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【修繕費返還請求裁判】レオパレス勝訴

2020-02-17 21:22:33 | Weblog

            【修繕費返還請求裁判】 

              レオパレス勝訴 

【修繕費返還請求裁判】レオパレス勝訴
https://www.zenchin.com/news/post-4776.php

 レオパレス21(以下、レオパレス:東京都中野区)のオーナー合計100人が建物修繕の不履行を理由に契約無効とメンテナンス費の返還
を求めた裁判で第一審の判決が下り、名古屋地裁、東京地裁ともに原告の主張を退けた。旧契約を新契約に移行する際、大幅に変更し
た積立金の扱いや、修繕目安表の認識の差から両者は溝を深めた。

「修繕目安表」に実施義務なし

 今回判決が出たのは、2017年8月29日、同年9月20日に名古屋地裁、東京地裁にレオパレスのオーナーら計100人が訴訟を提起した裁
判。建物修繕の不履行を原因にオーナーらはレオパレスに対し、「建物メンテナンス契約」(以下、「BM契約」)の無効と支払い済みメ
ンテナンス費用の返却を求めた。裁判では、1月27日、同月30日に結審し原告は全面的に敗訴。レオパレス側の主張が認められた判決
となった。

 今回の裁判の争点は3点。「BM契約」の説明がオーナーに誤認を与え、契約実態と異なる内容であったか、二つめは「BM契約」は
オーナーに著しく不利益を与える内容か、三つめは修繕実施の目安として配布された資料の時期通りに修繕を実施していないことは債
務不履行にあたるかだ。

 争点となっている「BM契約」とは、11年以前にレオパレスがオーナーと締結した「メンテナンス・リフォーム トータルサポートシ
ステム利用契約」(以下、「旧TSS契約」)を切り替えたものだ。「旧TSS契約」では、契約締結時に長期修繕保証金を支払い、さらに
月々の修繕積立金として積立口座に1戸あたり約2000円を積み立てていた。修繕が発生した場合は修繕実施の決定権をオーナーが持
ち、積立金で修繕費用を賄う。サブリースの契約期間が終了した場合に修繕積立金の残金があった場合は家主に返還される契約内容
だった。

 ところが「BM契約」では、修繕の有無にかかわらず定額のメンテナンス費用を支払う方法に変更になった。修繕はレオパレス側の判
断で実施でき、メンテナンスの実施状況は定期的に報告するというものだ。長期修繕保証金は月々のメンテナンス費に充当。預託済み
の修繕積立金は一時返金となった後、サブリース契約の残存期間で残高を案分しメンテナンス費へ合算している。
 月々のメンテナンス費の金額と計算式は「BM契約」への移行前にレオパレスからオーナーへ書面で通知されていた。

「減額されないことは容易に理解」

 第一の争点だが、原告側は、長期修繕保証金は月々のメンテナンス費用から控除されると説明を受けたと主張。また、「旧TSS契
約」では修繕積立金の残高は返金される。「BM契約」後も同様に返金されるものと認識し契約したため、「BM契約」の内容に誤認が
あったと主張。

 裁判所は、長期修繕保証金がメンテナンス費用から控除されないこと、修繕積立金が返金されないことは説明書類等に記載があり
「比較的容易に理解できる」とし、誤認したとは認められないと判断した。

 第二の争点。オーナーに著しく不利益な契約だとして、原告は公序良俗違反だと指摘する。メンテナンスの実施について「客観的に
必要性がないと認められるとき」は修繕を実施しないと契約書に記載があり、修繕実施の決定権をレオパレスが持つため、恣意(しい)
的に修繕を行わないことができると原告は主張。さらに、前払いしたはずの長期修繕保証金がメンテナンス費用から控除されていない
点でオーナーが不利益を被っていると主張した。

 裁判所は、修繕費用をレオパレスが負担する以上、「客観的な必要性のない修繕」の要求に応えることは不可能で、合理性があると
認定。さらに恣意的に修繕を行わず、建物の劣化が目立つようになれば入居率が下がり一括借り上げしているレオパレスにも損失が出
ることから公序良俗違反とは言えないと判断した。長期修繕保証金についても将来的な修繕のためのもので、オーナーが取得すること
を予定しておらず、原告の主張を退けた。

 第三の争点では、原告は修繕目安表の時期通りに修繕を行うとレオパレス側から説明があった、もしくは修繕時期の変更があるとの
説明がなかったため修繕目安表通りに行わないのは債務不履行だと主張。

 裁判所は、修繕目安表に記載の「参考」という表記や、「気候などによって変動する」などの文言があることから全面的にレオパレ
スの主張を支持した。

 レオパレスの担当者は今回の判決について「当社の主張が認められた結果」と話し、今後の控訴については「コメントを控える」と
回答した。

【原告側の声】目安表軽視に遺憾

 原告の代理人を務める安藤澁谷法律事務所(愛知県名古屋市)の澁谷歩弁護士は、「修繕目安表を軽視した判決となり、大変残念」と
コメント。

 原告団を形成するLPオーナー会(同)の前田和彦代表は、「裁判を始めたことで、レオパレスはこれまで聞き入れなかった修繕を行う
ようになった。敗訴したが、実質面では一定の成果があった」という。控訴は行うとし、「債務不履行が是正される判決を求めたい」
と話した。


家財整理相談窓口、住宅セーフティネット周知

2020-02-16 21:15:53 | Weblog

            家財整理相談窓口 

           住宅セーフティネット周知  

家財整理相談窓口、住宅セーフティネット周知
https://www.zenchin.com/news/post-4771.php

 遺品整理・空き家整理などの業界団体、家財整理相談窓口(東京都新宿区)は1月29日、東京都文京区の住宅金融支援機構内すまい・
るホールで『東京都居住支援セミナー』を開催した。

居住支援に関心

 高齢者、障がい者、子育て世帯、低所得者ら住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進する「住宅セーフティネット制
度」に関する情報提供が目的。当日は、不動産事業者、賃貸オーナーらが多数参加した。

 セミナーは4部構成。第1部は、東京都の住宅政策本部住宅企画部の担当者が「東京都の居住支援に関する取り組みについて」と題し
登壇。民間住宅課セーフティネット住宅担当の菅文成氏が、同制度の「3本柱」の概要を解説。住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃
貸住宅を登録し、国土交通省が運営するWEBサイトで物件情報を公開する「登録制度」、登録住宅のバリアフリー改修費の補助や家賃
低廉化補助、住宅金融支援機構による改修費融資などの「経済的支援」、住宅確保要配慮者と貸主双方の制度利用をサポートする「居
住支援」の3点だ。

 続いて、企画経理課調査担当の佐藤公昭氏が、都と不動産団体、都が指定する居住支援法人などで構成する居住支援協議会の取り組
みを紹介。また制度の普及には賃貸管理会社やオーナーの協力が不可欠であると強調し「都として、住宅を貸す立場の方々の不安感や
負担感を軽減していくための支援策を打ち出していきたい」と述べた。

 第2部では、住宅金融支援機構住宅融資保険部の牟田寿穂氏が「家賃債務保証保険の概要」と題して講演。住宅確保要配慮者の家賃
債務を保証会社が保証する際に同機構が保証を引き受ける家賃債務保証保険について解説した。また、高齢者の住まい確保に関連し、
満60歳以上の人を対象に、持ち家を担保に住み替えやリフォーム資金の融資を行う『リバース60』についても、併せて紹介した。

 第3部では、茨城県が指定する居住支援団体のLANS(ランズ:茨城県つくば市)理事の鈴木一也氏が「茨城県居住支援法人の取り組み事
例」と題し、行政や医療機関、介護施設などと連携しながら入居支援を行う同法人の活動を紹介した。

 第4部では、家財整理相談窓口理事の大邑政勝氏が「家財整理業者と社会福祉団体との連携」と題し、家財整理業務の内容、入居者
の死亡時や入院時、災害時などで、自治体や社会福祉協議会と連携し、家財整理を実施した事例を紹介した


仲介手数料返還裁判、大手が「借主の事前承諾」徹底

2020-01-29 09:37:39 | Weblog

           仲介手数料返還裁判 

         大手が「借主の事前承諾」徹底 

仲介手数料返還裁判、大手が「借主の事前承諾」徹底
https://www.zenchin.com/news/post-4700.php

 原則「家賃の0・5カ月分」と宅建業法が定めている賃貸仲介手数料の上限規定をめぐり、借主とのトラブルを避けるため業務フロー
を見直す不動産会社が現れている。14日に敗訴が確定した東急リバブル(東京都渋谷区)の手数料返還判決をきっかけに、家賃0・5カ月
分を超えても、事前に借主から承諾を得れば違法とならない例外規定を満たすべく、それぞれ対応策を整えている。

賃貸仲介業務フローを見直し

 東急リバブルの判決結果を受けて、国土交通省の担当者は「個別の案件。現段階でアプローチする予定はない」と語った。だが現場
で働く不動産会社は、仲介手数料の事前承諾を借主から得られるよう、業務フローや契約書の見直しなどに取り掛かっている。

 業界最大手の大東建託(東京都港区)では、2019年11月、入居申し込み手続きより前の段階で手数料の承諾を得るための体制をつくっ
た。すべての物件で承諾を得るよう指導している。

 具体的には「報酬金額に関する承諾書」という書類を運用している。賃貸仲介手数料を受け取れる合計額は、消費税を含む家賃1カ
月分の1・1倍に相当する金額以内とし、一方の依頼者から受け取れる報酬額は、家賃1カ月分の0・55倍に相当する金額以内としてい
る。

 それまで同社では、重要事項説明書の中に、手数料の取り扱いにかかわる内容を記載していた。だが19年8月、賃貸仲介手数料の一
部返還をめぐって、元・借主と東急リバブルが争った地裁判決をきっかけに、再び書式変更を行った。現状では、大きな顧客トラブル
は確認していない。

 不動産店舗フランチャイズのセンチュリー21・ジャパン(東京都港区)では、地裁判決のあった19年8月に、加盟店舗に注意喚起し
た。媒介契約書か仲介手数料承諾書などを、重要事項説明より前に取得するよう促した。
 同じくFCチェーンを展開するAPAMAN(東京都千代田区)では、「1カ月分の仲介手数料を受領する場合には、媒介契約の成立前に依頼
者の承諾を得なければならない」と認識を示した上、「法令順守は極めて重要で、進めている」というコメントにとどめている。
 一方「具体策は調整中」とする都内の大手仲介会社もあった。これまで口頭ベースで承諾を得てきたが、書面・ウェブを使って証拠
が残る仕組みを導入しようと検討している。担当者は「専門家と相談しながら結論を出したい」と話した。
 レオパレス21(東京都中野区)では、東急リバブルの裁判判決より前から、手数料承諾を得る指導を行っているという。計3回確認
し、1回目は物件紹介時に口頭で伝え、2回目は物件図面に記載し、3回目は「借主が入居の意思表示をした後、当社で手数料を記載し
た概算書をつくり、提示している」(広報)。
 東急リバブルの例では、依頼成立までに手数料の承諾を得ないと、宅建業法の例外規定を満たされないとし、仲介手数料の一部を
元・借主に返還する判決内容となった。
 同裁判の場合は、借り手側が入居の意思表示をして、不動産会社側が契約締結日の案内を借り手側に伝えた時点を依頼成立日と示し
ている。不動産会社側は、それまでに確実な承諾が得られるかが、トラブルを確実に回避するための焦点となるだろう。

仲介手数料返還裁判

借主が2013年3月から5年間住んだ賃貸住宅をめぐり、退去を控える4カ月前の17年12月、仲介した東急リバブルに手数料の一部返還を
求めて訴訟。依頼成立前に手数料1カ月分の承諾を得なかった東急側の敗訴が確定した。


サブリース契約 業者の規制強化 新たな法案提出へ

2020-01-16 16:25:00 | Weblog

                 サブリース契約 

                 業者の規制強化  

                 新たな法案提出へ  

サブリース契約 業者の規制強化 新たな法案提出へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200116/k10012247091000.html

アパートなどを家主から一括して借り上げて入居者にまた貸しするいわゆる「サブリース契約」によるトラブルを防ぐため、政府は、
不当な勧誘を禁止し、業者の国への登録を義務づける新たな法案を通常国会に提出する方針です。

サブリース契約をめぐっては、おととし、シェアハウスの運営会社が経営破綻し、家主が多額の借金を抱える問題が起きたほか、全国
の消費生活センターには「業者が一定の家賃収入を保証する約束を守っていない」といった家主からの苦情が相次いでいます。

このため政府は業者への規制を強化することにしたもので、新たな法案では「絶対に損はしない」といった不当な勧誘を禁止し、家賃
収入が保証される期間や条件などについて書面で説明することを義務づけます。そして、違反した場合には業務停止命令を出したり、
罰金を科したりします。

また、サブリース契約などを手がける業者については、現在は、任意となっている国への登録を義務化したうえで、アパートなどの入
居状況や入居者とのトラブルについて定期的に報告を求める方針です。
政府はこうした内容を盛り込んだ法案を今月20日に召集される通常国会に提出する方針です。


業者に託した息子が孤独死…母の後悔 引きこもり“引き出し屋”の実態

2019-12-19 20:43:03 | Weblog

              業者に託した息子が孤独死…母の後悔 

               引きこもり“引き出し屋”の実態 

業者に託した息子が孤独死…母の後悔 引きこもり“引き出し屋”の実態
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/568573/
【扉の向こう 引きこもり支援の今 (上)】
 冷え込み厳しい冬の日。関東に住む女性(80)の家に、「引きこもり自立支援」をうたう民間業者がやってきた。同居する長男は当
時40代半ば。仕事を辞めて部屋に引きこもるようになり、既に20年が過ぎていた。
 スタッフ5人が部屋に入って30分ほど後、長男は出てきた。「すごく泣きました」とスタッフ。女性は着替えを詰めたスーツケース
を持たせ、「頑張ってね」と声を掛けた。長男はうつむき、無言で家を出て行った。
 女性が最後に見た長男の姿だった。
   *    *
 業者を知ったのは2017年1月。ホームページの「必ず自立させます」という言葉にひかれ、東京都内の本部に相談に行くと、スタッ
フに「早い対応が必要」と促された。提示された契約金は900万円超。自宅を売る段取りをして準備した。
 長男は都内の施設に入り、その後、提携する熊本県内の研修所に移った。ほどなくして、業者から「熊本で就職した」と報告を受け
た。自立を妨げないようにと、女性は連絡を控えていた。
 今春になって突然、業者から電話が入った。「息子さんが亡くなりました」
   *    *
 女性は警察署で痩せこけた長男の遺体と対面した。ひげが数十センチ伸びて、脚は骨と皮ばかりになっていた。遺体が見つかったア
パートの室内には、ごみ袋やペットボトルが散乱し、冷蔵庫は空。「元気で仕事をしていますか」とつづった女性の手紙が、血の付い
た状態で残されていた。
 死亡推定日は1?2週間前。「食べるものがなく、餓死したのでしょうか。一体、どうして…」
 アパートにあった離職票や金融機関の口座を調べると、17年12月に介護施設に就職し、翌年7月に退職。それから8カ月ほどし、家賃
や電気料金の引き落としが滞っていた。
 「業者が丁寧にフォローしてくれていれば、こんなことにならなかったのでは」。熊本に移る前、女性は業者に400万円近くを追加
で支払っていた。その際、研修終了後も月2回、長男と面談すると約束してくれたはずだった。
 女性が経緯を尋ねても、業者側から詳しい説明はない。
「引き出し屋」頼るしか 規制なく「被害」次々
 九州南部出身の30代女性は、「あの日」を今も夢に見るという。「屈辱的で怖くてたまりませんでした」
 1年ほど前、実家に引きこもっていた女性の元に「自立支援」をうたう業者が訪ねてきた。「帰って」。女性がそう懇願しても、ス
タッフは鍵を壊し、部屋に入ってきた。
 研修所への入所を求め、居座ること7時間。「もう決まっている」。複数の男性スタッフから両手両足をつかまれ、無理やり車に乗
せられたという。向かった先は、アパートで孤独死した男性が入所していたのと同じ研修所だ。
 過去に入所していた30代男性は、1日5時間の農作業をさせられ、「作業体験代」名目で1日千円を受け取った。それ以外は監視カメ
ラ付きの部屋で過ごした。「低賃金の労働をさせられました。ほかに自立のプログラムはほとんどありませんでした」
 研修所がある地元の住民や役場には、過去に何度も入所者が助けを求めた。消防などによると、昨年2月、19歳の男性入所者が近く
の倉庫で首をつっているのが見つかっている。
   *    *
 研修所には、東京に拠点を置く業者と契約した入所者が送り込まれている。取材を申し込むと「一切応じられない」と回答された。
 スタッフの一人が非公式に記者と会い、説明した。「うちに来る人は、家庭内暴力や親の金の使い込みなどの問題を抱え、親も手に
負えなくなっている」
 引きこもりが長期化すると、家族は接し方が分からなくなる。本人は「誰も理解してくれない」と意地になる。中には親を奴隷扱い
し、事件化が懸念されるケースもあるという。「本人のため、少し強引でも家庭から離した方がいい」
 「暴力的な連れ出し」は否定した。興奮した入所者が暴れると危ないため、制止することはあっても、故意の暴力はないという。農
作業は賃金の発生しない生活訓練であり、自由参加。説明には入所経験者の言い分と食い違う点もあった。
 なぜ、契約金が数百万円単位に上るのか。24時間体制で職員を配置し、夜勤手当などのコストがかかるからー。スタッフはそう説明
し、付け加えた。
 「行政の相談窓口は、部屋を出られない引きこもりには対応できない。切迫した親にとって、私たち以外に頼る選択肢がない」
   *    *
 厚生労働省の調査(昨年2月)によると、引きこもりの自立支援を掲げる入居型施設は全国51カ所に上る。その一部が最近、当事者
を強引に連れ出し、法外な契約金を求めているとして「引き出し屋」と呼ばれ、問題視されている。
 支援に携わるNPO法人でつくる「共同生活型自立支援機構」によると、入居型の費用は通常、月額15万?25万円が相場という。消費
者庁には高額な契約金を巡り年間20件ほどの相談が寄せられ、各地の「ひきこもり地域支援センター」にも相談が相次いでいる。
 業者を規制する法制度や運営基準はなく、国も現状を把握できていない。一部の悪質な業者が野放しになっており、「支援に携わる
団体全てが疑いをもたれ、迷惑だ」(機構幹部)。
 一方で、ほかに頼る先もなく、孤立した親と子がいることを物語る。あるNPO関係者は言う。「大金を払ってでも、何とかしてほし
いと願う親がいる。業者だけを一概にけしからんというのは違う気がする」
     ××
 内閣府の推計によると、引きこもりの40?64歳は61万3千人。80代の親が50代の子と共に困窮する「8050問題」が深刻化し、「引き
出し屋」と呼ばれる業者も出現している。引きこもり支援はどうあるべきか。九州の現場で考える。
 (山下真が担当します)
親の遺体を放置、全国で相次ぐ 引きこもりの声なきSOS…支えるには
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/568577/
【扉の向こう 引きこもり支援の今 (中)】
 細く険しい坂道沿いに立つ古いアパートの一室は今、空き部屋となっていた。
 昨年8月、長崎市の住宅密集地で異臭騒ぎがあった。アパート2階の部屋のわずかに開いた窓から、鼻につく臭いが漏れ出す。住民の
通報で警察官が駆け付けると、部屋の中で70代女性の遺体が発見された。
 長く定職に就かず、引きこもっていた40代後半の息子が、女性と母子2人で暮らしていた。7月下旬、住民が見掛けたのを最後に、母
は消息不明に。この後に倒れたとみられている。
 息子は母親の遺体を自宅に放置したとして、死体遺棄容疑で逮捕された。長崎県警によると、「亡くなったのは知らなかった」と話
したという。鑑定留置を経て約2カ月後、長崎地検は息子を不起訴処分にした。
 近隣住民によると、息子はかつて父の仕事を手伝っていたとみられる。父の死後、10年ほど前からほとんど外に出ないようになっ
た。アパートの外に大量のごみを山積みし、近隣とトラブルになっていた。
 母子はSOSを発しなかったのか。地元の民生委員の女性は、行政の支援を受けるよう声を掛けたことがある。「そんなのは絶対、せ
んでよか」。息子は拒んだという。
   *    *
 こうした事件は最近、全国で相次いでいる。昨年4月には福岡県福津市でも80代の母親の遺体が発見され、引きこもり状態にあった
60代の息子が逮捕された。
 「引きこもる人たちは自らの存在を、社会にとってマイナスだと捉えている」。引きこもり支援を30年近く続け、「親の『死体』と
生きる若者たち」の著書がある山田孝明さん(66)は言う。
 山田さんは逮捕された引きこもり当事者と留置場で面会し、差し入れをしてきた。多くの当事者は「人と会うのが怖かった」「どう
していいか分からなかった」と語る。胸の内では仕事に就かない自らを否定し、誰かに相談すらできない。親の後を追って死のうと思
い詰める人もいた。
 「社会に背を向けざるを得なかった人は各地に潜在している。事件は氷山の一角にすぎない」
   *    *
 心を閉ざす当事者をどう支えればいいのか。
 北九州市出身の松下哲也さん(46)は20代から30代にかけ、職場の人間関係に疲れて7年ほど引きこもった。昼夜逆転の生活。同居
する家族との会話も減り、母に「おまえのせいだ」といつも怒鳴っていた。
 前を向くきっかけはNPO法人青少年サポートセンター「ひまわりの会」の訪問支援だった。松下さんの父から頼まれた村上友利会長
(75)が1年8カ月間、自宅を毎月訪ねて声を掛けた。話すのは野球やテレビの話題。たわいのない内容でも、家族以外と会話する唯一
の時間は新鮮だった。
 「どうなってもいい気持ちと、どこかで助かりたい気持ちが半々だった」。実は、会を取り上げた新聞記事を切り抜き、父に見せた
のも松下さん自身だった。
 「将来のことを考えたら」。「友だち」と思えるようになった村上会長の言葉に背中を押され、家を出た。今は1人暮らしをしなが
ら会の活動を手伝う。
 村上会長はこれまで40人を、引きこもり状態から外に出した。「環境を変えたくてもタイミングをつかめず、親や社会のせいにして
いる。けれど、救いを待つ気持ちもある。全てを引き受ける覚悟で、粘り強く訪問するしかない」
引きこもり 家族ぐるみで支援 全国に広がる「伴走」モデル
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/568766/
【扉の向こう 引きこもり支援の今 (下)】
 家族だんらんの場となるはずのリビングで、40歳くらいの女性が耳を手で覆い、何かをつぶやきながら歩き回る。その傍らで白髪姿
の父親が床に座り、うなだれていた。
 「これは、私がかつて支援に訪れた家庭です」
 佐賀県で引きこもり支援を続けるNPOスチューデント・サポート・フェイスの代表理事、谷口仁史さん(43)が、女性の状態を病院
に伝えようと撮影した映像を見せてくれた。
 女性は元教員。学級崩壊に直面して心を病み、10年以上引きこもっていた。父は仕事を退職して女性を世話したものの、自らもうつ
状態に。2年間風呂に入らず、テレビばかり見ていた。暴れる女性を殴ることもあった。母は被害妄想が強く、相談に乗ろうと訪れる
行政の担当者に厳しい言葉を浴びせた。
 谷口さんは言う。「私たちが向き合うのは、本人だけではないんです」
   *    *
 佐賀県子ども・若者総合相談センターの実態調査によると、2010?16年度の利用者約2400人のうち、家族自身も悩みを抱え、疲弊し
ているとの回答は63・7%に上る。
 谷口さんの原点の一つは、学生時代の経験にある。家庭教師のアルバイトで、周囲に暴力を振るい、授業を欠席しがちな男子中学生
を担当した。「恵まれた家庭にいるはずなのに、どうして…」
 通ううち、両親から体罰を受けていることを知った。衝突する原因を探り、両親とも対話を重ねるうち、男子は学校に行くように
なった。「家庭に入らないと解決できない問題があると実感しました」