松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆「協働」のヒントから(相模大野)

2012-12-29 | 4.政策現場の舞台裏
 南区では、昨年、プラーヌンクスツェレ(PZ)を行った。なぜできたのか、記録として書いたメモが出てきたので、記録しておこう。

 PZは、東京のJCから始まり、相模原でも、数年前からJCが独自に取り組み始めている(自分たちでポスティングして参加者を集めている)。しかし、この制度をより精度の高いものとするには、参加者を住民基本台帳で無作為抽出することが不可欠であるが、これには行政の協力が必要になる。そこで、相模原のJCでは、何度も行政にアプローチしたが、これまで共同実施ができなかった。協働提案事業も使ったが、これも門前払いとなった。それがここ数年、続いていたのである。
 そんななかで、今度は、区民会議にアプローチがあったわけである。私自身は、この制度は、展望がある制度と考えているが、区民会議は合議の組織であるから、全体の賛同が必要になる。会議に諮ってみると、この区民会議の特徴でもあるが、自治会、町内会の代表の人たちを中心に、「若い人たちの取り組みなので、細かいことを言わずに応援しよう」という前向きな声が上がり、応援することになった。
 今回は、JCと区役所の共催という運びになったが、区役所側の調整も容易ではなかったろう。大きな組織のなかでは、横並びもあり、出る杭は打たれるのが常である。私には、泣き言を言わなかったが、区役所の人たちは、企画や政策、個人情報保護担当など関係セクションとの調整に、大いに奮闘したのだと思う。さまざまな抵抗もあっただろうことは、私も長い間、自治体にいたので、容易に想像できる。それでも、前に進めた力量には頼もしい限りである。
 その間、遅々として進まない調整に、JCは、大いに不満を持ったようだった。JCとすると、こんなにいい制度を提案しているのに、なぜすぐに採用しないのかという疑問である。ありがちな不満である。
 そんななか、私は、こんなことを言ったことを覚えている。
 「これは相模原市にとって、初めての試みです。みなさんも商売をしているからわかると思うが、いくら売れ筋、儲かりそうだからといって、新しい商売を全面的に展開するわけにはいかないだろう。本当に儲かるのか、従業員はついてこられるのか、さまざまなこと考え決断するのではないか。PZは、相模原市にとっては、これまで行っていない新しい分野に進出するようなものである。しかも、行政は、失敗が許されない組織である。だから、こうした実情を十分踏まえて、前に進むことができる方法を探るのが最も近道である。北風と太陽ではないが、強く対応すれば、ことが進むというわけではない。今回は、軽く後押し、その気になるように後押しするのが、一番いいと思う」。
 こうした対応は、決して特別なことではないと思う。市民活動を行っている多くの市民は、これまで組織のなかで仕事をしてきた、あるいは現在もしている人だろう。そのときのことを考えてみるとよく分かる。
 自分では、いい提案だと思っても、組織に受け入れなかったという経験は誰でもあるだろう。あるいは管理的立場になって、職員からの自信満々の提案が、実は一面的であって、それでダメを出した経験を誰でも持っているだろう。ものを進めるには、独りよがりの正論だけではだめで、関係者の賛同を得られるように、十分に考え、周到に配慮する準備が必要であることをいやというほど体験してきたはずである。市民活動だって同じである。
 こうした事情を十分に頭に入れて、ときには双方で、戦略を示し合わせながら、前に進めるのが「協働」なのではないか。いいかえれば、戦略を示し合わせながら、前に進めるような関係をつくることが、「協働」では大事なのだろう。それはそんなに難しいことではないと思う。

 *「協働」と括弧で括ったのは、一緒にやる協働であることを示すため。
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