私はもう長い付き合いになるヘアスタイリストの彼が好きです。
よく働く男で、看板も出さず宣伝もせず、熱い情熱で静かにサロンを経営しています。
少し面白い経歴を持つ人で、かつてダンサーとして活躍していました。
ガラスアーティストでもあります。
流れ流れてこの地にたどり着いた辺り、私と同じ匂いのする人です。(怒られるかな?)
ヘアスタイリストは表現者だと私は思っていて、
信頼に足ると判断すれば、その表現の自由を奪うような注文はつけません。
最初の頃こそ、細かい希望等伝えていましたが、
彼を知るようになるうちに、私は彼の表現者としての作品が見たくなりまして、
注文をつけるのを止める事にしました。
”私、これからここに来る時は今の自分を象徴していると思うファッションで来るから、
そこからインスピレーションを受けたヘアスタイルにするって言うのはどうかな?”
そんなことを彼に提案しまして、しばらく考えていた彼が、”わかりました”って。
彼の作品は私とともに暮らし、動きます。
サロンを出てから再び戻って来るまで、私は彼の作品としてのヘアスタイルを預かる訳です。
彼の作品が台無しにならぬ様に、全体の雰囲気を配慮しながら過ごす緊張感が、
私は嫌いでは有りません。
今回私はこんなファッションで出掛けました。
シルクサテンのノーカラーブラウスと紺色のスキニーカーゴ、明るめのネイビートレンチ、
この間しばらくぶりに思い出したスカイブルーのローファーを合わせました。
約束より少し前にサロンに着きました。
しばらく私を眺めていた彼が、”それじゃ”と言いながらお仕事開始。
2時間半後、私のストレートボブに明るい色のハイライトが入りました。
何の文句も有りません。彼の作品ですから。
この次私はどんな気分でこのサロンを訪れ、彼はそれをどう受け止めて表現するのか。
そんな風に付き合えるヘアスタイリストと出会えた私は幸せです。