティ番組だが、「笑っていいとも」のゲストに上田馬之助が出演した際でのタモリとの会話。
タモリ「ヘッドロックってーのは、頬骨の下の急所を締める技なんですってね。」
馬之助「いやーそんなもんじゃないんだ。今からかけてわからせてやる」
と言って、タモリに馬之助はヘッドロックをかけた。それはまさに「旧式」ヘッドロックであって、頭蓋骨をぐいぐい締め上げる。タモリはやはり悲鳴を上げていた。もちろん本気でやっていないだろうが、本気で締めればヤワな頭蓋骨なら砕けてしまうに違いない。タモリは懲りたのか、後に長州力がゲストの際、プロレス技を見せてくれ、という声に長州が「じゃヘッドロックをかけましょうか」と言ったところタモリは必死になって断り、コブラツイストにしてもらっていた。ヘッドロックの怖さがわかる話だと思う。
(みんな記憶で書いているので細部に間違いがあったらごめんなさい。)
上田馬之助とヘッドロックの話は、佐山(タイガー)が新世代のレスラー、馬之助が旧世代のレスラーという対比にもなっているような気がする。しかしながら、この「旧世代レスラー」のことを忘れたくないと思うのである。
話が長すぎた。こんな単純な技の話なのに。次回に続く。
小技さんのブログに垣原賢人のヘッドロックの掲載あります。参照してみてください。カッキーが叫びながらぐいぐい締め上げています。いいですねー。こちらに載ってます。「まむしヘッドロック」とはカッコいい♪
ところで、ご紹介いただきましたルイスとシカットの試合、堪能させていただきました。ありがとうございました。こんな昔のものが見られるなんて。見つけてくださって感謝します。
途中早回しなんてとてもとても。時々は巻き戻しながらですよ(笑)。
クロックヘッドシザース、キーロック、フルネルソン、ボディシザース…こういう技の攻防は今ではなかなか見ることが出来ませんね。腕をとって肘を相手の頬に擦り付けるという拷問技はこの頃からあったのか。いやあ見ていてたまりませんよ。
フロントネックチャンスリーのように見える投げ技(捻り技か)もありましたし、股裂きもトーホールド式だけでなくクレイドル的なものまでありました。1930年代ということですが、もっと膠着した試合を想像していたのになかなか凄かったと思います。
やはり、スタンドでヘッドロックをかけて、相手をねじ伏せてグラウンドへ移行していく流れはいいですねぇ。見ていて力が入ります。
私も村松友視のあの強いヘッドロックかけると相手はさらにヘッドロックで攻めてくるという話、本当ぽっくて好きです。
ルイスのヘッドロックは写真でしか見たことがなかったのですが、ついにユーチューブで発見しました。1931年の試合です。相手はディック・シカット。
シカットも首の取り合いからダブルアームロックに決めながら後ろに腰を落として、1回転してキーロックに決める。これってルーテーズの得意のパターンです。1930年頃からこいう技の入り方はあったのかと納得する映像です。
ユーチューブでed strangler lewisと入力してください。30分ぐらいだったか、途中早回しで見れば十分です。どうやって最後決めるか…、見てのお楽しみ。
しかしまあ、動きがあるにせよ無いにせよ、こちらに伝わってくるものがないとダメですけどね。^^
馬之助が出たのも長州が出たのも知らなかったです。
見た目は地味な技ですが効くんですね~。
今日自分のblogで「動きが多くて面白い」なんて書いてしまいましたがまだまだ修行が足りませんね(*^o^*)
ヘッドロックを返そうと、ロープに振ろうとしても、そのまま振られずにヘッドロックをかけ続ける姿がなんとも言えなく好きです。