デミング博士のニューエコノミクスって

デミング博士の”ニューエコノミクス”に書かれた内容と,それに関連する内容を,「マターリ」と理解するページ

管理図の式とか

2006-01-07 20:12:13 | 品質管理
 最近胃痛が激しくて,正月中ずっと寝てました.(まだ痛いです.)
 また,分散分析とかも学習したいので,暫く更新を停止します.
 たぶん,1月お尻ぐらいでしょうか.

 ちなみに,会社で管理図の式とかを使おうと思っていたら,教科書を家においてきてしまって,なおかつ胃痛が始まったおかげで,まだお仕事が終わっていません.

 そこで,管理図の式をさらしておきます.





 ちなみに正規分布に従うもので3σ内に収まる確率は99.73%ですので,第1種のエラー(common cause(=偶発原因)であるにも関わらず,異常原因であると判断してしまう事)を起こさないようにしています.

 正規分布のnσと確率の関係は,下の図のような感じです.


 正規分布でのuとPの関係は以下の通りです.






u P
0.6745 0.25
1.0000 0.15866
1.2816 0.10
1.6449 0.05
1.9600 0.025
2.0000 0.02275
2.3263 0.010
2.5758 0.005
3.0000 0.00135
3.0902 0.001


参考文献
  • 鐵建治,新版 品質管理のための統計的方法入門,2000,ISBN:4-8171-0342-6
  • 田口玄一 他,確率・統計 経営工学シリーズ 4,1981,ISBN:4-542-80104-7


Transformation in Japan 日本での改革

2005-11-05 19:12:53 | 品質管理
Out of the crisisのAppendixに書かれている「日本での改革」の章の内容をさらします.

Appendix Transformation in Japan 日本での改革

【】内訳注

 日本で,デミングさんが何を教え,どの様に変革していったかがこの章で説明されています.
 内容を引用しながら,見てきたいと思います.

 まず,デミングさんが,なぜこの章を書いたのか,見てみましょう.

この章の目的



Out of the crisis Ch. Appendix

<引用>

 Motive for this appendix.
 この章を【書いた】動機.

 ありふれた世界に日本の奇跡があり,衝撃の1950年からこの奇跡が始まった事が知られている.それ以前は,日本が輸出した一般向け製品の品質は,全世界で「安かろう,悪かろう」とのうわさが立っていた.さらにアメリカ軍は,日本人が,何が品質なのかを知っているかをテストした.まだ,彼らは国際取引の中で,品質向上に対する努力を傾けてはいなかった.

 1950年に,突然,日本製品の品質と信頼性が上がり,1954年には,世界中の市場を捉えた.ニューエコノミー時代が始まった.何がおきたのか.
 その答えは,トップマネージメントが,輸出のためには品質が不可欠であると確信し,【品質向上に】スイッチする事が出来たことである.
 彼らは,会議の上に会議を重ね,この目的の達成のために目的に導く責任を果たすことを学習した.マネージメントと工員たちは,品質と仕事のために,共に力を果たした.


</引用>

 以下,内容をまとめます.

 JUSE. 日科技連.


 どうやら,日科技連は戦争中にあった各組織をまとめたもののようです.彼ら(と経団連)は輸出するために,品質向上が必要であり,そのための学習が必要であると考えていたようです.

Conferences with top management. トップマネージメントのとのコンファレンス.


 1942年ぐらいに,アメリカで10日集中セミナー等を開き,技術者に品質管理を教育していったようです.軍備の役所でも,品質管理のコースを開いていったそうです.その頃は,品質管理ブームのような感じになって燃え広がったようですが,デミングさん曰く,「勢いよく燃え,パチパチしてきて,シューとなって,消えてしまった」だそうです.
 品質管理部門等の設立,管理図等,個々の組織や手法はそれぞれ残ったようですが,改善の考え方等は消えてしまったようです.

Japan 1950. 日本 1950年.


 日本では,アメリカでの過ちを繰り返したくない.トップマネージメントに彼らの責任を理解させなければならない.
 そう考えたデミングさんは,日科技連や経団連等のつてを頼って,トップマネージメントへの教育の場を設けたそうです.
 そこで教えたのは,下記の図等を使って,製造のシステムとしての側面を教えたそうです.


Fig. Apdx-1 Production viewed as system


<引用>

 消費者は,生産ラインの一番重要な部分である---日本のマネージメントにとって新しい原則である.製品のパフォーマンスの裏側に立脚するこの原則が,日本のマネージャにとって必要である.彼らは常に前を見て,新しい製品やサービスをデザインしなければならない.納入部材の同一性と信頼性の改善のために,信頼と忠誠の長期関係に則り,各1アイテム毎のベンダを選択しなければならない.
 マネージャは,機械や指導書,ゲージのメンテナンスに何時でも注力しなけらばならない.
 これだけでは,あちらこちらですばらしい達成をするのに不十分である.バラバラの努力では,国家単位でのインパクトは無い.消費者が,現在及び将来の必要において品質という言葉に含めているのは,企業や,国家などのすべての活動である.
 品質の改善は,1950年,日本で始まった.

</引用>

Expansion of education to management, engineers, foremen.
 マネージメント,技術者,職長への教育の広がり.


 日本では現在,アメリカと違って,時間給の人にまで管理図等の教育が行き届いていて,アメリカのように,時間給の人に何もしないで彼らのプライドを傷つけている事は無いとしています.
 ジュランさんも1954年に日科技連の招きで,日本へ行き,品質と生産性改善に対するマネージメントの責任に対する,新しい洞察についてのすばらしい講義を,日本のマネージャに与えたそうです.

Further notes in respect to top management in Japan.
 日本の尊敬するトップマネージメントの将来の話.


<引用>

 一般的に,今まで「安かろう・悪かろう」な日常品を生産していた日本は,ヨーロッパやアメリカには追いつかないであろうと思われていた.
 しかし,1950年に品質面での新しい日本が始まった.私は5年後には日本は,世界のマーケットを侵略し,時間が経つにつれて,最も栄えている国の一つになると予測した.
  -以下略-

</引用>

Encouragement from futher result. さらなる結果に励まされた.


 ・古河電気の西村社長の報告では,1951年7月に10%の被覆電線のリワークが低減され,同じだけ生産性が向上した.
 ・日科技連の小柳副理事は1952年,アメリカ品質協会の会合で,日本企業の13のレポートを報告した.
  それら13のレポートは,すべてトップマネージメントが作成していた.
 ・田辺製薬の田辺社長は,同じ人,同じ機械,同じプラント,同じ材料で,今までの3倍の抗生物質の早期製造が可能になったと報告した.
   -以下略-

QC-Circles. QCサークル.


 QCサークルの一般化は,石川馨さんが1960年に行ったものです.
 これらは,異常原因に対し,少数の人々で構成されたサークルでの討議等で対処していくことが目的です.(当の石川馨さんは,QCサークルとは,「まず勉強するグループであり,再発防止の管理を行うグループ活動である.」といっています.(日本的品質管理[増補版] P31))
 これらQCサークルの成果は,いろんな業種が集まる地方や全国での報告会で報告され,共有されます.
 最後に,デミングさんが,このQCサークルの節の最後に書いている内容を訳しますので,皆さん考えてみてください.

<引用>

 1980年11月に東京で開かれたQCサークルの全国大会での100の報告のうちの一つで,現在7名で行っている作業を,5名で行えるように作業改善を行っているとの報告であった.
 言い換えると,140名で行う作業を,今は100名で行えるという事だ.40名は仕事を失わない.ただ他の仕事に移るだけだ.
 貢献は,このように会社を競争優位のポジションに立たせることであり,究極的には,会社はより多くの雇用を必要とすることである.より少なくではなく.

</引用>

参考文献


  • Dening, W. Edwards,Out of the crisis,1986,ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards,The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.,1994,ISBN:0-262-54116-5
  • 吉田耕作,国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ-,2000,ISBN:4-8171-0338-8
  • 武田修三郎,デミングの組織論,2002,ISBN:4-492-53152-1
  • 石川馨,日本的品質管理 [増補版],1984,ISBN:4-8171-0010-9


A System of Profound Knowledge 深遠なる知識のシステム

2005-10-23 18:34:25 | 品質管理
 デミングさんの下記の著書の4章に書かれている,「深遠なる知識のシステム」の内容を,見ていきたいと思います.
 ちなみにですが,この文書の人物の敬称は,すべて「さん」付けで統一しています.
 もちろん,デミングさん以下,博士号をお持ちの人がほとんどです.

1.深遠なる知識のシステムの4ポイント


 まず,この章の初めの部分で,デミングさんが何をポイントとしているのかを見ていきましょう.

 -The new economics for industry, government,
education- Ch.4 -A systen of Profund Knowliedge-

<引用>

Ain of this chapter.
この章の目的.

マネージメントの流行のスタイルは,変革の試練に耐えるべきである.システムは,自分自身を理解することが出来ない.変革は,その外側よりの見識が求められている.この章の目的は,私がProfound Knowledge【深遠なる知識】のシステムと呼んでいるレンズで覗いた【訳注:システムの】景観を与えることである.それは我々が働いている組織を理解するための論理の地図を与える.

The first step.
最初のステップ.

最初のステップは,個々の変革である.この変革は,継続的ではない.それは,深遠なる知識のシステムの理解より来る.個々が変革した時,人生,イベント,数量,人々の間の相互作用の新しい意味に気であろう.
 ひとたび,個々が深遠なる知識のシステムを理解した時,彼は,他の人々とのさまざまな関係の原理を応用するであろう.また,彼の彼自身の決断に対する判断及び,所属する組織の変革に対する基準を持つであろう.個々がひとたび 変革した時,こうなる.

 例として:
 よい聞き手になる.しかし,妥協はしない.
 他の人々を教育しつづける.
 人々の習慣及び信条を取り去り,過去の罪の意識を感じさせずに,新しい哲学に導く.

The outside view.
概要.

 深遠なる知識(Profound Knowledge)の層は,下記の4つの部分に現れ,お互いがお互いに関係している.

 ・システムの理解
 ・バラツキの知識
 ・知識の論理
 ・心理学

 この内で,何か一つの項目が特に必要というわけではなく,これら4項目を理解し,応用できなければならない.産業・政府・教育でのマネージメントのための14ポイント(Out of crisis Ch.2)は,現在の西洋スタイルのマネージメントを,1つの最適に変革するため,この外部知識の応用を,自然に利用している.

Preliminary remarks.
緒言

 この深遠なる知識のシステムの多様な項目は,切り離して説明できない.これらは,お互いに関係している.従って,心理学の知識は,バラツキの知識が無いと,完結しない.
 マネージャたちは,すべての人々が,違っていることを理解する必要がある.これは,人々をランク付けすることとは違う.マネージャは,彼が働いているシステムによる大きな統治が,人それぞれのパフォーマンスになることを理解しなければならず,それがマネージメントの責任であることを理解する必要がある.
 心理学者は,雑であってもバラツキに対するの理解をしているが,同じく,Red Beads(Ch.7)の実体験を学習することにより,人々をランキングする計画の精緻化に参加することは,なくなるであろう.
 後ほどの心理学に関係した説明と,バラツキの論理(統計論理)とは境がない.例として,検査員が抜取検査で検出した不良品数を認識する.(documented by Harold F. Dodge in the Bell Telephone Laboratories around 1926) 検査員は,誰かに不正義なペナルティを与えないように,慎重に丁度ボーダーラインをはみ出た品物を合格にする.【訳注:合格数量にする】(Out of the crisis P.226)
 同じ本のP.225で,300人の雇用を守るためには,不良率を10%以下に保たなければならなかった,その検査員の話が現れている.彼女は,彼らの雇用について恐れていた.【訳注:雇用がなくなるのを恐れていた.】
 教師は,不正義に誰かにペナルティを与えたいわけではないので,ぎりぎり合格ラインを少しだけ割った生徒をパスさせる.
 恐れは,誤った図式を招く.運送人の悪いニュースでは料金が悪くなる.【訳注:悪いニュースを持ってきた人の評価が落ちる.】彼の雇用を守るためには,彼のボスに,いいニュースだけを知らせることである.
 会社の社長が指名した委員会は,社長が聞きたい話を報告するであろう.
 彼らが他の報告を,あえてするであろうか?
 個々は,思わず彼自身に後光が差したか探してしまう.実際には今朝,彼がタブロイドを買って読んでいるのに,彼はニューヨークタイムスをを読んで,リーダーシップの勉強したことを面接官に話するであろう.
 ゆがんだ数値を基本にしている統計の計算と予測は,混乱,フラストレーション,間違った決断を導きやすい.
 会計ベースのパフォーマンス測定は,セールス,売上,コストの目標達成のために,プロセスの不正操作及び,おべっかや,ごまかしの約束をくっちゃべって顧客に必要のない購入をそそのかす行動に従業員を駆り立てる.(adapted from the book by H. Thomas Johnson,Revenue Regained, The Free Press,1992)
 変革のリーダーとマネージャーは,個々の人々の心理,グループの心理,社会の心理及び,変革の心理について学ぶ必要を要件とする.
 安定したシステムへの応用も含む,バラツキの多少の理解及び,バラツキの異常原因と偶然原因に対する多少の理解は,人々のマネージを含む,システムのマネージメントの基本である.(Chs.6,7,8,9,10)

</引用>

2.深遠なる知識のシステムの4ポイントの軽い説明



 上記の訳を見ていただいても解るように,デミングさんの考える,深遠なる知識のシステムとは,下記の4つのポイントで構成され,それらはお互いに関係している(交絡している)と言っています.

 ・システムの理解
 ・バラツキの知識
 ・知識の論理
 ・心理学

 下記に私が理解している上記4ポイントの軽い内容をさらします.

 ・システムとは:
 システムとは,簡単に言うと,入力された事柄(情報やエネルギー)が何かに変換され,出力される体系の事を言います.
 特に,目的を持って作られるものは,人工システムとなります.
 例えば太陽系(英語では,The Solar System)は,太陽や惑星のお互いの位置や重力によって,お互いの位置や運動を決定していますよね.つまり,お互いの位置や重力等が入力となり,お互いの位置や運動等が出力となっているシステムになっています.
  ただし,この場合は,システムの目的は不明です.ただクルクル回るのが目的といえば目的かもしれませんが.
  同じように,工場もシステムです.工場は,営業よりの注文情報,開発よりの図面等の設計情報,サプライヤーからの材料供給等を入力として,工場内部で色々加工して,製品を出力している訳です.
 同じ考え方を当てはめると,会社や政府,その他経済活動やら教育活動やらを行っているすべての物事がシステムになるわけです.
 また,人間が関係するすべてのシステムは,目的を持っているはずですから,すべて人工システムになります.
 (目的が無い(=人の役に立たない)のに,人間が関与する訳はありませんよね.目的がないように見えるシステムでも,実を言うと個人的な楽しみが目的だったりします.)

 ・バラツキとは:
 バラツキとは,簡単に言うと,連続値であるが(長さとか,重さとか)が正確に測定できなくて誤差を含んだ形での処理や,初めからバラバラな値とかの測定・処理の話です.お金とかで考えると,時々経済雑誌とかで,利子や消費税のの切上げ・切捨ての話が出ますが,日本円は実質的に円までの単位なので,銭や厘とかの単位になった時の処理方法によって,かなりの金額が左右される事になります.これらの処理を的確かつ迅速に処理するためには,統計の考え方が必要となってきます.

 ・知識の論理とは:
 知識とは,情報とは違い,その知識使えば将来の予測に役立つ事柄が知識と呼ばれるものになるそうです.例えば電話帳の電話番号は情報ですが,将来の予測には使えません.しかし,これが得意先の台帳になれば,これらの顧客が良く何を購入するかが今までの経験で判っているので,将来の売上予測に役に立つ事になります.
 論理とは,皆さん御存知の帰納法とか演繹法とか,ロジックツリー等に代表される,因果関係等を論じる方法です.
 そして,一般的に注意すべき事柄として,相関関係と因果関係の関係です.相関関係があれば因果関係があるとは言えないとかいうやつです.
 これら,知識と論理を組み合わせ,知識の論理(学習の論理)が出来上がります.そう,これが,デミングさんが強調する「シューハート・サイクル」(日本では紹介者のデミングさんの名をとって,「デミング・サイクル」と呼ぶのが一般的です.)"Plan-Do-Check(Study)-Action"です.
 特にデミングさんは,論理とは将来の予測に役に立つものでなけらばならない事を強調しています.

 PDCA(PDSA)サイクルを知識の論理構築に使用すると,下記のような内容になります.

  • 将来を予測できる論理である.(Plan)
  • その論理より出た予測と,実際の観察の結果との比較が可能である.(合っているかどうかがわかる)(Do)
  • 比較の結果,その論理があっているか,間違っているか判別可能である.(Check・Study)
  • 論理が間違っていた場合,その論理の変更もしくは拡張で論理を改善できる.(Action) (これが出来ないと,その論理を捨てて,新しい論理を採用する必要がある)

 そして,上記のような論理が無いと,予測が出来ない.また予測が間違っているかどうかが分からないため,学習が出来ない.(=改善できない)となります.

 ・心理学(特に動機付け理論):
 心理学の動機付け理論には,色々な学説があります.例えば下記のようなものがあります.(産業心理学からです)
  ・科学的管理法の特に目標及び評価に対する考え方(テイラー)
  ・5段階欲求仮説(マズロー)
  ・X理論・Y理論(マクレガー)
  ・動機付け・衛生理論(ハーズバーグ)
  ・期待理論(ブルーム)
  ・内発的動機理論(デシ)
   など,まだ沢山ありそうです.

 この中で,特にデミングさんが強調したものは,「内発的動機理論」と呼ばれる理論です.簡単に言うと,下記のようになります.
  • 自分の心で発生した動機(これをここでは内発動機と呼びます)の強さは,外部からの刺激(例えば,成果報酬や失業への恐怖等:これをここでは外部誘因動機と呼びます)によって発生した動機の強さに勝る
  • 外部からの刺激が強すぎると,内発動機が破壊される
  • 内発動機が破壊された状態で,外部誘因動機に頼ると,以前より強い刺激でないと動機付けされない(つまり成果給であれば,同じ成果でも,以前より高い給料でないと動機付かない・成果が下がって給料が下がれば動機がなくなってしまう)


 つまり,品質を獲得するための仕事を動機付けるには,「内発動機(仕事への自尊心)」がすべてであり,成果評価や,数値目標等による競争を持ち込む事をことごとく否定しています.
 (ここの所は,デミングさんもかなり感情的になるようで,「競争を強調」する論調に対しては,烈火のごとく怒るようです.ただ,デミングさん自身は,すべての競争を否定しているわけでなく,「内発動機」を破壊しない競争(というか資源の効率的な配分だと思います)に関しては許容しているようですが,私もまだイメージがわかりません.)

その他



 上記4ポイントを考えていくと,何か経済学と深く絡みそうな気がしています.
 そこで,ググッて見た結果,下記論文が見つかりました.

PUBLIC POLICY FOR A KNOWLEDGE ECONOMY

 まあ,ステグリッツさんであれば,結構信用できそうなので,(他のエコノミストは,競争すればすべてOK!!みたいな人大杉)この論文をシコシコ読んでいます.(もちろんステグリッツさんや,他の経済学の入門書を読みながらです)
 でも,経済学って難しい・・・.古典的自動制御理論(古典的システム理論)の100倍は難しいです.でも,経済学は自動制御理論自体を取り込んでいるようなので(後,心理学とか)ここら辺から攻めると判るのかも知れないと思い,今シコシコ復習しています.
 そのうち,これらをさらします.
 (よく考えてみたら,デミングさんは著名な確率・統計学者でもあるので,もしかして,確率過程やら,カルマン・フィルタとかも理解していた可能性もあり・・・急に「以上」感が漂ってきた!!)

参考文献


  • Dening, W. Edwards,Out of the crisis,1986,ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards,The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.,1994,ISBN:0-262-54116-5
  • 吉田耕作,国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ-,2000,ISBN:4-8171-0338-8
  • 武田修三郎,デミングの組織論,2002,ISBN:4-492-53152-1
  • 高橋伸夫,虚妄の成果主義 -日本型年功序列制復活のススメ,2004,ISBN:4-8222-4372-9
  • DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部,動機付づける力,2005,ISBN:4-478-36081-2
  • 飯田泰之,経済学思考の技術 論理・経済理論・データを使って考える,2003,ISBN:4-478-21048-9
  • 藪下史郎 他,ステグリッツ早稲田大学講義録 グローバリゼーション再考,2004,ISBN:4-334-03272-9


マネージメントのための14ポイントの要約 その2

2005-10-15 17:05:00 | 品質管理
 続けてさらします.

デミングの14ポイント


【訳注: コピーライト等:
 このコピーライトは,the W. Edwards Deming Institute が所持しているとのことです.
 個人の勉強や,研究等のためならシングルコピーの利用ならOKのようです.
 (ちなみに,私もシングルユーズ(自分で理解するために,この文書のことをを話している)と理解しています.日本語で無いとわからないというのもあります.)
 正式なコピーライトや利用規約等は,下記の英文に記載されていますので,上記情報は参考としてください.
 シングルユースなので,私と同様,各人で考えてみてください.「国際競争力の再生」に吉田さんの解説が掲載されていますので,参考にするのも良いと思います.】


Original: http://caes.mit.edu/deming/14-points.html

Excerpted with permission from Out of the Crisis, copyright (c) 1986 by the W. Edwards Deming Institute. All rights reserved.
Permission is hereby granted to print a single copy of this material for personal, scholarly, non-commercial use provided such copy includes the text in its entirety and the copyright notice stated above.
Any other use requires written permission in advance from the The W. Edwards Deming Institute.

The following is excerpted from Chapter 2 of Out of the Crisis by W. Edwards Deming.



  1. Create constancy of purpose toward improvement of product and service, with the aim to become competitive and to stay in business, and to provide jobs.
     製品及びサービスの改善を進める変わらない目的を作ること.この目的は競争力をつけ,ビジネスを続けるため,及び雇用を供給するためでもあること.

  2. Adopt the new philosophy. We are in a new economic age. Western management must awaken to the challenge, must learn their responsibilities, and take on leadership for change.
     新しい哲学を採用すること.我々は新しい経済の時代に入った.西洋のマネージメントは挑戦する自覚を持ち,自らの責任を学ばなければならない.また,変革のリーダーシップを執らなければならない.

  3. Cease dependence on inspection to achieve quality. Eliminate the need for inspection on a mass basis by building quality into the product in the first place.
     検査に頼った質の確保はやめること.一番初めの所で,質の作り込みにより,大量の検査の必要性を減らすこと.

  4. End the practice of awarding business on the basis of price tag. Instead, minimize total cost. Move toward a single supplier for any one item, on a long-term relationship of loyalty and trust.
     値札を基準に置く,取引先選定の習慣を終わらせること.その代わり,トータルコストを最小にすること.信頼と忠誠の長期にわたる関係の元に,各アイテム毎,1供給者に向けて進めること.

  5. Improve constantly and forever the system of production and service, to improve quality and productivity, and thus constantly decrease costs.
     質及び生産性改善を通した継続したコストダウンのために,継続した終わりの無い製品及びサービスのシステム改善をすること.

  6. Institute training on the job.
     仕事上での訓練を確立すること.

  7. Institute leadership (see Point 12 and Ch. 8). The aim of supervision should be to help people and machines and gadgets to do a better job. Supervision of management is in need of overhaul as well as supervision of production workers.
     リーダーシップを確立すること.(see Point12 and Ch. 8) 管理者の目的は,人々と機械・器具がよりよい仕事をするように助けることでなければならない.マネージメントの管理は,工員の管理と同様に,オーバーホールが必要である.

  8. Drive out fear, so that everyone may work effectively for the company (see Ch. 3).
     会社のために個々が効果的な働きが出来るように,恐れを取り去ること.(see Ch. 3)

  9. Break down barriers between departments. People in research, design, sales, and production must work as a team, to foresee problems of production and in use that may be encountered with the product or service.
     部門間の壁を取り払うこと.製造時の問題及び,サービス及び製品使用時に出会う問題の予知のために,リサーチ・設計・セールス及び製造の人間はチームとして働かなくてはならない.

  10. Eliminate slogans, exhortations, and targets for the work force asking for zero defects and new levels of productivity. Such exhortations only create adversarial relationships, as the bulk of the causes of low quality and low productivity belong to the system and thus lie beyond the power of the work force.
    スローガン,説教【演説】,労働目標,無欠点及び新たな生産性レベルの問いかけはやめること.そのような説教は,システムと労働の強化につきものの低い品質及び生産性の原因の増大と同じで,ただ単に関係性が反対になる【訳注:関係性の悪化を招く】だけである.



    1. Eliminate work standards (quotas) on the factory floor. Substitute leadership.
       工場の作業標準(数値目標)【訳注:数量や時間の割当】はやめること.リーダーシップに置き換えること.

    2. Eliminate management by objective. Eliminate management by numbers, numerical goals. Substitute leadership.
       目標管理制度は廃止すること.数値による管理,数値目標は廃止すること.リーダーシップに置き換えること.



    1. Remove barriers that rob the hourly worker of his right to pride of workmanship. The responsibility of supervisors must be changed from sheer numbers to quality.
       時間労働者の正しい仕事へのプライドを傷つけるような壁は取り除くこと.管理者の責任は,数値目標から質へと変更しなければならない.

    2. Remove barriers that rob people in management and in engineering of their right to pride of workmanship.This means, inter alia, abolishment of the annual merit rating and of management by objective (see Ch. 3).
       マネージメントと技術【者】の正しい仕事へのプライドを傷つけるような壁は取り除くこと.とりわけ,年次評価・成績評価・目標管理制度の廃止を意味する.(see Ch. 3)


  11. Institute a vigorous program of education and self-improvement.
     教育及び,自己啓発の強力なプログラムを設立すること.

  12. Put everybody in the company to work to accomplish the transformation. The transformation is everybody's job.
     変革のための仕事に全社の人間を動員すること.変革は全員の仕事である.
     【訳注:シューハート-デミングサイクルに関連します.】


 なお,訳には,吉田耕作さんの「国際競争力の再生」を参考にしました.

 参考文献等
     
  • Dening, W. Edwards, http://caes.mit.edu/deming/14-points.html
  • Dening, W. Edwards,Out of the crisis,1986,ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards,The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.,1994,ISBN:0-262-54116-5
  • 吉田耕作,国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ-,2000,ISBN:4-8171-0338-8
  • 武田修三郎,デミングの組織論,2002,ISBN:4-492-53152-1


マネージメントのための14ポイントの要約 その1

2005-10-15 17:00:00 | 品質管理
 さあ,いよいよデミング博士の14ポイントをさらします.

 その前に,この章 Out of the crisis Ch.2 -Principles for Transformation of Western Management- にこのデミングの14ポイントが書かれているわけですが,14ポイントが書かれている前節-Aim and Preamble-に書かれている内容から,14ポイントを理解するための要素を引用してみます.

 ちなみにですが,この文書の人物の敬称は,すべて「さん」付けで統一しています.
 もちろん,デミングさん以下,博士号をお持ちの人がほとんどです.

【】内訳注

目的:


 やはり目的が分からないと,なぜ書かれたのか分かりづらいと思いますので,目的を訳してみました.

<引用>

 この章の目的:西洋のマネジメントスタイルは,西洋の産業の低下をとめ,向上させるために,変えなければならない.
  【訳注:原文は,Western Style management must change to --- と must を使っていますから,ISO-9000的に解釈すると,最上級の義務になっています.】
 この章と次の章の目的は,起こさねばならない変革【Transformation】の要素を説明することである.
 危機から目覚め,実行によりフォローし,マネージメントの仕事をしなければならない.
  【訳注:上記3行,must 三連発です.かなり凄いです.】
 この章および次の章はまた,社内マネージメントのパフォーマンスを誰が測定するのかの基準を与える.
 社内の人間の誰でも,この質問の答えを規準にしなければならない."How is our management doing?"
 【どうやって管理をするの?】
 組合のリーダも同じ質問に答え,同じ規準で判断しなければならない.
 この変革は,人間だけが達成できるものである.ハードウェア(コンピュータ,道具,オートメーション,新しい工作機械)ではない.会社は,品質への道を買うことはできない.

</引用>

 デミングさんがこの本 -Out of the crisis- を書いたのは80年代前半(出版は,1986年)だと推測できますから,このころのアメリカの産業の状況が,あまり芳しくない状況で会った事が反映されているのではないでしょうか.
 そういえば,昔(80年代),日本製のラジカセや車!を,アメリカの労働組合の人がハンマーで叩き壊していたパフォーマンスを,テレビのニュースで見た事があります.

項目ごとの引用:


<引用>

Best efforts not sufficient.
By everyone doing his best. (Wrong)

 最大の努力では十分でない.
 個々が最大の努力をすること.(間違い)
  -以下省略-

 Need for consistency of effort.
 努力の整合性の必要性

 下記を仮定してみよう.
 (1)個々が何をしなければならないか理解している.
 (2)個々がベストを尽くしている.

 結果:知識や努力の消滅・最適より程遠い結果.
 これらは,継続的な知識と努力を引き出す,良いリーダやチームワークの代わりにならない.

 Theory of management now exist.
今は,マネージメントの論理が存在する.

 今は,品質,生産性,競争優位の改善のための理論がある.
 誰も,今,マネジメントを教えるものが無いと強く訴えることは二度と出来ない.
 ビジネススクールに通う学生は,開講されているカリキュラムの判断のための蓄積情報を持っている.
 学校は,現在の問題に合うカリキュラムを与える試みをしていますか?それとも旧式化していますか?
 旧式化するのに計画は必要ない:勝手にそうなる.
 経験だけ,論理無しであると,マネージメントは品質向上や,競争優位のために,何をしたらいいのか,どうやればいいのか,何も分からない.

  -中略-

 達成するための方法が無い希望は,依然として希望でしかない.(Lloyd S.Nelson, next section)
 この章の14ポイント,および次章で説明する死にいたる病や障害の除去は,(それらの)方法を与えるであろう.

  -以下略-

Guidance from questions and pronouncements of Lloyd S. Nelson.(Dr. Nelsonis Director of Statical Methods for the Nashua Corporation.)
ネルソン博士の質問と意見からのガイダンス.

  1. すべての側面(企画,調達,製造,調査,セールス,人事,会計,法律)におけるマネージメントの中心問題は,バラツキの意味をよく理解し,そのバラツキに含まれている情報を取り出す事である.
  2. もし,あなたが改善のための合理的な計画を持たないで,(例えば)来年5%等の生産性や品質やその他の事柄を改善できるのならば,なぜ昨年にやらないのか?
  3. 各組織でマネージメントに必要な最重要な数値は,解らないし,解るものでもない.
  4. 統計的管理状態にある時,不良が現れた時に,処置を始める事は,効果的でないばかりでなく,更なるトラブルの原因になる.
    プロセスの改善は,ばらつきの低減または,レベルの変更または,その両方が必要になる.

    -中略-

 Short-term profits are no index of ability.
 短期的な利益は能力の指標にはならない.

 短期的な利益は,マネージメントの能力の指標としては信頼できない.

 -中略-

 紙の上の利益はパンを作らない:品質と生産性の改善が作る.それらは,何処にでもいるすべての人々に対し,よりよい生活する上の素材【を与えることに】貢献する.

 -後略-

 Support of top management is not sufficient.
 トップマネージメントのサポートでは不十分.

 品質及び生産性に,トップマネージメントが人生をかけてコミットしただけでは,不十分である.
 彼らは何にコミットしたか----何をしなければならないのか知る必要がある.この義務は,代理に任せることは出来ない.
 サポートでは不十分.行動が求められる.

 -後略-

 Wrong way
 間違った方向

 品質と生産性を向上させるため,(床に)ボルトを打ち込み,新しい道具や工作機械を備え付けるという一般的な仮定がある.
 新しい本は,「仕事をトップスピードでやらせる! ための部下への動機付け」方法を説明している.鞭を入れろ,そうすれば皆はもっと早く走る.---それがすべてだ.
 アメリカの議員団は,品質と生産性に特に重要な項目に関するコンテストを開き,数社に手紙を送った.
 それらの回答者の判断は,下記の通り.
  • 工作機械
  • オートメーションとロボット
  • もっと良い情報
  • プロフィット・シェアリングまたは,他のインセンティブ
  • トレーニング
  • 労働強化
  • QCサークル
  • ワープロ
  • サゼスチョン・プログラム
  • ゼロ・デファクト(ZD)
  • 目標管理制度(MBO)


 真実は,小説より奇なり.この議員団から,何かましなものが出るとの期待が持てない.
 ワープロが,アイディアを創造する.もしくは,関係代名詞と性別,先行詞と数の結びつきを自動生成する.という事を,今まで聞いたことが無い.【訳注:日本語でも,まだ誤植を自動的に修正してくれるような機能はありませんし.】
 この新しい膜の目的は,工員たちをおびえさせ,正気を追い出し,もし品質不足【Poor Quality】な品物【やサービス】が購入者の手に渡った時に,工員たちに何が起きるかをボヤかすことである.
 この点は,すでに1章にて明確にしている.工員たちは,何時でも何かが起きるかを知っているが,しかし,多くの場所では希望が無い.システムから来る力が,彼らの仕事を品質不足【Poor Quality】へと転じさせる.
【訳注:Poor Qualityの良い日本語訳はないと思います.この文書では,「品質不足」と訳しますが,これは不良や不適合だけではなく,もしその製品やサービスがスペックに適合していても,顧客が満足しない場合も品質不足になると思います.】


</引用>

 上記のまとめ:

 上記の引用のまとめをここでしてみたいと思います.

  1. 個々の努力よりは,全体のつながり(部分最適よりは全体最適).<システム・心理>
    • 個々の努力を評価する事による,働く人々のおびえの増幅及び,個々の努力の増幅(部分最適の増幅)での,協力や関係性の破壊.
    • 必要なのはトップマネージメントのサポートではなく,トップマネージメントの実際の参加・行動


  2. バラツキの理解.<統計>
    • マネージメントの中心問題は,バラツキの意味をよく理解し,それに含まれている情報を取り出す事である.
    • 短期的な利益は能力の指標にはならない.(短期では,バラツキの影響が強すぎる)


  3. 理論の必要性と,その理論の継続的改善の必要性.(継続的学習)<論理>
    • 達成するための方法が無い希望は,依然として希望でしかない.


  4. 役に立ちそうにも無い事柄を強調する事による,本当に重要な項目への注視の減少.(重点への集中)<システム・心理>
    • 道具や,機械等の導入だけでは,問題解決ははかれない.


 これらの項目が,14ポイントに含まれていると思います.

 その2へ続く