デミング博士のニューエコノミクスって

デミング博士の”ニューエコノミクス”に書かれた内容と,それに関連する内容を,「マターリ」と理解するページ

Intrinsic Motivation 内発動機

2005-10-30 20:03:23 | 心理学
 デミングさんが強調してやまない内発動機の理論を主に「虚妄の成果主義」の内容から拾ってさらします.

1.動機付けとは


 人々によりよく働いて貰うためには,ただ「働け」というだけでは働かないでしょう.そこで,当たり前ですが,企業は給与を払ったり,職場環境を整えたり,働く目的や方針,手段を教育したりします.
 その中で,どの様な手段を用いれば,人々の努力を引き出すことが出来るのかを研究するのが,経営学の中の動機付け理論であり,心理学的なアプローチを取っているのが,「産業心理学」とかいうやつです.
 これは不安全な行動の抑止や,非道徳的行動の抑止等にも利用されます.
メカ屋さんが良く使う材料力学の「組織設計」版のようなものでしょう.
 つまり,これが良く判らない人は,組織設計やマネージメントなんかしてはダメ!という事です.(逆に良く出来るマネージャは,これらをよく体得しているという事でしょう)

2.ホーソン実験


 そうは言っても,この動機付け理論というのはたくさんあり,相矛盾している理論もあります.従って,どの理論を採用するかは,現実に効果がありそうな理論でなくてはなりません.それでは,どうやって現実に効果がありそうかどうかを判定するのでしょうか?
 そう,やはり「実験」です.もちろん実験結果は「統計処理」」して判断します.
 そこで,かの有名なホーソン実験を簡単におさらいして見ましょう.
 
2-1.ホーソン実験とは
 実は,ホーソンとは,ジュランさんや,シューハートさん(ベル研ですけど)デミングさんが勤めていた,AT&T(アメリカの電話会社.今は分割・民営化されて倒産した会社もちらほらあります.)が子会社のウエスタン・エレクトリックのホーソン工場です.テイラーさんの科学的管理法に刺激されて,AT&Tが作業効率の向上のために,各種実験をしたものを一般に「ホーソン(工場)の実験」と呼んでいます.私も学生時代にこの実験の概要を勉強しました.(うちの学校は機械工学科に,生産管理の単位が必須で1単位あったのです.)
 
2-2.照明実験(実験とは?)
 作業者の作業環境(この場合は,作業場の明るさを変化させたようです)の最適な値を求めるために行った実験です.
 ある特定のラインに作業者を分離して,明るさを(私の記憶によれば月の明るさから,日中の明るさまで)変化させ,製品の生産数やら品質がどのように変化するかを実験したのです.ところが照明を変化させても生産数量等に変化が現れなかったのです.このほかにも色々な作業条件を変化させて実験したようですが,生産数量に対して有意な変化をもたらさなかったようです.
 これは,テイラーさんの科学的管理法が唱えていた,作業効率が良い,唯一の方法(や環境)があるという仮説をひっくり返したのです.
 ここまでは,私が学校で習った項目です,でも,これだけだとどうしていいか判らなかったので,放置しておきました.生産管理の先生は,何を教えたかったのかいまだに判りません.(でも,ロット生産の概念や,管理図とかは役に立ちました.)

 さて,「虚妄の成果主義」でも同じ話がされています.どうやら,私が習った尻切れトンボ的な話ではなく,続きがあるようです.
 その続きとは,照明を変化させたりしても生産量が増え続け,対照群(同じように隔離さているが,照明の効果を見るために,こちらは照明の変化をさせない)でも同じく増え続けたそうです.実は実験では,実験をするために今まで工場で採用されていたテイラー的な管理手法がいつの間にか壊されて,新しい管理手法に変わっていたそうです.

 テイラー手法とはどの様な手法でしょか.それは,今では当たり前に考えられている下記内容です.
  • 作業分解(下手をするとネジをつまむ,それをドライバにセットするとか,腕を動かしたり,指を動かしたりする基本動作までバラします)と作業内容の特定・固定(作業標準書への記載)
  • 上記作業分解による作業標準時間(タクト・タイム)の計測・固定(各分解された作業(大体1~2秒)をすべて足せばその工程の作業標準時間になります.)
  • 上記の遵守のためのペナルティ制(作業内容が作業標準書の内容から逸脱すればペナルティ,標準時間以下で作業できれば(生産量が増えるため)ボーナス,もちろん標準作業時間以上であればペナルティです.さすがに,今ではどの工場もこんなことしてませんが,昔はあったようです.)
  • 作業中は会話禁止,管理者よりの一方的な通達のみ.(会話をすると,その時間がもったいないし,唯一正しい方法で作業しているわけであるから,会話の必要性も無いはず.との仮説(というか思い込み))

 昔,工場のラインの天井からぶら下がっていた,1分あたりの生産量の電光掲示板が,これらの管理を物語っています.(そういえば,昔,国内の協力工場の課長に,「この掲示板を使っているところ見たことありませんね」と聞いたら思いっきり苦笑された事を思い出しました.)

 このテイラー手法の否定と,実験中にラインの人に対して行った,作業に対するブリーフィングや,作業中の会話の許可等(休憩時間には,お菓子とかも出たそうです)の効果の考察により,新しい学問「人間関係論」が出来たそうです.

3.職務遂行(ジョブ・パフォーマンス)とは?


 昔の人間関係論の議論では,ジョブ・パフォーマンスには,生産性やら,欠勤率やら離職率やらゴタマゼになって議論されていたようです.
 そこに,マーチ=サイモンの「オーガニゼーションズ」が登場します.
 (H.A.サイモンさんは,ノーベル経済学賞を取っている人です)
 その中で,従業員の意思決定には,以下の2種類があるそうです.
 
 a)組織に参加するか・離れるか(欠勤・離職率への影響)
 b)生産向上に参加するか・しないか(生産性向上に影響)

 この2つの意思決定を分けて考える事により,職務満足と職務不満足とを分けて考えることが出来ます.
 (何か,ハーシュマンさんのExit-Voiceの理論に似ているような気がします.)

4.動機付け衛生理論


 上記3.は,ハーズバーグさんの動機付け衛生理論に繋がります.

 職務満足要因(動機付け要因)には,達成,達成に対する承認,仕事そのもの,責任・昇進があり,職務不満足(衛生要因)の要因には,会社の方針と管理,監督,給与,対人関係,作業条件である.
 これらは,実験にて裏付けられています.
 
 つまり,給与や人間関係,管理方法等は衛生要因であり,これらを変化させても,
欠勤や離職に対しては効くが,生産性向上には効かない.
 達成,達成に対する承認,仕事そのもの等は動機付け要因であり,これらを変化させてはじめて生産性向上に寄与できるという事です.

5.内発的動機理論


 上記の動機付け要因が,内発的動機に繋がっていきます.
 内発的動機とは,下記のような内容になります.
  • 自分がやりたい事・出来る事ができる,つまり自己決定や有能さの感覚が増えれば職務満足度が増える.(動機付けされる)
  • 統制されているという感覚になれば,自己決定や有能さの感覚が減るので満足できない.(動機付けが破壊される)

 ここで,報酬等の外部の誘因を考慮すると,下記のようになります.
  • その報酬等が,自己決定や有能さを示す情報と感じるならば,満足度は向上する.
  • その報酬等が,統制的に感じられるのであれば,満足できない.(金額の多さではなくですね:何かステグリッツの効率的賃金仮説に繋がる気がします.<=11/3 すみません効率的賃金仮説は衛生要因との繋がりです.単純な間違い・・・orz)

 今日はここまでにします.まだデミングさんの理論につなげるのには,少しギャップがあると思います.

参考文献


  • 高橋伸夫,虚妄の成果主義 -日本型年功序列制復活のススメ,2004,ISBN:4-8222-4372-9
  • DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部,動機付づける力,2005,ISBN:4-478-36081-2


11/6 レイアウト崩れを直したつもりです.

Common cause and Special cause 共通原因と特殊原因

2005-10-30 19:47:05 | システムについて
The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.の
8章 Shewhart and Control Chartsの内容をさらします.

 実は,この章には目的が書かれていません.シューハート博士と,
デミング博士の邂逅よりこの章が始まっています.

【】内訳注

1.シューハート博士とデミング博士


<引用>

 私が1925年,シカゴにあるウエスタン・エレクトリック・カンパニーに行った
時には,そこにいた人々は,ニューヨーク・ウエストストリート463にあるベル
研究所にいたシューハート博士の事を話していた.
(これは,ウエスタン・エレクトリックのホーソン工場で,この時約46,000人
が雇用されており,キャパシティは48,000であった.彼らの1/4は検査員で
あった.)
 人々の話では,シューハート博士が何をやったのかは人々は理解していなかっ
たが,彼が偉大な男で,人々の問題について働いていた【事を話していた】.
 ウエスタン・エレクトリック・カンパニーの目的は単一で,電話機会社であり,
購買する製品は,すべてそれに依存していた.彼らは,「二つの電話は瓜二つ」
という広告をしていた.
 彼らは誠実で,同一性に向けた最高の努力をしているが,しかし同一性は,
大体いつでも物事を悪くするものだ.彼らは十分にスマートに実現化するため
の助けを必要としていた.
 問題へ道を探り当てたのはシューハート博士だ.彼は,ウエスタン・エレクト
リックの人が【何事かを】行う事による特殊原因【special cause】に起因する
要らないバラツキと,通常の時の,彼らが観察したときには最多ではないケース
である事もある共通原因【common cause】によるバラツキに気づいた.プロセス
の改善は,もっと生産性を向上させ続けられる.これらはは安定している
システムに干渉し,物事を悪化させる.シューハート博士は,科学とマネージ
メントの世界に新しい見通し与えた.
 1927年にシューハート博士に出会えた事は,私にとっていい運命であり,それ
以来,ニューヨークにあるベル研究所で多くの時間を過ごした.私は,毎夕を
HobokenよりLackawanna鉄道で1時間のところにある,彼のマウンテン・レイクの
家で過ごした.

後略

</引用>

 ここからは,私のまとめです.

2.共通原因と特殊原因


 共通原因(Common cause)と特殊原因(Special cause)は,デミングさんが
名づけた名前で,教科書等では,共通原因は「偶然原因・偶発原因」,特殊原因
は,「異常原因」と呼ばれています.
 ちなみに,シューハートさんは,共通原因の事を,"Chance cause",特殊原因
の事を"Assignable cause"と言っていたそうです.
 ここではデミングさんに従って,共通原因と特殊原因でいきます.
 デミングさんは,共通原因と特殊原因という名は,教育上の配慮だけであり,
特に他意は無いそうです.

 共通原因とは,現在の工程で通常にオペレーションしたときにも発生する
バラツキで,特殊要因とは,工程の異常(工作機械の故障であるとか,冶具の
故障であるとか)があった場合に発生するバラツキです.
 そして,管理図(コントロール・チャート)は,工程状態が共通原因による
バラツキ=工程が安定状態なのか,特殊要因によるバラツキ=異常工程なのかを
判断する事が出来ます.

 ・共通原因の場合:
  ・管理図のコントロール・リミット線の内側にに各観測点が収まっている.
  ・上記点に上昇・下降等の癖がない,または,連続した点が,中心線の上
   または下に固まっていない.(これを連が無いとか言います)
 ・特殊要因の場合:
  ・管理図のコントロール・リミット線の外側に各観測点がはみ出ている.
   (まあ,1点ぐらいなら見逃してあげましょう)
  ・上記点に上昇・下降等の癖がある,または,連続した点が,中心線の上
   または下に固まっている.(これを連があるとか言います)

 上記のような管理図の見方の詳細は,JISのハンドブック「品質管理」や
品質管理の教科書に書いてありますので,興味のある方はそちらを参照して
ください.

Red beads control chart
Fig. 管理図のサンプル「赤ビーズ実験の管理図」
 
 そして,デミングさんは,この2つの原因を取り違えて対処すると,ますます
バラツキがひどくなるので,注意せよといっています.
 その2つの原因の取り違えとは,下記のようなものです.
 
 ・ミステーク1(第1種のエラー)
  本当は,共通原因なのに,特殊原因と間違えて反応してしまう.
 ・ミステーク2(第2種のエラー)
  本当は,特殊原因なのに,共通原因と間違えて反応してしまう.

3.2つの間違いからの教訓



 ・ミステーク1とミステーク2の両方のエラーは同時にゼロには出来ない.
 ・ミステーク1とミステーク2の両方のエラーはそれぞれ時々発生してしまう.
 ・特殊原因によるバラツキが発生した場合は,対策し,再発防止を行う事.
  (つまり,共通原因によるバラツキだけににしてしまう事を目的として
  います.)

4.安定したシステム:予測可能



 ・上記のように,共通原因のバラツキだけにしてしまえると,
  品質・コスト・納期の予測か可能になります.
 ・これらの予測が可能になると,ジャスト・イン・タイムを
  導入できます.(上記が出来ないと導入できません)
 ・TOC(制約理論)の導入を行う前に,上記のような予測可能
  状態まで持っていけると,導入が楽になるはずです.
  (バッファサイズをそんなに大きくする必要がなく,もし
  バッファ内に不良品があった場合でも,バッファサイズが
  小さいため,対処がしやすくなると思います.)
  
 ちなみに,デミングさんはJIT(ジャスト・イン・タイム)には言及してまし
たが,さすがにTOC(制約理論)までは言及していませんでした.
 最近では,品質管理とTOCの導入についての本「二大博士から経営を学ぶ」も
あります.

5.間違った信号(コントロール・リミットを越えること)
  はこう作られる



 ・有意水準をコントール・リミットにすること.
  (3σのリミットよりリミットを越えることが多くなる)
 ・根性リミット(つまり計算せずに,勘や義務でリミットを決める事)
  を採用する事.(すみません・・・私よくやってました・・・orz)
 ・公差や規準をリミットにすること.
  デミングさん曰く,公差とコントロールリミットの間には,何の
  論理的なつながりも無いそうです.(The New Economics P178)

6.次のステップ


 
 工程が共通原因だけになった時は,下記の項目の改善を行います.
 
 1.バラツキを小さくする.
 2.平均値を最適値に持っていく.
 3.その両方を行う.
 
 ここで,The New Economics P225を見よとの指示があります.
 その,P225ページは,「田口メソッドの損失関数」の説明です.

 今度,時間があるときに,田口メソッドの説明をしたいと思いますので
気長に待っていてください.
 (私は,田口メソッドの損失関数や,公差の計算及び,直行表実験のS/N比
 の概念はなんとなく判ったのですが,実際の計算がまだあまり理解できて
 いません.やっぱり,実験計画法からきちんとやった方がいいんでしょうか?)

おまけ・デミングさんが田口メソッドをいつ知ったか


 実は,1960年に東京で田口さんが論文を読んだそうです.

 実はネットに,このような公演録がありました.(PDFファイルです)

“Does anybody give a hoot about profit?” Deming Speaks to European Executives


 その中で,田口メソッドの損失関数に関する内容を引用します.

“Does anybody give a hoot about profit?” Deming Speaks to European Executives P7. 
<引用>

Delegate :
How does Taguchi's philosophy fit into your own theory?

Dr. Deming :
It's all I've been talking about!
Taguchi used the loss function(Figure 5【訳注:下に私が作図したのを掲げます】)
The loss function will be a parabola at the bottom. It can be steeper on one
side and not so steep on the other side. But the two halves will be parabolic at the bottom. So we don't need to precise optimization. Don't worry.
we'll never have it. If we had it, we'd not know it. If we move away from optimization, right or left,
a little bit, then the loss is imperceptible, Too tiny to measure. We only need to come close to optimization.

But when we fail to do that, we lose --- everybody loses. That was Taguchi's
theorem. I was there, in September 1960, when he read his paper in Tokyo.
This is exactly what I've been talking about. "How does Taguchi's philosophy fit into your own theory?"
It's same Thing!

</引用>
Taguchi's loss function
Fig. Taguchi's loss function

 という事で「田口さんの哲学とデミングさんの論理とはどの様にフィットするのですか?」という質問をすると,「同じ事だ!」と返されますので,御注意ください.

 ちなみにこの公演録,かなり面白いです.この公演録を読んだおかげで,経済学(特に競争)とデミング哲学の間には,何があるのかに興味を持ってしまいました.
 (もしかしたら,茨の道かも・・・)

参考文献


  • Dening, W. Edwards,Out of the crisis,1986,ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards,The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.,1994,ISBN:0-262-54116-5
  • THE SWISS DEMING INSTITUTE, “Does anybody give a hoot about profit?” Deming Speaks to European Executives,2000,http://www.deming.ch/downloads/deming_speech_en.pdf
  • 鐵建治,新版 品質管理のための統計的方法入門,2000,ISBN:4-8171-0342-6
  • 荒木孝治 他,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門,2005,ISBN:4-8171-9148-1
  • Lepore, Domenico et al.,三本木亮 訳,二大博士から経営を学ぶ,2005,ISBN:4-8201-1799-8
  • 田口玄一 他,開発・設計段階の品質工学,1988,ISBN:4-542-51101-4
  • 田口玄一 他,製造段階の品質工学,1988,ISBN:4-542-51102-2
  • 田口玄一 他,コンピュータによる情報設計の技術開発 <シミュレーションとMTシステム>,2004,ISBN:4-542-51115-4
  • 田口玄一,タグチメソッド わが発想法,1998,ISBN:4-7667-8193-7


11/3 typoハケーン arabolic=>parabolic 修正しました.

レッドショルダーのマーチ

2005-10-23 18:39:22 | その他
 先週,本屋さんで,「開発の現場」という雑誌? Vol.2にて「反・デスマーチ 大研究」という特集が組まれている本を立ち読みしてみました.その内容が凄まじく,かつ面白かったので,思わず買ってしまいました.
 「デスマーチ」というのは,プログラムの開発現場等(特に携帯電話の開発現場が凄い事のなっていたりします)で,短納期や低品質なマネージメントのため,技術者が,「プログラムマダー? チン・チン」というプレッシャーの中で,凄い勢い(2徹・3徹当たり前!!残業時間 月300h突破!!)で働き,そんな中で,下手をすると,鬱になって会社を首になったり,突然無断で会社を辞めたり,もっと恐ろしいことが起きたりする事のようです.

 特に,この雑誌の中で,"【軍曹が】携帯の開発の現状【語る】"という2チャンネルの書き込みをまとめたサイトを引用した記事が面白く,私も思わずこれらのWebページを(仕事中にも関われず)ググッて読み込んでしまいました.

 こんな中で開発をしていたら,低品質に向かうのは当たり前です.でも世の中の会社にはあるんです.(軍曹さんのような凄まじい事は稀でしょうが)

 私もここまでは酷くなかったですが,精神的なプレッシャーに追い詰められ,(まあ残業は単月140h突破程度なので,ほかの人たちよりは酷くないです.)「このクソ会社のマネージャ全員地獄へ落ちろ!!」と思った経験が何度かあります.

 その中で,「これは,他の人はさすがに経験無いだろう」と言うような,私のかなり古い品質管理での体験(脚色してますけど)をさらします.

1.現地工場

 えらい人より,海外の現場への出張命令が降りていた.どうやら,今回は協力会社が設計した製品ラインの立ち上げのようだった.だが,今回は仕様書や,図面も渡されていない.現地にて受け取れとの命令であった.
 俺は現地へ向かった.相変わらず一人だ.他社は,ラインの立ち上げには,10人程の色々な部署の人間で構成されたチームを組んで工場へ向かうものである.しかし,俺の会社は大抵,品質管理の人間の単独であった.
 現地の工場に着き,俺は早速仕様書や,図面をチェックを行った.少しプラスティクが薄そうであったが,品質には影響ないであろう.ただ,この製品に採用されているセンサを使った設計で,以前,後輩が嵌っていたのを思い出した.但し,今回は,センサ信号をデジタル信号に変換する回路はASICに変更されている(=きちんとした技術者チームが設計している)ので,問題ないだろうと判断した.俺は,気楽になった.
 「さて,まずラインを確認しましょう.」
 その工場(孫受工場)で管理を行っていた協力会社の日本人技術者に声をかけた.
 「はあ……」
 なぜか,その技術者は疲れていた.

 俺と,その協力会社の技術者(ここでは仮にMさんとしよう)とでラインに向かった.

2.戦場で

 「こっ・これは……」
 その光景を見た瞬間,俺の耳元には,ボトムズの「レットショルダーのマーチ」が聞こえてきた.
 「Mさん……何ですかこれは……」
 ライン上に,まるで活け花のように,抵抗のリード線が切られずに半田付けされた基板が次々と流れてきた.
 「ええ……チップ抵抗*1 が手に入らなかったので……」
 なぜか,Mさんは照れていた.
 「いや……,ケースの中に基板が入らないのでは……」
 Mさんは,いきなりその場でしばらくフリーズしていた.

 「ラインを止めましょう!!」
 俺はMさんに声をかけた.Mさんは,ラインリーダっぽい男に声をかけていた.しかし,ラインはなかなか止まらない.
 「どうしたんですか?」
 どうやら,Mさんは現地の言葉がわからないようであった.
 俺は,そのラインリーダっぽい男に片言の現地語と筆談で,ラインを止めるよう話した.
 「で,ここ(の工場)のマネージャ連中は?」
 俺はMさんに尋ねた.どうやら,このトンでもない状況においても,やつらは事務所に閉じこもっているようであった.
 俺は事務所に行き,日本語と英語で,マネージャたちに話しかけようとした.だが,連中はきょとんとしているだけであった.そう,彼らは現地語しかわからないのであった.
 ここにいても仕方がない.俺は,ラインに戻りMさんに日本語の通訳にここに来て貰いようにお願いした.しかし,その通訳自体,他の仕事を兼任しているので,なかなか来る事は出来ないようであった.
 俺は急激に「以上」感を覚えた.

*1:チップ抵とは,米粒大の大きさの四角い(筒状ももありますが)「抵抗」という電気部品です.携帯電話とかにも使用されています.

3.巻き返し

 俺は,日本と俺の会社の現地の駐在事務所に連絡を取り,状況を説明した.だが,あまりの話に,誰も信じてくれなかった.製品の発売日はすでに雑誌に載っているとだけ返事された.ただ,俺の会社の現地社員が,この工場の近くで別の仕事をしていることが判った.彼は英語が俺よりうまく,当たり前だが,現地語は当然ペラペラだ.
 俺は,彼に連絡を取り,翌日朝には来て貰えるように依頼した.
 彼は二つ返事で了承した.少し心の余裕が出来た.
 さあ,巻き返しだ! 俺は気合を入れなおすと,早速このライン上にある活け花のような基板の処理を考えた.何のことはない.チップ抵抗が乗っかる基板のフットパターン*2 に,今ある普通のリード線の抵抗*3 を実装できればいいだけだ.但しプラケースと干渉しないようにしなければならない.
 俺は,手近の基板を10枚ほど引っつかむと,早速改造を行った.今乗っている抵抗を全部はずし,回路図を見ながら抵抗の足を曲げてフットパターンに半田付けし,メルティングボンド*4 で抵抗を基板に固定する.図面に赤ペンで変更箇所を書き込み,作業指示書代わりになるものを書きながらだ.ラインの人たちが判るように,なるべく言葉を使わずに絵で示す必要がある.(俺は現地語が片言しか話せないので,言葉に頼れないのだ.)
 さすがに工場では徹夜は出来ない.治安の問題等があるので,工場は夜10時に閉鎖する.それまでにはこの作業をには終わらせなければならない.俺は,作業中トイレにもいけなかった.
 
 工場の朝は早い.朝八時には俺は工場に入っていた.俺の会社の現地社員のアンディー(仮名)もいた.早速俺は,アンディーに,ここの工場のマネージャ連中と会議できるように依頼した.アンディーは手際よく手配してくれたようだ.日本語の通訳もこの会議に参加できるようであった.
 俺は会議で,どのくらい活け花状態にある基板があるかどうか確認した.なんと数千枚もあるというのだ.俺とMさんと残り2人の日本人スタッフ,そしてアンディーまでが引っ繰り返っていた.
 俺は,自分が書いた作業指示メモと,サンプルとして俺が改造した基板10枚ほどを差し出し,今回のリワーク(て言うの?この状況……)を指示した.
 これで生産が開始できる.まあ,1日半の遅れだ.不良が多くなければそれぐらいは取り返せると踏んでいた.

*2:フットパターンとは,基板上にある部品を基盤に半田付けする箇所です.この場所はレジストという基板上に塗られている絶縁材(普通は緑色ですが,時々青もあります)が塗られていない場所です.
*3:普通のリード線の抵抗とは,秋葉原とかで売っている,丸い棒状で,棒の両端に,金属の線が付いてているやつです.
*4:メルティングボンドとは,熱を加えると溶け,冷えると固まる接着剤です.よく基板等に何か部品等を固定したりする時に使います.

4.さらなる挑戦

 俺はアンディーと共にラインに立ち会った.このラインは酷い.タクトが乱れまくっている.俺はさすがにラインバランスのとり方までわからないので,Mさんとアンディーと一緒にラインを回った.Mさんは,ラインのタクトを合わせるため,色々な指示を俺とアンディーを経由してラインリーダたちに指示していった.さすがにMさんは経験があるのであろう.午後にはタクトがある程度まで合ってきた.ただ,まだ基板の不良率は20パーセントぐらいある.俺は,作業手順等の見直し,検査工程の移動等を指示し,何とか10パーセント前後まで不良率を下げていった.夕方には,不良レポートが上がってきた.他の日本人スタッフが,何とか工場のマネージャに指示して毎日各検査工程の生産数・不良数・不良症状項目のレポートが上がるようになっていた.もちろん報告して貰う内容は,日本人スタッフと俺とが協議しながら作ったものだ.(それまでは,その様なレポート自体なかったようであった.この工場の外壁にはISO9000の文字が大きく書かれていたのに……)そのレポートを元に俺は各種資料を作成し,確認していった.まだ,ラインの直行率は,50パーセントを切っていた.

 その頃までには,俺は,ラインリーダと何とか意思の疎通が図れるようになっていた.何とか片言の現地語と筆談で相手が何を言いたいのかうっすら判るようになってきたのだ.彼は若いためか,動きは早くカンはよさそうだった.いまだに,この工場のマネージャ連中は事務所から出てこない.俺たちは,このラインリーダを頼りにしていた.俺はラインで気づいた点を,この若きラインリーダを通じてフィードバックしていった.ある程度までフードバックを行うと,俺は不良品の山に突っ込んでいった.俺の経験では,こんなに酷い直行率では,不良品の置き場所がなくなり,ラインは自然に止まってしまう.俺は,不良が多い項目から不良解析をしていき,原因を探った.
 その解析は,時間がなかったため中途半端であったが,それでも直行率を80パーセント前後までもっていけそうであった.

 翌日の朝またマネージャ連中を集めてミーティングを行った.もう俺はこのマネージャ連中が何か仕事の役に立つとは思ってなかった.ただ,さすがに連中も,顧客がチョロチョロと工場内をうろついているのは気持ちよくないであろう.俺がフィードバックをしていけば,さすがに妨害はしないであろうと踏んでいたからだ.(というか,それはオマイらの仕事だろう!! と小一時間ほど問い詰めたい!! トコトン問い詰めたい!! ホント,今思い出してもかなり・・・orz)
 その会議で,俺は,生産数・不良数・不良症状・不良原因等を日本語の通訳に訳してもらいながら板書してもらい,全員で対策を考えるよう促した.
 この方法は,俺の後輩と先輩に教わった方法だ.なるべく全員を巻き込むように,一人一人に各問題点の解決策のアイディアや,誰がキーマンになりそうなのかを聞いていった.普通,この方法であると,最後には,自分たちが出したアイディアであるので,キーマンも自分で手を上げて実行を約束してくれる.そして,約束してくれたものは,事故等がおきない限り,実行してくれるものだ.だが,この会議では,マネージャ連中は誰も発言しなかった.発言を促してもずっと押し黙ったままだ.さすがに俺も疲れ果ててきたので,やってはいけない「対策指示」の押し付けをしてしまった.ただ,不良症状が50項目ぐらいあったのでそれでも時間がかかった.
 
5.以上!!

 翌日,工場でアンディーがトンでもないことを発見した.昨日指示していた改善事項がなされていないのだ.俺は早速ラインリーダに事情を聞いた.
どうやら,指示事項が各マネージャから各部署へ伝わっていないらしく(もちろんこのラインリーダにも伝わっていない),簡単な工具すら用意されていなかった.(さすがに,部署間のインターフェースを俺がとるわけにも行かず,指示自体は彼らマネージャから指示が行かないと,マネージャの面子が立たなくなるので部下も動きづらい.)さすがの俺も,これには切れた.
 "Andy!! Call the managers for meeting!!"
 アンディーが事務所に飛んでいった.
 俺は,会議の席で,相手方のマネージャを絞っていた.(このようなときは,日本語の通訳が逆恨みに合うらしいので,俺は,日本語の通訳に俺からの話であることを強調して貰い,さらに,俺自身も片言と板書で同じ事を伝えた.)さすがにその後3日間ぐらいは,きちんと各部署に指示が伝わって行ったようだ.ラインリーダにも指示が伝わっていた.彼はまじめな性格なのか,黙々と管理作業を行っていた.
 直行率も75パーセントぐらいになってきた.出荷検査がやっと出来るぐらいの数量が完成してきた.
 アンディーと俺は,抜取検査を開始した.だが,いつもであれば不良検出などないのに,今回は,ぎりぎりロットアウトになる数まで不良が検出された.俺は,また,不良解析に向かった.
 その間にも,この状況をレポートにまとめて本社に送る必要があった.俺は,10ページほどのレポートを手書きでまとめFAXした.その協力会社及び,俺の会社のマネージャ連中へのいやみをたっぷりとそのレポートに乗せて.そろそろ俺のビザも切れそうなことも含めて.そう,俺は,この国を一度出なければならなかった.それにしてもどうだ.何で,この工場のマネージャ共は事務室に張り付いているのであろう.アンディーも不思議に思ったのか,色々調べていた.アンディーの話では,どうやらこのマネージャ共は,工場立ち上げスタッフが工場を立ち上げた後,すぐに入れ替えの形で来たようだ.それも,中途採用後,ろくな社内教育もなくこの工場に送り込まれたようだった.協力会社の日本人スタッフも同じだ.この人たちも日本の一流会社よりの転職で,技術力や知識はあるが,転職後すぐにブリーフィングもなくこの工場へ叩き込まれたようだ.そのせいで,ここの工場のマネージャのかわりに,購買から出荷手配までを,3~4人の日本人スタッフと通訳が行っていたようだ.どおりで,日本人スタッフに初めて会ったときから疲れ果てていて,この祭りを阻止できなかったというわけだ.
 疲れがたまってきたのか,技術力不足か,なかなか不良解析が進まない.とうとうビザが切れる日になった.どうやら後続に,この製品の設計を管理している設計屋が後を引き継ぐようだ.(かわいそうに……)代わりの人間は,俺がこの工場を去らなければならない時間の10分前に到着した.俺は,今までのレポートのコピーを引継ぎ者に手渡し,タクシーに乗った.そのまま,気絶するように寝込んだ.

 日本に戻った翌日,この製品のアメリカから受け入れ検査の結果がやってきた.結果はロットアウトであった.その翌日に俺は,アメリカに飛んでいた.飛行機の中で俺は「以上」感の中で漂っていた.

参考文献
・翔泳社編集部 編,開発の現場Vol.2,2005,ISBN:4-7981-0973-8
・kudzu,笑わないプログラマ,http://s03.2log.net/home/programmer/

Rの良く使う関数・統計関数

2005-10-23 18:37:31 | R 統計
Rの良く使う関数・統計関数

 忘れがちなRの関数をさらします.

記号 意味 記号 意味
sin(x) sin x sum() 総和
cos(x) cos x mean() 平均
tan(x) tan x median() 中央値
asin(x) sin^-1 x var() 不偏分散
acos(x) cos^-1 x cor() 相関係数
atan(x) tan^-1 max() 最大値
log(x) 対数 range() 範囲
Log10(x) 常用対数 cumsum() 累積和
exp(x) exp x prod() 総積
sqrt(x) √x rev() 要素を逆順
round(x) 四捨五入 min() 最小値
floor(x) 少数を切捨 sort() 昇順整列
ceiling(x) 少数を切上 rank() 各要素の順位
trunc(x) 整数部分 order() 各要素の元の位置
length() 要素の数


A System of Profound Knowledge 深遠なる知識のシステム

2005-10-23 18:34:25 | 品質管理
 デミングさんの下記の著書の4章に書かれている,「深遠なる知識のシステム」の内容を,見ていきたいと思います.
 ちなみにですが,この文書の人物の敬称は,すべて「さん」付けで統一しています.
 もちろん,デミングさん以下,博士号をお持ちの人がほとんどです.

1.深遠なる知識のシステムの4ポイント


 まず,この章の初めの部分で,デミングさんが何をポイントとしているのかを見ていきましょう.

 -The new economics for industry, government,
education- Ch.4 -A systen of Profund Knowliedge-

<引用>

Ain of this chapter.
この章の目的.

マネージメントの流行のスタイルは,変革の試練に耐えるべきである.システムは,自分自身を理解することが出来ない.変革は,その外側よりの見識が求められている.この章の目的は,私がProfound Knowledge【深遠なる知識】のシステムと呼んでいるレンズで覗いた【訳注:システムの】景観を与えることである.それは我々が働いている組織を理解するための論理の地図を与える.

The first step.
最初のステップ.

最初のステップは,個々の変革である.この変革は,継続的ではない.それは,深遠なる知識のシステムの理解より来る.個々が変革した時,人生,イベント,数量,人々の間の相互作用の新しい意味に気であろう.
 ひとたび,個々が深遠なる知識のシステムを理解した時,彼は,他の人々とのさまざまな関係の原理を応用するであろう.また,彼の彼自身の決断に対する判断及び,所属する組織の変革に対する基準を持つであろう.個々がひとたび 変革した時,こうなる.

 例として:
 よい聞き手になる.しかし,妥協はしない.
 他の人々を教育しつづける.
 人々の習慣及び信条を取り去り,過去の罪の意識を感じさせずに,新しい哲学に導く.

The outside view.
概要.

 深遠なる知識(Profound Knowledge)の層は,下記の4つの部分に現れ,お互いがお互いに関係している.

 ・システムの理解
 ・バラツキの知識
 ・知識の論理
 ・心理学

 この内で,何か一つの項目が特に必要というわけではなく,これら4項目を理解し,応用できなければならない.産業・政府・教育でのマネージメントのための14ポイント(Out of crisis Ch.2)は,現在の西洋スタイルのマネージメントを,1つの最適に変革するため,この外部知識の応用を,自然に利用している.

Preliminary remarks.
緒言

 この深遠なる知識のシステムの多様な項目は,切り離して説明できない.これらは,お互いに関係している.従って,心理学の知識は,バラツキの知識が無いと,完結しない.
 マネージャたちは,すべての人々が,違っていることを理解する必要がある.これは,人々をランク付けすることとは違う.マネージャは,彼が働いているシステムによる大きな統治が,人それぞれのパフォーマンスになることを理解しなければならず,それがマネージメントの責任であることを理解する必要がある.
 心理学者は,雑であってもバラツキに対するの理解をしているが,同じく,Red Beads(Ch.7)の実体験を学習することにより,人々をランキングする計画の精緻化に参加することは,なくなるであろう.
 後ほどの心理学に関係した説明と,バラツキの論理(統計論理)とは境がない.例として,検査員が抜取検査で検出した不良品数を認識する.(documented by Harold F. Dodge in the Bell Telephone Laboratories around 1926) 検査員は,誰かに不正義なペナルティを与えないように,慎重に丁度ボーダーラインをはみ出た品物を合格にする.【訳注:合格数量にする】(Out of the crisis P.226)
 同じ本のP.225で,300人の雇用を守るためには,不良率を10%以下に保たなければならなかった,その検査員の話が現れている.彼女は,彼らの雇用について恐れていた.【訳注:雇用がなくなるのを恐れていた.】
 教師は,不正義に誰かにペナルティを与えたいわけではないので,ぎりぎり合格ラインを少しだけ割った生徒をパスさせる.
 恐れは,誤った図式を招く.運送人の悪いニュースでは料金が悪くなる.【訳注:悪いニュースを持ってきた人の評価が落ちる.】彼の雇用を守るためには,彼のボスに,いいニュースだけを知らせることである.
 会社の社長が指名した委員会は,社長が聞きたい話を報告するであろう.
 彼らが他の報告を,あえてするであろうか?
 個々は,思わず彼自身に後光が差したか探してしまう.実際には今朝,彼がタブロイドを買って読んでいるのに,彼はニューヨークタイムスをを読んで,リーダーシップの勉強したことを面接官に話するであろう.
 ゆがんだ数値を基本にしている統計の計算と予測は,混乱,フラストレーション,間違った決断を導きやすい.
 会計ベースのパフォーマンス測定は,セールス,売上,コストの目標達成のために,プロセスの不正操作及び,おべっかや,ごまかしの約束をくっちゃべって顧客に必要のない購入をそそのかす行動に従業員を駆り立てる.(adapted from the book by H. Thomas Johnson,Revenue Regained, The Free Press,1992)
 変革のリーダーとマネージャーは,個々の人々の心理,グループの心理,社会の心理及び,変革の心理について学ぶ必要を要件とする.
 安定したシステムへの応用も含む,バラツキの多少の理解及び,バラツキの異常原因と偶然原因に対する多少の理解は,人々のマネージを含む,システムのマネージメントの基本である.(Chs.6,7,8,9,10)

</引用>

2.深遠なる知識のシステムの4ポイントの軽い説明



 上記の訳を見ていただいても解るように,デミングさんの考える,深遠なる知識のシステムとは,下記の4つのポイントで構成され,それらはお互いに関係している(交絡している)と言っています.

 ・システムの理解
 ・バラツキの知識
 ・知識の論理
 ・心理学

 下記に私が理解している上記4ポイントの軽い内容をさらします.

 ・システムとは:
 システムとは,簡単に言うと,入力された事柄(情報やエネルギー)が何かに変換され,出力される体系の事を言います.
 特に,目的を持って作られるものは,人工システムとなります.
 例えば太陽系(英語では,The Solar System)は,太陽や惑星のお互いの位置や重力によって,お互いの位置や運動を決定していますよね.つまり,お互いの位置や重力等が入力となり,お互いの位置や運動等が出力となっているシステムになっています.
  ただし,この場合は,システムの目的は不明です.ただクルクル回るのが目的といえば目的かもしれませんが.
  同じように,工場もシステムです.工場は,営業よりの注文情報,開発よりの図面等の設計情報,サプライヤーからの材料供給等を入力として,工場内部で色々加工して,製品を出力している訳です.
 同じ考え方を当てはめると,会社や政府,その他経済活動やら教育活動やらを行っているすべての物事がシステムになるわけです.
 また,人間が関係するすべてのシステムは,目的を持っているはずですから,すべて人工システムになります.
 (目的が無い(=人の役に立たない)のに,人間が関与する訳はありませんよね.目的がないように見えるシステムでも,実を言うと個人的な楽しみが目的だったりします.)

 ・バラツキとは:
 バラツキとは,簡単に言うと,連続値であるが(長さとか,重さとか)が正確に測定できなくて誤差を含んだ形での処理や,初めからバラバラな値とかの測定・処理の話です.お金とかで考えると,時々経済雑誌とかで,利子や消費税のの切上げ・切捨ての話が出ますが,日本円は実質的に円までの単位なので,銭や厘とかの単位になった時の処理方法によって,かなりの金額が左右される事になります.これらの処理を的確かつ迅速に処理するためには,統計の考え方が必要となってきます.

 ・知識の論理とは:
 知識とは,情報とは違い,その知識使えば将来の予測に役立つ事柄が知識と呼ばれるものになるそうです.例えば電話帳の電話番号は情報ですが,将来の予測には使えません.しかし,これが得意先の台帳になれば,これらの顧客が良く何を購入するかが今までの経験で判っているので,将来の売上予測に役に立つ事になります.
 論理とは,皆さん御存知の帰納法とか演繹法とか,ロジックツリー等に代表される,因果関係等を論じる方法です.
 そして,一般的に注意すべき事柄として,相関関係と因果関係の関係です.相関関係があれば因果関係があるとは言えないとかいうやつです.
 これら,知識と論理を組み合わせ,知識の論理(学習の論理)が出来上がります.そう,これが,デミングさんが強調する「シューハート・サイクル」(日本では紹介者のデミングさんの名をとって,「デミング・サイクル」と呼ぶのが一般的です.)"Plan-Do-Check(Study)-Action"です.
 特にデミングさんは,論理とは将来の予測に役に立つものでなけらばならない事を強調しています.

 PDCA(PDSA)サイクルを知識の論理構築に使用すると,下記のような内容になります.

  • 将来を予測できる論理である.(Plan)
  • その論理より出た予測と,実際の観察の結果との比較が可能である.(合っているかどうかがわかる)(Do)
  • 比較の結果,その論理があっているか,間違っているか判別可能である.(Check・Study)
  • 論理が間違っていた場合,その論理の変更もしくは拡張で論理を改善できる.(Action) (これが出来ないと,その論理を捨てて,新しい論理を採用する必要がある)

 そして,上記のような論理が無いと,予測が出来ない.また予測が間違っているかどうかが分からないため,学習が出来ない.(=改善できない)となります.

 ・心理学(特に動機付け理論):
 心理学の動機付け理論には,色々な学説があります.例えば下記のようなものがあります.(産業心理学からです)
  ・科学的管理法の特に目標及び評価に対する考え方(テイラー)
  ・5段階欲求仮説(マズロー)
  ・X理論・Y理論(マクレガー)
  ・動機付け・衛生理論(ハーズバーグ)
  ・期待理論(ブルーム)
  ・内発的動機理論(デシ)
   など,まだ沢山ありそうです.

 この中で,特にデミングさんが強調したものは,「内発的動機理論」と呼ばれる理論です.簡単に言うと,下記のようになります.
  • 自分の心で発生した動機(これをここでは内発動機と呼びます)の強さは,外部からの刺激(例えば,成果報酬や失業への恐怖等:これをここでは外部誘因動機と呼びます)によって発生した動機の強さに勝る
  • 外部からの刺激が強すぎると,内発動機が破壊される
  • 内発動機が破壊された状態で,外部誘因動機に頼ると,以前より強い刺激でないと動機付けされない(つまり成果給であれば,同じ成果でも,以前より高い給料でないと動機付かない・成果が下がって給料が下がれば動機がなくなってしまう)


 つまり,品質を獲得するための仕事を動機付けるには,「内発動機(仕事への自尊心)」がすべてであり,成果評価や,数値目標等による競争を持ち込む事をことごとく否定しています.
 (ここの所は,デミングさんもかなり感情的になるようで,「競争を強調」する論調に対しては,烈火のごとく怒るようです.ただ,デミングさん自身は,すべての競争を否定しているわけでなく,「内発動機」を破壊しない競争(というか資源の効率的な配分だと思います)に関しては許容しているようですが,私もまだイメージがわかりません.)

その他



 上記4ポイントを考えていくと,何か経済学と深く絡みそうな気がしています.
 そこで,ググッて見た結果,下記論文が見つかりました.

PUBLIC POLICY FOR A KNOWLEDGE ECONOMY

 まあ,ステグリッツさんであれば,結構信用できそうなので,(他のエコノミストは,競争すればすべてOK!!みたいな人大杉)この論文をシコシコ読んでいます.(もちろんステグリッツさんや,他の経済学の入門書を読みながらです)
 でも,経済学って難しい・・・.古典的自動制御理論(古典的システム理論)の100倍は難しいです.でも,経済学は自動制御理論自体を取り込んでいるようなので(後,心理学とか)ここら辺から攻めると判るのかも知れないと思い,今シコシコ復習しています.
 そのうち,これらをさらします.
 (よく考えてみたら,デミングさんは著名な確率・統計学者でもあるので,もしかして,確率過程やら,カルマン・フィルタとかも理解していた可能性もあり・・・急に「以上」感が漂ってきた!!)

参考文献


  • Dening, W. Edwards,Out of the crisis,1986,ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards,The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.,1994,ISBN:0-262-54116-5
  • 吉田耕作,国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ-,2000,ISBN:4-8171-0338-8
  • 武田修三郎,デミングの組織論,2002,ISBN:4-492-53152-1
  • 高橋伸夫,虚妄の成果主義 -日本型年功序列制復活のススメ,2004,ISBN:4-8222-4372-9
  • DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部,動機付づける力,2005,ISBN:4-478-36081-2
  • 飯田泰之,経済学思考の技術 論理・経済理論・データを使って考える,2003,ISBN:4-478-21048-9
  • 藪下史郎 他,ステグリッツ早稲田大学講義録 グローバリゼーション再考,2004,ISBN:4-334-03272-9


ルーレット・ホイールをぶちのめす

2005-10-16 19:02:30 | システムについて
 ジュラン博士の自伝「Architect of Quality」の中の1節をさらします.

 うーん,アル・カポネですか・・・. ジュランさんの自伝でこんな話が出てくるとは思いもしませんでした.
 が,良い子はこうゆう悪いトコに行ったり,ましてや,その場でヒストグラムやら管理図やらを書き出してはいけませんw.(何処連れてかれるか判りませんからw.)あくまで頭の中で(違.

Beating the roulette Whieel
ルーレット・ホイールをぶちのめす

【】内訳注

<引用>

 工場の前の道を挟んだ先のビルたちは,罪がなさそうな姿をしているが,後ろに入り口があるギャンブル・ハウスだ.
 もちろん,これらは違法だが,しかし,彼らはすでにCicero市政の側の境界に位置していて,Ciceroの政治機構はカポネ・ギャングによって乗っ取られている.
 これらのギャンブル・ハウスは,Ciceroの「El」駅より100ヤード以内に位置にあり,シカゴの郊外にいる彼らの顧客をひきつけている.
 私は,これらの中の1つのデン【ギャンブルハウス】に一度出かけ,引き付けられた,特にルーレットにだ.
 私はゲームと【ルーレットの】ホイール【に書かれている】番号の順序が示されているパンフレットを手に入れた.
 
-中略-

 私はギャンブルが好きだ.(ギャンブル好きの優性遺伝子をもらったような気がする)
 ルーレット遊びはムズムズする.その様なオッズに対してもギャンブルには将来が無いようにに見えた.【訳注:勝てそうに無いを見たのでしょう】そう私は,そこから記録を始めた.
 初めに,私はホイール自身に偏りがあるかどうかを学習した---傾いていないか等.データはNoと語った.ボールはランダム【な番号】のスロットに転がり落ちていた.私は疑問を持った,もしディーラ(元締め)が一定の癖を盛っていたら.それを発見するまで待った.今回はそれが当った.
 各プレイのたびに,そのディーラは,バラつかない動作を行っていた.ボールが止まる時には,彼は賭けに負けたチップをすべて取り除き,賭けに勝ったものに払い戻した.最後に彼はボールを(回る)ホイールのスロットから取り出し,水平に投げ入れ,ボールは止まるまで数回ほど回る.ここでのチャレンジは,私が次の回に止まるスロット【番号】を予測する事が出来るかどうかにある.もしホイールが一定のスピードで周り,ディーラーが前回と同じ時間のそれほど変わらない行動であれば,それは可能だと見た.
 私は再度,そこから記録を始め,安定性を捜し求めた.成功した回では,ボールがその前の回で落ちたスロット【番号】より,時計回りで約15番目のスロットにしばしば止まった.これはハウス側の平均5%【獲得】を,私がぶちのめすことが出来るのに十分な情報だ.
 私は,いくつかの10セントチップの山を運んでいき,賭けを始めた.前回ボールが止まった場所から時計回りで15スロット先の隣り合う5スロットに置いた.その結果は美味しかった.3回中の毎回,私の賭けた番号の一つに当った.この意味は,3回とも私は10チップを失ったが,35チップを得たという事だ.私はすぐに,賭け金が各番号ハーフダラー【50セント】になるまであげ続けた.勝ち金が100ドルを超えるまでになったため,私が「システム」を持っているぞ,と誰かに叫ばれ,つるし上げられるほどの注意を引くのに十分だった.確かに持っていた.
 それは,すぐに終わった.ハウスの規則によりディーラーが交替し,そのディーラーはいらいらするほど,不安定なのだ.私の勝ちはほとんど無くなり,換金した.私にとっては100ドルはいい結果であった.その時はボナンザで,週に約45ドルを使った.
 私は,二度と【ギャンブル・ハウスに】戻らなかった.友達と私の勝利を分かち合っていた時,私は,ホーソンの上の人たちが,横柄なギャンブル・ハウスの存在に眉をひそめている事を学習した.その様な行為は,人事ファイルに記録され,出世状況をスローダウンさせる理由を提供するのだ.それでも,カポネ・ギャングに彼らの商売で叩きのめした事は,うぬぼれた喜びを私に与えてくれた.

</引用>

参考文献


・Juran, M. Joseph,Architect of Quality,2004,0-07-142610-8

pistonrings

2005-10-15 20:03:53 | R 統計
 前,The Red Beadsの記事で使用した,統計ソフトRの"qcc"という,
 品質管理パッケージの使い方を和訳しましたので,さらします. 
 (コマンドとか面倒な人は,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門という本の著者の荒木先生のWeb Pageに,GUIベースのRcmdrというソフトがあるので,そっちの方が便利です.)
pistonrings {qcc}	Rドキュメンテーション
ピストンリング・データ

【】内訳注

説明

外部で製造された自動車エンジン用のピストンリングである. リングの内径を
25サンプル測定,それぞれの検査サイズは5である.この工程は,'管理されている
【in control】'と考えられる.【管理に乗っている(on control)とも言います】

使用方法

data(pistonrings)

フォーマット

データフレームは,下記の3つの値の200サンプルが入っている.

diameter		数値ベクタ

sample			サンプルID

trial			検査結果(TRUE/FALSE)

参考文献

Montgomery, D.C. (1991) Introduction to Statistical Quality Control, 2nd ed,
New York, John Wiley & Sons, pp. 206-213

例

data(pistonrings)
attach(pistonrings)
summary(pistonrings)
boxplot(diameter ~ sample)
plot(sample, diameter, cex=0.7)
lines(tapply(diameter,sample,mean))
detach(pistonrings)

[Package qcc version 1.1 Index]

和訳のための参考文献</4>
・R Development Core Team, R: A language and environment for statistical computing.(Ver. 2.1.1)
・荒木孝治 他,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門,2005,ISBN:4-8171-9148-1
(この「R品質管理本」のWeb Pageは,http://www.ec.kansai-u.ac.jp/user/arakit/R.htmlです.
・船尾暢男,The R Tips データ解析環境Rの基本技・グラフィック活用集,2005, ISBN:4-86167-039-X


qcc

2005-10-15 19:51:39 | R 統計
 前,The Red Beadsの記事で使用した,統計ソフトRの"qcc"という,品質管理パッケージの使い方を和訳しましたので,さらします. 
 (コマンドとか面倒な人は,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門という本の著者の荒木先生のWeb Pageに,GUIベースのRcmdrというソフトがあるので,そっちの方が便利です.)
qcc {qcc} Rドキュメンテーション
品質管理チャート

【】は訳注

説明

統計的品質管理を行う,クラス'qcc'のオブジェクト生成.シューハート管理図,
累積和図,EWMAプロット,OCカーブ作図,工程能力指数の計算,その他.
【訳注:この"qcc"という関数自体はシューハート管理図作図のみのようです.】

使用方法

qcc(data, type, sizes, center, std.dev, limits, target, 
    data.name, labels, newdata, newsizes, newlabels, 
    nsigmas = 3, confidence.level, rules = shewhart.rules, 
    plot = TRUE, ...)

## S3 method for class 'qcc':
print(x, ...)

## S3 method for class 'qcc':
summary(object, ...)

## S3 method for class 'qcc':
plot(x, add.stats = TRUE, chart.all = TRUE, 
     label.limits = c("LCL ", "UCL"), title, xlab, ylab, ylim, 
     axes.las = 0, restore.par = TRUE, ...)

引数

data 	データフレーム,マトリクスもしくは,ベクタで,管理図の分散の解析用
        データが入っている.それぞれのデータフレームもしくはマトリクスの行,
        及びベクタの各値,サンプルもしくは"rationale group"の参照である.

type 	計算するグループの統計を示すキャラクタ文字列である:管理図名

	"xbar"	mean	連続した工程における値の平均【Xバー管理図】
	"S"	standard deviation 	連続値の標準偏差【s管理図】
	"R" 	range 	連続した工程における値の幅【R管理図】
	"xbar.one" mean	連続した工程における値の瞬間データ
	"p" 	proportion 不適合品率【不適合率:p管理図】
	"np" 	count 	不適合品数【np管理図】
	"c" 	count 	1単位あたりの不適合数【c管理図】
	"u" 	count 	1単位あたりの不適合平均数【u管理図】

sizes 	それそれのグループに関連したサンプルサイズの値もしくは値のベクタ.
        データフレームもしくはマトリクスで与えられた連続データのサンプルサイ
        ズは各行のNAで無い要素をカウントして得る. "p", "np", "u"管理図は
        サイズ引数が必要とされる.

center 	グループの統計の中心を示す値【中心値】

std.dev 工程のグループ内の標準偏差を示す値もしくは値のベクタ.
limits 	コントロール・リミット【管理限界】を示す2つの値のベクタ.
target 	工程の"目標"値を示す値.
data.name 図中に現れる変数名を示す文字.与えられなかった時は,データを
          与えたオブジェクトより持ってくる.

labels 	各グループのラベルのキャラクタベクタ.

newdata データフレーム,マトリクスもしくは,ベクタでデータ引数と同じ.
        【計算で使用したデータの】後のデータをプロットするが,計算には含まれ
         ない.【訳注:dataで中心値,コントロール・リミット(管理限界)線等
         を計算し(解析用データ),newdataで実際の管理のためのデータを投入す
         るのに使用するようです(管理用データ).】

newsizes 後データのプロットに使用するが計算に含まれないデータサイズのサイズ
         引数.【訳注:上記newdataのデータサイズのサイズ引数でしょう.】

newlabels newdata引数で定義した,各新規グループのラベルのキャラクタベクタ.

nsigmas コントロール・リミット【管理限界】を計算する際に使用されるσの数を示
        す数値.【3σの場合は 3 でしょう.】confidence.level引数が指定されて
        いる時は無視される.

confidence.level 確率限界を計算するための信用レベル?を示す0から1の間の数
                  値.

rules 	図を応用する際の規則の機能.デフォルトでは,shewhart.rules機能が使用
        される.

plot 	論理値.【値が】TRUEならば,シューハート管理図がプロットされる.

add.stats 論理値で,統計とその他の情報が図の下部に表示される.

chart.all 論理値で,dataとnewdataの両方の統計結果が表示される.

label.limits コントロール・リミット【管理限界】のラベルを示す文字ベクタ.

title 	図題を示すラベルの文字列.

xlab 	X軸のラベルを示す文字列.

ylab 	Y軸のラベルを示す文字列.

ylim 	Y軸のリミットを示す数値ベクタ.

axes.las 軸ラベルの表示形式を示す数値{0,1,2,3}.help(par)参照.

restore.par 以前のparのセッティングを保存するかどうかを示す論理値.もし,
            管理図に,点や,線等を付け加えるなら,この値をFALSEにセット
            する.

object 	クラス"qcc"のオブジェクト.

x 	クラス"qcc"のオブジェクト.

... 	追加の引数で,この引数をプロット関数に引き渡す.

Value

クラス"qcc"のオブジェクトの戻り値.

著者

Luca Scrucca luca@stat.unipg.it

参考文献

Montgomery, D.C. (2000) Introduction to Statistical Quality Control, 4th ed.
New York: John Wiley & Sons.

Wetherill, G.B. and Brown, D.W. (1991) Statistical Process Control. 
New York: Chapman & Hall.

下記も参照のこと

shewhart.rules, cusum, ewma, process.capability, qcc.groups

例)

data(pistonrings)
attach(pistonrings)
diameter <- qcc.groups(diameter, sample)
qcc(diameter[1:25,], type="xbar") qcc(diameter[1:25,], type="xbar", newdata=diameter[26:40,]) q <- qcc(diameter[1:25,], type="xbar", newdata=diameter[26:40,], plot=FALSE)
plot(q, chart.all=FALSE) qcc(diameter[1:25,], type="xbar", newdata=diameter[26:40,], nsigmas=2) qcc(diameter[1:25,], type="xbar", newdata=diameter[26:40,], confidence.level=0.99) qcc(diameter[1:25,], type="R") qcc(diameter[1:25,], type="R", newdata=diameter[26:40,]) qcc(diameter[1:25,], type="S") qcc(diameter[1:25,], type="S", newdata=diameter[26:40,]) # 多様なコントロール・リミット out <- c(9, 10, 30, 35, 45, 64, 65, 74, 75, 85, 99, 100)
diameter <- qcc.groups(pistonrings$diameter[-out], sample[-out])
qcc(diameter[1:25,], type="xbar") qcc(diameter[1:25,], type="R") qcc(diameter[1:25,], type="S") qcc(diameter[1:25,], type="xbar", newdata=diameter[26:40,]) qcc(diameter[1:25,], type="R", newdata=diameter[26:40,]) qcc(diameter[1:25,], type="S", newdata=diameter[26:40,]) detach(pistonrings) ## ## 特性データ ## data(orangejuice) attach(orangejuice) qcc(D[trial], sizes=size[trial], type="p") # 管理はずれ点を削除(理由はhelp(orangejuice)を参照のこと) inc <- setdiff(which(trial), c(15,23))
q1 <- qcc(D[inc], sizes=size[inc], type="p")
qcc(D[inc], sizes=size[inc], type="p", newdata=D[!trial], newsizes=size[!trial]) detach(orangejuice) data(orangejuice2) attach(orangejuice2) names(D) <- sample
qcc(D[trial], sizes=size[trial], type="p") q2 <- qcc(D[trial], sizes=size[trial], type="p", newdata=D[!trial], newsizes=size[!trial])
detach(orangejuice2) # 2つのオレンジジュースデータを同じグラフに表示 oldpar <- par(no.readonly = TRUE)
par(mfrow=c(1,2), mar=c(5,5,3,0)) plot(q1, title="First samples", ylim=c(0,0.5), add.stats=FALSE, restore.par=FALSE) par("mar"=c(5,0,3,3), yaxt="n") plot(q2, title="Second sample", add.stats=FALSE, ylim=c(0,0.5)) par(oldpar) data(circuit) attach(circuit) qcc(x[trial], sizes=size[trial], type="c") # 管理はずれ点を削除(理由はhelp(circuit)を参照のこと) inc <- setdiff(which(trial), c(6,20))
qcc(x[inc], sizes=size[inc], type="c", labels=inc) qcc(x[inc], sizes=size[inc], type="c", labels=inc, newdata=x[!trial], newsizes=size[!trial], newlabels=which(!trial)) qcc(x[inc], sizes=size[inc], type="u", labels=inc, newdata=x[!trial], newsizes=size[!trial], newlabels=which(!trial)) detach(circuit) data(pcmanufact) attach(pcmanufact) qcc(x, sizes=size, type="u") detach(pcmanufact) data(dyedcloth) attach(dyedcloth) qcc(x, sizes=size, type="u") # 標準化されたコントロールチャート q <- qcc(x, sizes=size, type="u", plot=FALSE)
z <- (q$statistics - q$center)/sqrt(q$center/q$size)
plot(z, type="o", ylim=range(z,3,-3), pch=16) abline(h=0, lty=2) abline(h=c(-3,3), lty=2) detach(dyedcloth) # 粘度 data (Montgomery, pag. 242) x <- c(33.75, 33.05, 34, 33.81, 33.46, 34.02, 33.68, 33.27, 33.49, 33.20,
33.62, 33.00, 33.54, 33.12, 33.84) qcc(x, type="xbar.one") [Package qcc version 1.1 Index]

和訳のための参考文献</4>
・R Development Core Team, R: A language and environment for statistical computing.(Ver. 2.1.1)
・荒木孝治 他,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門,2005,ISBN:4-8171-9148-1
(この「R品質管理本」のWeb Pageは,http://www.ec.kansai-u.ac.jp/user/arakit/R.htmlです.
・船尾暢男,The R Tips データ解析環境Rの基本技・グラフィック活用集,2005,ISBN:4-86167-039-X


qcc.groups

2005-10-15 19:50:04 | R 統計
 前,The Red Beadsの記事で使用した,統計ソフトRの"qcc"という,品質管理パッケージの使い方を和訳しましたので,さらします. 
 (コマンドとか面倒な人は,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門という本の著者の荒木先生のWeb Pageに,GUIベースのRcmdrというソフトがあるので,そっちの方が便利です.)
qcc.groups {qcc}	Rドキュメンテーション
サンプル指標に基づくグループデータ

【】内訳注

説明

この関数は,'qcc'関数への入力を容易にデータのグループ化を可能にする.

使用方法

qcc.groups(data, sample)

引数

data 	観測データ値

sample 	データ値のサンプル指標

Value

関数の戻り値は,適切な次元のマトリクスを返す.観測値が他のグループより少ない場合は,NAが付加される.

著者

Luca Scrucca luca@stat.unipg.it

その他参照

qcc

例

data(pistonrings)
attach(pistonrings)
# 40 sample of 5 obs each
qcc.groups(diameter, sample)
# some obs are removed, the result is still a 40x5 matrix but with NAs added
qcc.groups(diameter[-c(1,2,50,52, 199)], sample[-c(1,2,50,52, 199)])

[Package qcc version 1.1 Index]

和訳のための参考文献</4>
・R Development Core Team, R: A language and environment for statistical computing.(Ver. 2.1.1)
・荒木孝治 他,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門,2005,ISBN:4-8171-9148-1
(この「R品質管理本」のWeb Pageは,http://www.ec.kansai-u.ac.jp/user/arakit/R.htmlです.
・船尾暢男,The R Tips データ解析環境Rの基本技・グラフィック活用集,2005,ISBN:4-86167-039-X


DQNなコンサルタント

2005-10-15 17:59:58 | システムについて
 Out of crisisの周辺を調べていて発見した,成果主義の話をさらします.

管理者の位置づけ(国際競争力の再生 P77参照):


 アメリカでは,なんと,自分の部下の評価をするのがマネージャの仕事・・・が伝統的な考え方だったそうです.
 なぜなら,日本では,社内の人が出世して,課長やら部長のポジションに着くわけですから,部下の仕事(つまり,昔の自分の仕事)をある程度理解していますよね.従って,評価だけではなく,その仕事の知識も持っているわけです.
 つまり,変な自意識(昔のオレの仕事を改善するということは,オレの昔の仕事のやり方が間違っていたということじゃないか.プライドが・・・)や,変な思い込み(部下は追い詰めないと働かない・改善しない)が無いと,改善にも口を出す(もちろん,その口出しが効果的な時も,悪影響を及ぼす時もあります)わけですが,アメリカのマネージャは,前職をやめてMBA等を取得する.その後,前職と関係ない会社や,仕事の管理職になる.という経路(つまり,今の部下の仕事を経験していない)が普通だったそうです.
 つまり,マネージャは,自分の目標を達成するためには,仕事を改善が必要であるとの認識を持ってはいますが,改善しようにも現在の仕事に対する知識が何も無いため,手も足も出ない.勢い,「お前ら自分で改善しろ.出来なければ評価を下げるぞ!!」という指示を部下に出す・・・.部下を評価すれば,勝手に仕事が改善される.これを当たり前に思ってしまうのではないかと.
 (過去形で書いているのは,現在のアメリカの状況はどうだか分からないためです.どうも,デミングセミナーやTOC,タグチメソッド等の改善手法の普及やら,当のデミングさんたちの考え方が広がってきたため,考え方の変化による行動の変化があるようです.)

・DQNなコンサルタント:


 一寸凄ましい話なので,当該場所を引用します.

<引用>

 日本人には信じられないような話だが,米国には最下位の10%の人々を毎年クビにする政策をとることを勧めるコンサルタントがいる.

 - 国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ- - P79
</引用>

 へぇー・へぇー・へぇー.
 さすがに日本人にこんな事言っていた人はいないでしょうが,(もしいたら豆腐の角に頭をぶつけるべきです.)
 あのアメリカで,こんな事言っていたDQN(しかもコンサル・・・ orz )がいるとは・・・.
 (ちなみに,絶対評価ではなく,相対評価です.上の話は.(まあ" % "と言った時には解っていると思いますが.)
 その他,アメリカでは,年単位(下手すると半期単位)で人事評価(日本みたいに成績が悪いと一寸給料が下がるなんてものじゃないそうです.成績が下がれば,クビになります.)されるので,サラリーマン(やパートさん)が落ち着かないとか,成果主義丸出し(というか,役員以外はみなフリーター状態)のアメリカは,日本人が考えるより激しい場所のようです.
 
と,思っていたら,GEの「ニュートロン」ジャック・ウエルチがやってたんですね・・・ orz
従業員を成績上位20%(A),中間層70%(B),下位10%(C)で区切り,給与や,「クビ」に利用しているそうです.
(何でも正規分布でつかw 大数の法則って,そんなにすぐ成り立つんかい・・・orz
 てか,何でそんなに短期で評価して,首切りしたいのかその理由がよう解らんです.首切りが趣味なの?)

 上記の評価はこんな感じのイメージです.



「ジャック・ウエルチ わが経営」で,こんな事かいてます.

<引用>

 下位10パーセントを切るのは冷酷だとか,残酷だとか言う声もある.そんなことはない.まったく逆だ.
成長や昇進の見込みのない人間を残しておく事こそ,残酷であり,「間違った親切」ではないか.
結論を先延ばしにしていると,本人の仕事の選択の幅が限られ,子供を大学に行かせたり,巨額のローンを払う時期になって,会社にはいられないということになる.これほど残酷な事はない.
 活性化カーブ【引用者注:正規分布(ベルカーブ)のことを活性化カーブと呼んでいます.】による評価が残酷だとする考えは,間違った理論にもとづいている.間違った親切を実践している文化から生まれている.
なぜ大学卒業後は,成績の評価をやめなければならないのか.

 -ジャック・ウエルチ わが経営(上)- P255
</引用>

 思いっきり,「ニュートロン」・ジャック理論が間違っていると思いますが.まず,下位10%の人が,本当にいつも下位10%にいるかどうかはわからないのでは?
 というか,評価が悪い人間がなぜ発生するのかわかっているのでしょうか?
 (大体,「ニュートロン」・ジャック自体,平均値ではなく,バラツキを減らす事について述べているのに*1,何で人間のバラツキは減らさんの?)

おまけに,学校の評価の話が出てますが,どうなんでしょう.大体,学校の成績が良かったので,お金が稼げた,仕事が出来た!!という話は周りでは聞きませんが.

すざましい話,デミングさんは,自分の大学院の学生全員に成績Aをつけたそうです.*2 何故かは解ると思いますが.

*1-ジャック・ウエルチ わが経営(下)- P180で平均値とバラツキについて講釈してますけど,6σって・・・orz
*2-国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ- - P95参照

参考文献


・吉田耕作,国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ-,2000,ISBN:4-8171-0338-8
・Welch, F. John, Jr. et. al,宮本喜一 訳,ジャック・ウェルチ わが経営(上),2001,ISBN:4-532-163400-1
・Welch, F. John, Jr. et. al,宮本喜一 訳,ジャック・ウェルチ わが経営(下),2001,ISBN:4-532-163401-X