大好きな街が有ります。とても小さな学生の街。
質の高い教育内容で知られる大学を取り囲むように街が有り、学生や教授が暮らしています。
その大学には陶芸がメジャー科目として有るので、優れた陶芸家を何人も排出しています。
その街に、大好きなスペイン料理のレストランが有るので時々出掛けて、お散歩するのです。
お散歩をしながら考えるのもやっぱり陶芸の事。
ギャラリーやギフトショップを覗きながらあれこれと・・・・・
そんなお散歩の途中、見つけてしまいました
この看板に目が釘付けです。とてもシンプルな線で表現された清潔感のある図柄。
こういう物を見てしまうと、作ってみたくなるのです。
組皿 ”音の妖精”
優しい雰囲気を出したかったので、水彩画の筆でストロークを残して描きました。
ちゃんと可愛らしい名前もつけましたが、これは私が使うのです。
こういう物は売ってはいけません。
私が轆轤を挽き、絵付けをし、釉薬を掛けて焼きましたが、
あくまでも、このお皿の一番の主役はこの二人の妖精達です。
そしてこれをデザインしたのは私ではないからです。
この国の大学で受ける教育の中で、最も厳しく教え込まれるのが、
「オリジナルにクレジットを与える」という事なのですが、
これは文章にしろアイディアにしろデザインにしろ、
とにかく発表するものが自分のオリジナルでない場合、
必ずオリジナルが誰なのかを明らかにするという意味です。
もしもこの約束を破った場合、例外無く退学です。
そしてその事実は全国の大学に通知され、少なくとも公立の大学には2度と戻れません。
これは、あらゆる事に寛大なこの国としては、非常に厳しい制度だと思います。
そして私はそれを素晴らしいと思い、当然卒業後も忘れた事はありません。
そういう事なので、このお皿は私がオリジナルではないと私自身で判断しました。
本当は、この素晴らしいデザインをされた方にこのお皿を差し上げたいくらいですが、
これはどうやら古くから有るネイティブアメリカンの図案の様です。
そんなわけで、クレジットの所在を明らかにする事は出来ませんが、
このお皿を使う度、「素敵なデザインをありがとう」と心でつぶやく私です。