デミング博士のニューエコノミクスって

デミング博士の”ニューエコノミクス”に書かれた内容と,それに関連する内容を,「マターリ」と理解するページ

マネージメントのための14ポイントの要約 その2

2005-10-15 17:05:00 | 品質管理
 続けてさらします.

デミングの14ポイント


【訳注: コピーライト等:
 このコピーライトは,the W. Edwards Deming Institute が所持しているとのことです.
 個人の勉強や,研究等のためならシングルコピーの利用ならOKのようです.
 (ちなみに,私もシングルユーズ(自分で理解するために,この文書のことをを話している)と理解しています.日本語で無いとわからないというのもあります.)
 正式なコピーライトや利用規約等は,下記の英文に記載されていますので,上記情報は参考としてください.
 シングルユースなので,私と同様,各人で考えてみてください.「国際競争力の再生」に吉田さんの解説が掲載されていますので,参考にするのも良いと思います.】


Original: http://caes.mit.edu/deming/14-points.html

Excerpted with permission from Out of the Crisis, copyright (c) 1986 by the W. Edwards Deming Institute. All rights reserved.
Permission is hereby granted to print a single copy of this material for personal, scholarly, non-commercial use provided such copy includes the text in its entirety and the copyright notice stated above.
Any other use requires written permission in advance from the The W. Edwards Deming Institute.

The following is excerpted from Chapter 2 of Out of the Crisis by W. Edwards Deming.



  1. Create constancy of purpose toward improvement of product and service, with the aim to become competitive and to stay in business, and to provide jobs.
     製品及びサービスの改善を進める変わらない目的を作ること.この目的は競争力をつけ,ビジネスを続けるため,及び雇用を供給するためでもあること.

  2. Adopt the new philosophy. We are in a new economic age. Western management must awaken to the challenge, must learn their responsibilities, and take on leadership for change.
     新しい哲学を採用すること.我々は新しい経済の時代に入った.西洋のマネージメントは挑戦する自覚を持ち,自らの責任を学ばなければならない.また,変革のリーダーシップを執らなければならない.

  3. Cease dependence on inspection to achieve quality. Eliminate the need for inspection on a mass basis by building quality into the product in the first place.
     検査に頼った質の確保はやめること.一番初めの所で,質の作り込みにより,大量の検査の必要性を減らすこと.

  4. End the practice of awarding business on the basis of price tag. Instead, minimize total cost. Move toward a single supplier for any one item, on a long-term relationship of loyalty and trust.
     値札を基準に置く,取引先選定の習慣を終わらせること.その代わり,トータルコストを最小にすること.信頼と忠誠の長期にわたる関係の元に,各アイテム毎,1供給者に向けて進めること.

  5. Improve constantly and forever the system of production and service, to improve quality and productivity, and thus constantly decrease costs.
     質及び生産性改善を通した継続したコストダウンのために,継続した終わりの無い製品及びサービスのシステム改善をすること.

  6. Institute training on the job.
     仕事上での訓練を確立すること.

  7. Institute leadership (see Point 12 and Ch. 8). The aim of supervision should be to help people and machines and gadgets to do a better job. Supervision of management is in need of overhaul as well as supervision of production workers.
     リーダーシップを確立すること.(see Point12 and Ch. 8) 管理者の目的は,人々と機械・器具がよりよい仕事をするように助けることでなければならない.マネージメントの管理は,工員の管理と同様に,オーバーホールが必要である.

  8. Drive out fear, so that everyone may work effectively for the company (see Ch. 3).
     会社のために個々が効果的な働きが出来るように,恐れを取り去ること.(see Ch. 3)

  9. Break down barriers between departments. People in research, design, sales, and production must work as a team, to foresee problems of production and in use that may be encountered with the product or service.
     部門間の壁を取り払うこと.製造時の問題及び,サービス及び製品使用時に出会う問題の予知のために,リサーチ・設計・セールス及び製造の人間はチームとして働かなくてはならない.

  10. Eliminate slogans, exhortations, and targets for the work force asking for zero defects and new levels of productivity. Such exhortations only create adversarial relationships, as the bulk of the causes of low quality and low productivity belong to the system and thus lie beyond the power of the work force.
    スローガン,説教【演説】,労働目標,無欠点及び新たな生産性レベルの問いかけはやめること.そのような説教は,システムと労働の強化につきものの低い品質及び生産性の原因の増大と同じで,ただ単に関係性が反対になる【訳注:関係性の悪化を招く】だけである.



    1. Eliminate work standards (quotas) on the factory floor. Substitute leadership.
       工場の作業標準(数値目標)【訳注:数量や時間の割当】はやめること.リーダーシップに置き換えること.

    2. Eliminate management by objective. Eliminate management by numbers, numerical goals. Substitute leadership.
       目標管理制度は廃止すること.数値による管理,数値目標は廃止すること.リーダーシップに置き換えること.



    1. Remove barriers that rob the hourly worker of his right to pride of workmanship. The responsibility of supervisors must be changed from sheer numbers to quality.
       時間労働者の正しい仕事へのプライドを傷つけるような壁は取り除くこと.管理者の責任は,数値目標から質へと変更しなければならない.

    2. Remove barriers that rob people in management and in engineering of their right to pride of workmanship.This means, inter alia, abolishment of the annual merit rating and of management by objective (see Ch. 3).
       マネージメントと技術【者】の正しい仕事へのプライドを傷つけるような壁は取り除くこと.とりわけ,年次評価・成績評価・目標管理制度の廃止を意味する.(see Ch. 3)


  11. Institute a vigorous program of education and self-improvement.
     教育及び,自己啓発の強力なプログラムを設立すること.

  12. Put everybody in the company to work to accomplish the transformation. The transformation is everybody's job.
     変革のための仕事に全社の人間を動員すること.変革は全員の仕事である.
     【訳注:シューハート-デミングサイクルに関連します.】


 なお,訳には,吉田耕作さんの「国際競争力の再生」を参考にしました.

 参考文献等
     
  • Dening, W. Edwards, http://caes.mit.edu/deming/14-points.html
  • Dening, W. Edwards,Out of the crisis,1986,ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards,The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.,1994,ISBN:0-262-54116-5
  • 吉田耕作,国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ-,2000,ISBN:4-8171-0338-8
  • 武田修三郎,デミングの組織論,2002,ISBN:4-492-53152-1


マネージメントのための14ポイントの要約 その1

2005-10-15 17:00:00 | 品質管理
 さあ,いよいよデミング博士の14ポイントをさらします.

 その前に,この章 Out of the crisis Ch.2 -Principles for Transformation of Western Management- にこのデミングの14ポイントが書かれているわけですが,14ポイントが書かれている前節-Aim and Preamble-に書かれている内容から,14ポイントを理解するための要素を引用してみます.

 ちなみにですが,この文書の人物の敬称は,すべて「さん」付けで統一しています.
 もちろん,デミングさん以下,博士号をお持ちの人がほとんどです.

【】内訳注

目的:


 やはり目的が分からないと,なぜ書かれたのか分かりづらいと思いますので,目的を訳してみました.

<引用>

 この章の目的:西洋のマネジメントスタイルは,西洋の産業の低下をとめ,向上させるために,変えなければならない.
  【訳注:原文は,Western Style management must change to --- と must を使っていますから,ISO-9000的に解釈すると,最上級の義務になっています.】
 この章と次の章の目的は,起こさねばならない変革【Transformation】の要素を説明することである.
 危機から目覚め,実行によりフォローし,マネージメントの仕事をしなければならない.
  【訳注:上記3行,must 三連発です.かなり凄いです.】
 この章および次の章はまた,社内マネージメントのパフォーマンスを誰が測定するのかの基準を与える.
 社内の人間の誰でも,この質問の答えを規準にしなければならない."How is our management doing?"
 【どうやって管理をするの?】
 組合のリーダも同じ質問に答え,同じ規準で判断しなければならない.
 この変革は,人間だけが達成できるものである.ハードウェア(コンピュータ,道具,オートメーション,新しい工作機械)ではない.会社は,品質への道を買うことはできない.

</引用>

 デミングさんがこの本 -Out of the crisis- を書いたのは80年代前半(出版は,1986年)だと推測できますから,このころのアメリカの産業の状況が,あまり芳しくない状況で会った事が反映されているのではないでしょうか.
 そういえば,昔(80年代),日本製のラジカセや車!を,アメリカの労働組合の人がハンマーで叩き壊していたパフォーマンスを,テレビのニュースで見た事があります.

項目ごとの引用:


<引用>

Best efforts not sufficient.
By everyone doing his best. (Wrong)

 最大の努力では十分でない.
 個々が最大の努力をすること.(間違い)
  -以下省略-

 Need for consistency of effort.
 努力の整合性の必要性

 下記を仮定してみよう.
 (1)個々が何をしなければならないか理解している.
 (2)個々がベストを尽くしている.

 結果:知識や努力の消滅・最適より程遠い結果.
 これらは,継続的な知識と努力を引き出す,良いリーダやチームワークの代わりにならない.

 Theory of management now exist.
今は,マネージメントの論理が存在する.

 今は,品質,生産性,競争優位の改善のための理論がある.
 誰も,今,マネジメントを教えるものが無いと強く訴えることは二度と出来ない.
 ビジネススクールに通う学生は,開講されているカリキュラムの判断のための蓄積情報を持っている.
 学校は,現在の問題に合うカリキュラムを与える試みをしていますか?それとも旧式化していますか?
 旧式化するのに計画は必要ない:勝手にそうなる.
 経験だけ,論理無しであると,マネージメントは品質向上や,競争優位のために,何をしたらいいのか,どうやればいいのか,何も分からない.

  -中略-

 達成するための方法が無い希望は,依然として希望でしかない.(Lloyd S.Nelson, next section)
 この章の14ポイント,および次章で説明する死にいたる病や障害の除去は,(それらの)方法を与えるであろう.

  -以下略-

Guidance from questions and pronouncements of Lloyd S. Nelson.(Dr. Nelsonis Director of Statical Methods for the Nashua Corporation.)
ネルソン博士の質問と意見からのガイダンス.

  1. すべての側面(企画,調達,製造,調査,セールス,人事,会計,法律)におけるマネージメントの中心問題は,バラツキの意味をよく理解し,そのバラツキに含まれている情報を取り出す事である.
  2. もし,あなたが改善のための合理的な計画を持たないで,(例えば)来年5%等の生産性や品質やその他の事柄を改善できるのならば,なぜ昨年にやらないのか?
  3. 各組織でマネージメントに必要な最重要な数値は,解らないし,解るものでもない.
  4. 統計的管理状態にある時,不良が現れた時に,処置を始める事は,効果的でないばかりでなく,更なるトラブルの原因になる.
    プロセスの改善は,ばらつきの低減または,レベルの変更または,その両方が必要になる.

    -中略-

 Short-term profits are no index of ability.
 短期的な利益は能力の指標にはならない.

 短期的な利益は,マネージメントの能力の指標としては信頼できない.

 -中略-

 紙の上の利益はパンを作らない:品質と生産性の改善が作る.それらは,何処にでもいるすべての人々に対し,よりよい生活する上の素材【を与えることに】貢献する.

 -後略-

 Support of top management is not sufficient.
 トップマネージメントのサポートでは不十分.

 品質及び生産性に,トップマネージメントが人生をかけてコミットしただけでは,不十分である.
 彼らは何にコミットしたか----何をしなければならないのか知る必要がある.この義務は,代理に任せることは出来ない.
 サポートでは不十分.行動が求められる.

 -後略-

 Wrong way
 間違った方向

 品質と生産性を向上させるため,(床に)ボルトを打ち込み,新しい道具や工作機械を備え付けるという一般的な仮定がある.
 新しい本は,「仕事をトップスピードでやらせる! ための部下への動機付け」方法を説明している.鞭を入れろ,そうすれば皆はもっと早く走る.---それがすべてだ.
 アメリカの議員団は,品質と生産性に特に重要な項目に関するコンテストを開き,数社に手紙を送った.
 それらの回答者の判断は,下記の通り.
  • 工作機械
  • オートメーションとロボット
  • もっと良い情報
  • プロフィット・シェアリングまたは,他のインセンティブ
  • トレーニング
  • 労働強化
  • QCサークル
  • ワープロ
  • サゼスチョン・プログラム
  • ゼロ・デファクト(ZD)
  • 目標管理制度(MBO)


 真実は,小説より奇なり.この議員団から,何かましなものが出るとの期待が持てない.
 ワープロが,アイディアを創造する.もしくは,関係代名詞と性別,先行詞と数の結びつきを自動生成する.という事を,今まで聞いたことが無い.【訳注:日本語でも,まだ誤植を自動的に修正してくれるような機能はありませんし.】
 この新しい膜の目的は,工員たちをおびえさせ,正気を追い出し,もし品質不足【Poor Quality】な品物【やサービス】が購入者の手に渡った時に,工員たちに何が起きるかをボヤかすことである.
 この点は,すでに1章にて明確にしている.工員たちは,何時でも何かが起きるかを知っているが,しかし,多くの場所では希望が無い.システムから来る力が,彼らの仕事を品質不足【Poor Quality】へと転じさせる.
【訳注:Poor Qualityの良い日本語訳はないと思います.この文書では,「品質不足」と訳しますが,これは不良や不適合だけではなく,もしその製品やサービスがスペックに適合していても,顧客が満足しない場合も品質不足になると思います.】


</引用>

 上記のまとめ:

 上記の引用のまとめをここでしてみたいと思います.

  1. 個々の努力よりは,全体のつながり(部分最適よりは全体最適).<システム・心理>
    • 個々の努力を評価する事による,働く人々のおびえの増幅及び,個々の努力の増幅(部分最適の増幅)での,協力や関係性の破壊.
    • 必要なのはトップマネージメントのサポートではなく,トップマネージメントの実際の参加・行動


  2. バラツキの理解.<統計>
    • マネージメントの中心問題は,バラツキの意味をよく理解し,それに含まれている情報を取り出す事である.
    • 短期的な利益は能力の指標にはならない.(短期では,バラツキの影響が強すぎる)


  3. 理論の必要性と,その理論の継続的改善の必要性.(継続的学習)<論理>
    • 達成するための方法が無い希望は,依然として希望でしかない.


  4. 役に立ちそうにも無い事柄を強調する事による,本当に重要な項目への注視の減少.(重点への集中)<システム・心理>
    • 道具や,機械等の導入だけでは,問題解決ははかれない.


 これらの項目が,14ポイントに含まれていると思います.

 その2へ続く

The Red Beads Part2

2005-10-10 19:47:27 | システムについて
下記は,The Red Beads の続きです.

2.意欲ある作業者アンの考え



 このような状況の下で,人は何を考えるのでしょうか?
 以下にデミングさんが直接意見(クレーム)を受けた内容を訳します.

<引用>

意欲ある作業者アンの考え

意欲ある作業者,名前はアン.この実験の終了直後に,この怒りについての考察を私に意見した.どうぞその考察をレポートしてください.と私は彼女にお願いした.どうぞ私に話した内容を書いてください.彼女は書いた.これは,彼女からの手紙だ.

赤ビーズの意欲ある作業者をしてるとき,私は統計の理論以上のものを学びました.
システムは,私をゴールに向かわせられない事は知っていました.しかし,私は出来る.とまだ感じていたのです.願っていました.
私は,真剣に挑戦しました.私は,責任を感じていました.:ほかの人は,私にかかっている.私の理論と感情がぶつかり合い,そしてフラストレーションを感じていました.理論はこういいます.成功するすべは無い.感情はこういいます.トライすれば出来る.
【この実験の】終了後,私は自分の仕事の状況を考えました.どのくらいの頻度で,人々は自分たちが統制できないこのような状況で,ベストを尽くすことを望むのか?
そして,人々はベストを尽くすのです.その後,彼らが動かし,ケアし,望んでいるものに,何がおきるのか? 少数は,止めるでしょう.抜けるでしょう.
幸運にも,貢献するための機会と方法だけが必要な人々が大勢います.

</引用>

 私なんか,悲しみがこみ上げてきます.だめだと解っていても,「もしかして」という気持ちが人を動かしてしまう.
 詐欺師に騙されないようにとの注意勧告を受けても,つい騙されてしまうのと同じ心理が垣間見れます.
 でも,同じ騙されるのでも,このような管理の騙し(赤ビーズが絶対出てくるのに,「赤ビーズをなくせば給料UP,でも出てくればクビ」というのは,あたりが無いくじのようなものです)は,詐欺のような犯罪行為ではないので,逆に管理自体も正しいと看做されてしまうのではないのでしょうか.でも,いいたくなりませんか?
 「やっぱり詐欺でしょ?」って.

3.実験のまとめ



 上記実験のまとめを見てみましょう.デミングさんは,この章を14のポイントにまとめていますが,ここでは,それを4つのポイント(システムの理解・バラツキの知識・知識の論理・心理学)から私がまとめてみました.


  1. システム:  
    • 手段の固定化  
    • 成果主義(目標による管理)   
    • 監督者は,ただスローガン・説教をしているだけ.(業務への無参加) (実は,監督者と,作業者・検査員とでは,評価システムが違います.監督者は,スローガンや,ZD(無欠点) の日等を作業者に伝えるのが仕事ですから,赤ビーズの数量に評価が直接紐付けされていません.)  
    • 見習い時は,質問等は可能ですが,実作業に入ると,会話も禁止されますから,コミュニケーション自体がなされません.

      
  2. バラツキ:
       
    • 赤ビーズは,人によりばらついているのではなく,その掬った回によりばらついている.(偶然原因)    
    • 人が掬うという作業で,赤ビーズの数量はコントロールできない. (実は,この作業は,単なるサンプリング検査です.検査だけでは,品質を良く出来ません.)


  3. 知識の論理:
       
    • 改善活動がない.(手段の固定化のため)    
    • 一回掬うと,一回評価されてしまうので,これが偶然原因かどうか,確認できない. (回数を重ねてわかる頃には,既に人が入れ替わっているので,気づく事は無いでしょう.)    
    • もし,他人より少しは成績がいい人がいても,なぜ成績がいいか解らないので,改善のヒントにならない.    
    • 他人より少しは成績がいい人だからといって,次の回やその次の回等,将来も成績がいいとは限らない.


     
  4. 心理学:
       
    • 出来ないと頭でわかっていても,ついつい作業をがんばってしまうので,改善までに気持ちが回らない.    
    • 監督者は,目標が達成できないと,スローガン等を押し付ける力を増してしまう. (手段が固定化されているのであれば,なおさらです.)    
    • これが本当の業務なら,多分,喧嘩を売りたくなるか,逃避活動が増えるでしょう(笑).


  5. その他:
       
    • なぜ自社とサプライヤーとが協力しなければならないか,この実験でわかると思います. (値段だけで選んだサプライヤーであれば,赤ビーズの混入率を下げるための選別や,品質への投資をすると思いますか? 値段が合わないと,取引がなくなるわけですから.)



4.赤ビーズのシミュレーション



 Fig.7-2,3に,Rという統計ソフトで,赤ビーズのシミュレーションをしてみました.
横軸は,赤ビーズの数量,縦軸は度数のヒストグラムです.

 Fig.7-2のグラフは,一掬い50個のビーズ(1パドル分)を50回掬った時の赤ビーズの混入個数です.
 何か,ランダムすぎて異常要因でもありそうな雰囲気です.
 Fig.7-3は,一掬い50個のビーズ(1パドル分)を10,000掬った時のグラフです.
 さすがに正規分布していそうです.
(なぜ検査員が20個以上カウント出来なくてもOKかも解ります.)


 Fig7-2 Red Beads n=50 times





 Fig7-3 Red Beads n=10,000 times



という事で,R用のプログラムを下にさらします.(汚くてすみません)

 一掬い50個*50回のシミュレーション
#Red Beads Sample small w/Histgram

product<-rep(0,50) 
x<-numeric(50)
for (i in 1:50){ x<-rbinom(50,size=1,prob=0.2)
product[i]<-sum(x)
} hist(product,xlim=c(0,25),main="Result of Red Beads production n=50") mtext(paste("Mean=",mean(product)," 3sd=",3*sd(product)))


 800(赤ビーズ数)/4,000(赤+白=全体のビーズ数)=20% なので,20%の確率で裏が出る,ひん曲がったコインのコイン投げでビーズの代わりにしています.
(基本的には2項分布なので,50個×20%=10個が平均(最頻値とかいうやつ)ですが,3σとしては±8.5個位あります.
もちろん,裾野は,とても低い確率ですが,50個全部赤ビーズでもおかしくは無いので,時々23個とかも出てきます.)
 式としては,下記のようになります.



5.参考文献


  • Dening, W. Edwards Out of the crisis 1986 ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards The New Economics: for Industry, government,education -2nd ed. 1994 ISBN:0-262-54116-5
  • 鐵建治 新版 品質管理のための統計的方法入門 2000 ISBN:4-8171-0342-6
  • 吉田耕作 国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ- 2000 ISBN:4-8171-0338-8
  • R Development Core Team R: A language and environment for statistical computing.(Ver. 2.1.1) 2005 ISBN:3-900051-07-0
  • 荒木孝治 他 フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門 2005 ISBN:4-8171-9148-1
  • 間瀬茂 他 工学のための データサイエンス入門 -フリーな統計環境Rを用いたデータ解析- 2004 ISBN:4-901683-12-8
  • 岡田昌史 他 The R Book データ解析環境Rの活用事例集 2004 ISBN:4-901676-97-0
  • 船尾暢男 The R Tips データ解析環境Rの基本技・グラフィック活用集 2005 ISBN:4-86167-039-X


The Red Beads

2005-10-10 19:25:50 | システムについて

7. The Red Beads 赤ビーズ



 Dening, W. Edwards The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.の七章「赤ビーズ」の内容を一部訳しましたので,さらします.

 この文書では,デミングさんのセミナーの内容を見ていきたいと思います.
 個人的には,この文章自体が,デミングさんの細かさ等をあらわしていて,面白く感じています.
 引用だらけですが,著作権とかがあるので,引用にとどめます.
 ちなみにですが,この文書の人物の敬称は,すべて「さん」付けで統一しています.
 もちろん,デミングさん以下,博士号をお持ちの人がほとんどです.

 【】内訳注

1.赤ビーズ実験概要


<引用>

Aim of this capter.
この章の目的.

この章の目的は,いくつかの重要な原理を,実験により教えることである.
この章の終わりには,原理のサマリーを掲示する.

The experiment with the Red Beads.
赤ビーズの実験

私が教えるこの実験では,私が監督者の役をする.「この仕事では,何ヶ月も監督者の訓練を行っています.ですから,私自身が監督者の役をやります.」観客に156Pの告知【訳注:「手順」の項で告知内容が出てきます】をして,反応があった人にボランティアをしてもらう.

Material required.
必要な材料

4,000の木のビーズ,直径3mm:800は赤 3,200は白

50個のビーズが掬えるようになっている,50の穴か窪みのあいたパドル.(あらかじめ工数を規定している.)
2つのプラスチック製の長方形の器(箱),これは,お互いにきっちりと重ね合わせられるようになっている.
(省スペースのために)【訳注:お菓子の箱のように,片一方が蓋になるようになっている.】
このビーズ(プラスチック袋の中に入れている)とパドルは,小さい箱に収まるようになっている:
小さい箱は,大きな箱に収まるようになっている.この私の道具のサイズは:

 大きい箱: 20cm X 16cm X 8cm
 小さい箱: 19cm X 13 1/2cm X 6cm

 納入材料(4,000の赤と白のビーズを混ぜたもの)は,会社の大きな箱に到着する.

</引用>

 上記のように,デミングさんは,とても細かい所まで記録しています.技術屋としては見習うべき所かもしれません,
 が,やはり何か「内発動機爆発!!」の雰囲気が無きにしも非ず.ですが,訳して
いませんが,各パドル(年代・材質や加工別にいろいろなパドルを作っている)で,それぞれのバラツキを求めていますから,材質等で,違う結果が出るのではないかとの疑問を払拭するために,細かくなっている可能性もあります.

<引用>

Procedure
手順

新しい顧客の手厚い取扱いを拡大する会社の方針を,監督者は説明する.
この新しい顧客は,白ビーズを求めている.赤ビーズはいらない.不幸にも,納入材料には,赤ビーズが入っている.
(白と赤のビーズが混じっている)

実験では,10人の従業員を雇うことが必要になる.そこで会社は【訳注:以下のように】広告する:

6人の意欲ある作業者(Willing Worker).最大の努力を惜しまないこと.仕事の継続は,パフォーマンスによる.求められる教育は最小.ビーズを掬う経験は不要.

2人の検査員.白の中にある赤を識別出来ること.20まで数えることが出来ること.経験不要.

1人の検査主任.検査員と同じ項目が出来ること.

1人の記録係.はっきりわかるように読みやすい字を書けること:シャープなこと.

6人の意欲ある作業者が,観客の中から舞台の右に登る.
検査員と検査主任のボランティアが左側の舞台に登る.検査主任をはさんで,No.1とNo.2の検査員が並ぶ.
観客の中から,記録係が舞台に上がる.監督者が彼女に,彼女には,しばらく仕事が無いが,給料支払いはされる.と説明する.
監督者が,3日間の間は,仕事を覚えるために見習い期間とし,その間は,質問してもよい.一度製造をはじめたら,質問してはならないし,感想を述べてもならない;ただ,自分の仕事に専念すること.と説明する.
我々の手順は固定されている.この手順からはみ出る事は無いので,パフォーマンスにバラツキが出ることは無い.
記録係は,意欲ある作業者,検査員と彼女自身の名前を記録する.すべての観客に記録がわかるように,記録用紙がプロジェクターで投影される.
監督者は,作業者に,自分たちの仕事は,自分たちのパフォーマンスによることを説明する.解雇手続きは,とてもインフォーマルに進められることを説明する.単に,【訳注:舞台から】下り,給料を取る.
あなたの代わりに,数百人の人々が待機している.辞任は出来ない.(監督者は,このルールは,ボストンの近くにあるSalem Innにて,実験の半分近くまで進んだときに,辞めようとしたことがあるため制定した.と説明する.彼女は【半分で】十分だったのだ.)
監督者は,作業標準を説明する.各人1日50ビーズを生産する.事実,ただ一つの正しい行いをしている.と監督は観客に説明する.それは,2人の(多すぎる)検査員は独立している.;検査員は,赤ビーズの数を独立してカウントしている.検査員たちは,紙切れにカウントした数を記録している.互いの検査員は,その記録を見ることが出来ない.

ステップ1:
納入材料を混ぜる.納入されたビーズを小さな器に注ぐ.大きい器の幅広い側を握り,コーナーから注ぐ.単に大きい器を傾けるだけである;回したり,振ったりしない.重力がその仕事をする.重力を知っている? 重力はどこにでもあるし,安い.次に,同じ動作で,小さな器のビーズを大きな器に戻す.

ステップ2:
ビーズを生産する.パドルを使い,50のビーズを窪みに入れる.長手方向から指で握り,ビーズの中に入れてかき回す.
そんなに長くかき回さない.パドルを持ち上げ,水平より44°傾ける.すべての窪みにビーズが入っている.

ステップ3:
検査.作業員が生産したものを検査員No.1の所に運ぶ.検査員は,紙にサインと赤ビーズのカウント数を記録する.その後,検査員No.2も同様にする.検査主任は,2人の検査員の記録を比較しする.【訳注:結果が】一致していなかったら,彼らは多分ミスをしている.一致していたら,彼らは多分ミスをしている.彼が納得したら,大きな声でカウント結果を報告する.そして,Dismiss【訳注:不合格・解任】という単語を発する.

ステップ4:
結果の記録.記録係は,見習中はカウント結果の記録をしない.一度,製造を開始したら,検査主任が毎回の検査結果の報告を大きな声で発表し,記録係がその赤ビーズのカウント数を記録し,スクリーンに映し出す.
観客の一人ひとりは,自分で結果の記録を取り,後で,【コントロール】チャートを作成する.
監督は,意欲ある作業者に,ポスターに注目しろと叫ぶ.(Fig18) このポスターは,意欲ある作業者を助けるであろう.

-中略-


</引用>

 当然,この方法であると,奇跡が起きない限り赤ビーズが現れるので,作業者は,みな不良品を作り出していることになります.
 そのうち他の作業者と比較して,赤ビーズが多い人はクビになり,だんだん人数が減っていくことになります.
 Fig 7-1に,コンロロールチャートのサンプルを示します.
 (作成に当たっては,新版 品質管理のための統計的方法入門及び,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門,The R Tips データ解析環境Rの基本技・グラフィック活用集, 統計ソフトR(ライブラリ"qcc")等を参照しました.)


Fig 7-1 Control Chart (np chart) for Red Beads


上記のR用のプログラムを下にさらします(汚くてごめんなさい)
#sample for Shewhart charts

library("qcc")

product<-rep(0,50)
x<-numeric(50)
for (i in 1:50){ x<-rbinom(50,size=1,prob=0.2)
product[i]<-sum(x)
} summary(product) qcc( type="np", data=product[1:25],sizes=50, newdata=product[26:50], newsizes=50)

 
 続く

ここら辺の文書について

2005-10-10 19:01:19 | 初めに
 今,いろいろなところで,働いている人々の評価に「成果主義」を取り入れようとしています.
 私の勤めている会社でもそうで,実は私自身,数年前からその成果主義とやらを導入するプロジェクト(人事主導ではなく,部門主導の)をやらされています.
 そのため,私自身,かなり評価やら成果主義やらを勉強してきましたが,どうも腑に落ちていませんでした.
 (というか,頭が受け付けていなかったのです.)
 ある時,突然,「成果主義って昔習った『品質管理』の考えに逆らうんじゃないの?」と思い出しました.

 (実は,私はかなり前に,品質管理の部門で働いていて,その時に,デミング博士の考え方等を「品質管理」の業界紙(?)で読んでいた記憶がよみがえったのです.)

 という事で,品質管理といえばデミング博士や,ジュラン博士,石川博士等有名な方々がいますので,これらの方々の本より,成果主義やら,その他,役立ちそうな内容をメモしていきます.

 ペースは,1ヶ月に一度,なんらか更新できるかどうかですけど,個人のメモ書きなので,気軽にやっていきます.
 (コメント等には反応できないと思いますので,コメント欄は閉じています.
 トラックバックはあいていますので,何かある方は,TBしていただくか,メールでお願いします.)

10/15 追記:メールアドレス書いてなかったです.
 これです:otz0101アットマークmail.goo.ne.jp
 アットマーク部分を,@に置き換えてください.