デミング博士のニューエコノミクスって

デミング博士の”ニューエコノミクス”に書かれた内容と,それに関連する内容を,「マターリ」と理解するページ

知識経済の公共政策【試訳】 その4

2005-12-25 16:36:47 | 経済
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CONCLUSION 結論


 情報と知識経済のエキサイティングな時である.

 先進諸国の工業は,金属-加工から知識創造に移ってきている.情報またはICT革命は,「重さ」と距離の影響を取り除くことを進めている.ポニー速達便の時代には,カンザスシティーからサンフランシスコまでメッセージを送るために,多くの馬,人と日数がかかったが,今日,それは,電磁界が少し揺れることによって,瞬きする間に行われる.我々は、非競合なアイディアの膨張性を誘発するために,問題の限界をゆっくりと解き放っている.

 多くの制度が,情報問題の適応反応としてだけの理解がされ,情報の不完全と知識創造を無視する経済モデルは,我々に劣ったガイダンスをしてきた.情報の不完全性の中心的な役割を見ることによってのみ,我々はロバストな制度を設計し,保全することを望むことができる.同様に,暗黙と現地の知識の詳細を理解することは,知識共有または,多様性のダイナミクスと同じ様に,企業,産業または国の競争性を測定するのに大いに役立つ.

 知識と情報の生産及び流通の方法が,鋼や車のようなモノと異なることを理解することは避けられない.プロセスでの知識が演じる役割は,正のフィードバックを示す傾向がある.社会及び経済生活で,我々は現在,複数の平衡【均衡】,経路依存(初期条件の感度)とロック・イン効果を示す,自己補強プロセスの遍在を見る.競争にとっての障害がより重要かもしれないが,より大きな分散から集められる利点は,全体より大きいかもしれない.

 事実としての知識,正統的な意味で,公共財であり,重要な外部性,市場での独占的または過度の依存を意味する,は,経済効率の結果でないかもしれない.市場実勢の力を信じる我々にとり,挑戦とは公共と民間の間にあるベスト「パートナシップ」を見つけること --役割及び責任の割り当てに,将来の知識経済に不似合いの,過去のパラダイムに影響される事をなくす事である.残念なことに,この新しい協力に対するフレームワークの探索中においての,単純なスローガン(「勝者を指名する」)は,あまり遠くへ,我々を導かない.我々は未知の領域の中にいる.そして,我々は互いの実験から多くを学ぶ.

 世界中至る所で,この新しい展望は,公共政策に深遠なる影響を及ぼしている.開発作業では,焦点は無形の知識,制度と文化へと移ってきた.世界銀行は現在以上の知識銀行に変わりつつあり,新しい焦点を影響に入れた,より包括的な開発フレームワークを創り出しつつある.より先進の,産業の経済で,革新と変化の文化を引き起こし,育てようとする挑戦は,確かに気は重い.

REFERENCE 参考


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知識経済の公共政策【試訳】 その3

2005-12-25 16:34:33 | 経済
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人の認知間違いの重要性と不完全情報


 エコノミストは,よくこれらの誤りをモデルの仮定上より排除している,物理学者が摩擦の影響を仮定上より排除するように.しかし,我々は現在,人間の誤りやすさのない経済学が,イアーゴ無しでオセロを演じているようであると理解している.シェークスピアのオセロの全てのキャラクタが,彼らが何を知っていて,その事について,正直に他者とコミュニケーションを取る事を知っているならば,現実の世界に対し,ほとんど洞察を与えていない,シンプルなストーリになっているであろう --いくつかの経済モデルのように.「あまりに人間的な」結果が,時々悲劇的でありえる間は,我々のゴールは悲観論でなくリアリズムである.現実的なモデルから引き出される経済政策アドバイスは,占い棒で発見されるようなアドバイス,エレガントであるが,完全な情報,限りない合理性と正直な行動の極端な楽天家モデルより,はるかに貴重であるであろう.

 実行される規則が,「完全な知識」に基づいて構成されるならば,実験または批判的思考法は,時間と資源の浪費とみなされるであろう.

 「1つの最高の方法【one best way】」は知っている;「継続的改善」の部屋は無い.しかし,現実の条件である,不完全な知識,限定合理性と誤りがちな判断の元では,規則は,許容できる結果を与えるという意味において,頑強さのために,現存しているか,潜在的に利用できる知識(機能するために,完全な情報を必要としない)で構成される必要がある.

中央計画の失敗:一つの例


 歴史の有名な例が,最近の中央計画経済の分散化した市場に向けた再構築である.信用,選好,テクノロジーと現地の状況についての知識は,経済エージェントの間に広められる.

 この情報の収集,加工,伝達,のための集権化メカニズムは悪化する,情報のメッセージがより複雑に(情報の断片を伝達する子供たちのゲームや,円のように広がる物語で例示されているような)なるように.この問題は,(機械をよりよく操作するノウハウのように)暗黙もしくは潜在的な行動のような知識を引き出し,伝達する難しさによって,輪をかける.

 最終的に,実験の「無駄な」重複を減らす集中化の試みは,革新を抑える.集中化した【組織】構造は,歴史の比較的短いスパンの時だけ働いた.e.g. 戦争の努力,または大きなテクノロジープロジェクト.集権化フレームワークの過酷な動機づけと,プリンシパル-エージェント問題面における,分権化した行動【behavior】を「命じる」試み,そして,信用できるコミットメントが不足している「分権化」の判断は,中央の権威によって,尊重され,支持されるであろう.

 彼らがもし,分権的及び,競争的な市場プロセスの中で,彼ら自身がエージェントならば,利用できるが,分散していて,ローカルで,暗黙である知識は,おそらくエージェントによって使われるであろう.その代わりに,中央の計画者より,もしくは【計画者】への非現実的な,空想的な情報移転と,同じように,理想的な中央情報処理のキャパシティを仮定すると,再構築の市場計画のタイプは,分権化されたエージェントによってローカルに役立つ利用可能な知識を示している.別々のエージェントはまた,新しい知識を発見するために,多くのローカルな実験(それは,お互いに「無駄に」重複するかもしれない)を行う.

 価格は,資源の相対的な不足を反映して,主観的な予想を事実の状況に合わせるために変化する.

 中心出力が鋼と似ている生産財のような静的環境では,集権化は少なくとも働く可能性がある.しかし,世紀が変わり,知識がますます重要になってくると,集権化の制約はますます明瞭になってきており,そして、エージェンシー問題はより厳しくなってきた.

企業の分権化と分配


 計画から市場への変革は,より複雑で不完全な知識と情報に対して適用させるための分散化の例に過ぎない.社内では,中央管理(テイラーイズム【科学的経営管理】)下による単純な反復作業の仕事から,より分権化し,そして業務の分配を受ける方向へ進むことが求められている,より複雑で知識ベースの仕事に移っている.中央指令【Centralcommnad】構造では、中央より与えられたルールに基づき,半自治チームによる水平のコーディネートを行う方法が与えられている.外部よりの測定による「1つの最高の方法」により組織された仕事は,継続的改善に導かれている,分配的な実験と置き換えられる.

 企業内で,局所化された暗黙の知識の移動は,水平の見習いのような関係,を通して主に起こる,マネージャーから労働者への垂直なトレーニングではなく.さらに,階層制を通して上向きに伝えられる情報は,明快な成文化された情報であるので,決定は,下層の成文化されていない暗黙の知識を除き,階層構造にてなされる.より良い決定は,より低い,知識源により近い階層でなされるかもしれない.分散された権限も,エージェント問題を軽くするために,部分的にプリンシパルとエージェントを統一する.これら局所的な決定が,多様な異なる仕事のカテゴリよりの入力情報を必要とするとき,決定者にとって,これら仕事のカテゴリの彼らの暗黙の構成要素を,ローテーションを通し取得するのがベストである.曖昧な仕事の境界と,ジョブ・ローテーションに対するこれらの議論は,専門化と労働の分割にに対する伝統的な議論を反対に切り離した.

政治的な過程の開放性


 経済制度のこれらの変化は,政治的な領域のカウンターパートである.

 ここでは再び,基本的なテーマとして,力が「完全な知識」と「完全な価値」と結合している,仮定的「理想世界」と対照的な,不完全な世界に対処するための,制度の再編成をあげる.実際の世界では,制度としては,開放と競争の構造が,知識と情報が完全【な世界】よりも足りないという仮定下では,ロバストであり,ベストである.社会的・政治的制度に適用されるそのロバスト戦略は,開かれた社会,例えば出版の自由,透明な政府,多元主義,チェック・アンド・バランス,寛容,思想の自由,と開放的な公的な議論,の制度につながる.再構築は,「知識は真実」というような閉じた社会より,「知識は真実を知らない」というような開いた社会に向かって動く.この政治的な開放性は,知識経済の方への移転の成功にとって必要条件である.経済の連続した変化を通して,勝者と同様に敗者が常にいた.敗者,痛烈に彼らの損失を知っている,は,しばしば,彼らに悪影響を与える変化を妨害するために,政治的なプロセスを使用しようとしていた.

 特別な利益受容グループの誘因【インセンティブ】だけでなく,プロセス中の社会全体の損失という悪意の事実の中で,彼らはどうやって作業をしたのか,なぜ彼らはしばしば成功するのか,の取り扱いを,今,我々は知っている.

 開放と競争は,異なる政治的存在であり,一番重要なチェックの一つを供給する.*21 しかし,変化の一部分が向上するであろうこと,我々が学んだ知識経済でのより効果的な生産方法,それらの特別な受容者による危険なポーズもすべて大きくなるであろう.

*21 このトピックに関しては,多量の文献がある.See, e.g. Olson (1982) and Dixit (1996) 開放性の役割.See Stiglitz (1998,1999)

PUBLIC POLICY FOR A KNOWLEDGE ECONOMY 知識経済の公共政策


最近のアメリカのいくつかの政策


 白書については,知識経済のために公共政策の多くの側面の扱いについて賞賛されなければならない.私は,そこで明らかにされているメッセージを,ここで繰り返したくはない;しかし,我々がクリントン政権の初期にそれらの見通しを得た時,これらの問題に集中する,より多くの注目点があったので,私は,これらの公共政策問題についての見方の一部を共有したいと思う.そして,私は,これらの展望を過去2つのセクションの分析的フレームワークと関連づけたい.

能力の向上


 知識経済における成功の鍵は,訓練された労働力である.多くの国が彼らの教育的なシステムを改善することに集中したことは,驚く事ではない.これらの全ては,推奨できる.3つの観察をしてみよう:

 最初に,長い目で見れば,知識経済における成功は,創造力,基本的技術に加え,より高いオーダーの経験に基づく技術,を必要とする.この種の創造力を育てる方法を見つけるこれらの国には,長い目で見れば,知識経済の競争におけるより多くの成功がある.

 第2に,知識経済における成功への鍵は,科学と技術の訓練である.政府助成金の正当な根拠が,科学教育にある: なぜなら,それらの研究業務において,彼らの仕事の利益はめったに捕らえる事が出来ない,我々が前に,本当の外部性に注意したように,【外部性が】そこにある.これらの外部性は,卒業教育の対象に最も選ばれるかもしれない.

 第3に,我々が望んでいるほど強くないかもしれない,最も競争が制限されているセクタの一つである教育セクタが,一つの理由である.それでも,市場メカニズムが動かず,完全に国家目的にかなうことができない正当な理由がある.私はスクール・バウチャと学校の分散についての議論をここではしないが,私は,我々が最も効果的に競争を増やすことができて,より幅広い公共の目的を追求することができる方法を,探し続ける必要があると考える.

産業政策及び調査のサポート


 この話の初めに,私は,白書の産業政策へのその思慮深いアプローチについて賞賛し,そして,私はポテトチップスとコンピュータチップに関しての私の前任者の意見に対し,批判的に言及した.産業政策は,「勝者を指名する」として,しばしば批判された;政府は,特にその仕事にふさわしくないと主張される.

 実際,そのセクターで生産性の巨大な増加に至った農業研究(19世紀の中心的な産業)のサポート,最初の電信線(ボルチモアとワシントン間,1842年)からインターネットの発展への,政府は成功した注目に値する歴史を経ている.

 しかし,議論は間違った方向の枠にはめられた.政府の目的は,勝者の指名ではなく,外部性が発生する革新を確定する事である.

 産業政策の批判者が基礎研究に対する政府支持の必要性を認めるまで,彼らは基礎と応用研究の間に明確な線がない点に,注意することができない;多くの実用研究プロジェクトは,大きな外部性を生み出す.政策の目的は,大きな外部性にて成功したプロジェクトを確定することである.このことについては,彼らは顕著な大当りの歴史を経ている.

 合衆国では,選択プロセスを,政府と民間部門間の協力関係の必要性によって,改善する努力があった.i.e. 自身の資産,そして,競争選択プロセスに係わることによる一部の危険を冒すことを,民間部門に要求した.これらの改革が成功しすぎていたという懸念がある; 彼らが政府が後援した研究プログラムと関連するレントを消し去り,彼らはまた、政治的なサポートのソースの一部を減らした.

 この話題より去る前に,3つの他の重要な観察がある.

 最初に,知識経済の革新の多くは,基本的知識,世界的な公共物,の上に立っている.基礎研究の重要性を認識せず,他者によって提供される基礎研究の上で労せずして得ようとする傾向が,あるかもしれない.結果は破滅的でありえる;少なくとも進歩のペースのペースダウンがある.

 少なくとも半世紀の間,合衆国では,基礎研究に対するサポートの多くは,防御予算を通して提供された.冷戦の終わりで,このサポートは減少した.基礎研究の残りが長い間応用テクノロジの進歩を供給し続けても,結局,井戸はかれ始める.今,プールを補充するためのより積極的な処置を始める時である.

 第2に,政府は宇宙ステーションのような空想的なプロジェクト【を行う】傾向を持っている.それらは,一般の想像力を引きつけるが,必ずしも不十分な研究資金を使うことの,最高の方法であるというわけではない.

 第3に,一つは新技術をサポートしている他のプログラムの難しい観察をしなければならない.これらの付加される影響を評価するために.例として,多分大きなな効果が無い向上研究と同じ意図の合衆国の小企業に対する研究サポートプログラムを証拠としてあげる.*22

*22 See Wallsten (1998)

競争


 白書は,正しく競争の重要性を強調している.前に,私は,知識経済における効果的競争に対する本当の脅威を強調した.我々は,妥当な競争法と知的所有権制度を再検討する必要がある.また,2,3の観察を取り上げてみよう.

 最初に,我々がグローバル経済へ移行すると共に,競争の問題はグローバル・レベルとなってきた.競争当局の間における大きな協力が望ましいであろう,特に,競争規制の施行及び,これらの規制のレベルアップに導くのであれば --最小公分母より,むしろ最大のほうである.世界はより競争的な市場から利益を得,そして,世界の国はそのゴールを達成するために協力して働く必要がある.

 第2に,関税をもっと減少させることを進めている間にも,ダンピング課税と相殺関税(CVD's)を含む非関税障壁は,重要性を増している.両方とも,競争だけでなく,新しい知識経済をサポートする産業政策も,徐々にむしばむであろう.遺伝子工学による植物に対する取引制限,他のラッダイト処置は,科学的な進歩を同じように妨げるであろう.

 第3に,白書は,協働を助長しようとするが,共謀にすべり落ちているか,基礎を暗黙の調整におく,アンチ-または,少なくとも非競争的政策の提供について,私が行っているほどの,強い警告を発していない.

金融市場


 私は,知識経済の中心での合衆国の成功の重要な理由のうちの1つが,その力強い資本市場と,特にベンチャーキャピタル資金であると考えている.アメリカの資本市場は,多くの他の国より,長く,激しく競争してきた.独占禁止当局は,多くの他の国で見られる,銀行業務のある種の集中化を不信の目で見ていた.この種の革新的な貸出を助長するために,他に何をすることができるか明瞭でない間は,明らかに,税制はその役割を果たすことができるかもしれない.

税制政策


 合衆国では,革新,一部を落胆させたが,を助長した税法の特徴がある.研究・実験付加税控除は,長く公式の恩恵を受けたが,年基礎の上で更新されるだけであった.おそらく,その有効性を疑いうるなにか証拠があるであろう.最近制定された条項が,小規模の新しい企業(キャピタルゲインを免除することによって)を助成する,しかし,あまりにも早く,新しい知識ベースの企業の企業の助成範囲を含み,その効果について語られている.

 損失控除の制限は,しかし,リスクテイキングの主な妨げと同じ救いである.*23 研究とは,自然に,リスクの引き受けになる.それは,石油を求めて穴を掘ることに似ている.

 成功は,10に1つの成功した穴にぶつかるかどうかどうかで測定される.法人税は,政府を沈黙のパートナとして導くと,しばしば言われる;しかし,危険を共有するパートナがリスクテイキングを奨励することができるまで,パートナ,成功は共有するが,失敗はそうしない,は,リスクテイキングを妨害しているようにみえる.

 合衆国では,それがリスクテイキングと企業家精神,知識経済に関連する種類の,を援助するという理由で,キャピタルゲインの優遇処置が擁護された.しかし,大部分の税特恵は,この種の企業家精神にでなく,たとえば,投機的な不動産貸出に向かう.私は,前に文化の変化の重要性に言及した.税制,本当の革新に報いると同じく,それが不動産投機の収益に報いる,は,革新の文化をサポートしない.

*23 See Stiglitz and Auerbach (1983)


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知識経済の公共政策【試訳】 その2

2005-12-25 16:32:21 | 経済
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BASIC ANALYTICS OF THE KNOWLEDGE ECONOMY 知識経済の基本的解析


 知識経済における成功が文化における変更を必要とすることは,今,明確になったであろう.しかし,私はこの幅広い見通しから立ち去り,そして,経済学者のより伝統的なツールキットのフレームワークの範囲で,知識経済を見てみたい.私は,知識が普通の日常品と若干異なる基本的な方法,知識経済を組織させる方法への基本的な含意の違いと,それに沿った,公共政策への基本的な含意があると主張したい.

希少性を問題としない【Scarcity-Defying】アイデアの特性


 最初に,そして,おそらく最も基本的に,簡潔に触れられる事実は --知識は公共財である.トーマス・ジェファーソンは,以下のようにして知識と情報の非競合性を解説した:「私から考えを受け取って,私のものを少なくすることなく指導を受け入れる者; 私の灯心で彼のを点灯する,私を暗くすることのない光を受けます.」*10
 知識によってドライブされる動的プロセスの特性は,最終的に知識の不足を問題としない膨張性,または非競合な面に由来するように見える.一旦知識が発見されて,
公表されるならば,単純には,多くのユーザに限界費用ゼロで付加される.

 知識の純粋な非競合性と,普及の低コストとが,異なる概念的なものであることは,役に立つ.最新のテクノロジーによる,情報革命の大きな進歩からの結果の一つには,
処理のコストを下げて,情報を普及させることである.しかし,情報のどんな材料の具体化または符号化は,まだ厳密に言って競合的である.図書館からの遅延通知が証明しているが,異なる場所の2人は同時に,同じ本を使うことができない.そして,インターネットからダウンロードする待ち時間が証明しているが,電話網の電子パケットはまだ競合的で,混雑効果を導いている.それは,無形の(「実体の無い」)知識,情報,アイディア,コンセプト,機能と,他の思考の抽象的なものは,非競合的である.人々(学習)と物事(アプリケーション),それらは時間とリソースのコストがかかっている,具体的な知識のプロセスである.

*10 See Jefferson (1984)

知的所有権


普通でない財産権


 純粋な公共財は,非競合で,そのうえ特定のユーザーから締め出されることができない利益である.それが純粋でない公共財と考えられるかもしれないように,知識の外部性には限度がある.しかし,効率的な使用には,料金が存在しないことが必要である;料金が不要でも,企業には知識を生産する誘因【インセンティブ】が無い.知識の民間による供給には,何らかの「保護」が必要になる --知識は,簡単には,公的に使用可能になるようには作り出せない.ある場合には,企業秘密でも行える.しかし,他の場合は,知的所有権のより幅広い保護が必要になる.

 あまりによく,しかし,知的所有権の違いと他の財産権では,もう一度注釈を付けられる.明らかに,私にはそのような資産を得る誘因【インセンティブ】があることになっているならば,明らかに,私の物理的なものに対する財産権を,窃盗から保護する政治制度が必要である,そして,政府が,できるだけ物理的なものに対する財産権に,最も効果的な保護を与えられるよう,努めなければならないという一般的な合意がある.類似による推理,いくつかは「強い知的所有権制度」に賛成し,顕著な違いに注意することができなかった.特に,全ての考えは他の取引を基にしている.そして,アイディアの一般的なプールに頼っている.確かに,基本的なアイディア,例えば数学の定理(たとえば、最新のコンピュータに基礎を提供している)は,一般的に特許を受けられない.

 知的所有権の強化の,よく意味することは,---知識--- 研究に重要な要素の価格を上げることをである,そして,このように,極端に「強い」知的所有権制度が,実は革新のペースを妨げるものかもしれない.特許の幅(範囲),新規性と,その有効期間の規定は,難題とトレード・オフを引き起こす:静的と動的の効率の間(文献中で大きな活字で強調される)でだけでなく革新の初期と継続の間でも.我々が知識経済へ移行するに当たり,これらの不可欠な問題への,より多くの思考が必要となる.

外部性


 もし知識が純粋な公共財でなくても,革新と関連する広範囲な外部性(流出【Spillovers】)がある.トランジスターまたはレーザーの最大限の恩恵は,それらの革新に貢献した人々に,明らかに起きなかった.

 経済諮問会議の前任者にしてスタンフォードの同僚,マイク・ボスキンは,彼が,経済がポテトチップまたはコンピュータチップどちらを生み出しても,気にしないとよく話していた.これは,産業政策への彼の強い反対を要約している,彼の皮肉である.しかし,彼は間違っていた.よりおいしいポテトチップを作る誰かと,よりよいコンピュータチップを作る誰かとの違いが,あるかもしれない:外部性の大きさ,流出は,前より後のケース方が1桁,大きいかもしれない.私は,産業政策と勝者の選択に関する議論の後の方で,このテーマに戻る.

競争


 白書は,正しく,知識経済の成功を得るための競争の重要性を,強調している.前日までの資本主義についての忘れられた議論の一部に,世界が新しい挑戦に直面している,私には,それが注目に値すると思われる.1930年代に,多くの心配が,独占資本主義についてであった; 懸念は,どの様な経済でも,関連しあう少数の企業の効率性のために,新しい産業テクノロジは,十分に大きなスケールの生産を必要としており,経済力(従って,政治力)の集中を導く.アダムスミスの有名な見えざる手定理は,競争の存在に基づいている.しかし,競争は新興産業経済と密接な関係であるのか?

 幸いにも、市場スケールは拡大し,技術は進歩したが,大部分の(しかし全てでは無い)産業は多数の企業があり,アダムスミスの定理の理想である完全競争には,多分満たっていないが,しかし,十分すばらしい事に,独占資本の恐れがあることは,明白でないように見える.

 しかし,知識は,ほとんど定義上,収益が競争を徐々にむしばむかもしれないところまで,スケールを増すことを形式化する.これらの懸念は,コンピュータ「言語」を使用するための提携のような,大きなネットワーク外部性によって補強される.これらネットワーク外部性は,更なる結果がある:これらは正のフィードバックを引き起こし,効果をロックし,そして,それらは平衡【均衡】とダイナミクスのために深い結果があらわれる;たとえば,複数の平衡の存在(一つのパレート低位とその他との均衡)と経済は外部履歴効果(歴史問題)をはらむかもしれない.*11

 しかし,私のこの点における懸念は,効果的競争に対する逆効果である:独占資本主義についての心配が,再度繰り返されている,今回は国際的スケールであり,注目の中心は,マイクロソフトの動向である.裁判中の案件の結果を予断しなくても,マイクロソフトのPCオペレーティングシステムのほとんど独占的な立場による,優位性をもたらすような履行に対する契約デザインを行い,そのポジションの向上を意図していることは明白に見える.私がホワイトハウスにいたとき,経済諮問会議と科学技術政策オフィスは,革新のペースのためにおきる潜在的な悪い結果について心配していた.もし,この契約の履行が法律に違反していないように見えるならば,問題に対しては,おそらく,法律を変えなければならない.

 いくつかの基本的な問題が提起される.最初に,この例は極端に強い知的所有権の危険性を示している.もう一つの例は,何が問題になっているかについて,さらに説明するかもしれない.高いレベルで成功したコンピュータープログラムが,プログラムを「終了する」ためにシンボルqを使うと考えてみよう.その「革新」は,知的所有権によって保護されていなければならないのか? そうすることは、より広く,共通言語の開発及び革新のペースを妨げることが出来る.

 歴史的に,特許は時々,競争(そして,競争的革新でさえ.)を抑えるのに用いられた.そして,一つの一番有名な例は,発展初期の自動車産業における,ジョージ・ボールドウィン・セルダンの馬なし特許,自動推進車両,を使用したカルテル創立の試みであった.時々引用されるもう一つの例は,1975年に連邦取引委員会のアンチトラスト調停で覆った,コピービジネスに対する他の新加入者の参入を防止するための,ゼロックスによる基本特許の使用である.*12

 第2に,知識経済においては,競争はアロー-ドブリューモデルの価格作用より,シュムペータリアン競争によってよりよく記述される.前者【アロー-ドブリューモデル】では,価格は限界費用まで移動する.知識経済では,企業は,大きく限界費用を上回る価格で,それらの利益に頼る.

 私は,ほぼ20年前より,競争の2つの形の大きな違いに関心を持つようになった.経済革新の研究プログラムに対する動機を与えた.*13 鍵となる洞察のうちの1つは,標準の厚生定理(市場経済の効率上の)が適用されなかった,*14 しかし,シュムペーターの推測,新加入者による更新が競争規律を提供する,は一般的には真実ではなかった.たとえ参入コストが低くても,大きな独占に導くのであれば,高価格を保つだけでなく,革新のペースも競争下よりかなり遅くなる.*15 我々が「知識経済」への移行をすると,丁度,新技術が競争の抑制のために,より大きな範囲の供給をし,その結果は,ますます逆になるかもしれない.

 私は,知識経済にとって不可欠である創造力が,心の契約を必要とすると以前に主張した.組織的に小規模の新しい企業は,大きな確立した官僚機構よりも,より肥沃な土地をこの種の創造的な契約に,しばしば供給してきた.最も重要な革新の多くは,これらの小規模の企業から始まった.これらの会社は,一般的にいくつかの不利,安価な資本へのアクセスの不足のような,を抱えた状態より始める.もし,それに加えて,市場(競争抑止的な)バリアが人工的に作られるならば,革新のペースは遅くなるであろう.

*11 See Shapio and Varian (1999)

*12 See Kearns and Nadler (1992)

*13 See 例として,Dasgupta and Siglitz (1980a,1980b)

*14 確かに,市場経済の効率の仮定の基礎をなした厚生経済学の標準の定理では,情報と知識は,経済のどんな参加者によってされる,どんな行動にも影響を受けないと仮定している.このように,標準の経済的理論は,知識ベースの経済の効率について,ほとんど何も言えない.より一般的には,グリーンウォルドとスティグリッツ(1986)で示したように,情報が不完全な(そして,参加者の行動が影響を与える事が出来る)経済のときはいつでも,一般に,制約的なパレート効率でさえない.(i.e.情報の不完全性及び,更なる情報を得るためのコストによる限界の強制を考慮しても。)

*15 See Stiglitz (1988) and Dasgupta and Stiglitz (1980b,1988) See also Gilbert and Newbery (1982)

知識と情報の組織面


 知識と情報は,他の日常品といくつかの面において異なる,そして,情報と知識の市場における結論は,著しく他の日常品の市場と異なっている.たとえば,定義上,
情報の各々の部分は,情報のその他の部分と異なる:本質的に,情報は,競争的市場の特性である,均一性という重要な属性を満たすことができない.特許によって保護されていない知識(情報)の特性のために,本当の問題が,市場の取引にある:どうやって,私は知識を売ることができるか? 私は、あなたに私が明らかにするもの(あなたが【教えられる】以前にはおそらく知らなかった何か)についての少なくとも何かを,話さなければならない;このように,市場取引で契約締結プロセスでは,私は私の資産の一部を失う.実際には,知識と情報の市場は,評判,継続関係,そして,信用に,極度に依存する.

企業での知識の取引


 これは,会社内で起こる無数の知識取引で最も著しく見られる.組織内での知識共有の「支払い」は,大体が承認と名声または将来の相互利益の可能性である.しかし,マネージャまたはチームリーダがチームメンバのアイディアを彼ら自身のものとして,あるいは,特定のチームメンバの間での共有を一方的に与えるならば,知識の「供給」が減る.

 労働者は彼らの業務の暗黙の知識を成文化することに協力しないであろう,彼らが,その事が彼らの雇用を危うくすると感じるならば.知識市場は,相互利益,若干の代償,が取引上の信用の上に築き上げられなければならない.

 「知識は,力である」いくつかのケースでは,組織で入手自由でなければならない知識が人工の不足または独占を生じさせるために秘蔵されるかもしれない.知識共有が最も重要かもしれない困難な場合,ダウンサイジングの脅威は,人々に対する彼らの重要性を増やすために,彼らの知識を秘蔵させるかもしれない.もし知識の秘蔵が報いられるならば,知識制約の悪循環が知識共有の良循環に取って代わる.

 他に,私は,部外者に対する彼らの力を増やし,乗っ取りのチャンスを減らし,レントを増やすために,マネージャがどのように,非対称情報をおそらく故意につくることついて述べた.*16 このような問題は多分何処の企業でも起こりうる,特に知識ベースの企業においては,特に鋭いかもしれない.

 需要側では,組織的文化は知識の需要を人工的に制限する,知識の必要性を,それが無知の告白のように(e.g. 方向を求めている男のドライバーのように)侮辱するならば.しかし,知識を求める要求に対するより大きな制限は,「ここで発明されなかった【Not Invented Here】」(NIH)シンドロームである.各々の個人またはグループは,彼らが他所から得る可能性がある知識の重要性を減らし,彼らがすでに持つ知識の力を大きく装飾する傾向がある.これは裏庭で「あらゆる雄鶏は,彼自身の堆肥のトップで鳴くのを好む」と言っている事で捕捉できる.

 知識が組織によって「商標を付けられる」とき,この問題も起こる.組織の名声,及びイメージはそのブランド化された知識に結びつけられる.組織が利益を得ることが出来るかもしれない,優れた知識が他所にあるかもしれないというどんな告白も,組織を「非難し」,そのブランドの評判を「傷つけ」,ライバルを助けることによって,少なくともそのフランチャイズ価値を「減らす」とみなされる.それが社風であるならば,組織的学習はほとんど続かない.ケン・オルセン,ディジタル・イクイップメント・コーポレーション【DEC】の創設者,が会社内で,ミニコンピュータと「同一視された」,「パソコン」のどんな議論でももしくは言及さえ禁じたとき,彼は会社がパソコン市場によって乗っ取られる,その最終的な運命を宣告した.*17

*16 See Edlin and Stiglitz (1995)

*17 See Davenport and Prusak 1998, p.44

開放と知識移転


 これらの知識原則は,国全体まで持っていける(必要な変化を導き出せる).基本的知的所有権が通常侵害されるならば,知識の供給は減る.信用関係が甚だしく侵害された(e.g.旧ソビエト連邦にて財政的および知識資本両方をもたらしている会社に,いくつかのケースで発生した)所では,学習機会は消える.背任は,すぐには回復されない.

 外国貿易での国の開放性は,その経済の成功が比較優位のスタンダードな取引モデルで予測されるより,はるかに大きな影響を及ぼすようである.説明の1つは,知識である: 取引と海外よりの直接投資は,重要なチャンネルを知識の伝達に提供する.

 知識はまた,開放された国境を横切ることにより得る事が出来る.*18 スロベニアとアルバニアには,西ヨーロッパに対して国境がある.しかし,国境は等しく開いていない.スロベニアは社会主義国で最も開いた国境を持っており,また,現在一人当たりのタームが最も豊かである;アルバニアは最も閉じていて,現在最も貧困なポスト社会主義者国である.(確かに,一人当たりのGDPにおける相違をもたらした他の違いがあった.しかし,アルバニアの【ヨーロッパに対する】絶縁は,確実に貢献している.)東アジアでは,日本の経済発展の鍵となるイベントである,明治期の近代化促進の決定により始まる,19世紀後半の海外の知識への劇的な開放ある.

 知識移行も,海外よりの直接投資のコースをたどる.例えば,リーン生産方法についての学習と,アメリカの文化へのそれらの適合に対する主要なソースは,合衆国に対する日本の生産施設の直接投資であった.(太平洋をわたる知識の流れは両方向であった.)

*18 「値を高く見積もるのは困難である,現在の人的改善の低位において,彼ら自身と異なった人とコンタクトをとる際には,人間性の順位を占める,そして,思考と行動のモードと,ありふれたそれらとではリンクしない...その様なコミュニケーションは常にあり,特に現代では,進歩の初期のソースの一つである.」(J.S.Mill,注釈はHarschman 1981, p.17) 【この訳であっているかどうか不安です】

経験


 知識ベース変化にとって重要な開放性のほかの実験タイプは,実験意欲である.実験しない社会は,中世のヨーロッパのような閉じた静的な封建的制度のような,歴史の終末を迎えるかもしれない.現代のヨーロッパは,それ以外は閉ざされた中世の社会の「隙間」で成長し,そして,経済及び社会的組織の新しい形態がテスト出来た「特別地区」として機能した町から発展してきた.実験は,新しい知識と変化の開放性を必要とし,そして,変化は力自身を常に歓迎しないであろう.*19

*19 「そして,成功する変化は,実験するかなりの自由を必要とする.その様な自由のコストは,社会の統治者の支配感覚を犠牲にする.まるで彼らが他者に社会の将来を決定する力を認めているように.大多数の社会,過去と現在,は,それを許さなかった.また,彼らは欠乏から逃れた.」See Rosenberg and Birdzell(1986)

アイデアの市場:分権化,競争,そして経験


プロジェクト選択における多元主義


 多元主義と競争,しばしば開放性と関係している,は,革新と知識の成長に不可欠である.経済と政治的な規則の構造は,アイディア,革新または,プロジェクトの融資及びインプリメントの選択に力強く影響を及ぼす.分権化はより大きな実験と学習の目的を提供し,そして,分権化しているユニット間の競争に,必須の拍車を提供するかもしれない.

 数年前,2つの対立する両極端なプロジェクト選択をコンサルティングする際に,私はこれの1つの面を調査した:階層的なシステム,ここでは提案が受け入れられるためには,連続するハードルを通過しなければならない,あるいは,デジション・センタの代わりがある分権システム,ここでは,提案は彼らの誰か一人によって,受け入れることができる(そして,拒否された時は,第2のチャンスを得ることができる).階層的なシステムは,【合格ラインの】端にある多くの良いプロジェクトを拒絶するというエラーの傾向があり,分権システムは,【合格ラインの】端にある多くの悪いプロジェクトを受け入れる傾向がある.2つの(そして,いろいろ交じり合っている)システムの適否は,悪くなるプロジェクトを受け入れる場合の相対費用対,良くなるプロジェクトを拒否する場合の機会費用に依存する.*20

 階層的システムは,悪いプロジェクトが致命的になる --戦争開始を判断する,ような受け入れを判断するのには,ベストであろう.

 しかし,悪いプロジェクトが致命的にならず,リソースの浪費だけで済むならば,歴史の判定は,政治的または,経済的単位のより分権化したシステムに支持を与えている.

 分権化システムでは,意思決定者は,良いプロジェクトを見つけるために他の者と競争する.集中化した,もしくは独占のプロジェクト選択では,拒否された革新が競争者によって採用されるという恐れがなく,そして,受け入れた革新は独占に不確かな影響を及ぼすかもしれない.このように,階層的な集中化は,古代エジプトからソビエト連邦までの,均一でかつ基本的な静的社会のレシピであった.

 対照的に,コロンブスは,彼の提案をフェルディナンドとイザベラに提出する前に,ポルトガルの国王と2人のスペインの公爵によって【その提案を】拒否された.4年待った後,彼は再び拒否されたが,決定は2年後の1492年に翻された.このように,選択の多元的で競争しているチャネルは,革新を促進する.

*20 See Sah and stiglitz (1986)

ロバスト性に向けて:不完全情報のいくつかの含意


 ロバストの方へ:我々は不完全な世界に住んでいる --そして,その不完全さは我々自身の誤りやすさを映しだしている.我々は,我々が知りえることを,全て知ることができるというわけではなく,そして,我々は関連した知識を,我々を常に圧迫している"knoise"(「知識」のようなふりをしている雑音)からふるい分けるのに苦慮している.我々は,我々が知っている事に基づいて,劣った決定をしているかもしれなく,我々はしばしば他者に我々の知識を伝えることに失敗し,そして,他者と取引している時,我々は,我々の知識またはそれの欠如をゆがめて伝えるかもしれない.これらの全ては,企業と他組織の仕事と同様に,経済取引と他の社会的相互作用に影響を及ぼす.

その3へ

知識経済の公共政策【試訳】 その1

2005-12-25 16:30:28 | 経済
もう年末です.年末年始はこの論文をもっとじっくり読みたいので,試訳をさらします.

 ちなみに,この試訳は,世界銀行さん等に突っ込まれた場合,消すかもしれません.
 時間があれば,「杉田玄白プロジェクト」にでも応募するかな….

Original: http://www.worldbank.org/html/extdr/extme/knowledge-economy.pdf

【】内訳注です.

PUBLIC POLICY FOR A KNOWLEDGE ECONOMY 知識経済の公共政策



Joseph E. Stiglitz

ジョゼフ E. スティグリッツ

世界銀行副頭取 兼 チーフエコノミスト

産業と貿易部局

及び

経済政策研究センタ


London, U.K.

January 27, 1999


INTRODUCTION
イントロダクション

KNOWLEDGE AND DEVELOPMENT
知識と開発

開発・知識と世界銀行
知識文化
思考方法の変化
暗黙の知識と現地適合
行動学習と内発動機

BASIC ANALYTICS OF THE KNOWLEDGE ECONOMY
知識経済の基本的解析

希少性を問題としない【Scarcity-Defying】アイデアの特性
知的財産権
普通でない財産権
外部性
競争
知識と情報の組織面
企業での知識の取引
開放と知識移転
経験
アイデアの市場:分権化,競争,そして経験
プロジェクト選択における多元主義
ロバスト性に向けて:不完全情報のいくつかの含意
人の認知間違いの重要性と不完全情報
中央計画の失敗:一つの例
企業の分権化と分配
政治的な過程の開放性

PUBLIC POLICY FOR A KNOWLEDGE ECONOMY
知識経済の公共政策

最近のアメリカのいくつかの政策
能力の向上
産業政策及び調査のサポート
競争
金融市場
税制政策

CONCLUSION
結論

REFERENCE
参考

INTRODUCTION イントロダクション


 過ぎ去りし数世紀は,いくつもの根本的な経済変化の舞台になってきた.そして根本的な経済変化の各々は,社会の自然に影響を与えてきた.

 産業革命は農業から工業への経済の変化の変化の土台となってきた;生活の基盤が向上しただけではなく,生活の場所も,田舎のコミュニティーから首都圏大都市へと変化してきた.過去数世紀の科学革命は,変革自身のシステム化の中に結果を出し続けてきた:新しいイノベーションを作り出すプロセスは変わり続けた,トーマスエジソンのような隔絶した独立のイノベータから多くの開発研究所に.知識と情報は,現在では百年前の車や鉄鋼のように作り出されている.これらの,ビル・ゲイツのように,他の者より,よい知識と情報をいかにして作り出すか知っている者は,かけ離れた褒美を得る.百年前にいかにして車や鉄鋼を作り出せるか知っている者が,その時代の大事業家になったように.

 新しい経済は,古いものと,どの様な法則の違いが支配しているのであろうか.確かに,我々はいまだに希少性の経済と向かいあっている.しかし、経済が農業から工業への移ると同時に,生産における土地の重要性の劇的な変化がおきた.経済のファンダメンタルの見直しでは,知識経済の必要性に移ってきた.知識は他のものと異なる:公共財の中心的な属性の多くを持っている.確かにグローバルな公共財なのだ.*1 政府はすべての所有権の保護の重要な役割を演じるが,知的所有権における役割を演じる時には,はるかに複雑になるのだ:これらの権利に妥当な定義は,明らかではない.そして知識経済において独占の危険は,工業経済ではたぶん増大する.それらは,我々にとって,過ぎ去った数世紀でおなじみになった,工業経済の市場的とは異なる,知識経済における政府の役割の3つの例でしかない.

 私が行いたい,しかし,3つの方向での技術的な経済の課題:開発の中での知識の役割,知識経済の「文化」,そして民主化プロセスにおける新しい経済のいくつかの含意,の向こうにある幅広い議論がある.

 この私がアプローチしたい3つの見通しに対する知識経済の問題;情報と知識の経済に30年間を捧げた論理屋;経済諮問委員会の委員長,そこでは今の白書*2 に関係する多くの同じ疑問の焦点に対し我々がもがいていた,そして,直近の世界銀行のチーフ・エコノミスト.私が今朝、展望を紡ぎだした3つの見通し,私の現在の視点であるこれらの問題より見ていきたい.

*1 See Stiglitz (1995,1998)

*2 Department For Trade and Industry (1998a)

KNOWLEDGE AND DEVELOPMENT 知識と開発


開発・知識と世界銀行


 世界銀行は,発展途上世界の成長を促進し,不足を減らすことに関係している.我々のごく最近のWorld Development Report(1998/99)は,テーマである開発のための知識に捧げられ --そして,私はもちろんそれがU.K.白書で引用されているのを感謝している.長年,経済発展のために受け入れられた英知は,インフラストラクチャと工場の建設に集中していた.

 官僚は,これらの建造物を,発展の具体的な証拠として訪れた経済学者に,誇りをもって示すことができた.焦点は,「重たい経済」にある ---我々が知識を基礎とするものを比喩として「重さのない経済」と使用するならば.我々は,今ではこの戦略を本当に未完成なものと見ている--- 実際には,発展の「簡単な部分」を焦点にしているだけである.

 今日,世界銀行は,我々の仕事における包括的な新しい開発フレームワーク*3 に,目に見えない知識,制度,そして文化をより強調したものを取り込もうと試みている.そして,例として,知識銀行*4,インフラストラクチャへの投資のためだけの銀行ではなく,になることである.我々は,経済発展を,知識,制度と文化とをカバーする幅広く包括的な感覚において,建設事業のようではなく,より教育のようであるように,見ている.

 焦点の変化は,最も成功した一部の国々の経験 --と世界中での我々の努力に対する多くの失敗によって動機づけられた.多数の評価では,資本の蓄積は,東アジアの国々での一人当たりの収入の増大の一部分だけしか説明出来ない.
彼らの奇跡的な成長は,主に知識のギャップを埋めたためであると考えられる,この先進及び発展途上国間のギャップは,どのように入力を出力に変えるかについての知識である.たしかに,知識のギャップを埋めたものの一部は「購入された」,先進技術を含んだ資本投資の結果,それ自体である.

*3 See Stiglitz (1998b)

*4 この知識銀行のコンセプトは,アニュアルミーティング上で,Wolfensohnにより紹介された.See Wolfensohn (1996)

知識文化


思考方法の変化


 しかし十二分な知識が得られた:思考方法の変化があった.この変化の定義は困難である:変化,貧困の中にぬかるみ続けていることは国々にとり必然でも必要でもないとの認識,を認めること,そして,多分一番重要なのは,一般の知識と教育及び,固有の科学技術への集中化への評価である.

 確かに,一番進んだ社会,科学的アプローチ,それに適した利益を私たち全員に与えるものと同じように多くものにおいてさえ,小さな円の中に集中して留まっている.--学問から政府へと移っていった者全員に事実のすべてが明確に見えた.開発プロセスは,基本的な思考方法の範囲の広げるように見える,人生の曲がり角すべてでそれらをより一層充満させていく.
 私は,より多くの発展プロセスのハイライト面の研究で,工業国の社会と経済を成長させた様相がしばしば解った.なぜならば,それは,家庭に力強い文化の変更をもたらせば,新しい知識経済における成功を伴う.

 私が,プリンストン,ニューヨークの郊外,ウォール街の文化がその長い影を投げかけている,に,スタンフォードに,教育者として,それから,ワシントンに移り住んだときに,これらが生き生きと見られた.スタンフォードでは,本当に起業家精神を感じた.廊下やレストランでの,新しい企業についてのいつもの話,新しい製品や新しいビジネスのアイディアの中の優位性の移り変わり.ベンチャーキャピタルは新しい機会を探し出して,資本だけではなく,管理のノウハウも提供している.ウォールストリートの大きな注目の中心になる,乗っ取りや併合,企業のリストラのような,すでにある資産や会社の利用の再編成にではなく,創造性や富の創出に焦点を当てる.ここには,どうしたら国がこのような文化を創造できるかの法則がない,どうしたら企業がそのような文化を創造するかの法則がないように.

 しかし政府はこのような役割を持っている.--教育や,ある種の創造性の促進,科学的な企業家が必要なリスク・テイキング,成果をもたらすアイディアの促進のための制度,規制,ある種の活動に対する報酬をもたらす税制の中の役割がある.後ほどの議論の中で,もっと詳細で技術的な,政府の政策の経済的側面に焦点を当てる,しかし,私は私の信念を十分に強調できない.もしこれらの文化のもっと根本的な変化であれば,これら変革のすべての利益は感じるだけになるであろうとの.

 技術的な話題に移る前に,暫く知識経済の創造での制度及び,文化の中心的な役割を,発展途上国への知識の移転についての我々の経験を中心に,現状を少し語ってみよう.

暗黙の知識と現地適合


 Analytical Background Report*5 は,無成文化もしくは暗黙の知識の重要性とそれを移行することの困難を認めている.事実,企業の競争優位の基礎である,スタッフに埋めこまれている企業の暗黙の知識ベースを移すことは,確かに困難である.しかし,他の面から見れば,これは暗黙の知識を移すことが,知識を,ベーコンが,お金を --できるだけ広く撒かれる「肥料」のようなものと見た,のと同様の見方をしている,経済発展ビジネスにおける我々に対する相当な障害であること,を意味している.

 技術移転を例としよう.技術マニュアル,青焼き【訳注:昔,コピー機が無い時代には,図面の原紙の下に感光紙を敷き,光を当てて,それを現像しコピーを作っていました.この感光紙は光が当たったところが青くなるので,「青焼き」もしくは「青写真」と呼ばれていました.】,取扱説明書は,成文化された,技術的な知識の氷山の一角である.成文化された技術情報は,発展途上国で非常に不完全になるかもしれない,文脈上の知識と実践の,全ての背景を呈する.むしろ異なる環境で新技術を実装することは,それ自身が創造的な行為である,コピーされた行動【behavior】ではなく.複雑な技術的システムを得るには,その規準の近くで機能させ,そして修正する,それが両方とも動作不良を起こす時,発展途上国に,簡単に移行することができないか,「ダウンロード」することができない,暗黙の知識のゆっくりとした蓄積に頼る.

 このことが切干された【cut-and-dry】技術的な知識に関することにとって真実ならば,私有財産市場経済の経済制度を発展途上国へ「移す」際の問題を想像出来る.
"移す" この言葉は,この投資が不確実な性質を意味するがために,rised-eyebrow 引用符で囲れてなければならない.それでも,我々は適度な制度的フレームワークが発展への鍵であると信じて来た.

 制度のどの部分が,特有の,いわば,アングロ-アメリカンな環境で,どの部分が一般的であろうか? アメリカのミッドウェストで,野球,フットボール【訳注:多分アメリカン・フットボールです】とバスケットボールと共に育っている少年にとって,大部分の他国がこれらのボール遊びをしない,そして,大部分の国が,ボールが手で触れられないゲームをしている,とわかることは,大変なショックである! アメリカは,明らかに,世界では,「フットボール」【訳注:サッカーですね】をプレイする事が一般的であることを,教えることに成功していない.

 しかし,経済学者として,我々は現地経済の実践における「騒ぎと,叫びの混乱」の中に一般原則を発見しようとし,そして,我々は経済制度を改革するために,これらの原則を適用しようとする.これが,ドンキホーテのような冒険,「世界に,フットボールをプレイする,より良い方法を教える」,以上であることであるならば,我々は制度の知識移行の微妙なところを考慮しなければならない.経済動因は,経済,政治,文化的な要因の,全部のマトリクス上で作用する.そして,それらの多くは,「訪問経済学者」にとって明らかでない暗黙の要因である.「教科書モデル」の速い移植は,現地の土地では,たぶん根づかない.

 その代わり,移植または,接木の長いプロセスが必要である.そのプロセスは,ワシントンでは設計が出来ない.地元の経済エージェントと機関 ---現地での暗黙の知識を持つ--- は,現地の経済,政治,文化的な要因のマトリクスの範囲内で,より一般的な制度のスキーマを再現するプロセスを担当しなければならない.それは,世界銀行の知識ベースの開発のビジョン,国際と地元の機関の複雑な相互作用,このビジョンはワシントンで開発された「フットボールをプレイする方法」のような一般的なレシピのアイディアより,前に進まなければならない.

*5 Department for Trade and Industry (1998b)

行動学習と内発動機


 発展とは,人々を,彼らの考え方を変えることに,いつでも巻き込む,社会の変化である.外部の機関は,人々に,彼らの考えを変える,または,何を信じるかを強制することが出来ない.*6 人々に,特定の行動【behavior】を受け入れさせ,特定の語を述べることを強いることは,出来るであろう.しかし,彼らの心または気持ちを変えることを,強制することが出来ない.彼ら自身が,自らに行えるだけである.

 産業では,知識ベース経済への移行は,トップダウンの階層構造から,半自治チームのネットワークのような,平坦な構造に,組織の変更を必要としている.テイラー的な垂直構造は,知識ベース業務組織が,心の自治と自主性の重要な認知が必要とされるまで,特定の身体的な行動を強制し,調整するように設計されていた.

 知識は,受動的なまる暗記によってでなく,学習者の活発な参加によって最も得られる.学習は,実行によって行われる【Learning is by doing】,見たり,記憶したりすることによってでない.これらの活動家の原則はまとめられている,例として,ジョーン・デューイの実際的な教育の原理を挙げよう.*7 行動の学習者育成のためには,行動の動機は内発がベストである,飴と鞭を付け加える事ではなく.外部誘因【インセンティブ】は,短期間しか行動を変化させない.彼らは通常,内発動機のシステムを変えるよりはむしろ,一時的にだけ無効化を決意する.外部誘因【インセンティブ】が取り除かれた時,行動は前の動機に戻る.経営の文献では,内発動機の重要性はW.エドワーズ・デミングにより強調されている.*8 効果的な品質システムは,品質ボーナスによる外部のモニタリングの維持をベースとするものではなく,仕事へのプライドと自尊心に基づく動機による,品質向上の内部精神によるものである.

 これらの原則の全ては,発展途上国の知識ベースの変化において,等しく基本的である.それらの,知識ベースの企業での働きと同様に.
 融資条件(「アメとムチ」)によって国に課される「ベスト・プラティクス」は,長続きする変化をもたらさない.それは、彼ら自身の能力を高めるという人々の誘因
【インセンティブ】を徐々にむしばみ,彼ら自身の知性を使うことに対する,彼らの信頼を弱める.外部の開発機関は,実行できるようになるよう変化を与える,触媒または助産婦の働きをする代わりに,人々の学習活動を短絡させて,彼らの無力を補強するだけである.外部の誘因【インセンティブ】は,一時的に,国の制度のマトリックスを発生させる,行動のバネのオーバーパワー【訳注:呼び水,もしくはスプリングボードと呼び変えてもいいでしょう】になるかもしれないが,しかし,多分いかなる長続きする組織の改革も引き起こさないであろう.

 発展途上の社会の不可欠な活動,企業のショップフロアへの参加のような,への参加は,長続きする変化を促進するのに必要である.活発な巻き込みは,結果の学習と所有に対する学習へのコミットメントをもたらす.参加,そして,巻き込みは,官僚またはマネージャの問題だけではない; 社会的及び組織的資本に対し,誰がよく排除され,誰が強化の鍵になっているかを含め,その事に深く手を伸ばす必要がある.*9 外部の専門家は説得を通して「ベスト・プラティクス」の「所有」を助けることができる,しかし,所有の程度はもっと大きくなるであろう,もし誰かが,形作ることと適応することのプロセスでの活発な巻き込み政策を実行すれば,もし,再投資されなければ,国(もしくは会社)の中にそれらの方針がある.

*6 私にとって,他者が天国へ行くか地獄へ行くかは小さな事だ.私にとって,彼を信じるか信じないかも小さい,そして,私にとって,彼が天国または地獄を開くか閉じるかも小さい,彼が,私を信仰へ導くか,不信心に導くかも小さい.See Luther 1942 (1523) この洞察は,ヨーロッパにおける宗教の道徳と態度,寛容,促進が基礎となっている.

*7 多分,ダーウィン原理に基づく最も重要な学校システムの例は,私のホームタウン,インディアナのGaryの学校システムで,20世紀初期に打ち立てたものであろう.
See Bourne(1970) これらの改革の効果は,私が昨年ポール・サミュエルソンのシステムを経て,フォローした時にも証明されている. 【ここの訳は難しいです】

*8 See Deming (1982,1994)

*9 See Wolfensohn (1997) プロセスにおける包括の重要性の議論.

その2へ

ブロック線図変換・ラプラス変換表

2005-12-25 14:42:22 | システムについて
ブロック線図変換・ラプラス変換表をさらします.

ブロック線図変換






番号 変換内容 変換前 変換後
1 加え合わせ点交換
2 引き出し点交換
3 加え合わせ点移動
4 引き出し点移動
5 直列接続
6 並列接続
7 フィードバック接続


ラプラス変換表





番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9


ラプラス変換の定義式:


ラプラス逆変換の式:


時間微分のラプラス変換:


参考文献:
山口静馬 他, 制御工学の基礎, 1996, ISBN:4-627-91490-3

損失関数と工程フィードバック3

2005-12-25 13:29:03 | システムについて
4.システムの安定性とか
  • システムの状態(出力)は,無限大に発散するか,ある値に落ち着くかします.
  • システムの状態が,ある値に落ち着くことを「システムは安定している」といいます.通常は,安定している時にシステムの目標が達成されています.ちなみに,安定の判別は,ラウス・フルビッツの判定法やら,ナイキストの判定法やらがあります.
  • フィードバックゲインを大きくしすぎると,システム構成によりますが,システムが発散する事が多いのです.
  • すべての固有値(=特性方程式:伝達関数の分母の根)のs平面上の実数軸上で0未満であれば,システムは漸近安定です.
  • すべての状態(状態変数)をフィードバックでき,制御対象への入力が制御対象のすべてのモード(応答)に影響する事が出来れば,システムを漸近安定にもっていけます.
  • 伝達関数に極と零点の消去が起きた場合は,希望通りに制御できないか,出力に現れないモード(応答)が制御対象に存在してしまう.(可制御とか可観測とかです)
  • システムの種類により,色々な定常偏差(目標値とのズレ)を持っています.


 可観測で無い時とと可制御で無い時は,下記のブロック線図のような形の時に起きます.


Fig. 可制御でないシステムのブロック線図


Fig. 可観測で無いシステムのブロック線図

5.システム理論からいえること

 システム理論は,何も機械だけの話ではありません.組織の動きもシステムですので,上記の事から,ある程度の事は言えると思います.

  • 組織も発散したり,ある大きさに落ち着いたりすると思います.
  • 組織が安定している時は,通常目標を達成していると思います.もし,組織が安定していて目標が達成できていなければ,たぶん,目標が無茶か十分に検討されていないのでしょう.もちろん,無茶な目標(ゲイン高すぎとか)を強引に達成させようとすると,組織を発散させます.(上下に大きく波打つかもしれません)
  • 固有値とは基本的に入力と出力に関係する値なので,組織で考えるとコミュニケーションや,リソースに関係する事でしょう.たぶん,組織の浪費率(効率の逆)のことになりと思います.組織が保持するリソースやコミュニケーションは,実際に使用する物より多めにしておかないと,浪費率の改善に振り向けるリソースやコミュニケーションが不足すると思います.
  • 材料や機械・プロセス・資金繰りだけではなく,顧客・従業員・株主・組織の周りの人たち等のステークホルダの状態も重要な要素です.これらをすべて考慮し,いい影響を与えないと,組織の安定や目標達成は,長期的に不可能です.つまり,顧客・従業員・株主・組織の周りの人たち等のステークホルダに恐怖を与えたり,金で釣ったりして,これらの人々の内発的な動きを止めてしまえば,組織の目的達成を阻害したり(可制御で無くなる),それぞれの人々の相互のコミュニケーションを破壊したり(可観測で無くなる)すると思います.


6.参考文献
  • 吉田勝俊, 短期集中:振動論と制御理論, 2003, ISBN:4-535-78369-1
  • 木村英紀, 制御工学の考え方, 2002, ISBN:4-06-257396-2
  • 山口静馬 他, 制御工学の基礎, 1996, ISBN:4-627-91490-3
  • 高木章二, ディジタル制御入門, 1986, ISBN:4-274-08572-4
  • 大住晃, 確率システム入門, 2002, ISBN:4-254-20944-4
  • 宮川雅巳, 品質を獲得する技術 タグチメソッドがもたらしたもの, 2000, ISBN:4-8171-0399-6


損失関数と工程フィードバック2 【12/25 いちよう完成】

2005-12-25 13:22:33 | システムについて
フィードバックシステムの復習をさらします.

1.システム?
 前回の工程管理の話に,「フィードバックシステム」が出てきました.これらは,「自動制御」やら「システム制御」の話で出てきます.
 システムの話自体は,以前にしてますので繰り返しませんが,ここで,システム制御(自動制御)の話をちと復習します.
 私は,学生時代,この「自動制御」の算数がとても苦手で,ラプラス変換表やら,ブロック線図が無ければ,たぶん全滅したでしょう.
 いまだに「モヤッ」としているので,計算等は間違っているところがあると思います,「注意」してください.

2.フィードフォワードとフィードバック
 世の中には,フィードフォワードとフィードバックという制御(管理・コントロール)があります.これは,下記のようなものです.
  • フィードフォワード:これは,出力の量やら状態にお構いなしに,初めからのプログラム通りにやってしまう方式です.プログラムにバグが無く,出力もおかしくなければ,これが一番早く物事が出来るようです.
  • ポジティブ・フィードバック:これは,出力量や状態が+になれば入力も+に,出力が-になれば入力も-にしてしまう方式です.俗に言うポジティブスパイラル,ネガティブスパイラルの原因が,よくこうなっているそうです.
  • ネガティブ・フィードバック:これは,出力量や状態が+になれば入力を-に,出力が-になれば入力を+にしてしまう方式です.これだと,多少出力が変化しても,ある一定の範囲に出力を保ったり出来ます.もちろんフィードバックが遅かったり,フィードバックされた情報(信号)が不正確であれば,出力が一定の範囲に収まらず,最悪機械の故障や事故が発生することがあります.(これは技術屋の腕次第!!)


 自動的に何かをやる機械は,基本的に上記3つの方法を組み合わせてやっていますが,基本は「ネガティブフィードバック」にありということで,これを機械・電気工学では鬼の様にやらされます.(たぶん他の工学分野でも,やっているのではないでしょうか?)
 ここに書いた方法は,「古典的」なもので,私は,これしか知りません.(というか,これ自身怪しい…….虚数やeが出てきた瞬間,血の気が引いてしまうんです.ううっ….)
 でも,世の中にはカルマンフィルタやH∞やμやらのほとんど魔法のような制御理論(行列バリバリです…)があり,ここら辺も理解していないと田口メソッドの真髄が理解できないような気がしてます.(´・ω・`)(両方とも「ロバスト」をキーワードにしてますし)

3.倒立振子
 さて,実際のフィードバック制御を見ていきましょう.サンプルとしては,「倒立振子(とうりつしんし)」というものを見ていきます.
 これはどういうものかといえば,下の絵を見ていただければ解りますが,箒を手のひらに立てるように,台車に振り子をひっくり返った形で取り付け,台車を動かす事によって,振り子を台車の上に立てるというものです.
 もちろん,台車と振り子は扉のアームのようなジョイントでしか繋がっていないので,台車が動かなければ,振り子は倒れます.
 で,入力として台車の動き,出力として,振り子の角度を取り,最終的に振り子の角度がどの様に制御されるかどうかを見ていきます.


Fig. 3-1. 通常のフィードバック制御のブロック線図


Fig. 3-2 倒立振子

ここで,

f(x):
台車に加わる(台車が出す)力(台車には走行モータをつけているという前提です)

M:台車の質量
m:振り子の質量
l:振り子の重心位置
θ:振り子の角度

です.

 いつも通りの作戦として,下記のように進みます.

 倒立振子の運動方程式(ラグランジュ運動方程式)を立てる
  ↓
 それをラプラス変換して,伝達関数を求める.(伝達関数とは,出力/入力比で,そのシステムの特性等を表している関数です.これが解ればそのシステムの振る舞いが解ります.)
  ↓
 ラプラス逆変換して,実際の振り子の角度θの経過時間での動き(波形)を求める.

です.

 ずっとさらしていたものですが,見ていきましょう.





 これで求めた波形を下記にさらします.


K=9.79 実根の場合,θが大きくなって行きます.つまり倒れてしまったという事です.


K=9.81 虚根の場合です.ふらついていますが,立っている状態です.


K=9.9 上記よりKを多少大きくしても立っています.

 何で波形が振動するのかは,下記式で式を変換すれば,sinとcosの式が出て来るからです.



 ちなみにL・(dθ/dt)(角速度)もフィードバックしてあげたら,だんだん振動が収まり,ある程度の時間が経てばふらつきを微小にできます.

 面倒なので,教科書から2次システム式の単位ステップ関数の応答の式を引っ張ってきました.



 L・(dθ/dt)(角速度)をフィードバックしたら,上記のグラフのように角度θも減衰していきます.(このグラフは目標(θ)を1においていますが,倒立振子では目標(θ)は0です.)

4.システムの安定性とか

 続きは次ページへ.


損失関数と工程フィードバック【12/11 検査設計の項 追記】

2005-12-11 18:52:28 | システムについて
 タグチメソッドの損失関数と工程フィードバックについての内容をさらします.

1.損失関数
 タグチメソッドの損失関数とは,部品や製品のねらい値に対するバラツキで発生する製造側及び顧客側(社会側)の損失を表す関数で,下記に示す式になります.



 ここで,
y :製品,部品等のねらい値
m :製品,部品等の個々の実際の値
Δ0 :製品,部品が実際に機能しなくなる値(機能限界)
A0 :機能限界に達した場合の損失金額

 グラフにすると,下記のようになります.

Fig Loss Function Sample
 黒の線:損失関数
 赤の線:規格限界(公差)
 青の線:一様分布
 緑の線:正規分布

 この図を見れば判りますが,公差内でもバラツキが大きい場合は,損失が大きくなります.(正規分布に比べ,一様分布のほうがバラツキは大きいです)

 この式は2乗損失と呼ばれるもので,統計では実際の値の推計を,平均やら中央値(メディアン)やら,最小2乗法やら等々で推計しますが,その時の推計の外れ方を,(y-m)^2とかで評価(この式が一番簡単な評価方法)するそうです.(赤池情報量規準とかもこの仲間でしょうか)

 上記式に比例定数A0/Δ0を付け加えて,田口さんが損失関数を定義しました.

 この損失関数の意味は,デミングさんが言うとおり,「規格に合わせるだけでは不十分で,さらなるバラツキの低減が必要である」という事になると思います.

 ちなみに,上記の式を考えた安全率と公差は,下記のようになります

安全率:


 ここでAは手直しもしくは廃棄のコスト
 つまり,安全率は機能損失コストと不良品を処理するコストに比例するという事です.
 今まで1.2やら2やら4やら10とか経験に基づいて決めていたものに対し,経済的な観点も考慮して決めましょうという提案です.

公差:


 これは通常の公差の計算:±ねらい値×安全率と同じ考えだと思います.

2.工程フィードバック

 次に工程のフィードバックですが,これは,どの様に工程のねらい値を経済的にコントロールするかを示したものです.
 これはすでに工程設計にて,グチメソッドのパラメータ設計(直交表実験)を使い,工程のパラメータの把握にてバラツキ自体(共通原因のバラツキ)の低減及び,ねらい値調整のためのパラメータの把握が十分なされている事を前提としています.
 つまり,工程を稼動させる前に,きちんと工程設計がなされていれば,フィードバック制御が可能であるという事です.

 このフィードバックに必要な要素及び,式が下記になります.
 (品質特性によるフィードバック制御(計量値の場合))



 ここで,
 L0 :現行の損失関数(円/個またはバッチ)
 L :最適時の損失関数(円/個またはバッチ)
 Δ :目的特性値の許容差
 A :不良品損失(円)
 B :計測コスト(円)
 C :調整コスト(円)
 n0 :現行の計測間隔(個またはバッチ)
 n :最適計測間隔(個またはバッチ)
 D0 :現行の調整限界
 D :最適調整限界
 u0 :現行の平均調整間隔(個またはバッチ)
 u :最適平均調整間隔(個またはバッチ)
 l :計測方法のタイムラグ(個またはバッチ)
 σm :計測誤差の標準偏差

 上記を見ていただいて判るように,このフィードバックシステムは,常時出力を監視しているのではなく,監視(計測)費用と不良を出す損失とのバランスを見て,監視間隔を見ているわけです.(サンプリングによる制御と同じような感じでしょう)
 つまり,サンプリング回数が少なければ,正しい波形が取れないデジタル・オシロスコープみたいなな感じでしょうか.
 ちなみに調整は,下記式による調整量を用いないと,前に漏斗の実験の時のようなハンティング現象が起きる可能性があります.



 上記式は,製品のねらい値のバラツキが,調整限界より小さい場合は調整不要であるが,大きい場合は調整をかけなければならない.つまり,調整限界より大きなバラツキがあり調整しない場合は,大きく損をする可能性があるということです.
 これは,共通原因・特殊原因のバラツキ両方に言えることです.特殊原因の場合は,すでに調整方法がわかっているとの前提ですので,調整を行えばいいだけですが,共通原因の場合は,再度パラメータ設計等を行い,共通原因のバラツキをもっと提言する必要があるということになると思います.
 普通にシューハート図等による管理では,工程は安定しているが,損をしているかどうかは自明ではありません.しかし,調整限界も考慮する事により,損失まで管理しようというのが,この考え方の基だと思います.
 また,調整による工程の管理は,まさしくフードバック制御です.下記条件がそろっていれば,かなり効果的でしょう.
  • モデルがかなりしっかり出来ている.(モデルの選択・パラメータ設計が出来ている.
  • フィードバックをかける信号(通常は出力)の測定誤差が十分小さい.
  • フィードバックのタイミングも遅くない.


3.検査設計

 この場合は,トラブル単位(保証単位)(a)=検査単位(b)=処理単位(c)の場合を書きます.
 これは,通常の工業製品(例えば家電)等の場合は,製品1つ1つが保証されるもの(単位)であり,通常は製品1つ1つを検査しており,手直しや,破棄も製品1つ1つで行うからです.
 石油やジュースのようなものは,こうではありませんし,鉄ロールや,布とかも違います.



 ここで,
 D :出荷後トラブルを起こした時のトラブル1個あたりの平均損失(円)
 B :検査費用(選別費用)(円)
 A :品物に対し,破棄,手直し,値下げ,などの処置を出荷側が行った
 ときの1個あたりの経費や損失(円)
 p :不適合率(不良率)
 δ :その検査で不良となるものの中で,合格品の割合.不明の時はゼロとする.

 L0 :品物をそのまま出荷した時の損失.
 L :品物を選別して不良品は手直し,破棄などそのまま出荷せず,
 あるオペレーションをしたときの損失(円)
 pb :臨界不適合率(不良率)

 ここでの限界不良率とは,その不良率以上では全数検査しないと確実に(自社と顧客双方が)損をする率であり,限界不良率以下だから検査しないといっても,実際の不良率が限界不良率に近ければ近いほど自社・顧客双方の儲けは薄くなり,儲けが薄いため,やはり倒産という事になるやも知れません.
 もちろん限界不良率以下の場合に全数検査したら,検査費用や処理費用等の費用がかかり,やはり儲かりません.
 つまり,検査だけでは儲かる品質を維持するのはかなり難しいという結論になります.
 やはり,QCの基本通り,「品質はライン(研究開発・製造・販売・管理)で造り込み」実際の不良率を限界不良率よりかなり低く維持すること(=工程能力を高く維持する事)を行わないと,倒産への道を進む事になります.
 もちろん,工程能力が低く,限界不良率近い不良率の場合は,全数検査しか手がありません.

 ちなみに最終検査はどの工場でも全数行っているとは思います.これは,どちらかというと,全ラインの工程能力の確認のために行うためだと思います.
 最終検査ですから,すべての工程で作られた部品が組みつけられ,製品になったものを検査するので,ここでの検査はすべての部品を一度に検査しているのと同等になります(もちろん最終検査の検査項目しだいですが)ので,検査としては効率がいいと思います.不適合品の処理は一番費用がかかりますが.
 従って,最終検査は全数検査を行ったほうが,品質のモニタリング,品質向上のためのデータ収集のためにはいいと思います.(もちろん,最終検査の費用の低減は独自に図られるべきです.)

 QC=検査ではありません.海外の工場で必ず書かれている出荷検査の意味の"Out Going QC(Shipping QC)"の看板を見ると,毎回悲しくなってしまいます.
 そう,本当は"Shipping Inspection"と書いて欲しいのです.こう書かれない限り,QCのリーダやマネージャが事務所から出てきて,現場を見,現物に触れ,現実を感じることを自発的に行ってくれないような気がします.

 ただ,QCには検査は必要ですし,不適合品の管理も必要です.私は検査を,「品質向上のためのデータ収集及び,不適合品の解析のため」に行うことが第一義であると思っていますし,人と話す時もこう言っていたつもりです.(通じているかどうかは別にして)そして,そのデータ等を元に「継続的改善」を進めていくのです.

 また,「工程能力が高くなければ,儲かる品質を確保できない」という事の理解が必要であると思います.品質を考慮してないプロセス・リソースの計画や人材の投資等(ただ単純に需要数と釣合う投資)では,工程能力の低さから,必ず品質が不足すると思います.従って儲からないのです.コストを単純に低減するのでは儲からないのです.必要なのは,顧客の期待品質と釣合うための工程能力を確保するだけの投資だと思います.「品質は金がかかる」という人がいますが,本当は,「品質確保もできない程度の投資では,丸損:もっとお金がかかる」のです.そして,その損は,自社と顧客双方で支払わなければならないのです.

4.参考文献
  • Dening, W. Edwards, The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed., 1994, ISBN:0-262-54116-5
  • 田口玄一 他, 製造段階の品質工学, 1989, ISBN:4-542-51102-2
  • 宮川雅巳, 品質を獲得する技術 タグチメソッドがもたらしたもの, 2000, ISBN:4-8171-0399-6