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「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

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隅(すみ)と角(かど)は似ているようで属性が違う

2017-09-15 | 変換三属性+通常変換のシステム考察
三属性変換では目安として名詞/動詞などの品詞から属性の所属が決まっているようですが、これは厳密なものではなくケースバイケースで属性が思惑どおりでないことがあります。
たとえば、隅(すみ)と角(かど)のように、

すみ-炭/墨/須美/須見/鷲見:属性イ、済み/住み/澄み/棲み:属性ロ、☆隅:属性ハ
かど-☆角:属性イ、過度:属性ロ、過度/廉/カド:属性ハ

…この違いは別に「角のほうが突起感が出ていて物体的な主張がある(よって名詞的)、隅はなにか領域的なことでモワッとした抽象概念ぽい」…などの憶測で所属属性が決まったというわけではなく、
同じ同音語でもっと具体的名詞的な「炭」が先に割り当てられるのでそれならばと余りモノ的に属性ハ(トポス的概念でもあるので)に「隅」が落ち着いたという図式があったり、
「角」もトポス的概念をもちながらもすでに属性ハには過度(接辞系)、廉(抽象度が高い)とがありより優先度が高いとみて実体性の高い「角」のほうは名詞属性の属性イに充てられたという経緯があります。
まあ理屈を言うと小難しいようなのですが、三属性変換ではどの変換候補にもあまねく司る分類の判断基準というものがなく、あくまで同音異義候補間での相対的意味・用例関係で所属属性が決まってくるというご都合主義によって成り立っているところがあるのです。
三属性変換では厳密な品詞体系をもって単語のふるまいを一元的に制御していこうというものではなくて、その場その場の同音異義語の衝突を脚色ならぬ"脚品詞"して柔軟にさばいてしまおうという発想なので、あえてシステム的に未分化なカラクリで構えているわけです。
なのでこの「隅」と「角」のように一見似たような範疇の言葉でも変換グループが分かれてしまうことがあります。

※なお、廉(かど)とはある事柄の原因・理由となる点を意味する抽象名詞で「横領していた廉で逮捕された」のように使われます。


今度は視点を変えて、属性は同じであるものの同音語の所属が特徴的なケースを挙げてみます。
たとえば、度(たび)と毎(ごと)もその一例です。

たび-足袋/旅:属性イ、旅:属性ロ、☆度/旅:属性ハ
ごと-事:属性イ、ゴト(=行為):属性ロ、☆毎/言/事:属性ハ

「度」はカウント概念なので抽象的な属性ハです。「足袋」もすでに名詞属性として有力ですから重複回避的にここに落ち着くことに異論はないでしょう。
「毎」もカウント概念なので属性ハに所属するのは妥当ですが、「事」はちょっと特殊です。
「事」は「毎」の方に抽象概念担当を譲ったので替わりに名詞色が強い事を汲んでまずは属性イに所属します。
ただ「事」には勝負事や隠し事のように接尾語要素として機能する側面もあることから接辞まわりをカバーする属性ハも担当しています。
所属を兼任することは三属性変換では普通にあり得ることでユーザーがどちらの用法での変換を望んでいるかにもれなく対応するために敢えて冗長的になるよう意図しているところです。
ただ、その属性内での変換候補順位に差が出たりなど細かな違いが出てくるのは「どちらがよりその属性ニュアンスに適っているか」の評価を勘案したものになっています。
なお属性ロのカタカナの「ゴト」はスラング的で単語辞書に収録するまでもない言葉のように思えますが、二文字程度の語は三属性変換のポテンシャルを発揮するためにいっそのこと些細な語彙でも網羅的に収集したほうが良いのではないかとの方針で仮に提示したものです。


このように3種の変換キーの用途は品詞のみによって定まっている(文法的要因)のではなく、意味的・語彙的なもののファクターを微妙にミックスした帰属決定システムとなっています。
余談ですが、「たび」の変換候補である「旅」が名詞属性イと用言属性ロと属性ハで兼任して所属している事にも意味があります。
旅自体はもちろん名詞なので属性イに所属するところまでは飲み込めそうですが、一人旅や傷心旅という言葉もあることから接尾語機能として属性ハも兼任することにも必要性があります。
さらに、ここからがややこしいんですが「旅」はサ変動詞「旅する」の語幹でもありますしゴルフの「OBショットが一人旅…」などのように形容するときもある種の用言の相を呈しているニュアンスも用例としては持っておりそれらの複合的な要因で属性ロへの帰属も果たしています。
こんな調子ですべての属性への帰属を兼任しておりますが、同グループ内での候補順位はそのままでは低く、属性イ→属性ロなどのように変換キーを移行するタイプ遷移のときに上位に上がってくるふるまいをすることを想定しています。
(参考過去記事):属性選択の遷移過程を反映した変換候補のリオーダリング

このように品詞分類にとらわれない三属性変換は、本ブログで新たに導入した、文法的縛りのより緩い「よろづ」のクラス分類だからこそ可能だと言えるでしょう。
疑問点としてはそもそも通常変換をするときの形態素解析の基本単位は文法的に整理された品詞をよりどころにしておこなうべきもので、何やら訳の分からない「よろづ」というのはどういった説明原理になるのかわからないといった点が出てくるかとは思いますが、
今は手探りながらも地道に実例を挙げながら品詞とよろづの2本立ての筋道を併存させていくべく暗中模索しているところであります。

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