カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

マティーニグラスの終着駅

2011年04月25日 | Articles

私は出来るだけ作り手の顔が見える物を側に置きたいと思っています。

器にしろ家具にしろ美術工芸品にしろ、見る度に作った人の事を思い出し、

モノに命を感じることが出来るからです。


一方、作り手は判らないけれども、それと出会った時の自分自身の心の動きや、

胸のときめき等を思い出すことが出来るアンティークも同様に好きです。

お天気のいい日にお散歩をかねて近くのアンティーク街を歩いている時や、

旅先でふと立ち寄ったアンティークショップで思いがけない出会いも有ります。

これは大分前に出会った小振りなマティーニグラスです。

普段は慎重派の我がバーテンダーが、知らないうちに迷う事なく会計を済ませていました。

少し驚きましたが、それには理由がありました。

グラスの裏に Made in occupied Japan の文字。

占領下の日本。。。。。

これは戦後アメリカの占領下に有った日本で作られ、輸出された物です。

秋を思わせる草花が優しくシンプルな線で描かれていて、

大分使われたのでしょう、金を吹き付ける為の接着剤として使用された

赤漆の下地がのぞいています。

『誰がどんな気持ちでこのグラスを作ったのかと思ったら、家に連れて行こうと思ってさ』

バーテンダーが言いました。私ももちろん大賛成です。

6客セットで揃っていましたが、どれもかなりの傷みが有ります。

それでも、私達は使いましょう!という事になりました。使ってあげたいと思いました。

これを作った方はもうお亡くなりになっている可能性も高いと思います。

でも敗戦の日本でコツコツと、もしかしたらはっきりとした用途さえ判らぬまま、

このマティーニグラスを作っていた職人さんの生きた証が、

長い年月と海を越えて、日本人の私達の元に巡って来てくれたのです。

よくぞ今まで、壊れもせずに元気で頑張っていてくれましたね。

もう大丈夫、安心して下さい。あなたの旅は終わりです。ここが終着駅。

これからは私達とずっと一緒に暮らしていきましょう。

あなたの主のバーテンダーは、あなたをとても大切にしてくれるはずです。

時々、『ちょっと小さ過ぎるなー』などと文句を言う事も有るかもしれませんが、

どうぞ気にしないでね。酒飲みの戯言ですよ。

 


イタリアンマーケット

2011年04月24日 | Food

私のグロッサリーショッピングは基本的に週一度。

車で2~3分の所にマーケットが幾つか有りますので、

細々としたものはその都度買い足したりしますが、主なものはまとめて一度です。

外国暮らしが長く、和食を恋しがってばかりも居られませんから、

お料理は世界各国何でも作ります。旅先で美味しかったものは必ず帰って来て作ってみて、

それが旅の思い出の味になり、いつしか我が家の味になっていくものも有ります。

ここは移民の国ですので、それぞれの国の食材を専門のマーケットで買う事が出来ます。

習慣や文化、宗教の違いで例えば同じお肉でも処理の仕方が違っていて、

扱っている食材やスパイス、野菜等もそれぞれ違うので楽しいですよ。

明日は窯焚きのため一日外出できませんので、

その時間を使って久しぶりにミートソースを仕込みます。

私はひき肉ではなくて、生のイタリアンソーセージの中身を使います。

それから絶対これでなくては!というトマトの缶詰が有りまして、

それを買いにイタリアンマーケットに行って来ました。


小さなお店ですが、イタリア移民の一家が経営していて本物の食材が手に入ります。

生ハム、ソーセージ、サラミ等は沢山の種類が有って迷いますが、

尋ねれば親切に相談に乗ってくれ、全部薄切りにして味見させてくれます。

家のバーテンダーは、いつも”あー、ワインを持ってくれば良かったなあ”と申します。

今日はランチミーティングでボリュームのあるお昼御飯でしたので、

ディナーは簡単にイタリアンサンドイッチにする事にして、

スパイシーなハムとサラミを一種類ずつと、

Havartiという大好きなデンマークのチーズをそれぞれスライスしてもらいました。

最初の写真の右上に移っているのは、柔らかく風味豊かな胡麻付パンで、

サンドイッチ用にスライスして頂きました。

ハム、サラミ、チーズ&たっぷりのイタリアンサラダのサンドイッチです。

付け合わせに皮ごと食べられる種無しのブドウを添えました。

サンドイッチの付け合わせというと、チップスやピクルスが一般的ですが、

スパイシーな具材やこくのあるチーズのサンドイッチにワインを合わせる場合、

ブドウは間の手として、とても良く合います。


会計の際、レジの脇に有ったイタリアンコーヒーソーダというのに心ひかれまして、

一本購入して飲んでみましたら、凄く美味しかったですよ。

甘いエスプレッソを炭酸で割った感じで、瓶を開けるとクリーミーな泡が立ちます。

次に行ったら少しストッック用に買いたいね等と話しながら、

帰り道にもう一件、よく行く雑貨屋さんに立ち寄りますと、

コーヒーソーダでは有りませんが可愛いボトルのソーダ色々を発見

 

左からクリームソーダ、キーライムクリームソーダ、富士リンゴのソーダ、

ピーチソーダ、チョコレートソーダです。全部初めてのものです。

特に、チョコレートソーダってどんなでしょう

もうしばらくして、プールサイドが気持ち良い季節になったら、

つめたく冷やして、この間作ったマリンなゴブレットで頂こうと思います。

 

では


ファッションコーディネーター

2011年04月23日 | Fashion

食べていく為の仕事として、ファッションの仕事をしていた頃が有りました。

ある時街を歩いていて、日本では見た事のないコンセプトの洋服を見かけました。

その小さなブティックに入ってみますと、

今では親しい友人になりましたが、デザイナーの女性が店頭で店番をしていました。

自分の物を買うつもりで試着しているうちに、気に入り過ぎて日本で売りたくなりました。

絶対売れると思って日本に帰って直ぐに営業開始。売れましたよ。

それは高級ジャージー素材を使ったセミオーダーメイドでした。

Tシャツもドレスもパンツも自分の身体に合わてオーダー出来るのです。

問題は、取り扱って下さるブティックにお客様からアポイントが入ると、

私がオーダーに立ち会わなくてはならない事。

しばらくして日本に居る事が少なくなってしまいその仕事は終わりになりました。


そんな私の今のファッション関係のお仕事は、

離れて暮らす母専属のファッションコーディネーターです。

母は和服が仕事着ですが、洋服で出掛けなくてはならないカジュアルな席も有り、

着物選びはプロ中のプロの彼女も洋服選びにはお手上げなのだそうです。

そこで私がパーソナルコーディネーターをしているという訳。

幸い私と母の体型はほとんど同じ。靴のサイズも同じです。

若干の違いは勿論有りますが、その差も把握出来ていますのでサイズ合わせは大丈夫。

母の性格やライフスタイル、お目にかかる方々の顔ぶれは把握していますので、

それを踏まえた上で、デザインや色等は容赦なく私の好みを押し付けます。

そこはホレ、私の母ですので、少々派手な色も形も組み合わせもドンと来いです。

季節毎にこちらで私が選んだ洋服を日本に送ります。

洋服を送るだけでは組み合わせが判らないとのことで、

買った洋服といっしょに組み合わせのバリエーションを写真に撮って送ります。

こちらは前シーズンのものです。

 

 

 

 

私は早いうちに家を離れましたので、

通算すれば大人として両親と過ごした時間は、そう長く有りません。

自分の事で精一杯だった時代をようやく過ぎてふと振り返った時、

常に私の味方で有り続けてくれた両親が今も健在で居てくれる事に、

手を合わせたい程の感謝の気持ちで日々を過ごしています。

長い間勝手に生きて来た私が、両親に感謝の気持ちを伝える時間を頂けるなんて!

両親を折りに触れては日本の外に連れ出し、見た事のない風景を共に眺めたり、

こうして母の洋服選びをさせてもらったり。。。。。

そんな今が愛おしくてならない私です。


 

 


フルーツパラダイス

2011年04月22日 | Food

日本の果物は、まるでお砂糖がかかっているかの様に甘く、見目麗しく、

まさにフルーツの女王様ですね。

でもお値段も女王様級。 日本の果物は贅沢品です、私には。


ここでは一年中どんな果物でも手頃な値段で手に入ります。

毎朝、季節のフルーツとヨーグルトで作ったスムージーを朝食に頂くのが日課です。

冬の間は真夏の南半球から、これからはロコのフルーツが店頭に並びます。

日本の芸術品のような果物と比較すると、味も姿も大雑把。

私もこちらに来たばかりの頃は、日本のものと比べては文句ばかり言っていました。

ゴメンネ

今は大好きですよ。キッチンにお花を飾るように果物をいっぱい並べても、

お財布の心配をしなくても大丈夫です。

一年中どんなフルーツでも安定価格という事は、季節感がないように思われがちですが、

フルーツに貼ってある産地のステッカーを見ると、

”あー、フィリピン産のマンゴーだ”ですとか 

”今年もまたテキサス産のグレープフルーツの季節ね”と、

それぞれのフルーツに、とびきり美味しい産地というのが有り、

注意していれば季節感はちゃんと有るのです。

今はイチゴの季節です。

以前よりはずいぶん少なくなりましたが、家の周囲には広大なイチゴ畑が残っています。

このほとんどは、日本人の移民の方々が開拓されたのですよ。

皆様仕事が丁寧で働き者でしたから、みるみる頭角を現し、

今では皆さんリタイヤされたり、経営をお譲りになられたりしましたが、

最初の農場主としてストロベリーファームにはちゃんとその方々の名字が残っています。

車で走りますと、所々にストロベリースタンドが有りまして、

すぐ脇のイチゴ畑から収穫されたばかりのイチゴを買うことが出来ます。

どこのスタンドも同じという訳ではないですよ。私にもごひいきのスタンドが有ります。

この季節にしか焼かないストロベリーロールケーキを焼きました。

これを待ちこがれていて下さる方も居ます。そんなに喜んで頂けるのなら、

イチゴは一年中手に入るのですから、もっと頻繁に焼けば良いのかもしれませんが、

私はその季節にしか会えないものを残しておきたいのです。

イチゴが元気に育って美味しくなってくれた事、私が元気でケーキを焼ける事、

笑顔で食べてくれる人がいてくれる事。。。。

その全てが特別で、嬉しくて、感謝したくなるのです。

 

ここはフルーツパラダイス。

もうしばらくするとチェリーとピーチの季節が始まります。


 


ラベンダーアイズ

2011年04月21日 | Fashion

 

メガネを新しく作りました。

今回はツルの部分が柔らかいマロンベージュで、裏側がゴールドのドット柄。

フレームはブラウンですがボルドーのような赤みも感じられます。

今までよりも柔らかい感じのものが欲しかったので、こちらを選びました。


2年前に作ったメガネのフレームは奇麗なままですし、気に入っても居りますので、

まだまだ使いたいところですが、肝心の視力が変化するのですから仕方有りません。

ところで、今回メガネのショップでとても素敵な女性の店員さんと出会いました。

見事にカールした格好いいヘアと、コーヒー色に輝く肌を持った女性です。

彼女の小さく彫りの深い顔立ちに、黒いセルフレームのシャープなメガネが、

この上なく素敵に似合っていました。


さりげなく観察しましたところ、何よりも彼女のメガネ姿を魅力的にしているのは、

メガネの奥の、よく考えられた丁寧なアイメイクだと睨みました。

お客様の数も少ない平日の昼間の店内でしたので、

商売の邪魔にならないと判断した私は、彼女としばらく話し込みました。

もちろん、話題はメガネとアイメイクの関係について。

実は私は彼女に出会うまで、メガネをかけている以上、

アイメイクはそれほどこだわっても意味がないと思っておりました。情けない話です。

彼女と向かい合って座ったとき、そのメガネの奥にはどぎつい訳ではないのですが、

大変効果的なアイメイクがキラリと光っていたのです。


彼女は私と同じ、極度なドライアイと非常に強度な乱視の為、

コンタクトレンズを使用する事は無理なのだそうです。

このショップで働く事になり、一生懸命メガネの為のメイクを研究したそうです。

単なるメイクなら、BAさんがいくらでも教えてくれますが、

メガネの奥に潜む効果的なメイクを解く人はいませんね。残念ながら。

彼女はメガネ姿を素敵に魅せるという課題を持ち、人知れず努力研究に励んだ結果、

メガネを販売する為に存在するような女性になりました。

長年の経験から、何を商うにしても最終的にはモノを売るのではなく、

自分を売り込める人が優れたビジネスパーソンだと思うに至っております。

ですので、彼女のような姿勢で仕事に対して努力出来る人が本当に好きです。

これからは私達は二人揃って彼女指名でメガネを購入する事にいたしましょう。

勿論サングラスも矯正付きのものが必要ですので、なかなか良いカスタマーになりますよ。


ショップを出たその足で、化粧品を買いに。

彼女と話した中でメガネ&メイクの幾つかヒントを貰いましたので、

今までブラウン&ゴールド一辺倒だったアイメイクに色を加えようかと思います。

粒子の細かいラメの入ったラベンダーカラーとスモーキーな紫がかかったグレーです。

 

リップには、こちらも細かいラメの入った明るいピンクをチョイス。

最近ワードローブに増えつつ有るネイビーカラーとの相性を考えてみました。


どれほどの年月自分の顔と付き合いメイクをし続けていても、

いくらでも学ぶ事、チャレンジするべき事が有るものですね。

そんな事を教えてくれた、素敵な彼女に感謝です。